秋風が肌にひんやりと感じる10月下旬は、数種類の野菊が咲き始める時期。野菊は庭を彩る最後の花。楚々として匂い立つ一輪一輪に心を奪われるという、神奈川県横浜で小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんの花暮らし。故郷の秋の情景を身近に感じさせてくれる野菊が咲く庭風景とお気に入りの種類、そして花飾りをご紹介します。

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郷愁を誘うノコンギクの小径

ノコンギク

黄金色に輝く田んぼの畦道や、野辺に群れ咲く野菊….。そんな故郷の秋の情景を身近に感じたくて庭に植えたノコンギク(野紺菊)。濃紫色の花びらと黄色の花心のコントラストが鮮やかな花径2cmほどの小さな野菊です。

植えた当初は、鉄平石の踏み石の両脇に所々植えていたのですが、あっという間に地下茎で ふえて、思い描いていた「ノコンギクの小径」になりました。

ノコンギク

その繁殖力は、想像以上で生育も旺盛。芽吹きからそのままにしておくと、草丈は80cmにもなります。残念ながら、小径の距離はたったの7、8歩。幅も狭く覆い被さってしまうので、梅雨時に一度切り戻ししています。そうすると、脇芽が出て膝下のちょうどよい草丈に。花数も増えて、満開時には数え切れないほどの濃紫色の花が鮮やかに小径を彩ります。

ノコンギク

踏み石を歩くと、足元でこんもりと群れ咲く野紺菊。まん丸顔の可憐な花の何と愛らしいことでしょう。ほのかな野菊の香りに思わず立ち止まって顔を近づけては小径を行ったり来たり…。

故郷の懐かしい秋の情景と重なる「ノコンギクの小径」は、わたしの一番好きな景色です。

秋の木漏れ日に映える「清澄シラヤマギク」

清澄シラヤマギク

サクランボのような実と葉が、ほんのり色付き始めた西洋カマツカ(別名:アロニア)。その木漏れ日を浴びて咲いているのが「清澄シラヤマギク」です。この花は、千葉県の清澄山周辺で発見されたノコンギクとシロ菊系の雑種だとか。

初めて園芸店で目にした時、一瞬で心を奪われました。その特徴は、スッと伸びた細い褐色の茎。こんな茎色の菊は見たことがありません。しかも、見た目よりずっとしっかりしていて、ほどよいしなやかさも。

清澄シラヤマギク

品のよい藤色の花との調和も素晴らしく、凛とした風情が漂います。地植えでは草丈70〜80cmほどになりますが自立してくれるので、あえて切り戻しはせず自然樹形で育てています。

清澄シラヤマギク

秋風にたゆたうしなやかな茎、金平糖を散りばめたような小さな花が満開になる頃は、なんとなく甘い香りが漂ってきそうです。

季節の終わりを告げるアワコガネギク

アワコガネギク

清澄シラヤマギクが満開を迎える頃、ちらほら咲き始めるアワコガネギク。なんとも可愛らしいこの名前は、黄金色の小さな花が寄り集まって泡立つように咲くことから名付けられたとか。花径1cmほどの極小花は、野菊の種類では珍しく花心と花びらが同色です。

アワコガネギク

そのせいか、黄金色の発色がとても鮮やかで目を奪われます。陽光を追って曲がったり枝垂れたり。野趣溢れる楚々とした姿も大好きです。

そんなアワコガネギクが一番映えるのが秋晴れの日。チラチラと降り注ぐ木漏れ日を浴びて、泡玉のような花が黄金色に輝きます。ワクワクするほど美しい光景です。

秋のなごりを惜しむ野菊の花あしらい

野菊のあしらい

花もちのよい野菊は、切り花にも最適です。

曲がった茎や虫食い葉など、庭咲きだからこそ味わえる表情豊かな野菊をいろいろな器に活けて楽しみます。

野生種の野菊に合わせる器は、花瓶に限らずコップやピッチャー、片口、カゴなど、身近にある日用品を用います。

野菊のアレンジ

例えば、飴色のピッチャーや陶器のリキュールグラスなど、特徴ある色や形の器に短く活けると、野菊の可憐さが際立ちます。こんなさり気ない花あしらいは、1日の大半を過ごすキッチンやダイニングに。また、お茶時間に添えると季節感も味わえて、より豊かで和やかなひと時になります。

野菊のアレンジ

片口の銅製の燗鍋も気に入りの器。古物なのでちょっと歪んでいますが、その使い込まれた佇まいが庭咲きの野菊の風情に良く似合います。口径がゆったりしているので、ふんわりナチュラルに活けられて、鍋の持ち手がいい塩梅に花の支えに。

野菊のアレンジ

燗鍋に清澄シラヤマギクを一種。そんなシンプルな花あしらいが一番好きです。持ち運びしやすいので、ガーデンテーブルに置いたり玄関に設えたり。その日の気分で場所を変えて楽しみます。

野菊のアレンジ

また、竹やアケビなど天然素材のカゴも、野菊の楚々とした美しさを引き立てます。キク科のガイラルディア‘グレープセンセーション’、赤く色付いた西洋カマツカの実。庭の秋花も添えると華やかです。

野菊のアレンジ

秋の彩りをカゴいっぱいに詰め込んだ野菊の花カゴは、庭からの今年最後の贈り物。愛おしい一輪一輪に「ありがとう」の気持ちが溢れます。

Credit


写真&文/前田満見
高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。

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