【香りが魅力】ニオイバンマツリの花が紫から白に変化する理由とは? 育て方や冬越しのコツも解説!

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紫から白へと花色が変化し、甘く華やかな香りを放つ「ニオイバンマツリ」。庭木としても鉢植えでも育てやすく、ひと目で心をつかむ魅力があります。この記事では、開花期の色の変化の仕組みや香りの特徴、冬越しや剪定など育て方のコツを初心者にも分かりやすく解説。育ててみたくなるヒントが満載です!
目次
ニオイバンマツリの基本情報

植物名:ニオイバンマツリ
学名:Brunfelsia
英名:Yesterday-Today-and-Tomorrow、Morning-Noon-and-Night、Kiss-me-quick、Paraguayan jasmineなど
和名:ニオイバンマツリ(匂蕃茉莉)
その他の名前:ブルンフェルシア
科名:ナス科
属名:バンマツリ属
原産地:ブラジル、アルゼンチン
形態:常緑性低木
ニオイバンマツリの学名はBrunfelsia australis。ナス科バンマツリ属(ブルンフェルシア属)の花木です。原産地はブラジル、アルゼンチンなどで、寒さにやや弱い性質を持っています。樹高は30〜300cmほどの低木で、剪定によってコンパクトにまとめやすく、扱いやすい庭木の一つです。また、常緑性のため冬でも葉を落とすことなくみずみずしい葉姿を保ちます。開花すると芳しい香りを放つのも美点で、夜になると香りがより強まります。
咲き進むにつれて花色が移ろい、2色の花が咲いているように見える開花の様子。CMD filmmakers/Shutterstock.com
ニオイバンマツリの花や葉の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:4〜7月
草丈・樹高:30〜300cm
耐寒性:やや弱い
耐暑性:普通
花色:紫~白
ニオイバンマツリの開花期は4〜7月。花径3〜4cmほどの花は筒状で、先端が5枚の花弁に分かれ、花つきがよく満開時は見応えがあります。咲き始めは紫色で、咲き進むほどにだんだん褪色して白になるのが特徴。そのため開花期は2色の花が咲いているように見え、紫から白のグラデーションや紫×白のコントラストが楽しめます。また、甘やかな香りを放ち、夜になるとより強くなるのも魅力。開花後に実をつけることがありますが、株全体に毒があるため食べられません。
ニオイバンマツリの葉は長さ6〜8cmほどの先が尖った楕円形で、互生につきます。光沢のある硬質な葉は常緑性で、冬もみずみずしい姿を楽しめます。
ニオイバンマツリの名前の由来や花言葉

ニオイバンマツリは、漢字で書くと「匂蕃茉莉」。「匂」は香りがよいこと、「蕃」は外国から持ち込まれたことを意味します。「茉莉」はジャスミンのことで、まさしくジャスミンのような甘く強い香りを放つことから名付けられました。ただし、ニオイバンマツリはナス科の植物で、モクセイ科に分類されるジャスミンの仲間ではありません。
学名Brunfelsia australis の「Brunfelsia」は、ドイツ植物学の父と称されるブルンファス氏の名前にちなんでいます。「Australis」はラテン語で「南の」という意味です。
ニオイバンマツリの花言葉は、「浮気な人」「夢の名」「幸運」「熱心」などです。
ニオイバンマツリの近縁の仲間
ニオイバンマツリにはいくつかの仲間があります。ここでは、代表的な種類についてご紹介します。
アメリカバンマツリ

アメリカバンマツリの学名はBrunfelsia americana(ブルンフェルシア・アメリカーナ)。名前にアメリカが入りますが、原産地は西インド諸島です。開花期は5〜9月で、花径8cm前後の花を咲かせます。咲き始めは白で、次第にクリーム色がかってくるのが特徴。果実が実りやすいのも特徴です。ニオイバンマツリ同様に芳香があり、特に夜に香りが強まります。英名は「Lady-of-the-night」。
バンマツリ

バンマツリの学名はBrunfelsia uniflora (ブルンフェルシア・ユニフローラ)。花数はやや少なめで、日本でガーデニングに利用されることは多くありませんが、ニオイバンマツリと同様に紫から白へと移ろう香りのある美しい花を咲かせます。
パウキフロラ

パウキフロラの学名はBrunfelsia pauciflora(ブルンフェルシア・パウキフロラ)で、原産地はブラジル。開花期は3〜6月で、花径7cm前後の花弁にややフリルが入るのが特徴です。ニオイバンマツリのように花色は紫から白へと変化し、芳しい香りがあります。
ニオイバンマツリの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜7月
植え付け・植え替え:4月中旬〜6月
肥料:4月中旬〜10月
ニオイバンマツリの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】、日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。日照不足になると、葉色が冴えなくなったり、間伸びして株姿が乱れたりするので注意しましょう。ただし、夏の強い日差しにより葉焼けすることがあるので、夏は風通しのよい半日陰で育てます。
【日当たり/屋内】基本的に屋外で育てますが、寒さにやや弱いため、寒冷地では冬は室内に取り込んで管理します。
【置き場所】水はけ・水もちのバランスがよい、ふかふかとして腐植質に富んだ土壌を好みます。強い日差しを浴びて葉焼けすることがあるので、朝のみ日が差す東側や、落葉樹の足元など真夏は木漏れ日がチラチラと差すような半日陰の場所を選ぶとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
ニオイバンマツリは、耐暑性はありますが冬の寒さには弱く、耐寒温度は5℃くらいまで。地植えにしている場合は鉢に植え替え、室内の窓辺や温室などに置いて冬越しさせましょう。霜や低温の心配がない暖地では、地植えでも冬越しができますが、念のためマルチングなどで防寒対策をしておくと安心です。
ニオイバンマツリの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
花木用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。
水やり

蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥が続く場合は、水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
生育期の4月中旬〜10月に、2カ月に1度を目安に、緩効性化成肥料を株の周りにばらまき、スコップなどで軽く耕して土になじませます。または、10日〜2週間に1度を目安に、液肥を与えてもよいでしょう。
注意する病害虫

【病気】
ニオイバンマツリは病気の心配はほとんどありませんが、まれにすす病が発生することがあります。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気です。葉に発生すると表面につやがなくなり、病状が進むと黒いすすが全体を覆っていき、見た目が悪いだけでなく、葉に広がると光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因ですす病が発生するので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば、剪定して日当たり、風通しをよくして管理します。
【害虫】
ニオイバンマツリに発生しやすい害虫は、ハダニ、カイガラムシなどです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mmほど。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
ニオイバンマツリの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、葉の色艶がよく、株元がしっかりして枝ぶりのよいものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え

苗木の植え付け・植え替え適期は、4月中旬〜6月です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。
ニオイバンマツリは寒さに弱い植物のため、冬越し対策が必要です。暖地を除き、地植えにしている場合は、晩秋までには鉢に植え替えましょう。日当たりのいい室内や温室などに移動させて、冬越しさせ、越年して霜が降りる心配がなくなった頃に再び地植えにします。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗木より1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出し、根鉢を崩さずに鉢の中に入れて仮置きし、高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。
日常のお手入れ
【花がら摘み】
ニオイバンマツリは次から次へと花が咲くので、終わった花は園芸用バサミで切り取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【剪定】
ニオイバンマツリは、開花が終わった頃を目安に剪定します。枝が伸びすぎて、持て余すようであれば、適した長さまで切り戻し、バランスのよい樹形を保ちましょう。
冬越し

【地植え】
地植えにしている場合は、晩秋に鉢に植え替えて暖かい室内や温室に置いて冬越しさせます。越年して十分に気温が上がる5〜6月に、再び庭植えに戻すとよいでしょう。
【鉢植え】
秋になったら暖かい室内や温室などに取り込んで冬越しさせましょう。
増やし方

ニオイバンマツリを増やす場合は、挿し木をします。挿し木とは、茎を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、ニオイバンマツリは挿し木で増やすことができます。
ニオイバンマツリの挿し木の適期は、5〜9月です。その年に伸びた新しくて勢いのある茎を10〜15cmほどの長さで切り取ります。採取した茎(さし穂といいます)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、植えたい場所に定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ニオイバンマツリは毒性に注意

ニオイバンマツリは木全体に毒を持ち、特に未熟な果実や種に多く含まれています。幼児やペットのいる家庭では、誤って口に入れることがないように十分注意して管理しましょう。口に入れると、手足の痺れや嘔吐などの症状が現れます。
ニオイバンマツリの葉が落ちる理由

ニオイバンマツリの栽培で、「常緑のはずなのに、葉を落としてしまった」というケースがあるようです。まず考えられるのは、土壌が乾燥しすぎてしまったこと。鉢栽培では水切れに注意して管理し、特に真夏は乾燥しやすくなるので庭植えでも晴天が続く場合は水やりをして補いましょう。また、根詰まりが原因であることも考えられます。一年を通して鉢栽培にしている場合は、定期的に鉢から出し、古い根を整理して植え直しましょう。もう一つ考えられるのは、寒さにあったこと。5℃を下回る環境では、葉を落としてしまうことがあります。しかし寒さで枯れてしまったと早急には判断せずに、春まで様子を見守ってください。暖かくなると再び新芽を出して、復活することも多いようです。
ニオイバンマツリで庭を華やかにしよう

香りもよく2色の花色が楽しめるニオイバンマツリは、庭に個性をもたらすとして人気が高い花木です。ぜひ庭やベランダなどで育てて、優美な咲き姿を愛でてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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