皆さんは、ガーデンで時々見かけるオベリスクというアイテムをご存じでしょうか? オベリスクは、植物のつるを絡めて立体的に仕立てることができるので、庭にアクセントを加えたり、華やかさを添えるのにもぴったりなアイテムです。この記事ではオベリスクの概要から選び方のポイント、植物を仕立てる方法などについて解説します。
目次
オベリスクとは
まずは、オベリスクとはどのようなものなのかをご紹介します。
オベリスクの概要
オベリスクとは、もともと古代エジプト時代に神殿の入り口に建てられた記念碑のことですが、日本では、ガーデニングに使われる、つる性植物を絡ませる立体的な支柱を指すことが多いです。上方が細く尖った形状だったり、円柱形のものがよく見られます。オベリスクを設置すれば、小さなスペースでもつるバラやクレマチスなどを誘引して、360度どこからでも花を観賞することができます。
トレリスとの違い
オベリスクと似た用途のガーデニングアイテムにトレリスがありますが、両者にはいくつかの違いがあります。トレリスは、フェンス状になった支柱のことで、格子状だけでなくデザイン性の高いものもあり、つる性植物を絡ませたり、そのままオブジェとして飾ったり、間仕切りとして使うこともできます。トレリスはフェンス状で平面的ですが、オベリスクは円柱形など立体的な形状であることが大きな違いです。
オベリスクにおすすめの植物
オベリスクは、つる性植物を絡ませるための便利なアイテムです。美しい花を咲かせるものを絡ませて育てると見栄えもよく、植物に日が当たりやすい仕立て方です。つる性植物の中でも、クレマチス、アサガオ、トケイソウ、ジャスミンなど、支柱に巻きついて伸びる植物が簡単でおすすめ。自ら巻きつかない植物は誘引して固定する必要はありますが、つるバラを絡めると華やかで、非常に人気があります。また、ミニサイズのゴーヤやミニトマトなど、長く茎を伸ばす野菜の栽培に使うこともできます。
オベリスクを使うメリット
オベリスクを使うと縦方向に立体的に植物を仕立てることができるため、小さなスペースでコンパクトにガーデニングを楽しむことができます。さらにスタイリッシュな見た目で、庭のデザインにメリハリが生まれます。
植物の生育にとってもメリットがあり、風に弱い植物や枝が横に広がりやすく不安定な植物も、オベリスクに仕立てるとより安定し、美しい形を保つことができます。またつる植物の場合も、安定して高くつるを伸ばすことができ、たくさんの花を楽しむことができます。
オベリスクを選ぶ5つのポイント
オベリスクにもたくさんの種類があるため、どのようなものを選べばよいのか迷ってしまうかもしれません。ここではオベリスクを選ぶ際のポイントを解説します。
1.オベリスクの高さ
オベリスクのサイズは、誘引したい植物の樹高を目安にして選びます。
枝や茎が太く大輪を咲かせるような植物を誘引する場合は、幅が小さいオベリスクではうまく巻きつけられず折れてしまうことがあるため、大きめのものを選びましょう。今は小さくても、将来的に大きく成長する植物の場合も、最初から大きめなオベリスクを選ぶことをおすすめします。後からオベリスクを別のものに取り替えるのは非常に手間がかかるため、植物が成長した後のことも見据えて選ぶことが必要です。
2.鉢植えで使うか地植えするか
オベリスクには、地面に挿す「地植えタイプ」と、鉢に挿す「鉢植えタイプ」の2種類があります。誘引するのが地植えの植物か鉢植えの植物かによってタイプを決めましょう。
また、購入前に、しっかりと固定するために必要な深さを確認することが大切です。特に鉢やプランターに使用する場合は、深さが足りないとぐらついたり鉢ごと倒れる可能性があるため、オベリスクと鉢の大きさのバランスがよいサイズを選びましょう。
3.オベリスクの設置場所
オベリスクを設置する場所が、庭かベランダ・テラスなのかも重要なポイントです。庭に設置する場合は、雨風に強い丈夫な素材を選びましょう。アイアン素材などは、防サビ処理が施されているものを選ぶと長もちします。
一方、ベランダに鉢を置いてオベリスクを立てる場合は、取り回しのしやすい軽量な樹脂製などが向いています。また、天井や軒がある場所で使う場合は、鉢の高さの分だけオベリスクも底上げされることを考えてサイズを選ぶ必要があります。
4.オベリスクの素材
オベリスクには、主に樹脂製と金属(アイアン)製、木製があります。
樹脂製のオベリスクは比較的安価で、軽く扱いやすいという利点がありますが、強度が低いため、長期間使用する場合や、つるが強く花が重いバラを育てる場合は注意が必要です。
一方、金属製のオベリスクは強度が高く、壊れにくいため、長期間使用することを想定した場合や、つるが強い植物を育てる場合には適しています。ただし、樹脂製のオベリスクに比べて価格が高くなることが多いです。
海外の歴史あるガーデンでは、古くから木製のオベリスクが使われているケースもあり、日本でも少量ながら木製のオベリスクが入手できます。また木材を使ってDIYでオベリスクを作る方法もあります。
5.オベリスクのデザイン
オベリスクを選ぶ場合には、設置する庭やベランダのテイストに合わせることも大切です。例えば、ジャンクガーデンにはユニークなデザインのオベリスクが合うでしょうし、イングリッシュガーデンにはアイアン素材のエレガントなオベリスクがよく似合います。また、ナチュラルガーデンには天然素材のオベリスクが調和するでしょう。
つるバラをオベリスクで仕立てる方法
ここからは、数あるつる植物の中でも人気の、つるバラをオベリスク仕立てにする際の方法やポイント、おすすめの品種について解説します。
仕立て方
つるバラをオベリスク仕立てにする手順をご紹介します。
まずポイントは、オベリスクをしっかり固定すること。十分な深さまで地面に挿し込んで、しっかりと固定します。手でゆすっても動かない程度固定できていれば通常は問題ありませんが、庭に設置する場合はより頑丈にするため、深い穴を掘り、脚の間に鉄の棒や支柱などを渡し、ワイヤーなどで固定してから埋めてぐらつきにくくする方法もあります。また、サイズによっては、地中に基礎や杭を埋め込んで支柱の脚をモルタルなどで固めると、さらに強固になります。
オベリスクを設置したら、つるバラの苗を植えます。その際の注意点として、苗はオベリスクの内側ではなく外側に、また正面から見たときにオベリスクの背後になるよう植え付けるとよいでしょう。
苗を植えたら、つるをオベリスクに巻きつけていきます。オベリスクの外側につるを螺旋状に巻きつけ、ワイヤーや麻紐、ビニールタイなどを使って固定しましょう。頂部の枝もオベリスクに固定します。また、枝は左回りと右回りに交互に巻きつけることで、バランスよく仕上がります。
つるバラのオベリスク仕立てのポイント
オベリスクの見た目を美しく保つためには、冬に一度、つるを外して誘引し直すことが重要です。つるはオベリスクの「外側」に巻きつけます。内側につるが入るように誘引してしまうと、新しい枝がオベリスクの中に伸びてしまい、外側に誘引し直す際に折れてしまうことがあります。
また、枝同士が交差しても構いませんが、重ならないようにすることも大切です。枝と枝の間隔は、大輪系の場合は30cmほど、小輪系の場合は15cmほどあけるのが目安です。
クレマチスをオベリスクで仕立てる方法
次に、つるバラよりもつるが細くて扱いが簡単なクレマチスをオベリスクで仕立てる方法とポイントを解説します。
仕立て方
クレマチスをオベリスクで仕立てる手順をご紹介します。
まずオベリスクを固定し、クレマチスの苗をオベリスクの外側に植えます。伸びているつるがあれば、ワイヤーや麻紐、ビニールタイなどを使ってオベリスクの下方から順に固定します。新芽が出たばかりの枝は柔らかく折れやすいので、つぼみがついてある程度硬くなった枝のほうが誘引しやすいでしょう。絡んでほどけないつるがある場合は、多少カットしてもかまいません。成長期はぐんぐんつるが伸びていくので、伸びたつるを随時オベリスクの外側に巻きつけるように誘引していきます。伸び始めは、なるべくつるが下方に収まるようにすると、バランスよく成長します。
クレマチスはポット苗が3月頃、開花苗が5月頃に出回りますが、オベリスク仕立てにしたい場合は、3月頃のポット苗がおすすめです。5月頃に出回る開花苗はすでに行燈状に仕立てて売られていることが多く、オベリスクに誘引するには一度外す作業が必要になるため、手間がかかります。
クレマチスのオベリスク仕立てのポイント
クレマチスの生育期は3〜10月までで、この期間は旺盛につるが伸びるため、こまめな誘引が必要です。
つるが硬くなり、誘引の際に折れてしまっても、完全に切れていなければ問題ありません。そのような場合はテープなどで折れた箇所を固定するとよいでしょう。しかし、復活しなかった場合はカットする必要があります。誘引の際は、枝が重ならないように気をつけることが大切です。また、新枝咲きや新旧両枝咲きを選ぶと、冬の剪定は地際でバッサリ切るだけで済み、簡単です。旧枝咲きのタイプは、既存のつるを大切に誘引し直す必要があります。
オベリスクは自作も可能
オベリスクは市販品を使うだけでなく、好きなサイズや形のものをDIYで作成することもできます。
簡単なものでは、ホームセンターなどで鉄製の棒を購入し、結束バンドで留めて作るという方法があります。木材を必要な長さにカットして組み立てる方法もあります。
庭のアクセントに! オベリスクでガーデニングをもっと楽しもう
オベリスクは植物を立体的に仕立てることができ、小さなスペースでも大きく育てられるのが魅力です。ただし、一度植物を誘引すると外すのが難しいため、選ぶ際は植物が成長した後のサイズも見据える必要があります。ぜひ記事を参考にオベリスクを取り入れて、つる植物が映える庭づくりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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