芝生のような美しい緑を保ち、白やピンクのかわいい花も咲くグラウンドカバー「クラピア」。ふかふかと柔らかな緑の絨毯が芝生の10倍の速さで広がり、雑草が生えるのを防いでくれるうえに、真夏の暑さ軽減にも役立つSDGsな植物です。人気沸騰中のクラピアを使った素敵な庭の実例をご紹介します。植えどきは4月のちょうど今頃から。クラピアを取り入れて野原のようなかわいい庭をつくってみませんか?

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クラピアで庭を快適な緑のアウトドアリビングに!

SekoさんのInstagram投稿より

もとは真砂土だったのを土壌改良してクラピアを植え、すっかり緑の絨毯が広がった庭。クラピアは多年草で、4月半ばから翌年1月くらいまで、この緑を維持します(関東地方以西)。2~3月は休眠しますが、4月に入り気温が上がってくると、再び芽吹き始めます。5月から9月くらいまで繰り返し咲く、白や淡いピンク色の小さな花も魅力。1年に1回程度の刈り込みでも草丈は5~10cm程にとどまり、花がふわふわと咲く素朴な野原風の景色も素敵です。

SekoさんのInstagram投稿より

真砂土より地面の輻射熱が大幅に軽減されるため、日除けをすれば真夏でも快適なアウトドアリビングとして庭で過ごせます。クラピアは沖縄に自生するイワダレソウを品種改良したもので、真夏の過酷な環境下や屋上など高温になる場所でも旺盛に生育します。そして、葉の気孔から水分を放出する蒸散作用によって周囲の温度を下げるため、過度な高温化を防ぐ効果があります。ある実験では、真夏にコンクリートの表面温度が60℃近くにまで達した際、クラピア植栽面の地表温度は30℃台にとどまったという報告があります。熱せられた地面は赤外放射という熱を発し、体感温度を著しく上げてしまうほか、熱帯夜の原因にもなりますが、クラピアで地面を覆っておけば冷房効率がよく、SDGsにも貢献できそうです。

SekoさんのInstagram投稿より

一度広がってしまえば雑草の侵入を少なくしてくれるため、草取りに追われることなく庭を満喫できるのがクラピアの魅力。丈夫でローメンテナンスなうえに、病害虫のリスクも低くガーデニング初心者でも安心して育てることができます。庭にあまり時間をかけられない子育て世代や忙しい人でも、クラピアを植えておけば雑草の繁殖を抑えて庭らしい雰囲気が保てるのでおすすめ。庭キャンも楽しめます!

小さな丸葉のクラピアは、チクチクしないので裸足で駆け回って元気いっぱい! honna226さんのInstagram投稿より

クラピア+ペイビングで小径をおしゃれにデザイン

黄色の葉はリシマキア・ヌンムラリア、花が咲いているのがクラピア。MUCCIさんのInstagram投稿より

レンガやタイルなどで地面をデザイン的に舗装することをペイビングといいますが、そんなペイビングの小径の仕上げとして、クラピアを用いる人が増えています。目地の間に植えたり、成長に従い目地に入り込んだりしたクラピアが、庭に年数を経たような雰囲気を演出してくれます。クラピアは写真のように踏まれたところは草丈が低くなり、踏まれないところはふんわり茂って2つの表情を見せてくれます。クラピアは適度な踏圧に耐え、踏まれることで、より緻密なマット状になり、雑草の侵入を防ぎます。

HannAさんのInstagram投稿より

乱張りの石や枕木などの間をクラピアやリシマキアがタペストリーのように瑞々しく彩るガーデンの一角。土がむき出しのままよりガーデンが明るくなり、他の植物も美しく見せてくれます。クラピアはこのように緑のキャンバスとしても庭で大活躍。雨が降った後も、泥はねがないので歩きやすく、ほかの植物を泥で汚すこともありません。

クラピアは家庭菜園の安心安全な雑草バスターとして活躍!

畑の畦に雑草対策としてクラピアを植栽。左は植栽時、右は約1カ月後。

コロナ禍で家庭菜園を始める人も増えていますが、畑仕事で最も労力がかかるのが草取り。作物の周りに雑草がはびこってしまうと、栄養が取られて生育不良になったり、風通しが悪くなり病害虫の原因となってしまいます。そんな畑まわりの雑草バスターとしてもクラピアは大人気。小さな丸い葉を密に展開しながら地面を這って生育し、雑草が生えるスキを与えません。また、真冬はいったん地上部が枯れますが、多年草なので、暖かくなるとまた緑の葉を展開し始め、その効果は永続的。“草で草を制す”サステナブルでリーズナブル、かつ美しい雑草対策なのです。

上写真の左は、クラピア植栽前の畦道。右は畑の畦に広がったクラピア。緑の畦道の完成です。多少の雑草が生えても、クラピアの植栽帯は土がやわらかく雑草を抜きやすいので苦労しません。また、クラピアが特定の病害虫を寄せ付けることはありませんが、開花期間が長いのでミツバチが集まってきます。ミツバチは野菜や果樹の交配もしてくれるため、実りがよくなることが期待できます。捕まえようとしたりしなければ、ほとんど刺されることはないので、家庭菜園の助っ人として迎えてあげましょう。

クラピアの小さい花に蜜を集めにきたミツバチ。

「クラピア」の育て方


左/「クラピアK7」 耐寒性があり、葉の色が濃く、花は白花。花数はクラピアシリーズの中では少なめで、茎が木質化しにくいのが特徴。
中央/「クラピアK5」 K7と同様の耐寒性があり、葉の色は淡く、花は薄ピンク色が特徴。
右/「クラピアK3」 2021年にデビューした新品種。美しいピンクの花と大きめの丸い葉が特徴。

●植えどき/4~9月

●植栽前の準備/日当たりのよい場所でよく育ちます。雑草が生えている場合は除草します。土壌が固い場合や真砂土の場合は、土壌改良材などを用いて土壌環境を整え、表層15cm程度を耕します。

●植え付け/植え穴に元肥を混ぜ、少し深めに定植します。植栽の目安は1㎡に4ポットです。

●植え付け後の管理/完全に被覆するまでに2カ月程度かかります。植えてから2週間は土が乾いたら水やりをし、植栽内に踏み込まないようにします。その間、雑草が生えてきたら抜きます。完全被覆後は適度な踏圧で分枝して密に茂るので、踏んでも大丈夫です。被覆後は地植えの場合、水やりの必要もありません。

●刈り込み/梅雨時と秋の生育旺盛な時期に刈り込みをすることで、枝分かれして葉が増え、緻密なグリーンカーペットを形成します。どこで切っても成長点があるので、高さは気にしなくて大丈夫です。刈り込みの回数が多ければ多いほど、葉が緻密に茂ります。

●施肥/最初の被覆の状態を見て、あまり茂らないような場合には追肥します。肥料が足りていれば、通常ワンシーズンは追肥の必要はありません。葉が黄色くなったり、花が少なくなってきたら肥料が切れてきたサインなので、状態に応じて追肥しましょう。
また、クラピアは水はけのよい土を好みます。水はけの悪い土壌や、水やりが多い場合は根がストレスを受けますのでご注意ください。

●病害虫/クラピアには特定の病害虫の被害はありませんが、水の多い環境や水はけが悪い場所では根腐れを起こすことがあります。また、開花期間が長いためチョウやミツバチが飛来します。彼らは特に被害を及ぼすことはありませんし、果樹や野菜の実りに貢献してくれるので、庭のお客さまとして仲よくしましょう。

●冬越しした2年目の春の手入れ
4月中旬以降、一日の平均気温が15℃くらいになってくると、クラピアは緑が芽吹いてきます。その芽吹きの段階で肥料を施すと、元気に生育を始めます。クラピアにおすすめの肥料は、ゆっくり浸透し、効果が長持ちする「有機一発肥料」。1㎡あたり30gを目安に全体にまきます。粒状なので葉の上にのってしまう場合は、ホウキなどで軽くはらって土に落とすようにしましょう。

苗の購入は「クラピア育て隊」オンラインショップ

芝生よりローメンテナンスで10倍速く成長する「クラピア」

クラピアのように地面を這うように伸びて、緑のカーペットを形成してくれる植物のことをグラウンドカバープランツといいます。クラピア以外に代表的なものが芝生。よく手入れされた芝生は、まさに緑の絨毯のようで美しく、雑草の抑制効果もあります。ただし、美しい芝生には丁寧な管理が欠かせません。例えば、夏は2週間に1回程度の刈り込みが必要ですし、目土(めつち)やエアレーション、水やりといったメンテナンスも必須。時間的にも体力的にも余裕がある方には芝生はおすすめです。でも、初心者や忙しい方も、緑の絨毯をあきらめる必要はありません。クラピアなら誰でも無理なくグリーンカーペットを維持できます。

クラピア
クラピアは生育旺盛で、1㎡あたり4苗(3号ポット)を植えた場合、完全に地面を覆うまでに要する期間は2カ月程度。4~5月に植えれば、夏には緑のカーペットが完成します。活着後は地中深く根を張っているため、2週間程度雨が降らなくても水切れの心配はありません。
「クラピア育て隊」公式サイト

まだまだあるクラピアのすごい実力

1.5m伸びる根っこで土留めや土壌環境改善にも期待

地中深くまで根が伸びるため、ほかの庭の草花と地中の養分の取り合いが発生しないのも庭づくりを楽しむ人にとっては魅力。例えば、バラを植栽する際の植え穴は深さ50cm程度、高木類で深根型と呼ばれるタイプでも100cm程度の深さを確保すれば育つとされており、地上部の高さに反して深く根を張るクラピアが、いかにユニークな生態を持つ植物かが分かります。この地中深く張る根は土中に空気や水の通り道を作り、土壌環境を健全に保つことも期待できます。

CO2吸収・固定能力が高い


植物は二酸化炭素を吸収して酸素を放出していますが、クラピアはほかの植物と比較して、二酸化炭素の吸収・固定量が高いのも特徴です。芝刈りや除草には化石燃料が使用されますが、クラピアは刈り込みや除草回数を減らすことができるので、化石燃料の使用によるCO2発生量の減少にもつながります。こうしたさまざまな能力を持つため、クラピアを活用した砂漠の緑化など、地球規模での環境保護資材として注目されています。

「クラピア」は日本生まれの自生種だから安心

クラピア
「クラピア」は、与那国島のイワダレソウの在来種がもとになっています。タネをつけない不稔性なので、どこかへ飛んでいって侵食することがないのも環境保全の観点から注目を浴びています。イワダレソウとよく似た品種にヒメイワダレソウという外来種があります。ヒメイワダレソウは環境省の外来種リストの中でも国内の生態系に被害を及ぼすことが懸念される重点対策外来種に指定されています。クラピアの類似品としてヒメイワダレソウが販売されているケースが増えていますので、苗の入手の際にはご確認ください。クラピアはグリーンプロデュース社によって種苗登録された品種で、同社生産の苗のみが「クラピア」です。無断での販売や譲渡、輸出は種苗法に違反しますのでご注意ください。

花も可愛い「クラピア」を素敵な庭づくりのパートナーに

雑草対策や高温抑止、土壌流出防止効果など、たくさんの機能を持つクラピア。芝生のように広い範囲で使ったり、小道の間に植え込んだり、花壇の土留めに使ったりと、さまざまなシーンに利用でき、草取りの労力も減らしてくれます。除草の手間はクラピアで省いて、あなたは好きなガーデニングに集中できます。しかも、楽しみながら環境保全にも貢献でき、趣味の庭がより意義深いものに。素敵な庭づくりのパートナーとして、クラピアを庭に迎えてみてはいかがですか。
苗の購入は「クラピア育て隊」オンラインショップ

Information

販売/エスビーエル

「クラピア育て隊」公式サイト https://kurapiajapan.com/

「クラピア育て隊」オンラインショップ https://kurapiajapan-shop.com

栃木県小山市 TEL.0285-37-6228 FAX.082-37-8873

グリーンカーペット

記事&写真協力/グリーンプロデュース

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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