秋はナスが美味しい季節。家庭菜園でナスを栽培している人は、夏から採れて採れて、煮浸しも味噌炒めも飽き飽きしていませんか? そんな方におすすめなのが「コンポート・ドーベルジーヌ」。ほら、もう見た目も味も想像できないでしょう! 予約の取れないレストラン「ユンヌ・フルール」の伊藤仁美シェフにナスの美味しさ新発見のレシピを教えてもらいました。

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肉にも魚介にも合うナスのコンポート⁈

ナス
amedeoemaja/Shutterstock.com

「コンポート・ドーベルジーヌ」とは、日本語に訳すとナスのコンポート。コンポートというのは果物の砂糖煮のことですが、ジャムほど正体がなくなるほど煮詰めず、食感や風味が残っていて、砂糖もジャムより控えめのフランスの伝統的な調理方法です。オーベルジーヌはナス。フランス語のリエゾンという発音の関係で「ド・オーベルジーヌ」がつながって「コンポート・ドーベルジーヌ」。ナスのコンポート⁈ と驚くかもしれませんが、私のお店ではよくフォアグラと合わせてお出しします。「ナスですよ」と言わなければ皆さんそれと気が付きませんが、肉にも魚介類にもぴったり。というより、肉も魚介もいつもよりパクパク食べてしまえる素晴らしい付け合わせです。美味しいのはもちろん、何にでも合い、そして簡単、さらに保存も可。ぜひナスの美味しいこの季節に作ってみてくださいね。

ナスのコンポートの作り方

ナスのコンポートは皮を全部むいてから調理するので、採りどきをちょっと過ぎてしまい、皮が硬くなってしまったナスでもOK。冷凍保存できるので、家庭菜園でナスを作っていて採れて採れて困る、という方にもおすすめ。これを合わせるだけで、ちょっと手の込んだおしゃれな一品に仕上がりますよ。

<材料>

  • ナス 1本
  • *塩 1つまみ(3本指でつかんだくらい)
  • *レモン汁 20〜25g(だいたいレモンの半分の果汁)

【A】

  • 水 80g
  • 砂糖 15g
  • 塩 3g
  • レモン汁 5g
  • バター 8g

<作り方>

  1. ナスの皮をむきます。
    ナスのコンポートの作り方
  2. 1cm角くらいにカットし、ボウルに水を張り(分量外)、*を入れてアク抜きをします。10〜15分くらいすると水が濁ってきます。
  3. 水を切って鍋にナスを入れ、【A】と合わせて10分ほど中火で煮て汁気がなくなってきたら完成。

    ナスのコンポートの作り方
    このくらい形が残る程度に煮る。途中で水が足りなくなったら少し足す。

豚とナスのコンポート

豚とナスのコンポート

ナスのコンポートを豚肉の下に敷き詰めます。トロッとして、まろやか甘酸っぱいコンポートが豚の脂や旨味をさっぱりと飽きることなく味あわせてくれる一品です。

<材料>(人数に合わせて量を調整してください)

  • ナスのコンポート
  • 豚肉(部位はどこでも可)
  • オリーブオイル
  • トマト
  • ドレッシング(何でも)
  • 塩・こしょう 少々

<作り方>

  1. 豚肉に塩・こしょうを振り、オリーブオイルで焼きます。
  2. トマトを5mm角くらいにカットしドレッシングと合わせます。
  3. ナスのコンポートを下に敷き、豚肉を乗せ、トマトを散らして完成。
ナス レシピ

ホタテとナスのコンポート

ホタテとナスのコンポート

ホタテのような割と淡白なものにもナスのコンポートはよく合います。酸味や甘み、食感をプラスして、複雑な味わいにするのにもナスのコンポートは活躍します。塩味は生ハムで。

<材料>(人数に合わせて量を調整してください)

<作り方>

  1. ホタテをオリーブオイルで焼きます。半生くらいでOK。
  2. ナスを下に敷き、ホタテをのせ、一口大にした生ハムをのせ、バルサミコソースをかけて完成。
ホタテとナスのコンポート

ナスのコンポートのポイント

ナスはアクの強い野菜の一つです。アクというのは野菜の持っている渋みや苦味。調理方法によって必ずしもアク抜きは必要ではありませんが、今回はアク抜きが美味しさのポイントです。旬のナスは果肉が水々しく、火を通すとトロッと柔らかくなり、まるで熟した果物のよう。アクぬきをするとその果物感がアップし、肉や魚介との相性が抜群になります。また、アク抜きをしたほうが果肉の青緑色が美しく仕上がります。皮は青色色素を含んでおり、他の食材を青く染めてしまうので、付け合わせに使うコンポートの場合は皮をむきます。

フランスの家庭料理ラタトゥイユを美味しく作る方法

ラタトゥイユ

ナスを使ったフランスの伝統的な家庭料理をもう一品ご紹介しましょう。ラタトゥイユはフランス南部プロヴァンス地方を代表する野菜の煮込み料理です。しばしば、鍋でグツグツ煮て野菜のごった煮のようになっているのを見かけますが、もっとずっと洗練されて美味しく仕上げる方法があります。ポイントは使う野菜の火入れにあります。

ラタトゥイユはグツグツ煮ないのがコツ

ラタトゥイユにはトマト、ナス、ズッキーニ、パプリカ、タマネギを使いますが、この中でしばらく煮る必要があるのはトマトだけ。前回の記事でもお話ししましたが、トマトは旨味の元となるグルタミン酸を多く含んでおり、その旨味と塩味、オリーブオイルなどの調味料をしっかりなじませ味を決めるために、ある程度の時間火を入れる必要があります。しかし、トマトの旨味を引き出すのに合わせて他の野菜も煮てしまうと、ほとんど全部が煮溶けてしまいます。それはとてももったいない。ナスのトロッとした食感や味わい、ズッキーニの軽快な歯触り、パプリカの甘酸っぱさなど、それぞれの食感や味わいを活かしたほうが美味しくできます。

野菜を油通しで作るラタトゥイユ

ラタトゥイユの作り方

そこで活躍するのが前回ご紹介したトマトソースです。味がしっかり出来上がっているこのトマトソースを使えば、かなり時短でラタトゥイユができます。このトマトソースはラタトゥイユだけでなくあらゆる料理に汎用できますので、ぜひ時間がある時に作って冷凍保存しておくと、普段の料理がグッと楽になります。他の野菜は角切りにして油通しします。

トマトソースの作り方はこちら

「油通し」は「揚げ」より低い温度で行う調理工程のひとつで、短い時間で食材に火を通すことで旨味を閉じ込め、煮崩れしにくく、色を鮮やかに残し、食感もよくするなどいくつものメリットがあります。油の温度は160〜180℃。表面が軽く色づいたり、膜が張ったら引き上げます。

美味しいラタトゥイユの作り方

<材料>

  • ナス 1本
  • 玉ねぎ 1/2個
  • パプリカ(赤・黄) 各1/2個ずつ
  • ズッキーニ 1本
  • トマトソース 200g
  • 水 50cc

<作り方>

  1. 野菜を全部2cm角くらいにカットして160〜180℃で油通しします。
    ラタトゥイユの作り方
  2. トマトソースを鍋に入れ、水を足して温めます。
    ラタトゥイユの作り方
  3. 温めたトマトソースに油通しした野菜を入れ、3〜5分煮て完成です。煮る時間が長くなれば野菜やより柔らかくなるのでお好みの固さで火を止めてください。
    ラタトゥイユ

ラタトゥイユと卵のお洒落な前菜

ラタトゥイユのアレンジ

フランスではラタトゥイユにポーチドエッグをのせた料理も定番です。トロッと半熟卵の黄身と野菜の味わいが濃厚で、そのまま食べても美味しいし、パンにのせて食べるのもおすすめ。ラタトゥイユは冷やしても美味しく食べられます。何か型にはめて冷やすと、整形しやすく見た目もきれいに仕上がります。卵の上にかかっているのは、マヨネーズを少量の牛乳で溶いたマヨネーズソース。味が複雑になり満足感の高い一皿になりますよ。

ラタトゥイユのアレンジ

保存料理が伝統的なフランス料理の基本

今回ご紹介したナスのコンポートやラタトゥイユに登場したトマトソースなどは、冷凍や瓶詰めで保存してさまざまな料理に展開できるので、旬の時期にたくさん作って保存しておくと便利です。伝統的なフランス料理の歴史は、保存の歴史でもあります。フランス料理を代表するさまざまなソースも、冷蔵技術がなかった時代に劣化の進む食材をいかに美味しく食べさせるかということから発展しました。食材を大切に、美味しくいただくというのは料理の基本であり、そうして作られた一皿は心を満たすものでもあります。それはレストランであろうが、家庭の食卓であろうが同じ。フランス料理は決して敷居の高いものではなく、家庭でもできる知恵がいっぱい詰まった料理文化です。これからもそんなフランス料理の知恵と工夫を皆様にお届けしていきますね。

Credit

「ユンヌ・フルール」シェフ伊藤さん

レシピ考案・料理/伊藤仁美
レストラン「ユンヌ・フルール」シェフ。20代からレストランひらまつ広尾本店、パリ16区ひらまつで勤務。その後、広尾キャーブ・ド・ポール・ボキューズ、西麻布キャーブ・ド・ひらまつなどで料理長を歴任し、レストランのみならず有名メゾンや企業、パーティーなどでのケータリング経験も多数。2015年岐阜県ひるがの高原に「ユンヌ・フルール」を開店。不定休で完全予約制。予約は1年に1度のみ受付。
https://www.instagram.com/hitomi2160/

ガーデンデザイン・施工/かたくり工房

撮影・編集/3 and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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