トマトの万能保存レシピ!なんでも美味しくなる魔法のトマトソースとトマトの透明ダシ[Garden to Table]②トマト
家庭菜園で最も人気のトマト。今がちょうど採れどきですが、次々赤く実るトマトの消費に追われている人も多いのでは? 旬のトマトの美味しさを生かすレシピを予約の取れないレストラン「ユンヌ・フルール」の伊藤仁美シェフに教えていただきました。あらゆる料理を美味しく変身させる魔法のトマトソースと、目にも涼やかなトマトの透明ゼリーのレシピです。
目次
旬のトマトは昆布に匹敵する旨み
さまざまな夏野菜が旬を迎える季節です。旬の素材は、料理の美味しさを左右する大事な要素。というわけで、旬の野菜を使って、私はさまざまな料理に使う野菜のソースを1週間かけて1年分、どっさり作ります。トマトソースもその一つ。トマトは「旨み」に大変優れた素材で、旨みのもととなるグルタミン酸という成分を、昆布に匹敵するくらい豊富に含んでいます。実際、私のレストランではこのトマトソースを料理のダシとして使うことも多く、あらゆる料理に重宝する調味料にもなります。グルタミン酸は完熟するにつれ増加するので、今まさに旬の完熟トマトを使うのがポイントです。
基本のトマトソース
まずは、あらゆる料理に重宝する基本のトマトソースをご紹介します。作り方はとても簡単。ポイントはいつ調味料を入れるか、ということだけです。意外かもしれませんが、料理は素材の変化による化学です。その化学現象の一つに乳化(エマルジョン)があります。本来分離している素材を均一に混ざり合わせることをいい、味の一体感によって新たな美味しさを生み出す重要な工程です。簡単なものでは、ドレッシングをかける前にボトルを振るのが乳化の工程。あれをしないでサラダなどにかけたら、油っぽさが浮き立ち、塩分も悪目立ちして全然美味しくありませんよね。トマトソースを作る際は、すべての調味料を最初から入れて煮詰めることで乳化させます。とても単純なことですが、最初から入れるか、後から入れるかでは味に雲泥の差が出ます。ちなみに、このトマトソースはさまざまな料理に使う基本のソースなので、ハーブなどは入れずに作ります。ハーブは料理ごとに必要に応じて使いますが、ハーブを使う際は、グツグツ煮ないのがポイント。ハーブの上手な使い方は、また別の回でご紹介しましょう。
<材料>
- トマト 300g
- 塩 5g
- オリーブオイル 20g
- 砂糖 10g
<作り方>
- トマトを生で皮付きのままミキサーにかけ、ピューレ状にします。
- ボウルにざるを重ね、①を入れて攪拌器でかき混ぜると、ざるにタネと皮が残り、ボウルのほうへトマトがこされます。
- こしたトマトを鍋に移し、調味料を全て入れて、20〜30分弱火で煮詰めます。煮詰めることで素材が乳化します。
<保存方法>
氷を作るケースにソースを流し込んで冷凍しておくと、1個ずつ取り出して使えて便利です。
トマトソースキューブを使った超簡単カッペリーニ
このトマトソースはこれだけでしっかり旨みも塩味もあるので、茹でたパスタと絡めるだけで美味しい一品になります。冷凍してあるので、夏は冷たいカッペリーニがおすすめ。また、レトルトのミートソースやハヤシライスなどにポンと1つ入れるだけでも、格段に味がアップしますよ。
<材料一人分>
- パスタ 約70g
- トマトソースキューブ 1個
- 生ハム 2枚
- ルッコラやバジルなど 適宜
<作り方>
パスタを茹でて冷水で締め、水気をよく切り、トマトソースと絡めて生ハムやルッコラをのせるだけ。カッペリーニがない場合は、そうめんでも同じようにできますよ。
旨みたっぷりトマトの透明ダシ
トマト料理というと、全部赤色になってしまい、どの料理もビジュアルが同じ印象になってしまいがち。でも、トマトピューレをクッキングペーパーでこすと、不思議なことに透明の液体になります。味はトマトソース同様、旨味がたっぷりですが、透明なので、言われなければトマトを使っているとは思わない意外なビジュアルに仕上げることができます。クッキングペーパーのほうにはカスしか残らないようにきっちり絞ります。クッキングペーパーにはさまざまな種類がありますが、液体をこすにはフェルト生地風の厚みのあるペーパーが向いています。紙っぽいクッキングペーパーでは破れたり、こせなかったりします。
<作り方>
- トマトを皮ごとミキサーにかけ、ピューレにします。
- ボウルにざるを重ね、リードクッキングペーパーを敷き、①を入れます。ラップを敷き、水を入れたカップなどで重しをします。
- 透明のトマトエキスがボウルにこされます。トマトソースの時と同様、冷凍で保存します。
魚介と夏野菜のトマトゼリーがけ
トマトの透明ダシは魚介類との相性が抜群です。ゼリーにして魚介類と合わせると、つるんと食べやすく夏にぴったりです。私のレストランでは、この辺りの特産の鮎と合わせたスープにしたりしますが、赤色にならないので、お客様にトマトを使っているとお話しすると皆さん驚かれます。こういうサプライズも食事を楽しくする大事なエッセンス。トマトは大人も子どももよく知っている野菜ですから、その意外な変身に、ご家庭の食卓も盛り上がるはずです。
<材料>
- トマトの透明ダシ
- ゼラチン(分量は使用するゼラチンの使用方法に従ってご用意ください)
- 塩とレモン汁 少々
- お刺身の盛り合わせ(何でも)
- 夏野菜何でも(オクラや枝豆、トウモロコシ、ズッキーニなどなら茹でて。トマトやキュウリは角切りするだけでOK)
<作り方>
- トマトの透明ダシに塩とレモンを少々入れて温め、ゼラチンを溶かして冷やし固めます。
- お刺身と夏野菜を皿に盛り付け、冷やし固めたトマトゼリーをクラッシュしてかければ完成。あればケッパーや玉ねぎ、ミョウガを刻んで合わせていただくと味にキレが出ます。
みんな大好き! トマトのシャーベットカクテル
フレッシュなトマトの美味しさを味わうレシピもご紹介しましょう。このトマトのシャーベットカクテルは、私のレストランで実際に前菜としてお出ししている一品で、子どもから大人まで、なんならトマト嫌いの方も大好きです。シャーベットというとデザートのようなイメージですが、暑い夏にはまず初めにお出しして涼しくなっていただきます。3層になった、ちょっとリッチな味わいのカクテルです。
<材料>
1段目/トマトシャーベット
- トマトの皮とタネをこしたピューレ(トマトソースの作り方の②の状態)
- 塩とレモン汁少々
2段目/トマトのスープサラダ
- トマト 50g
- レモン汁 5g
- 塩 少々
- ハチミツ 10g
3段目/ヨーグルトムース
- 水切りヨーグルト 大さじ3
- 生クリームを泡立てたもの 大さじ1
- グラニュー糖 小さじ1
- レモン汁 少々
<作り方>
- シャーベットの材料を混ぜ合わせ、冷凍庫で冷やし固めます。
- ムースの材料を全て混ぜ合わせます。ヨーグルトは写真くらいになるまで水を切り、他の材料と混ぜ合わせておきます。
- トマトのスープサラダはトマトを湯むきして角切りにし、レモン汁、塩、ハチミツと混ぜ合わせておくと、水分が出てスープっぽくなります。
グラスなどの器にヨーグルトムース、トマトのスープサラダ、トマトシャーベットの順でよそい、完成。あれば上にオレガノなどの葉を飾るとキレイです。
私のレストランは私一人しかスタッフがいませんが、ご家庭のキッチンにも助手がいるなんてことはまずないと思いますので、今回ご紹介したようなソースの冷凍保存は重宝するはずです。いろいろな料理に展開できますし、手軽に美味しい一品ができるのがいいところ。トマトはダシとして考えると、とても汎用性の高い素材です。家庭菜園でトマトを作っている方は、完熟トマトがたくさん採れる時期だと思うので、ぜひ旬のトマトを生かして作ってみてください。
ガーデンデザイン・施工
Credit
レシピ考案・料理 / 伊藤仁美 - レストラン「ユンヌ・フルール」シェフ -
いとう・ひとみ/20代からレストランひらまつ広尾本店、パリ16区ひらまつで勤務。その後、広尾キャーブ・ド・ポール・ボキューズ、西麻布キャーブ・ド・ひらまつなどで料理長を歴任し、レストランのみならず有名メゾンや企業、パーティーなどでのケータリング経験も多数。2015年岐阜県ひるがの高原に「ユンヌ・フルール」を開店。不定休で完全予約制。予約は1年に1度のみ受付。
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撮影・取材・まとめ / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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