いとう・ひとみ/20代からレストランひらまつ広尾本店、パリ16区ひらまつで勤務。その後、広尾キャーブ・ド・ポール・ボキューズ、西麻布キャーブ・ド・ひらまつなどで料理長を歴任し、レストランのみならず有名メゾンや企業、パーティーなどでのケータリング経験も多数。2015年岐阜県ひるがの高原に「ユンヌ・フルール」を開店。不定休で完全予約制。予約は1年に1度のみ受付。
伊藤仁美 -レストラン「ユンヌ・フルール」シェフ-の記事
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レシピ・料理
硬くなったナスも絶品! シェフが教えるナスのケーキと貧乏人のキャビア
‘貧乏人のキャビア’キャビアドオーベルジーヌの作り方 フランスでは、ナスをキャビアに見立てた「キャビアドオーベルジーヌ」という料理があります。ナスのタネの粒々がキャビアに見えるということから、通称‘貧乏人のキャビア’とも呼ばれて親しまれる定番のお惣菜です。貧乏人だなんてあんまりですが、キャビアというだけあって、それくらい美味しいということ。そのまま食べても、パンにのせても、料理に付け合わせてもバッチリ! なのに、作り方はとても簡単。オーブンでじっくり火を通すだけ。皮を使わないので、硬くなってきたナスもトロリと美味しく仕上がります。 今回使ったのは、家庭菜園でちょっと採りどきを逃して大きくなったナス。スーパーで買ってくる場合は、2本使うとよいでしょう。 【材料】 ナス 1本(大きめ)ニンニク 2片オリーブオイル 適量生クリーム 大さじ1〜2 【作り方】 ① ナスを縦半分に切り、果肉側へ格子状に切り込みを入れます。鉄板にのせ、ナス全体に行き渡るようにオリーブオイルを回しかけます。ニンニクは皮付きのまま鉄板にのせます。 ② 200〜220℃のオーブントースターに入れて、柔らかくなるまで20〜30分焼きます。オーブンによって異なるので、焼き色を見ながら時間を加減してください。 【Point!】 焼き上がりは、写真のように褐色に焼き色がつくくらいを目安にしてください。この状態は「キャラメル化反応」といって、ナスやニンニクに含まれる糖分がじっくり加熱されたことにより、甘くて香ばしい香りを発生させます。この香りが料理を劇的に美味しく変化させる秘訣です。ご飯の「おコゲ」の美味しさもキャラメル化反応のたまものです。「おコゲ」のコゲは、「焦げ」ているのとは違います。焦げは炭化してしまうことなので、似たように見えますが「キャラメル化反応」の美味しさは失われてしまいます。 ③ ナスがしっかり焼けたら、取り出して冷まし、スプーンで皮から身をこそげ落とします。ニンニクは皮を取り除き、ナスと一緒にスプーンで潰してペースト状にします。生クリームと合わせたら完成。そのままパンに乗せて食べる場合は、塩・コショウで味付けしてください。 そのままでも、パンにのせても美味しいおつまみになります。 キャビアドオーベルジーヌと夏野菜&エビの麺つゆゼリー キャビアドオーベルジーヌは、マッシュポテトのように重くなく、まろやかなのにみずみずしい食感が特徴。淡白なお肉や魚介類との相性抜群です。今回は、エビと夏野菜を合わせて、麺つゆゼリーをかけた、見た目にも美しい1品をご紹介します。 【材料】2人分 キャビアドオーベルジーヌ 大さじ4夏野菜オクラ 4本枝豆 5〜6サヤとうもろこし 少量(缶詰でも可)ズッキーニ 1/3本グレープフルーツ 3〜4房エビ 5〜6尾オレガノの葉 2〜3枚(あれば)オリーブオイル 適量麺つゆ 30cc水 70ccゼラチン 3g 【作り方】 ① 麺つゆと水を合わせ、ゼラチンを入れて煮溶かし、冷蔵庫で冷やし固めます(このとき、ゆずなどを入れても爽やかになります)。固まったらスプーンで崩しておきます。 ② オクラ、枝豆、とうもろこしは茹でておきます。オクラは食べやすい大きさに切り、枝豆、とうもろこしは実を外します。グレープフルーツは薄皮をむいて1房を1/2〜1/3にカット。 ③ 1cmくらいに切ったズッキーニと、むき身にしたエビをオリーブオイルで焼き色がつくくらいに炒めます。 ④ 皿にキャビアドオーベルジーヌを敷き、野菜とエビをのせ、崩したゼリーをのせて完成。お好みでハーブを飾っても。 キャビアドオーベルジーヌがまろやかな味わいを加えてくれます。 ナスとレモンのチーズケーキ ナスの果肉は加熱するとトロリと柔らかく透明感のある美しい黄緑色になります。レモンと砂糖で味付けすると、まるで甘酸っぱい果物のよう! 市販のクッキーとアイスクリームを活用して、簡単にできるナスのチーズケーキをご紹介します。 【材料】(直径5cm程度のセルクル3〜4個分*ナスの大きさによる) ナス 1本グラニュー糖 30g前後レモン 1個クリームチーズとバニラアイス 各100gゼラチン 6gクッキー 100g溶かしバター 30gタイムの葉(あれば) 少々 【作り方】 下準備/バットの上にラップを敷いて、セルクルを乗せます。 ① クッキーを砕いて溶かしバターと合わせ、セルクルの底に敷きます。 ② ナスの皮をむき、1cm角くらいにカットして水にさらします。レモンは薄皮をむいておきます。 ③ 鍋にバニラアイスとクリームチーズを入れて溶かします。この時、好みで砂糖(分量外)を追加してもOK。ゼラチン3gを加えて少し冷まし、クッキーの上に流し入れて冷蔵庫に入れます。 ④ 鍋に水とナスを入れ、一度沸騰させて水を切ります。もう一度かぶるくらいの水とグラニュー糖を入れ、少し煮てからレモンを入れます。100g分に対して3gのゼラチンを入れ、少し冷まします(ゼラチンの量はナス1本の分量によるので、ここでg数を計ってゼラチンを入れてください)。 ⑤ クリームチーズムースの上にナスをのせ、冷蔵庫で冷やし固めます。固まったら型を外し、タイムの葉を散らして完成。 言われなければナスとは分からない、甘酸っぱく爽やかなケーキです。食感は煮たリンゴのようでもあり、洋梨のようでもあり…。きっと食べた人は正解を知って驚くはずですよ! Tatiana Kasatkina/Shutterstock.com 家庭菜園ではナスは10月頃まで採れ続けますが、だんだん皮や実が硬くなってきます。ここでご紹介したレシピを参考に、最後まで美味しく召し上がってくださいね!
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レシピ・料理
フランスの夏の田園が香る、カモミールとレモンバーベナのデザート
カモミールとレモンバーベナのデザート カモミールはリンゴのような香り、レモンバーベナはその名の通り爽やかなレモンのような香りがします。どちらもフランスでは馴染み深いハーブで、庭で花を摘んでいるとフランスの田園風景を思い起こします。カモミールはちょっと街から離れると、どこにでも勝手に生えていますし、レモンバーベナも南のほうでは庭によく植えられていて、大きな木になっていました。レストランではフィンガーボウルの水にレモンバーベナが使われます。 今回のデザートでは、カモミールの香りのゼリーと、レモンバーベナの香りのアイスクリームを季節のフルーツと合わせます。コツは「香り」だけを移して、苦味やエグミを出さないこと。ハーブは薬用としても用いられているように、グツグツ煮出すと漢方薬のような味が出てしまいます。ここではアイスクリームメーカーを使って手作りのアイスの作り方をご紹介しますが、市販のバニラかミルク味のアイスをのせても十分美味しいので、アイスクリームの工程を飛ばしてもOKです。 【材料】8人分 <カモミールゼリー> カモミールの花 15g水 500ccグラニュー糖 40g板ゼラチン 7gレモン汁 少々 <レモンバーベナのアイスクリーム> *アイスクリームメーカーで作る場合 牛乳 350g生クリーム 150g卵黄 4個グラニュー糖 100gレモンバーベナ 15g <フルーツ> 季節のフルーツ 適量キルシュとグラニュー糖(あれば少々、なくても可) 【作り方】 <カモミールゼリー> ① ゼラチンを水で戻します。 ② 鍋に水とグラニュー糖を入れて沸かし、カモミールを入れたらすぐに火を止めます。 ③ 容器に②を移してラップをし、5分ほど香りを閉じ込めます。 ④ 鍋に③をこしながら入れ、少し温度を上げてゼラチンを入れ、レモン汁を混ぜて冷蔵庫で冷やし固めます。 <レモンバーベナのアイスクリーム> ① 鍋に牛乳と生クリームを入れて沸かし、レモンバーベナを入れたらすぐ火を止めて5分ほどそのままに。 ② 卵黄とグラニュー糖を混ぜ合わせ、①に入れてゆっくり82℃まで火を入れてからこします。 ③ 冷ましてからアイスクリームメーカーに入れ、アイスクリームにします。 <フルーツ> 季節のフルーツを3〜4cm大にカットします。そのままでもいいですし、キルシュとグラニュー糖少々をまぶしておくとゼリーとの相性がよくなります。 <盛り付け> ① 器に季節のフルーツを入れます。このとき、フルーツの下に、以前ご紹介したルバーブのコンポートを大さじ1杯ずつ敷いてもアクセントになります。 ② カモミールゼリーをのせ、その上にアイスをのせて完成。カモミールの花が余っていたら、2〜3輪散らすとかわいく仕上がります。 ゼリーがつるんと喉越しよく、やさしく爽やかな香りが鼻に抜ける、後味のとてもよいデザートです。カモミールにもレモンバーベナにも、緊張を緩和してリラックスさせてくれる効果があります。お食事の後や、夏の暑さで身体が疲れているときにもおすすめですよ。 カモミールの栽培のコツ ユンヌ・フルールの庭をつくった造園家の阿部容子さんに、2つのハーブの栽培のコツを伺います。 庭を巡ってハーブを収穫する伊藤シェフと造園家の阿部容子さん。 カモミールは大きく分けて2種 6月、ローマン・カモミールを収穫。 カモミールは初心者でも育てやすい野生的なハーブです。伊藤シェフが修行をしていたフランスでは、誰が栽培したというわけでもなく道端にカモミールが咲いていて、カモミールの草原をよく見かけます。カモミールは大きく分けてジャーマン・カモミール(一年草)とローマン・カモミール(多年草)があり、どちらも花にリンゴのような香りがあり、お茶など食用にできます。 安眠効果があるカモミールティー。Valentyn Volkov/Shutterstock.com 前者はこぼれ種で増え、後者は雪の下でも越冬して株が次第に大きくなって増えていきます。ユンヌ・フルールで育てているのは、ローマン・カモミール。ここはスキー場が近くにあり、冬はどっさり雪が降りますが、冬越しして初夏には花を咲かせます。両者は開花期に少し違いがあり、ジャーマン・カモミールは3〜6月、ローマン・カモミールは5〜6月の間に花が咲きます。 ほかにカモミールにはダイヤーズカモミールという黄色の花があり、華やかなのでガーデニングではよく用いられますが、こちらは花にはほとんど香りがなく葉もあまりよい香りではありません。お茶などの食用には適しておらず、主に染色に用いられる種類なので、用途の目的がある場合は注意してセレクトしましょう。 発芽には光が必要 タネから育てる場合は、春(3月中旬〜4月)と秋(9月中旬〜10月)の2回、種まきのタイミングがあります。カモミールのタネは好光性といい発芽に光を必要とするので、土は薄く覆うか、覆わないままでも構いません。蒸れと暑さが苦手なので、風通しがいいように、発芽後は間引きしながら育てます。苗から育てる場合は、株間を20~30cmあけて植えます。用土には苦土石灰を混ぜて酸性度を中和し、さらに腐葉土を混ぜておくとカモミールの好む環境になります。鉢植えの場合は、市販の培養土か、小粒の赤玉土7に腐葉土3の割合で混ぜ、元肥を加えた用土を用います。3月と11月に施肥をするといいでしょう。 カモミールの収穫と保存 ジャーマン・カモミールは、花にのみ香りがあるので、花部分を摘み取って使います。花の中心の黄色い部分が盛り上がってきたら収穫時です。白い花弁が完全に下を向いてしまう前のほうが香りが残ります。風通しのよい日陰で乾燥させます。カビが発生することがあるので、裏面にも風が通るようにし、ときどき表裏を返しながら丁寧に十分に乾燥させましょう。乾燥したら乾燥剤を入れた密閉容器で保存し、1年を目安に使い切ります。ローマン・カモミールは葉や茎にも香りがあるので、花の収穫期に草丈10cmほどに剪定し、茎ごと乾かします。 レモンバーベナの栽培のコツ レモンバーベナは「香水木」とも呼ばれ、レモンに似た香りは料理やポプリ、化粧品など多岐にわたって利用されています。温暖な南方に自生しており、寒さがあまり得意ではありません。ですから冬は厳しい寒さに見舞われるユンヌ・フルールでは鉢植えで栽培し、冬は室内に取り込んで育てます。その際、冬の室内は思いのほか乾燥しているので、水切れに注意しましょう。基本的には常緑低木で、苗から育てます。地植えでは3mほどにも成長しますが、鉢植えではそこまで大きくなりません。寒くなると落葉することもありますが、−5℃を下回らない限りは枯死することはなく、春になれば新しく芽吹いてきます。 Yevhenii Slivin/Shutterstock.com どちらも今回伊藤シェフが紹介してくれたような料理はもちろん、お風呂に入れても香りが楽しめます。特にカモミールは大株になってくると使いきれないことが多いので、ネットに入れてお風呂で楽しむのはおすすめですよ。
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レシピ・料理
【シェフのクリスマスレシピ】簡単で美しくおいしい4品
レシピ① クリスマスの香りのお酒「ヴァン・ショー」 フランスで料理の修行をしていた頃、クリスマスは必ず「ノエル休暇」といって、フランスのレストランはお休みでした。日本でいうお正月のような感じで、フランスの人々は、クリスマスには家で家族と過ごすのが一般的です。一方、外国から修行に来ている私たちスタッフは、地方へ足を伸ばしたり、パリにもこの頃だけ立つクリスマスマーケットに散策に出かけたりしていました。私はこのマーケットが大好き! この時期にしか売っていないクリスマスグッズを見たり、買ったり、束の間の休日が本当に楽しかったです。マーケット散策のお供は、ホットワインと決まっています。フランスでは「ヴァン・ショー」と呼ばれ、スパイスがたっぷり入っていて香りがよく、身体も温まり、マーケットのキラキラに包まれながら、とっても幸せな気分になれます。暖かなお家で飲むなら、すっきり冷やしてもおいしいですよ。ミントを入れた爽やかなクリスマスのお酒をご紹介します。 【材料】 赤ワイン 400ccオレンジ 1切れレモン 2切れスターアニス 3〜4個クローブ 5〜6粒ブラックペッパー(ホール) 小さじ1シナモンパウダー 小さじ1砂糖 大さじ1(味をみてお好みで増やしてください)ミント 1つかみ 【作り方】 1.スパイス類をクッキングペーパー(破れないもの)などで包んで紐で縛ります。 2.ミント以外の材料を全部鍋に入れて、砂糖を煮溶かします。 3.砂糖が溶けたらミントを鍋に入れて、そのまま放置します。火にかけなくてもミントの香りがワインに移って、爽やかな飲み心地になります。 食前酒としても、デザートとしてもおいしいですよ。 レシピ② 宝石のようにきらめくゼリーが美しいサーモンマリネ クリスマスカラーといえば、赤と緑と白。その3色を入れて、クリスマスの食卓にぴったりにアレンジした、サーモンマリネの作り方をご紹介します。サーモンマリネは、塩と砂糖、そしてお庭のミントが、臭い消しにとっても重宝します。周りに散らしたゼリーもミントがほんのり香って、スッキリ食べられます。 【材料】 <サーモンマリネ> サーモン かたまり塩と砂糖 2:1(分量はサーモンの大きさに合わせて)ミント 1つかみ <ミントゼリー> スパークリングワイン 200cc砂糖 20gミント 1つかみレモン汁 少々板ゼラチン 8g <ミントクリーム> 生クリーム 100ml刻んだミント 少々塩 少々レモン汁 少々(お好みで) 【作り方】 1.サーモンにミントをまぶし、さらに塩と砂糖を混ぜたものをまぶして、そのまま冷蔵庫の中で一晩寝かせます。塩は水分を抜いて臭みを取るためのもので、写真くらいにたっぷりかけても塩味はキツくならないので大丈夫です。砂糖は味をまろやかにするために入れます。ここでのミントの役割は香りづけではなくて、やはり臭み消し。ミントの香りはサーモンにはつきません。 一晩たつと、こんな風に水分が抜けて色が鮮やかに、身がしまった感じになります。 2.ミントゼリーの材料を鍋に入れてゼラチンと砂糖を煮溶かし、冷蔵庫で固めます。 3.生クリームを固めに泡立てて、ミントと塩、お好みでレモン汁を入れて混ぜます。 4.薄くスライスしたサーモンをお皿に並べ、周りにミントゼリーを散らし、中央にミントクリームをのせ、完成。お好みでイクラを飾っても。 レシピ③ 柔らかジューシーなチキンのコンフィ クリスマスといえば、チキン。オイルに材料を入れて待つだけの簡単なチキン料理ですが、ふっくらジューシーで柔らかに仕上がります。油で煮るのでしつこいかと思いきや、びっくりするくらいさっぱりとしていてベタベタもしません。1時間以上はかかるので、これを火にかけている間に、ほかの料理を作りましょう。 【材料】 鶏もも肉 500g(2枚)ジャガイモ 1個玉ねぎ 1/2個ニンニク 1かけ舞茸 100gローズマリーの枝 2〜3本塩 (分量は写真で解説)カレー粉 大さじ1サラダ油 たっぷり(鍋に材料を入れてかぶるくらい) 【作り方】 1.鶏もも肉に塩を振ります。塩の分量は、普段より多めを意識してください。普段の料理で肉に下味をつける時は、左の写真のようにまばらに塩を振りますが、今回は右の写真のように表面全体が白くなるくらいに塩を多めに振ります。ここで振った塩が他の材料にも行き渡って全体の味となるので、多めに。 2.鍋に材料を全て入れます。ジャガイモも玉ねぎも皮付きのままでOK。皮が出汁(だし)の役目を果たして味をよくしてくれます。食べる前には玉ねぎの皮は外します。カレー粉はカレー味にするためではなく、ローズマリーとともに臭み消しの役目と、味に複雑性を出すためのスパイスです。 しばしばこの連載で、ハーブの使い方として、ぐつぐつ煮ると苦味やエグミが出るので最後に入れる、とお話ししてきましたが、油には味が溶け出さず、香りだけを移すことができるので、この料理の場合、ローズマリーは最初から鍋に入れて大丈夫です。 3.サラダオイルを材料がかぶるくらいに入れ、一度強火で沸かしてから弱火にして、約1時間半煮ます。ふたはしません。暖炉やストーブの上において調理してもOKですが、オイルがあまりぐつぐつしない火加減で煮ます。弱火のオイルで煮る調理方法をコンフィといいます。 薪ストーブの上でチキンのコンフィを調理。 4.煮えたら材料を取り出し、玉ねぎは皮をむき、鶏もも肉は熱したフライパンで皮だけをカリッと仕上げに焼き上げ、盛りつけたら完成です。 レシピ④ 冷やご飯でOK!ミントとツナのサラダ クスクスがあればクスクスを使って、なければ冷やご飯でできる爽やかなサラダです。ミントはツナの臭み消しとして入れますが、不思議なことにミントを結構な量入れてもミントのスッとした感じは一切なく、ツナ特有の匂いを完全に消し、旨味だけを感じさせてくれます。ミントはそのものの味や香りも楽しめる食材ですが、臭み消しとして使うと、とてもいい働きをしてくれます。 【材料】 ★プチトマト 3個★玉ねぎ 1/8個★オリーブ 2粒くらい★枝豆(きゅうりでもOK) 大さじ1くらい★ミント 1茎 オリーブオイル 大さじ1冷やご飯 お茶碗半分くらいツナ 大さじ1くらい塩 少々カレー粉少々 【作り方】 ★の材料を全てみじん切りにします。カレー粉を除き、全ての材料を混ぜ合わせます。お皿の縁に香り付けとしてカレー粉を振って完成。 どれも手軽にできておいしいこと間違いなしなので、ぜひクリスマスやお客様が集まる年末年始に作ってみてください。 ガーデンデザイナーの阿部容子さんが庭のもみの木の枝と松かさ、月桂樹の葉で、即興で作ってくれたテーブルセンターアレンジ。作り方は会員サイトで紹介中! ミントは鉢で【ガーデナー阿部容子さんのアドバイス】 Paul Maguire/Shutterstock.com 今回のレシピで活躍したミント。栽培しやすく人気のハーブですが、ものすごく繁殖力が強いので、ミント農家になるつもりがないなら、鉢植えで育てることをおすすめします。ミントは地下茎で広がり、一度地植えにすると他の植物を駆逐しながら生育して、庭中がミントに占領されてしまいます。鉢植えで育てていても、鉢を直に地面に置くと鉢底から根を出して広がっていってしまいます。また、鉢皿を敷いていたとしても、ミントはとても水を欲しがる性質で、茎を自ら地面のほうへ倒し、茎から発根して地植えで生育していこうとします。ミントを見ていると、領土拡大の強い「意志」を感じるくらい、本当に繁殖力の強い植物です。でも、今回シェフが教えてくれたように、料理にはとても重宝するので、ぜひ鉢植えで、デッキかタイルなどの上に置いて育ててみてくださいね。
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レシピ・料理
【クリスマスレシピ】 ホットケーキミックスで10分で焼けるミント風味ブッシュ・ド・ノエル
ブッシュ・ド・ノエルとは ブッシュ・ド・ノエル(Bûche de Noël)とは、フランス語でブッシュが薪、ノエルがクリスマス。薪や切り株を模したクリスマスのケーキの定番です。その由来は、キリストの誕生を祝い、幼子を温めるために夜通し暖炉に薪をくべたことから、など諸説あります。ユニークな形のケーキなので、作るのが難しいと思われるかもしれませんが、ケーキの中では意外と簡単。 「HM +卵+牛乳」の3つで焼けるブッシュ・ド・ノエル とはいえ、「生地が割れてうまく巻けない」「パサパサする」「計量がめんどくさい」といった声もあるので、皆さんがより簡単に、失敗のないようレシピを考案してみました。生地はホットケーキミックス(HM)、卵1個、牛乳の3つでOKです。 今回使ったのは日清製粉welnaの「ホットケーキミックス 国産米粉入り」 伊藤仁美シェフ考案の簡単ブッシュ・ド・ノエルの作り方 【材料(20cm四方の天板1枚分)】 <生地> ホットケーキミックス 100g牛乳 130cc卵 1個(卵黄と卵白に分ける) <クリーム> 生クリーム 200ccチョコレート 130gミント 片手にひとつかみ(みじん切りに) <生地に塗るシロップ> 水 100cc砂糖 20gラム酒 25ccミント 片手にひとつかみ <飾り用> イチゴ 適量粉砂糖 適量 【作り方】 1. オーブンを200℃に温めておきます。 2. 卵黄、ホットケーキミックス、牛乳を混ぜます。 3. 卵白を泡立てます。写真のように泡の粒が粗い状態でOK。②と混ぜます。 4. 天板にクッキングシートを敷いて、生地を流し込み、200℃のオーブンで10分焼きます。 5. 焼けたら、ラップをかけて生地を休ませます。 6. ミントシロップを作ります。水、砂糖、ラム酒を鍋に入れ、砂糖を完全に煮溶かした後、ミントを入れて冷まします。 7. 生クリームをツノがピンと立つくらいまで泡立て、みじん切りにしたミント(⑥のミントとは別のフレッシュのもの)を混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておきます。 8. チョコレートを湯煎で溶かします。 9. 生クリームとチョコレートを混ぜ合わせます。 【Point!】口溶けのよいチョコクリームにするコツは、温度がポイントです。チョコレートは100℃のお湯で湯煎した「熱々」の状態。一方、生クリームは冷蔵庫で冷やした「冷々」の状態であることが大事です。【NG!】●チョコの温度が低いと、生クリームに入れたときに、チョコが冷え固まって「チョコチップ状態になります。●生クリームが冷えていないと、チョコレートを入れたときに、生クリームがだれて、ドロドロになってしまいます。ですから、必ずチョコは熱々! 生クリームは冷々! でスピーディーに混ぜましょう。 10. 生地にチョコクリームを塗ります。 11. イチゴをカットして、生地の端から3〜4列並べます。生地全体にイチゴを並べると生地が巻けないので、3〜4列に留めます。イチゴを並べた上にもクリームをのせます。残ったクリームはデコレーションに使うので、冷蔵庫に入れておきましょう。 12. 生地を巻きます。紙の端っこを持って、向こう側(自分とは反対)へ倒すように巻きます。さらに、生地が向こう側へ転がるように紙で包みながら巻き、紙の上から軽く押さえて形を整えます。 13.ラップで巻き、巻き終わりを下にして冷蔵庫で15〜20分休ませます。 14. 冷えたら片方の端っこを5cm程度、斜めにカットします。カットした両方とも、⑥のミントシロップをたっぷり生地に塗ります。 【Point!】たっぷり生地に染み込ませるようにミントシロップを塗るのが、生地がパサつかないポイントです。 15. 写真のようにケーキの土台を組み立て、残りのチョコレートクリームを上からかけて、ナイフなどでならします。薪をかたどったケーキなので、クリームを塗った筋が残っても大丈夫。ざっくり塗ればOKです。 【料理の豆知識!】ショートケーキなどは跡がつかないようにクリームを塗る技術が必要です。「ナッペ」という技ですが、練習に練習を重ねて習得するパティシエの基本の技。ですから、初めてケーキ作りをする人がきれいに仕上がらなくて当たり前なのです。その点、ブッシュ・ド・ノエルはナッペの技が必要ないので、初心者におすすめです。 16. 器に乗せて、粉砂糖をふり、イチゴを飾って完成。ですが、ここでもう一技いれることで、見違えるように美しいケーキになるので、もうひと頑張り! 飴細工のふわふわ「シュクレフィレ(糸あめ)」を作ってみましょう。シュクレフィレを作る時は、周辺にアメが飛ぶので、作業台の周りを片付けておきましょう。 17. 砂糖と水を混ぜ、左の写真のようにスプーンで線を引けるくらいのとろみにします。加熱して金色になったら、火を止めます。 18.飴を受ける器を用意します。大きめのボウルに菜箸を2本渡しておきます。シュクレフィレを作るのは「構え」が大事。液を振り飛ばしながら細く糸状の飴にしていくので、ボウルから少し離れて行います。 【シュクレフィレの構え】 ・ボウルから50cmほど距離をとり、斜めに構えます。 ・スプーンで液をすくい取り、手を頭の高さまで上げ、鈴をふるように手首を細かく揺らし、ボウルを狙って液を垂らし糸状にしていきます。 19.シュクレフィレを飾ったら、ミントの葉や、あれば金箔を飾るとより華やかです。食べるときはシュクレフィレも一緒に取り分けてくださいね。パリパリとした食感がケーキの美味しいアクセントになります。 今年のクリスマスは、子どもも一緒にブッシュ・ド・ノエル作りを 私のレストランでは、お客さんがお子さんを連れてきた際、「やってみたい人ー?」と聞いてキッチンに招き入れ、シュクレフィレを一緒に作ったりしています。みんな楽しんでチャレンジしてくれ、大人たちも、お子さんが最後の仕上げをしたケーキを嬉しそうに食べてくれます。周りが汚れるのが気にならないように支度をしておけば、子どもでも何回かやっているうちに上手にできるようになります。 今年のクリスマスには、ぜひお子さんも一緒に、ブッシュ・ド・ノエルを作ってみてはいかがでしょうか?
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レシピ・料理
ハーブの香りが決め手! シェフから教わるフレンチ風温野菜でいつもの食卓をグレードアップ
ハーブは加熱しすぎはNG ローズマリーやタイム、オレガノ、ベイリーフなどは香草とも呼ばれるハーブの中でも香りの強い種類で、しばしば肉や魚の臭み消しに使われます。育てやすいのでベランダのプランターなどで栽培している人も多いと思いますが、育てたものの上手に使えないという声も聞こえてきます。料理でよく聞く失敗は、「香りがプンプンして美味しくできない」というもの。 その原因は、入れすぎももちろんありますが、ほとんどの場合は火入れの時間に問題あり。長すぎるのです。ハーブはグツグツ煮てしまうと料理を邪魔するくらい香りが強く出るばかりでなく、漢方薬のような苦味やエグミも出てしまいます。 ハーブの風味を上手に引き出すコツは短時間と油脂分 短時間で風味だけを引き出すのがハーブの鉄則です。それには油脂分がいい働きをします。ハーブの香り成分は脂に溶け出す性質があるので、バターやオリーブオイルと一緒に火を入れ、短時間で火を止めると、「プンプン」ではなく「フワッ」と香り、食材の持つ臭みを消しながら、相乗効果で美味しさが倍増します。 フランス料理では加熱処理のことを「キュイソン」といいます。煮たり、焼いたりといった料理の「基本のき」を指すほか、素材を煮る液体、つまり煮汁のこともキュイソンといいます。今回はハーブの香りをつけたキュイソンで野菜を煮て、温野菜を作ってみましょう。野菜にも独特の香りがあり、特定の香りを苦手とする人もいますが、このハーブの煮汁を使うと、とても食べやすくなります。水だけだと香りが思うように移りませんので、バターを入れた水で煮るのがポイントです。 ハーブの風味を移した温野菜とビーフのワンディッシュ 【材料】 ハーブ(1種類でもOKです) 野菜類 ベーコン 水 300ml バター 30g 牛肉(かたまり) 200g(市販のローストビーフでもOK) バルサミコソース 塩、コショウ少々 【作り方】 まずハーブ風味の煮汁を作ります。先ほどもお話ししたように、ハーブの香りは油脂分に溶け出すので、水にバター、塩とともにハーブを入れて沸かし、沸騰したら火を止めます。今回、私はベイリーフ、オレガノ、ローズマリー、タイムをそれぞれ異なる鍋に入れ、4種のキュイソンを作ります。 野菜を下茹でします。電子レンジでもOK。 ①の中に②を入れて浸し、人肌程度に冷めるまでそのままにします。冷めていくときに風味がしっかり入っていきます。それぞれの香りに合わせて野菜を組み合わせましたが、これはなかなか手間がかかりますので、もちろん1種類のハーブのキュイソンにすべての野菜を浸しても構いません。上の写真の組み合わせはおすすめですよ。 バルサミコ酢を煮詰めてバルサミコソースを作ります。 (動画参照)https://gardenstory.jp/lifestyle/70160 牛肉をかたまりのまま表面を全面焼き、中をレアに仕上げます。 肉は室温に戻しておきます。表面に塩・コショウをすりこみ、油をフライパンに引き、中火で全体に焼き色がつくまで焼きます。焼き色がついたらアルミホイルに包んで10分程度ねかせ、スライスします。 野菜と牛肉を皿に盛り付け、バルサミコソースをかけて完成。ハーブ風味の野菜がフワッと香り、お肉もすっきり食べられます。面倒でなければ、野菜ごとに違うハーブの風味をつけると、口に入れるたびに「おっ!」という発見があり楽しいですよ。 ローズマリー風味のジャガイモポタージュ・ベーコンホイップクリームのせ 秋冬はポタージュが美味しい季節です。ジャガイモとポロネギの「ポタージュ・ボンヌ・ファム」は、フランス家庭料理の最も基本的なポタージュ。ローズマリー風味にして、ベーコンホイップクリームをのせると、おしゃれに仕上がります。 【材料】 ジャガイモ 200g 長ネギ 50g バター 50g 砂糖 12g 水 600ml 塩少々 オリーブオイル 150〜200ml ローズマリー 枝先5〜6cmを1〜2本 ベーコン 少々 生クリーム 100ml 【作り方】 オリーブオイルを温め、ローズマリーを入れて香りを出します。 ジャガイモをイチョウ切りに、長ネギはみじん切りにし、①のオリーブオイルで炒めます。 水と砂糖、塩を入れ、ジャガイモに火が通るまで煮ます。煮えたら裏ごしします。ミキサーを使うと、グルテンが出て舌触りが悪くなるので、木べらなどで裏ごしします。 ベーコンを炒めて小さく刻みます。 生クリームを泡立て、ベーコンを混ぜます。 器によそったポタージュに、ベーコンホイップクリームをのせていただきます。このベーコンホイップクリームは、パンにつけても美味しいですよ。 テラスで育てる小さなハーブガーデン 庭でもハーブを育てていますが、キッチンから近いテラスでもハーブが摘めたら便利だなと思っていたところ、ベジトラグシリーズの「ハーブプランター」を紹介してもらいました。プランターと数種類のハーブ苗、土、肥料、土回収キットと育て方レシピがセットになっているので、初心者でも始めようと思ったらすぐに開始できて便利です。 組み立て式で、内側が8つの小さな部屋に分かれており、添付の不織布の袋をセットし、その中に培養土を入れて苗を植えます。生育旺盛なハーブですが、小部屋の中では根の生育が限られるため、一つひとつが程よくコンパクトに育ち、いろいろなハーブを育てられます。 テーブルほどの高さなので、立ったまま作業ができ、水をやったり摘み取るのにも楽です。料理によく使うチャイブやフェンネルを育てていますが、しゃがまずにハーブの様子が見られるので、お客さんの目も楽しませてくれています。そのうちハーブティーに使えるミントやカモミールなども植えたいです。香りを確かめながらお客さん自身に好きなものを摘んでもらい、お茶をお出ししたりするのもいいなぁと夢をふくらませているところです。
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レシピ・料理
フレンチレストランのエッセンスを家庭料理に。シェフが教えるハーブの正しい使い方
フランス料理に欠かせないハーブ「エストラゴン」 エストラゴンはフランス料理で最もよく使われるハーブの一つです。タラゴンとかフレンチタラゴンとも呼ばれ、スパイスの瓶詰めを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。スパイスといってもそれほど強い香りではなく、ほんのり甘やかな独特の香りをもち、牛乳やバターなどの乳製品との相性が抜群。タラゴンを入れることで、ミルク独特の「乳臭さ」が消え、上品な風味に仕上がります。フランス料理では生クリームやバターを使うことが多いので、エストラゴンの登場率も高いのです。 パイ包みを簡単にしたハーブのクルート リヨンに、シェフとして初めてレジオンドヌール勲章(*)を受賞したポール・ボギューズの店があります。三つ星の常連レストランですが、ここの看板料理に「ルウ・アン・クルート」というスズキのパイ包みがあります。パイ包みは日本ではあまり馴染みのない料理かもしれませんが、クラシックなフランス料理の定番。私がフランス料理の基礎を学んだリヨンの学校では、必ずこの料理を習います。ポール・ボギューズの日本支店で料理長を任されるようになってからも、お客様からリクエストされ何度も作った大人気の料理です。そんな三つ星レストランの料理のエッセンスを、ご家庭でできるように考えてみました。それがこの簡単クルート。クルートとはフランス語で「かぶせる」という意味です。 (*)レジオンドヌール勲章/ナポレオン・ボナパルトによって制定されたフランスの栄典。ポール・ボギューズ氏は現代フランス料理を築き上げた功績が高く評価され1975年に受勲。 ハーブの簡単クルートの作り方 パイ包みのパイの代わりに、アーモンドパウダーとバター、ハーブを混ぜ合わせた生地を作り、魚や肉の上にのせて焼きます。パイの「サクサク、パリパリ」という食感が、「ザクザク、ホロリ」に変わる感じでしょうか。やや食感が異なりますが、これはこれですごく美味しいのです。そしてなんといっても、パイ生地より断然簡単で失敗がなく、短時間でできるのがよいところ。エストラゴン、パセリ、チャイブ、フェンネルの4種のハーブを使います。全部揃わなくてもかまいませんが、何はなくともエストラゴンは必須です。 【材料】 無塩バター 50g(室温で柔らかくする) アーモンドパウダー 50g 塩 2g ハーブ(エストラゴン、パセリ、チャイブ、フェンネル)を刻んだもの 3g 白身魚か肉(表面だけソテーする) 【作り方】 材料を全部合わせ、上の写真のように滑らかになるまでヘラで混ぜます。 オーブンシートに挟んで、厚みが1cm弱くらいになるよう平らにならし、冷凍庫で固めます。オーブンを230℃くらいに温めておきます。 生地が固まったら包丁で切れ目を入れ、表面をソテーしておいた魚か肉の上にかぶせます。温めておいたオーブンに入れ、表面が色付くまで焼きます。オーブンによりますが、大体5〜10分程度。 口に入れた瞬間は生地のザクザクという食感が楽しく、口の中でバターが溶けて食材と一体となり、喉を通った後にハーブの香りが鼻からほんのり抜けます。シンプルで素朴な見た目ながら、一品でとても印象深い料理です。ムニエルやローストビーフに飽きたら、ぜひクルートをお試しください。バターのコクが加わるので、肉なら赤身肉などあまり脂のない淡白なものが合います。魚は白身魚なら何でも合いますので、季節によって旬のものを合わせてみてくださいね。生地は冷凍庫で保存できるので、作っておくと急な来客時にも重宝します。 エストラゴンひとつまみで高級レストランの味に早変わり エストラゴンの魅力を最も簡単に知ることができるのはクリームシチュー。フランス料理では「フリカッセ」という生クリームを使ったシチューに似た料理がありますが、今回はエストラゴンの実力試しに、市販のルーを使ってクリームシチューを作ってみましょう。 ルーの箱の裏に書いてある通りにシチューを作ります。そして、最後の仕上げにエストラゴンを入れるとアラ不思議、高級レストランの味。エストラゴンを入れる前と後とで、ぜひ味比べをしてみてください。「こんな簡単なことで?!」と誰もが驚くくらい、面白いように味が変わります。ただし、ポイントが一つ。エストラゴンを入れるタイミングを間違わないでください。 料理に使うフレッシュハーブはグツグツ煮ないのがポイント エストラゴンを入れるタイミングは、調理の最後です。肉や野菜に火が通り、ルーが煮溶けてきて火を止める直前に、エストラゴンを入れます。入れたらすぐに火を止めましょう。それで十分クリームシチューにエストラゴンの風味が付きます。逆に、最初からエストラゴンを入れてグツグツ煮てしまうのは絶対にNG。エストラゴンに限らず、ハーブは「味」ではなく「風味づけ」「香りづけ」に用います。必要以上に加熱するとエグ味や苦味が出て、かえって料理を台無しにしてしまいます。ハーブにはさまざまな薬効がありますから、そのエグ味や苦味というのは漢方薬のそれに近いかもしれませんね。料理ではあくまでも風味をのせるだけ。しかし、それだけで料理を格段に美味しくしてくれるのが、ハーブのすごいところなのです。 エストラゴンを入れる量は、2人分のシチューで枝先3〜4cmを1〜2本くらいです。季節によってもエストラゴンの香りの強さが変わりますので、指でこすって香りを確認して、最初は少なめの量から調整するといいですよ。 のせて焼くだけで何でも絶品! パセリのエスカルゴバター パセリもフランス料理ではよく登場するハーブで、主に臭み消しの役目を果たします。パリは内陸にあり、昔は食材の鮮度を保つのがどうしても難しかったため、鮮度が落ちても美味しく食べる方法としてソースの文化が発達しました。パセリをふんだんに使ったエスカルゴバターは、まさにそんなハーブバターソースです。フランスでは食用のカタツムリを食しますが、それに欠かせないのがエスカルゴバター。グルヌイユと呼ばれるカエル料理にも欠かせないソースです。カタツムリ?! カエル?! と思われるかもしれませんが、フランスではとても人気の料理です。でも、日本ではカタツムリもカエルも手に入りにくいので、貝類を使って作ってみましょう。 【材料】 <エスカルゴバター> 無塩バター 225g パセリ 50g 玉ねぎ 20g ニンニク 10g 塩 2g <エスカルゴの代わりの具材(人数分適量)> 貝類(冷凍アサリなど何でもOK) 竹の子の角切りを加えると歯触りが楽しくなります 【作り方】 <エスカルゴバター> バターを室温に戻します。 パセリ、ニンニク、玉ねぎをみじん切りにします。 エスカルゴバターの材料を全て混ぜ合わせます。 ラップに包んで円筒状にし、冷凍保存します。使うときは包丁でカットして使います。 <具材を入れてからの工程> オーブンを200℃に温めます。耐熱皿に具材を入れ、エスカルゴバターを厚み1cmくらいに切って具材の上にまんべんなくのせます。10〜15分焼いて完成です。このココット皿はじつは100円ショップ。一口サイズでお酒のおつまみにぴったりです。 ハーブが育つユンヌ・フルールの庭 19歳の頃、フランスのレストランで料理修行を始めた新米の私の仕事は、毎朝、料理に使うハーブを庭から摘んでくることでした。朝露のついたハーブを摘み取ると、とてもいい香りに包まれて、なんとも気分がよかったことを覚えています。いつか自分のレストランを持ったら、こんなふうに庭からハーブを摘んで料理を作りたいなぁと思ったものです。今、ひるがの高原に構えたレストラン「ユンヌ・フルール」で、その夢が叶いました。 じつは2016年にレストランをグランドオープンさせて以降、ずっと一人で庭を開拓してきました。週末のレストランのオープン日以外は、ただひたすらにシャベルで土を掘り返し、道をつけたり、雑草を抜いたり、花を植えたりしていました。ひるがの高原はゲレンデもある降雪地帯で、11月末には雪が積もり始め、多い年は3m近くになります。ですから寒さや雪の重みでダメになる植物も多く、なかなか庭づくりは進まず、ほとんどの時間を土と格闘することに費やしていました。そんなとき、お客さんの一人がガーデンデザイナーの阿部容子さんを紹介してくれたのです。阿部さんに19歳の頃の私のささやかな夢を話すと、「じゃあ、もう土と格闘するのはそろそろ終わりにして、料理に使えるハーブや果実をたくさん植えよう」と言ってくれました。 今年の春、庭は見違えるように美しくなりました。砂利の小径を挟んでテラス側には広い芝生のエリアを設け、もう一方はタイムやオレガノ、チャイブ、ワイルドストロベリー、カモミールなどのハーブや、料理に使えるルバーブやレッドカラントなどが植わった花壇になっています。雪解け水を循環させた小川の周辺には、クレソンも育っています。庭からハーブを摘んで料理ができるのは、本当に幸せ。 阿部さんは時折面白いハーブを持ってきてくれて、 「ひとみちゃん、ここにコーラプラント(アルテミシアというハーブ)を植えておくから、これで美味しい料理を作ってみてよ」 なんてお題を出してくれます。私はそれに応えて、レシピを考えるのが楽しくて仕方ありません。一緒に苗を植えたり、手入れを教わったりしながら、ようやくガーデニングらしいガーデニングができるようになりました。 でも、ただひたすら土と格闘した6年間も、私には大事な時間です。 「ユンヌ・フルール」以前、私は東京のレストランで働いていました。当時、30代で女性の私が、料理長を任されるのは異例のことだったと思います。政府要人や各界のお客様をもてなすレストランで料理長を務める日々は、とても刺激的で楽しく勉強になり、多くの貴重な出会いや体験をさせてくれたと本当に感謝しています。誰かの晴れの日の席もあれば、誰かを偲ぶ席もありましたが、どんな人も私の料理を食べてお腹がいっぱいになると、笑顔になってくれました。その笑顔が私の原動力でした。しかし、仕事に没頭するあまり、私は自分の身体や心の声に耳を傾けなさすぎました。 心も体も元気になれるレストランに 身体をこわして東京を離れざるを得なくなり、料理ができなくなってしまった私は途方にくれました。料理は私のすべてであり、料理人であることが私のアイデンティティを支えてきたからです。しばらく静養をして、この先どうするのかということを考えられるようになった頃に、ひるがの高原に「ユンヌ・フルール」を持ちました。 レストランの営業は週末のみにして、ゆるゆると仕事を再開しましたが、とにかく庭はどうにかしなければなりませんでした。林に囲まれたこの場所では、誰も手を入れない庭は、自然に還ろうと次々に草が生えてくるのです。草を抜き、土を掘り返すと、不思議なことに深い安心感に包まれました。梢を渡る風の音や鳥のさえずり、土の匂い、草いきれ、日の光、季節や時間ごとに変わる空気。ひるがの高原の自然は、限りなく私を癒やしてくれました。この場所で、庭をつくり土に触れることは、私にとって、そして私の料理にも今やなくてはならないものです。この澄んだ空気の中で、私の身体の感覚は研ぎ澄まされ、今までとは料理が確実に変わっているのが実感できます。 そして、阿部さんが私のガーデニングの手ほどきをしてくれるおかげで、私のハーブの知識もフランス料理に限らず広がりつつあります。もっとハーブの持つ効用を勉強して、食後にお客さん一人ひとりの体調にぴったり合うフレッシュハーブティーを出せたらというのが目下の目標です。私のご飯を食べて笑顔になって、心も身体も元気になって帰ってくれたら、こんなに嬉しいことはないなと思うのです。
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秋はナス! おうちフレンチで新美味発見ナスレシピ[Garden to Table]③ナス
肉にも魚介にも合うナスのコンポート⁈ 「コンポート・ドーベルジーヌ」とは、日本語に訳すと、ナスのコンポート。コンポートというのは果物の砂糖煮のことですが、ジャムのように正体がなくなるほどには煮詰めず、食感や風味が残っていて、砂糖もジャムより控えめという、フランスの伝統的な調理方法です。オーベルジーヌはナス。フランス語のリエゾンという発音の関係で「ド・オーベルジーヌ」がつながって「コンポート・ドーベルジーヌ」。ナスのコンポート⁈ と驚くかもしれませんが、私の店ではよくフォアグラと合わせてお出しします。「ナスですよ」と言わなければ皆さんそれと気が付きませんが、肉にも魚介類にもぴったり。というより、肉も魚介もいつもよりパクパク食べてしまえる素晴らしい付け合わせです。美味しいのはもちろん、何にでも合い、そして簡単、さらに保存も可。ぜひナスの美味しいこの季節に作ってみてくださいね。 ナスのコンポートの作り方 ナスのコンポートは皮を全部むいてから調理するので、採りどきをちょっと過ぎてしまい、皮が硬くなってしまったナスでもOK。冷凍保存できるので、家庭菜園でナスを作っていて採れて採れて困る、という方にもおすすめ。これを合わせるだけで、ちょっと手の込んだおしゃれな一品に仕上がりますよ。 <材料> ナス 1本 *塩 1つまみ(3本指でつかんだくらい) *レモン汁 20〜25g(だいたいレモン半個分) 【A】 水 80g 砂糖 15g 塩 3g レモン汁 5g バター 8g <作り方> ナスの皮をむきます。 1cm角くらいにカットし、ボウルに水を張り(分量外)、*を入れてアク抜きをします。10〜15分くらいすると水が濁ってきます。 水を切って鍋にナスを入れ、【A】と合わせて10分ほど中火で煮て汁気がなくなってきたら完成。 豚肉とナスのコンポート ナスのコンポートを豚肉の下に敷き詰めます。トロッとして、まろやかで甘酸っぱいコンポートが、豚の脂や旨味をさっぱりと飽きることなく味あわせてくれる一品です。 <材料>(人数に合わせて量を調整してください) ナスのコンポート 豚肉(部位はどこでも可) オリーブオイル トマト ドレッシング(何でも) 塩・こしょう 少々 <作り方> 豚肉に塩・こしょうを振り、オリーブオイルで焼きます。 トマトを5mm角くらいにカットし、ドレッシングと合わせます。 ナスのコンポートを下に敷き、豚肉を乗せ、トマトを散らして完成。 ホタテとナスのコンポート ホタテのような、わりと淡白なものにも、ナスのコンポートはよく合います。酸味や甘み、食感をプラスして、複雑な味わいにするのにもナスのコンポートは活躍します。塩味は生ハムで。 <材料>(人数に合わせて量を調整してください) ナスのコンポート ホタテ 生ハム バルサミコソース(『夏の野菜ルバーブのジャム以外のレシピ[Garden to Table]予約の取れないシェフが教えるガーデンレシピ ①ルバーブ』を参照) オリーブオイル <作り方> ホタテをオリーブオイルで焼きます。半生くらいでOK。 ナスを下に敷き、ホタテをのせ、一口大にした生ハムをのせ、バルサミコソースをかけて完成。 ナスのコンポートのポイント ナスはアクの強い野菜の一つです。アクというのは野菜の持っている渋みや苦味。調理方法によっては必ずしもアク抜きは必要ではありませんが、今回はアク抜きが美味しさのポイントです。旬のナスは果肉が水々しく、火を通すとトロッと柔らかくなり、まるで熟した果物のよう。アク抜きをするとその果物感がアップし、肉や魚介との相性が抜群になります。また、アク抜きをしたほうが果肉の青緑色が美しく仕上がります。皮は青色色素を含んでおり、他の食材を青く染めてしまうので、付け合わせに使うコンポートの場合は皮をむきます。 フランスの家庭料理ラタトゥイユを美味しく作る方法 ナスを使ったフランスの伝統的な家庭料理を、もう一品ご紹介しましょう。ラタトゥイユはフランス南部プロヴァンス地方を代表する野菜の煮込み料理です。しばしば、鍋でグツグツ煮て野菜のごった煮のようになっているのを見かけますが、もっとずっと洗練されて美味しく仕上げる方法があります。ポイントは使う野菜の火入れにあります。 ラタトゥイユはグツグツ煮ないのがコツ ラタトゥイユにはトマト、ナス、ズッキーニ、パプリカ、タマネギを使いますが、この中でしばらく煮る必要があるのはトマトだけ。前回の記事でもお話ししましたが、トマトは旨味のもととなるグルタミン酸を多く含んでおり、その旨味と塩味、オリーブオイルなどの調味料をしっかりなじませ、味を決めるために、ある程度の時間火を入れる必要があります。しかし、トマトの旨味を引き出すのに合わせて他の野菜も煮てしまうと、ほとんど全部が煮溶けてしまいます。それはとてももったいない。ナスのトロッとした食感や味わい、ズッキーニの軽快な歯触り、パプリカの甘酸っぱさなど、それぞれの食感や味わいを活かしたほうが美味しくできます。 野菜を油通しで作るラタトゥイユ そこで活躍するのが、前回ご紹介したトマトソースです。味がしっかり出来上がっているこのトマトソースを使えば、かなり時短でラタトゥイユができます。このトマトソースはラタトゥイユだけでなく、あらゆる料理に汎用できますので、ぜひ時間がある時に作って冷凍保存しておくと、普段の料理がグッと楽になります。他の野菜は角切りにして油通しします。 *トマトソースの作り方はこちら 「油通し」は「揚げ」より低い温度で行う調理工程のひとつで、短い時間で食材に火を通すことで旨味を閉じ込め、煮崩れしにくく、色を鮮やかに残し、食感もよくするなどいくつものメリットがあります。油の温度は160〜180℃。表面が軽く色づいたり、膜が張ったら引き上げます。 美味しいラタトゥイユの作り方 <材料> ナス 1本 玉ねぎ 1/2個 パプリカ(赤・黄) 各1/2個ずつ ズッキーニ 1本 トマトソース 200g 水 50cc 油 <作り方> 野菜を全部2cm角くらいにカットして160〜180℃で油通しします。 トマトソースを鍋に入れ、水を足して温めます。 温めたトマトソースに油通しした野菜を入れ、3〜5分煮て完成です。煮る時間が長くなれば野菜がより柔らかくなるので、お好みの固さで火を止めてください。 ラタトゥイユと卵のお洒落な前菜 フランスでは、ラタトゥイユにポーチドエッグをのせた料理も定番です。トロッとした半熟卵の黄身と野菜の味わいが濃厚で、そのまま食べても美味しいし、パンにのせて食べるのもおすすめ。ラタトゥイユは冷やしても美味しく食べられます。何か型に入れて冷やすと、整形しやすく見た目もきれいに仕上がります。卵の上にかかっているのは、マヨネーズを少量の牛乳で溶いたマヨネーズソース。味が複雑になり満足度の高い一皿になりますよ。 保存料理が伝統的なフランス料理の基本 今回ご紹介したナスのコンポートやラタトゥイユに登場したトマトソースなどは、冷凍や瓶詰めで保存してさまざまな料理に展開できるので、旬の時期にたくさん作っておくと便利です。伝統的なフランス料理の歴史は、保存の歴史でもあります。フランス料理を代表するさまざまなソースも、冷蔵技術がなかった時代に劣化の進む食材をいかに美味しく食べさせるかということから発展しました。食材を大切に、美味しくいただくというのは料理の基本であり、そうして作られた一皿は心を満たすものでもあります。それはレストランであろうが、家庭の食卓であろうが同じ。フランス料理は決して敷居の高いものではなく、家庭でもできる知恵がいっぱい詰まった料理文化です。これからも、そんなフランス料理の知恵と工夫を皆様にお届けしていきますね。
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トマトの万能保存レシピ!なんでも美味しくなる魔法のトマトソースとトマトの透明ダシ[Garden to Table]②トマト
旬のトマトは昆布に匹敵する旨み さまざまな夏野菜が旬を迎える季節です。旬の素材は、料理の美味しさを左右する大事な要素。というわけで、旬の野菜を使って、私はさまざまな料理に使う野菜のソースを1週間かけて1年分、どっさり作ります。トマトソースもその一つ。トマトは「旨み」に大変優れた素材で、旨みのもととなるグルタミン酸という成分を、昆布に匹敵するくらい豊富に含んでいます。実際、私のレストランではこのトマトソースを料理のダシとして使うことも多く、あらゆる料理に重宝する調味料にもなります。グルタミン酸は完熟するにつれ増加するので、今まさに旬の完熟トマトを使うのがポイントです。 基本のトマトソース まずは、あらゆる料理に重宝する基本のトマトソースをご紹介します。作り方はとても簡単。ポイントはいつ調味料を入れるか、ということだけです。意外かもしれませんが、料理は素材の変化による化学です。その化学現象の一つに乳化(エマルジョン)があります。本来分離している素材を均一に混ざり合わせることをいい、味の一体感によって新たな美味しさを生み出す重要な工程です。簡単なものでは、ドレッシングをかける前にボトルを振るのが乳化の工程。あれをしないでサラダなどにかけたら、油っぽさが浮き立ち、塩分も悪目立ちして全然美味しくありませんよね。トマトソースを作る際は、すべての調味料を最初から入れて煮詰めることで乳化させます。とても単純なことですが、最初から入れるか、後から入れるかでは味に雲泥の差が出ます。ちなみに、このトマトソースはさまざまな料理に使う基本のソースなので、ハーブなどは入れずに作ります。ハーブは料理ごとに必要に応じて使いますが、ハーブを使う際は、グツグツ煮ないのがポイント。ハーブの上手な使い方は、また別の回でご紹介しましょう。 <材料> トマト 300g 塩 5g オリーブオイル 20g 砂糖 10g <作り方> トマトを生で皮付きのままミキサーにかけ、ピューレ状にします。 ボウルにざるを重ね、①を入れて攪拌器でかき混ぜると、ざるにタネと皮が残り、ボウルのほうへトマトがこされます。 こしたトマトを鍋に移し、調味料を全て入れて、20〜30分弱火で煮詰めます。煮詰めることで素材が乳化します。 <保存方法> 氷を作るケースにソースを流し込んで冷凍しておくと、1個ずつ取り出して使えて便利です。 トマトソースキューブを使った超簡単カッペリーニ このトマトソースはこれだけでしっかり旨みも塩味もあるので、茹でたパスタと絡めるだけで美味しい一品になります。冷凍してあるので、夏は冷たいカッペリーニがおすすめ。また、レトルトのミートソースやハヤシライスなどにポンと1つ入れるだけでも、格段に味がアップしますよ。 <材料一人分> パスタ 約70g トマトソースキューブ 1個 生ハム 2枚 ルッコラやバジルなど 適宜 <作り方> パスタを茹でて冷水で締め、水気をよく切り、トマトソースと絡めて生ハムやルッコラをのせるだけ。カッペリーニがない場合は、そうめんでも同じようにできますよ。 旨みたっぷりトマトの透明ダシ トマト料理というと、全部赤色になってしまい、どの料理もビジュアルが同じ印象になってしまいがち。でも、トマトピューレをクッキングペーパーでこすと、不思議なことに透明の液体になります。味はトマトソース同様、旨味がたっぷりですが、透明なので、言われなければトマトを使っているとは思わない意外なビジュアルに仕上げることができます。クッキングペーパーのほうにはカスしか残らないようにきっちり絞ります。クッキングペーパーにはさまざまな種類がありますが、液体をこすにはフェルト生地風の厚みのあるペーパーが向いています。紙っぽいクッキングペーパーでは破れたり、こせなかったりします。 <作り方> トマトを皮ごとミキサーにかけ、ピューレにします。 ボウルにざるを重ね、リードクッキングペーパーを敷き、①を入れます。ラップを敷き、水を入れたカップなどで重しをします。 透明のトマトエキスがボウルにこされます。トマトソースの時と同様、冷凍で保存します。 魚介と夏野菜のトマトゼリーがけ トマトの透明ダシは魚介類との相性が抜群です。ゼリーにして魚介類と合わせると、つるんと食べやすく夏にぴったりです。私のレストランでは、この辺りの特産の鮎と合わせたスープにしたりしますが、赤色にならないので、お客様にトマトを使っているとお話しすると皆さん驚かれます。こういうサプライズも食事を楽しくする大事なエッセンス。トマトは大人も子どももよく知っている野菜ですから、その意外な変身に、ご家庭の食卓も盛り上がるはずです。 <材料> トマトの透明ダシ ゼラチン(分量は使用するゼラチンの使用方法に従ってご用意ください) 塩とレモン汁 少々 お刺身の盛り合わせ(何でも) 夏野菜何でも(オクラや枝豆、トウモロコシ、ズッキーニなどなら茹でて。トマトやキュウリは角切りするだけでOK) <作り方> トマトの透明ダシに塩とレモンを少々入れて温め、ゼラチンを溶かして冷やし固めます。 お刺身と夏野菜を皿に盛り付け、冷やし固めたトマトゼリーをクラッシュしてかければ完成。あればケッパーや玉ねぎ、ミョウガを刻んで合わせていただくと味にキレが出ます。 みんな大好き! トマトのシャーベットカクテル フレッシュなトマトの美味しさを味わうレシピもご紹介しましょう。このトマトのシャーベットカクテルは、私のレストランで実際に前菜としてお出ししている一品で、子どもから大人まで、なんならトマト嫌いの方も大好きです。シャーベットというとデザートのようなイメージですが、暑い夏にはまず初めにお出しして涼しくなっていただきます。3層になった、ちょっとリッチな味わいのカクテルです。 <材料> 1段目/トマトシャーベット トマトの皮とタネをこしたピューレ(トマトソースの作り方の②の状態) 塩とレモン汁少々 2段目/トマトのスープサラダ トマト 50g レモン汁 5g 塩 少々 ハチミツ 10g 3段目/ヨーグルトムース 水切りヨーグルト 大さじ3 生クリームを泡立てたもの 大さじ1 グラニュー糖 小さじ1 レモン汁 少々 <作り方> シャーベットの材料を混ぜ合わせ、冷凍庫で冷やし固めます。 ムースの材料を全て混ぜ合わせます。ヨーグルトは写真くらいになるまで水を切り、他の材料と混ぜ合わせておきます。 トマトのスープサラダはトマトを湯むきして角切りにし、レモン汁、塩、ハチミツと混ぜ合わせておくと、水分が出てスープっぽくなります。 グラスなどの器にヨーグルトムース、トマトのスープサラダ、トマトシャーベットの順でよそい、完成。あれば上にオレガノなどの葉を飾るとキレイです。 私のレストランは私一人しかスタッフがいませんが、ご家庭のキッチンにも助手がいるなんてことはまずないと思いますので、今回ご紹介したようなソースの冷凍保存は重宝するはずです。いろいろな料理に展開できますし、手軽に美味しい一品ができるのがいいところ。トマトはダシとして考えると、とても汎用性の高い素材です。家庭菜園でトマトを作っている方は、完熟トマトがたくさん採れる時期だと思うので、ぜひ旬のトマトを生かして作ってみてください。
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レシピ・料理
夏の野菜ルバーブのジャム以外のレシピ[Garden to Table]予約の取れないシェフが教えるガーデンレシピ ①ルバーブ
ハーブや果実が育つ庭のあるフランス料理店「ユンヌ・フルール」 読者のみなさん、はじめまして。「ユンヌ・フルール」のシェフ伊藤仁美です。私が作る料理は、クラシックなフランス料理です。というと、しばしば敷居が高い、と思われがちですが、私はもっとリラックスしてフランス料理を味わっていただきたくて、7年前に岐阜県のひるがの高原という場所にレストランを開きました。 ユンヌ・フルールには森に囲まれた小さな庭があり、タイムやベルガモット、チャイブ、グロゼイユ(赤スグリ)など、たくさんのハーブや果実が実ります。庭の中を流れる小川の側では、クレソンがわさわさ育っています。お客様には、お食事の前後に散策したり、庭をのぞむテラスでゆっくり過ごしていただいています。庭の真ん中に設けた芝生広場は、大人の話に退屈した子どもたちの格好の遊び場です。走り回ったり、寝転んだり、花壇のワイルドストロベリーをつまんだり。大人もテラスの上からそんな姿を眺めてニコニコ。私の一番好きな風景です。そして、この庭で育つハーブや果実を自分の手で摘んで料理できることも、シェフとしてこのうえない幸せです。「Garden to Table(庭から食卓へ)」の素晴らしさは、私がフランス修行時代に体験したものであり、ずっと憧れでもありました。そんなフランスでの話も、いずれご紹介したいと思います。 丈夫で何年もよく育つルバーブ さて、第1回目のテーマは、ルバーブです。フランスでは「リュバーブ」と言っていましたが、フキのように太い茎を食べる野菜です。茎には赤いものと緑のものがありますが、ユンヌ・フルールの庭では、フランスでよく食べられている赤い茎のほうを育てています。原産地はシベリアで、この高原の気候はとても合っているようです。じつは「タデ食う虫も好き好き」のタデの仲間。気候さえ合えば丈夫に育ち、宿根して翌年以降も収穫が楽しめます。栽培には苦労しませんが、もぎ取る時にちょっとしたコツが必要です。株元からクルッと回して折り取るようにすると、きれいにもぎ取れます。切り口が粗かったり汚いと、そこからウイルスが入って病気になることがあるので注意が必要です。なかなかスーパーでは売っていない野菜なので、庭や畑があれば栽培をおすすめします。育てるのが難しい人には、名産地の長野県富士見町から生産物を購入できるので、そちらの販売情報も後述しますね。 ジャムだけじゃない! いろいろな料理に展開できるルバーブのコンポート ルバーブの特徴は、なんといってもこの美しい赤色と酸味。加熱するとすぐにとろけて鮮やかな赤色が染み出します。ジャムにして保存されることが多いですが、甘さ控えめのコンポートにしておくと、前菜やメイン料理、デザートなどいろいろに展開できます。コンポートとは、ジャムと比較して糖度が低めで食材の形状や食感を残した調理方法です。作りたいものによって味の調整が効きますし、冷凍保存をした際に気になる特有の匂いも、加熱すると消えるので、仕上げの一歩手前くらいのコンポートの状態が何かと使い勝手がよいのです。もちろん、瓶詰めでも保存できますが、ちゃんと保存するためには煮沸や脱気など手間がかかるので、保存パックに小分けにして冷凍保存するほうが手軽です。 ルバーブのコンポートの作り方 【材料】 ルバーブ 150g グラニュー糖 20g 白ワイン 30cc 【作り方】 ルバーブの茎の端をカットして、1cmくらいの長さに刻みます。大きな葉っぱはいかにも美味しそうですが、高濃度のシュウ酸を含み毒性があるので、この葉は食べられません。 グラニュー糖と白ワインで①を煮ます。ヘラでときどきかき混ぜ、焦げないように。水分が足りない場合は、少しだけ水を加えます。すぐに煮溶けてきますが、写真のように形が少し残るところで火を止めます。 グラニュー糖を少なめにすることで、料理のベースとして使えます。デザートにする場合には、味をみながらグラニュー糖を加えます。ユンヌ・フルールのレストランでも、この酸味と色を生かしたマカロンやデザートをお出ししていますが、とても人気です。 ルバーブコンポートのせホタテ貝リゾット ルバーブのコンポートは、甘酸っぱく、料理のとてもよいアクセントになってくれます。少し梅肉に似たイメージですが、梅肉ほど塩味がきつくなく、酸味もまろやかで使いやすいです。クリーミーなリゾットとホタテ貝の旨み、甘酸っぱいルバーブコンポート、生ハムの塩味が一体となるよう、一口大にまとめます。コマツナは、素揚げにすると海藻のように半透明になって美しく、パリパリとした食感も楽しい味のアクセントになります。 【材料】(4人分) ルバーブコンポート 大さじ4 ホタテ(刺身用)12個 生ハム 4枚 冷やごはん 100g(一度冷凍すると食感がよくなります) 粉チーズ(パルメザン) 20g 生クリーム 30g コマツナ 8枚(サラダの葉でも代用可) バルサミコ酢(少量) オリーブオイル 【作り方】 冷やごはんと粉チーズ、生クリームを鍋に入れ、チーズが溶けてトロッとするまで温めます。 *リゾット用にもう少し食感がほしい場合は、お米を炊くときに、通常の水の目盛りより2mmほど少なくすると、お米の食感がしっかり残ります。 バルサミコ酢を煮詰め、バルサミコソースを作ります。バルサミコ酢を鍋に入れて強火にかけ、泡だったら火を弱めて焦げないようにかき混ぜます。だんだん泡が小さくなってトロミがついたら完成。テフロン加工の鍋だと完成のタイミングが分かりにくいので、テフロン以外の鍋を使うことをおすすめします。トロミの加減は、下の動画を参考に。 フライパンにオリーブオイルを入れ、ホタテを焼き色がつくまで両面焼きます。ホタテの上にルバーブのコンポートをのせ、一口大にちぎった生ハムをのせます。 コマツナの茎をカットし、葉を素揚げします。120℃の低温の油にコマツナを入れ、温度を上げて水分の泡が出なくなったら取り出します。油の温度が最初から高いと、コマツナを入れたときにバチバチッと油がはねるので、低温で入れます。油の温度が上がってくるとコマツナの水分がどうしてもはねるので、入れたらフタをしておくのがおすすめです。素揚げが難しい場合は、この工程を省いて、サラダの葉を飾りに使ってもOK。 皿に線を描くようにバルサミコソースを敷き、ホタテの土台にするリゾットをのせ、③をその上にのせます。周りにコマツナの素揚げを飾り、完成。 <シェフのコツ! 料理を格上げしてくれる万能バルサミコソース> バルサミコ酢を煮詰めたバルサミコソースは、今回のように魚介にも肉にもデザートにも使える万能ソースです。砂糖も塩も入れず、ただバルサミコ酢を煮詰めるだけですが、酸味が飛んでコクと甘みが増し、驚くほど美味しいソースになります。煮詰めすぎると焦げて苦くなり、固まってしまうので、目を離さないようにしましょう。バルサミコソースは適度な粘度があり、お皿に線を描いたり、料理を美しく仕上げるのにも重宝します。私は1年に1回大量に作っておいて、冷蔵保存しておきます。鍋をのぞきこんだ際に息を吸うと、酢の蒸気でむせるのでご注意を(笑)。 <シェフのコツ!お皿に線を上手に描く便利グッズ> 料理の見た目を華やかにグレードアップしてくれるソースの線。でも、細い線を描くのはなかなか難しいですよね。そんな時は、ノズルを自分でカットして口の細さを調整できるボトルを利用すると便利です。また、線を描くソースはそれなりの粘度が必要なので、上記のバルサミコソースもしっかりトロミがつくまで煮詰めます。 牛肉とルバーブ赤ワインソース風 ルバーブの酸味は肉の脂身ともとても相性がよく、脂を程よく軽やかに感じさせてくれます。普段、お肉はちょっと重いなぁという人も、このルバーブコンポートのソースを使うと、結構ペロリと食べられるから不思議です。今回はフランス料理の基本のソース、赤ワインソースとルバーブソースのダブルソースです。赤ワインソースは、私のレストランでは、地元の猟師さんが丁寧に処理してくれたジビエのシカの骨を煮込んで、最低でも4日以上かけて作るソースです。ここではご家庭用に、市販のルーを活用して3分でできるようアレンジしました。 【材料】(4人分) 牛肉のかたまり肉 200g *牛肉を焼く過程を省略して、市販のローストビーフなどでも代用できます。 ルバーブコンポート 大さじ2(水を入れて少しのばす) 赤ワイン 200g 市販のビーフシチュールー 5g ブランデー(あれば) 小さじ1/2 じゃがいも 1個 牛乳 100g 生クリーム 50g ハーブ類(タイム、オレガノなど) 塩・砂糖 少々 油 【作り方】 牛肉の表面をかたまりのまま全面焼いて、中をレアに仕上げます。 肉は室温に戻しておきます。表面に塩・胡椒をすりこみ、油をフライパンに引き、中火で全体に焼き色がつくまで焼きます。焼き色がついたらアルミホイルに包んで10分程度ねかせ、スライスします。 じゃがいもは皮ごと茹でるか、水に濡らしたペーパータオルでくるみ、その上からラップをして600Wの電子レンジで3〜5分加熱します(竹串などを刺して、固そうなら様子を見ながらさらに加熱します)。中まで火が通ったら、皮を向きスライスします。 ②と牛乳、生クリーム、塩・砂糖少々(2本指でつまむくらい)を鍋に入れ、沸騰しないように軽く煮てから木べらで粗く崩します。ミキサーで混ぜるとグルテンが出て口触りが悪くなるので、木べらで。 赤ワインソースを作ります。赤ワインを煮立て、ビーフシチューのルーを入れ、濃度がついてきたらブランデーを入れて完成。焼肉のタレを少しプラスすると、より黒こしょうや甘味が強い味わいになります。お好みで。 皿に③を敷き、スライスした肉を並べます。赤ワインソースと、ルバーブのコンポートに少し水を加えて濃度を薄めたソースをかけ、ハーブを散らします。特にタイムとの相性がよいので、あれば葉を少しもみながら少量散らしてみてください。ハーブ類は生のままでOKです。 ルバーブコンポートとベーコンのサンドイッチ 手軽にできるのに、複雑な味わいが楽しめるサンドイッチです。ルバーブコンポートはベーコンのような脂や塩気の強い素材にぴったりで、上品な味わいに仕上げてくれます。ちょうどハンバーガーの場合のピクルスのような役割をしてくれます。ガーデンパーティーやBBQパーティーなどにもおすすめです。 【材料】(1人分) 食パン 2枚 ルバーブコンポート 大さじ1 ベーコン 2切れ レタス 2枚 バルサミコソース 小さじ1 マヨネーズ 小さじ1 【作り方】 食パンをトーストします。 ベーコンを焼きます。 レタスをちぎってマヨネーズで和えます。 食パン、ルバーブコンポート、ベーコン、バルサミコソース、レタスを重ね4等分に切り、串を挿して完成。 ルバーブの名産地・長野県富士見町お取り寄せ情報 長野県富士見町は真っ赤なルバーブの名産地です。富士見町のルバーブは、茎の赤色が特に鮮やかな個体から株分けして生産を行い、品質を維持しています。この特別に赤いルバーブは富士見町ルバーブ生産組合員で、かつ富士見町内でのみ生産が許されています。町外の人はこの苗を入手することはできませんが、収穫したルバーブは以下より注文することができます。 富士見町ルバーブ生産組合 https://www.fujimi-aka-rhubarb.jp