しなやかに伸びた枝に、クリアな橙黄色の花を咲かせるヤマブキ。風に揺れる満開の姿は、春の盛りを感じさせてくれる美しい景色です。今回は、そんな春の花ヤマブキを使った5種類のアレンジバリエーションをご紹介します。教えてくれるのは、フラワー&フォトスタイリストの海野美規さん。春の花をたっぷり生かして、季節の色彩を楽しみましょう!
目次
春の花ヤマブキ
今年は春の花がいっせいに咲き出しました。私の住む地方では、いつもならサクラのシーズンから一足遅れてヤマブキの満開のときを迎えるのですが、今年はサクラと同じタイミング。なんとも豪華な競演でした!
ヤマブキには八重咲きと一重咲きがあり、一重咲きの花は、5枚の花弁でサクラによく似ています。わーっと咲いて、風に吹かれて花吹雪のようにはらはら舞い散る姿もサクラのようです。ヤマブキもサクラも、同じバラ科。色こそ違いますが、やはり近しい仲間の植物なのだなと感じさせてくれます。
私はヤマブキの、鮮やかな色、シンプルな花の形、風に揺られて咲く様子がとても好きです。
このヤマブキを、いろいろなアレンジで楽しんでみました。
ヤマブキで楽しむ5種のアレンジ
① バスケットアレンジ
まず、一種活け。一色でもとても華やかで存在感のあるアレンジになります。手付きのバスケットにラフにアレンジしました。
バスケットの中に、プラスチックのカップやガラスのボウルなど、バスケットの縁から出ない大きさのものを入れます(2~3個入れてもいいです)。
左右に長く枝を伸ばして、ラフに活けていきます。
② 同系色の色合わせ
ヤマブキと同じ、黄色系の色彩を持つ花を合わせました。
シャガは、白をベースに青と黄の差し色が美しい花です。この黄の色合いが、ヤマブキとよく似ています。小さな花ですが、とても複雑な造形になっていて面白いですね。ガラスの器との相性もよく、優しい雰囲気になります。
③ガラスの小瓶に
バスケットのトレイに、いくつかの小瓶(一輪挿し、ジャムの空き瓶など)を並べます。
ヤマブキを短くカットして挿します。1色だけですが、あちらこちらに花の顔を向けたり、高低差をつけると、リズミカルになります。
④反対色の色合わせ
強い青色のムスカリと合わせました。強い色同士ですが、野イチゴの白い花を添えると、軽やかさが加わりました。
野イチゴの花も5つの花弁。ヤマブキ似ですね。やはりバラ科の植物です。
⑤吊して
ヤマブキの茎は、軽くてしなやかです。枝垂れて咲いている風景を思い出して、吊してみてはいかがでしょう。
アレンジを吊す際は、くれぐれも落ちないように気をつけてくださいね。水は少なめにしましょう。ヤマブキは水揚げがよいので、水が少なくても大丈夫です。
日本の伝統色
日本には古くから伝わる日本固有の色の名前があります。古代に生まれたものを古代色名、さらに時代が下ってから生まれ、長く使われている色名を伝統色名といいます。
自然の中で暮らしていた時代には、植物、動物に由来する名前が多くありました。身近な植物は、花や実、葉などそれぞれがさまざまな固有の鮮やかな色を持っていることから、色の伝達には最適だったということです。特に花の色は、生きた色見本。桜色、紅梅色、桃色、桔梗色、藤色など、花と色がリンクして連想しやすいですよね。
それぞれの花の微妙な色合い、一つひとつに名前があります。例えば、「黄色」で探してみると、菜の花色、向日葵(ひまわり)色、蒲公英(たんぽぽ)色、鳥の子色、柑子(こうじ)色、梔子(くちなし)色、鬱金(うこん)色など、単に「黄色」という言葉で一括りにはできない、少しずつ違う黄色があります。山吹色は「ヤマブキの花のような色。鮮やかな赤みの黄」とされています。
ポピュラーな花ばかりではなく、知らないものもたくさんあって、どんな色か思い浮かばないことも。私の場合、鳥の名前のついた色は想像できないことが多いのですが、知らない名前の鳥を調べてみると、なんともきれいな羽を持っていて、こんなにも可愛らしい美しい鳥がいたのかと驚きます。そして、がぜん鳥にも色にも興味が増してきます。
鳥の羽の色合わせは、人間には思いつかないのではないかと思うほど色彩が豊かです。そこから生まれた色の名前も、本当に美しいものです。
Credit
写真&文 / 海野美規 - フラワー&フォトスタイリスト -
うんの・みき/フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
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