芝生に生える雑草を処理したい! 雑草の発生を防ぐ方法とは?

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一面に広がる綺麗な芝生の庭。一度は憧れる光景ですね。しかし芝生の管理は雑草との戦いでもあります。綺麗な景観を維持するためには芝生の刈り込みと定期的な雑草の処理がとても大切。雑草処理は適した時期と薬剤、そして雑草の種類を把握していないと、かえってはびこりやすい環境にしてしまうことも。ここでは雑草の発生を防ぐ方法について解説したいと思います。
芝生に雑草が発生する理由は?

芝生に雑草が発生する理由はいくつかあります。原因を知ることで防ぐ方法がはっきりし、対策に繋がります。ここでは、いくつかの原因と対策について解説します。
外部から種が飛んでくる

そもそも雑草と呼ばれる植物は適応環境の幅が広く、アスファルトの隙間のような過酷な環境でも育つものが多いため、発生原因が外部からということは珍しくありません。風で飛ばされた飛来種子や何かの生き物によって運ばれてきた種子が比較的条件のよい芝生に落ち、発芽してしまうという場合です。
風にも乗りやすく、また動物にも付着しやすいイネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ)には特に注意が必要です。一度生えたものを放置してしまうと、あっという間に芝生の広範囲を占拠されてしまうことになるでしょう。またスズメノカタビラやカヤツリグサ、ツユクサ、ナズナなども芝生のわずかな隙間で発芽し、次第に範囲を広げてしまうやっかいな雑草たちです。見つけ次第徹底的に防除しましょう。
雑草の根が残っている

雑草の中には、取り除いたと思っても一部の根が土の中に残っていて再び育ち始めるものがあります。特にスギナやドクダミなどは再生力が強く、除草をして、冬場に地表は綺麗になったように見えても地下茎でどんどん増殖を始め、春先にまた生えてきてしまうことがあるので注意が必要です。そういった再生力の強い雑草は、根まで残さず取り除くことが大切です。
雑草を放置するとどうなる?

芝生は整然とした景観が大きな魅力なので、そこにイレギュラーな植物が混じってしまうと魅力が半減してしまいます。放置され生い茂った雑草により陽光が遮られると、芝生は健全な生育ができなくなり、さまざまな虫の温床となって害虫を呼ぶことにもつながります。イネ科の雑草は秋には花を咲かせ、アレルギー症状の原因にもなります。そしていよいよ対処できなくなると、いわゆる荒れた庭になってしまいます。雑草の枯れ葉などが積み重なった荒れた庭は火災時に燃え広がりやすかったり、非常の際に避難路を塞いでしまったりなどの弊害を招きます。周辺の治安とも関わってくるため、雑草防除はとにかく早期に行う必要があります。
雑草の発生を少なくする方法

雑草の発生は、適切に対処すればその規模を最小限にすることができます。ここではそのポイントを解説したいと思います。
芝を高めに刈る

雑草の多くは、発芽する際の条件として太陽の光を必要とします。そのため、芝を刈る場合に地際から2~2.5cm程度の高さで切りそろえることで、光を遮り、発芽しにくくするということがポイントの一つとしてあげられます。
夏芝は秋から冬の肥料を控える

芝生には、夏に成長し冬は休眠して枯れたようになる夏芝(高麗芝・暖地型芝)と、冬も緑を保つ冬芝(寒地型芝)があります。夏芝の場合、休眠期である冬の施肥は余剰であり、他の雑草の肥料となってしまうため控えましょう。冬芝であれば、冬の施肥は葉色をよくするために必要な場合があります。芝の種類を把握し、適切に施肥することが雑草を生やさないポイントとなります。
芝生を密に保つ

まずは、こまめな刈り込みを行いましょう。芝を密に保つことで雑草の種子が土壌に触れるのを防ぎ、発芽させない効果があります。また芝の種類によっては、他の植物の成長を抑える物質を放出するなど、アレロパシーという作用を強く持ったものもあるため、そのような品種を選ぶことで雑草が生えにくい環境にできる場合もあります。
芝生に生える雑草とは?

芝生に生える雑草は強健で、適切に取り除かないと再生したり、増えてしまったりする場合があります。ここでは、芝生に生える代表的な雑草の種類とその対策について解説します。
スズメノカタビラ

- 雑草の概要
一見芝と見間違ってしまうような外見ですが、葉が柔らかく、芝のようにランナーは出しません。大きな株になっても抜きやすいので除去はしやすいのですが、とにかく種子散布による繁殖力が強いため、花が咲く前に取り除くことが大切です。乾燥地から湿地まで至るところで繁殖します。
- 科目
イネ科の一年草
- 生えやすい時期
多くは秋から冬にかけて開花し、種子を飛ばします。冬には枯れる一年草ですが、越冬し越年草となる場合もあります。
- どのように繁殖するか
種子がわずかな隙間に入り込み、そこから種子散布により広がります。発芽し、ある程度育つとすぐに花を咲かせて再び種子を飛ばすため、隙間がある場合すぐに一面に広がります。
- 防除の仕方、防止策など
光発芽種子のため、芝を高めに刈り込み、種子への陽光を遮断することである程度の予防ができます。また開花前に刈り取ったり、抜き取るなど早期の対応をすることがポイントです。
カタバミ

- 雑草の概要
クローバーを小さくしたような三つ葉を付け、主に黄色の花を咲かせます。一見可愛らしい植物ですが、繁殖力が強く、種子とランナー、地下茎などで増え、気付くと一面がカタバミということにもなりかねません。
- 科目
カタバミ科の多年草
- 生えやすい時期
通年成長し、生息範囲を広げます。また春から秋まで開花し、種子を飛ばします。
- どのように繁殖するか
球根の先端からランナーや匍匐茎を放射状に展開します。成長が早く、一面に広がっていきます。また成熟した果実は接触刺激で弾けて広範囲に種子を飛ばします。そのため除草している最中に触れてしまうと一気に弾け、元の木阿弥となってしまうので注意が必要です。
- 防除の仕方、防止策など
普通に引き抜くだけだと球根やランナーが残ってしまい再び生えてくることになりかねません。スコップなどを使って慎重に株全体を取り除くか、除草剤を用いて根まで枯らすことが望ましいです。
コニシキソウ

- 雑草の概要
空き地や畑、道端などあらゆる場所に自生しており、切ると白い乳汁が出ます。乾燥にも強く、アスファルトの割れ目などにも深く根を張り生育しています。
- 科目
トウダイグサ科の一年草
- 生えやすい時期
春から秋に成長し、次々と花を咲かせ、種子を飛ばします。
- どのように繁殖するか
匍匐しながら放射状に茎を伸ばし、それと同時に種子を大量に飛散させて繁殖域を拡大させていきます。
- 防除の仕方、防止策など
茎は簡単にちぎれてしまうため、引き抜く場合は意識して根元を掴むかスコップなどで根こそぎ取り除きましょう。芝をこまめに刈り込み、密に保つことである程度予防できます。成長した株は根が深くなり抜きにくいので、小さなうちに取り除きましょう。
チドメグサ

- 雑草の概要
止血効果があることから、古くは薬として利用されていたこともあります。日向・日陰を問わず、道端や人家の近くに生育し、匍匐性の茎を四方に伸ばします。湿った環境を好み、各節から根を伸ばして、地中、あるいは表土に根を張ります。
- 科目
ウコギ科の多年草
- 生えやすい時期
通年成長します。
- どのように繁殖するか
匍匐茎が地中、あるいは表土上で伸び、成長することで繁殖していきます。各節ごとに根を張る性質もあるので、茎がちぎれて残っている場合は再度繁殖します。また種子でも繁殖し、わずかな隙間でも生育可能です。
- 防除の仕方、防止策など
芝生の中にチドメグサが侵入してしまうと地下茎ごと根を綺麗に取り去るのは大変です。こまめに刈り取り、弱らせながら根絶するか、薬剤散布で対処することが望ましいです。
シロツメクサ(クローバー)

- 雑草の概要
クローバーと呼ばれることが多く、誰しも一度は「幸せになれる」という四つ葉のクローバーを探したことがあるのではないでしょうか。クローバーの改良種などはガーデニング素材として活用されることも多く、グラウンドカバープランツとしては好意的に見られる反面、芝生の中に混入してしまうと芝の間を縫ってランナーを四方に伸ばし、根こそぎ取り除くのが難しい植物です。踏圧にも強いため、空き地など日当たりのよい場所だけでなく、公園など人通りの多い場所でもよく見られます。
- 科目
マメ科の多年草
- 生えやすい時期
冬期を除き精力的に繁茂します。
- どのように繁殖するか
匍匐茎から根を伸ばし、ドーム状に広がっていきます。また種子を飛ばして生育範囲を広げます。
- 防除の仕方、防止策など
スコップなどで丁寧に根ごと取り去るか、芝には影響の少ない除草剤などを活用しましょう。開花期が春から夏なので、花後、種子ができる前に刈り取るなどして個体数を減らすようにしましょう。
スギナ

- 雑草の概要
シダの仲間で、胞子茎はツクシとして親しまれています。その栄養茎をスギナと呼びます。古くから生薬としてお茶などに使われています。日当たりのよい土手など、酸性の痩せた土壌に多く見られます。栄養茎を取り除いても地下茎が強健で、わずかに残っているだけで再び芽を出します。
- 科目
トクサ科の多年草
- 生えやすい時期
ツクシの成長後に栄養茎であるスギナが成長を始めます。冬期を除いてよく茂って栄養を蓄え、地下茎を伸ばしていきます。
- どのように繁殖するか
胞子を飛ばし生育範囲を広げます。また地下茎が四方に伸び、春に一斉に栄養茎を地表に出して繁殖します。
- 防除の仕方、防止策など
丁寧に地下茎を取り除くことが大切です。わずかでも残っていると再び成長を始めてしまいます。もしくはスギナに効果的な除草剤を散布し、除去しましょう。
ドクダミ

- 雑草の概要
日陰で湿った場所を好み、適地であればわずかな隙間でも繁茂します。触ると独特な香りを放ち、印象に残る雑草です。薬用成分が多岐にわたり、日本の三大民間薬として古くから利用されてきました。地下茎を伸ばし広がります。園芸品種もあり、ガーデニング素材として適切に管理できれば、シェードガーデンでの活用が期待できます。
- 科目
ドクダミ科の多年草
- 生えやすい時期
地表部は冬期に枯れますが、地下茎は一年を通して成長します。
- どのように繁殖するか
地下茎の勢いが強く、放っておくと一面に広がります。わずかでも地下茎が残っているとそこから再び成長し、繁殖します。
- 防除の仕方、防止策など
スコップなどで丁寧に地下茎ごと抜き取ります。
除草剤には2種類ある

芝生に生えた雑草は抜きにくく、特に地下茎で増える雑草への対処は大変です。そのような場合は除草剤が活用できますが、薬剤の特徴を知らずに使ってしまうと効果が半減してしまう上に、芝生自体を枯らしてしまう恐れもあります。ここでは、除草剤の種類について解説したいと思います。
茎葉処理剤

茎葉処理剤とは植物の茎や葉に薬剤が付着し、効果を表すタイプの除草剤です。噴霧器などを使って雑草自体に直接かけて使用し、茎葉から薬剤が吸収されるため、雑草の成長期にあたる時期のほうが高い効果が得られます。また散布後に雨や水やりなどで薬剤が流れてしまうと効果が弱くなるので、天候などにも気をつけましょう。
土壌処理剤

土壌処理剤は、枯らしたい雑草の周囲の土壌にまいて、除草成分を含む土壌層を作ります。やがて雑草がその薬剤を根から吸収し効果を表すタイプの除草剤です。薬効成分を含む土壌層はある程度の期間は維持されるため、茎葉処理剤と比べて長期間の除草効果が得られます。しかしながら根から吸収されるので、効果が表れるまで時間がかかります。
除草剤を使うときのポイント

除草剤は使い方によっては必要としている植物を枯らしてしまったり、時には人体へ害を及ぼしたりする場合もあります。適切な使用をしてこそ有益なものなので、事前にポイントをしっかりと把握しておきましょう。ここでは、そのポイントについて解説します。
安全対策

周囲に人がいないことを確認した上で、まずは自分に除草剤がかからない、または吸い込まないよう防護服やマスク、手袋などを必ず着用しましょう。噴霧器などを使用し、拡散する可能性のある場合は、周辺へ害が及ばないよう風のない日に行いましょう。作業後は使用した物をしっかり洗いましょう。
除草剤をまく時期

茎葉処理剤は、雑草が発芽し、出そろった時期に散布することで大幅に個体数を減らすことができます。また各雑草の成長期に散布することで、より高い効果が得られます。土壌処理剤は効果が表れるまで多少時間がかかるため、雑草の繁茂する少し前(夏前と秋頃)に散布することで長期に渡って効果が得られます。
雑草を処理して綺麗な芝生を

ここまで解説したように、綺麗な芝生を維持するためには、雑草の種類を把握し、それぞれに合った対処法を用いることが大切です。いずれにせよ日々の観察と早めの除草がポイントだと思います。雑草のない整えられた芝生はとても気持ちよく、晴れやかな気分にしてくれます。みなさんもこまめな除草を心がけ、素敵な芝生ライフを過ごしてくださいね。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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