開花期間が長く、花つきもよいので、夏から秋にかけてのガーデンにぜひ植栽したいヘレニウム。一度植え付ければ毎年開花し、メンテナンスの手間もかからないので、ビギナーさんにもおすすめです。この記事では、ヘレニウムの基本情報や花言葉、詳しい育て方などについてご紹介していきます。
目次
ヘレニウムの主な特徴
ヘレニウムは、誰もが知っているメジャーな植物というわけでもないので、どんな花かピンとこない、という方もいるかもしれませんね。ここでは、ヘレニウムの基本情報や特徴についてご紹介します。
基本情報
ヘレニウムは、キク科ヘレニウム属の多年草で、和名はダンゴギク。原産地は北アメリカで、暑さ、寒さに強い性質です。生命力が強く、放任しても元気に育つので、ビギナーさんでも育てやすい花といえます。草丈は品種によって異なるため幅があり、60〜120cm。購入時にラベルに書いてある情報から、庭やベランダのスペースに見合うかどうか確認しておくとよいでしょう。ヘレニウムは多数の園芸品種が出回っているので、選ぶ楽しみがあります。
花の特徴
ヘレニウムの開花期は6〜10月。花色は赤、オレンジ、黄、複色があり、花径は5〜6cmです。花は、中心部の花心と放射状に伸びる花弁とで構成されており、花心が大きく盛り上がるのが特徴。花姿は一重咲き、半八重咲き、八重咲きなどがあり、葉は細長く、茎に互生につきます。
名前の由来
ヘレニウムは学名Heleniumをそのまま読んだ名前で、ギリシャ神話に記されている美しい女性ヘレネに由来するとされています。和名の「ダンゴギク」は、花心が団子のように盛り上がるため。種類によってホソバダンゴギクやヤバネダンゴギクなどもあります。英名は「Sneeze weed(クシャミ草)」で、ネイティブアメリカンが嗅ぎタバコに利用していたことによるそうです。
花言葉・誕生花
ヘレニウムの花言葉は「涙」「絶望の恋」「恋の望み」「上機嫌」「寛容な心」など。ヘレニウムの名前の由来となっている、ギリシャ神話に登場するヘレネは、絶世の美女でした。しかしそれゆえに求愛する者が後を絶たず、次々と争いごとが起きてしまいます。ヘレネがこぼした涙のあとからこのヘレニウムが咲いたという言い伝えもあり、悲恋や恋にまつわる花言葉が多く見られます。「上機嫌」「寛容な心」は、花姿の愛らしさにちなんでいるようです。また、9月28日と10月12日の誕生花でもあります。
栽培環境
【地植え】
ヘレニウムは日当たり、風通しのよい場所を好みます。あまり日陰では花つきが悪くなり、株もひょろひょろと徒長気味に伸びて軟弱になるので注意しましょう。暑さ寒さには強いので、植えっぱなしにしてかまいません。
【鉢植え】
基本的に日当たり、風通しのよい場所に置いて管理します。暑さにも寒さにも強いので、一年を通して戸外に置いてかまいません。
育て方の基本
ここまで、ヘレニウムの基本情報や特徴、花言葉、栽培環境などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、ヘレニウムに適した土づくり、植え付け、水やりや施肥、日頃の管理、病害虫対策、増やし方など、育て方について詳しく解説します。
土づくり
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
植え付け・植え替え
ヘレニウムの植え付け・植え替えの適期は、3〜4月か10〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30〜40cmの間隔を取っておきましょう。
地植えにしている場合は、数年は植えたままでもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、5〜8号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めたら根を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けてます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。大鉢にいくつかの花苗と一緒に寄せ植えをしてもOKです。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。ヘレニウムは開花期になると茎葉をたっぷりと茂らせて花数も多くなるため、水切れしやすくなります。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料
【地植え】
地植えの場合は、ほとんど必要ありません。株の状態を見て、勢いがないようであれば、液肥を与えて様子を見てください。
【鉢植え】
鉢栽培の場合は、水やりとともに肥料成分も流亡するので、追肥が必要です。4〜6月に、月に1度を目安に、緩効性化成肥料を株元にばら撒いて土に馴染ませます。または10日に1度を目安に液肥を与えてもよいでしょう。
摘心・花がら摘み・切り戻し・刈り込み
【摘心】
ヘレニウムは、苗が幼いうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、よく分枝してこんもりと茂ります。茎葉が増えることで花数も多くなるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。
【花がら摘み】
ヘレニウムの終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【切り戻し】
開花期が長いタイプのヘレニウムは、開花が少なくなって株姿が乱れてきたら、切り戻します。地際から草丈の半分くらいの高さを目安に、深めにカット。込み合っている部分があれば、数本を根元から切り取って蒸れ対策をしておきましょう。
【刈り込み】
ヘレニウムは秋が深まると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り込んでおきましょう。枯れた茎葉をそのまま残しておくと病害虫の越冬地となってしまうので、株まわりをきれいにしておきます。
病虫害
【病気】
ヘレニウムは、病気を発症する心配はほとんどありませんが、まれにうどんこ病にかかることがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、茎葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
ヘレニウムは、害虫が発生する心配はほとんどありませんが、まれにメイガ類の幼虫が寄生することがあります。
メイガ類はチョウ目メイガ科の昆虫です。蛾の一種で、多くの種類があります。主な発生時期は4〜10月。植物には主に幼虫が寄生し、葉を食害します。葉や枝を糸でつづって巣を作る特性があり、また被害にあった葉の周囲にはふんが多く散らばっているので、見つけやすいといえます。見つけ次第捕殺するか、適用する薬剤を散布して駆除しましょう。意外に素早く動くので、逃さないように注意してください。
冬越し
ヘレニウムはマイナス15℃くらいまで耐えるとされ、寒さに強いのでそのまま戸外で越冬できます。秋が深まると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り込んでおきましょう。寒さに強いとはいえ、霜柱によって根が切れるなどして傷むことがあるので、株元に腐葉土かバークチップをかぶせてマルチングをしておいてください。鉢栽培の場合は、凍結しない場所に移動しておきます。休眠中、地植えの場合は特に水やりは不要ですが、鉢栽培の場合はカラカラに乾燥させることのないように、控えめに水やりを続けてください。
増やし方
ヘレニウムは、株分け、挿し芽、種まきで増やすことができます。
【株分け】
ヘレニウムの株分けの適期は3〜4月か10〜11月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
【挿し芽】
ヘレニウムは、挿し芽で増やすことができます。挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し芽できないものもありますが、ヘレニウムは挿し芽で増やせます。
挿し芽の適期は、旺盛に生育している時期ならいつでも可能です。新しく伸びた茎を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
ヘレニウムは、種類によっては種まきから簡単に育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
ヘレニウムの種まきの適期は4〜5月です。黒ポットに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、1穴当たり2〜3粒ずつ播き、種子が隠れる程度に薄く覆土します。発芽までは乾燥・過湿を避け、適度な水管理をしてください。
発芽したら、日当たり、風通しのよい場所で管理します。本葉が出始めた頃に、勢いのいい苗を1本残し、ほかは間引いてください。葉が傷んでいるものや、ヒョロヒョロと間のびして弱々しいものを選んで間引きます。引き抜く際は、株元を押さえて残す苗の根を傷めないようにしましょう。さらに育苗して根鉢が充実し、十分に育ったら植えたい場所に定植します。
主な品種
ヘレニウムの代表的な種類は、オータムナーレ種で、これを基本に交配が進んで多数の園芸品種が出回っており、100種以上に及ぶとされています。人気の品種は、咲き始めは橙黄色から咲き進むと赤橙へと変化する‘マーディグラス’、花心が丸くて花弁が短く、ロリポップキャンディーのような花姿から名付けられた‘オータムロリポップ’、花弁が黄色とピンクの2色咲きになる‘ダイ・タイ’、草丈30〜50cmでコンパクトにまとまり、こんもりとよく茂る‘シエスタ’、輝くような黄色の花を多数咲かせる‘ダコタゴールド’などです。
ヘレニウムを植えて独特の花姿を楽しもう
ちょっと馴染みの薄いヘレニウムですが、暑さや寒さに強く、やせ地でも元気に開花する丈夫な花だと分かっていただけたのではないでしょうか。ぜひガーデンやベランダで育てて、花の中心が盛り上がるユニークな花姿を楽しんでください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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