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【プロが解説】寒さに強いトロピカルプランツ8種 越冬の成功率アップのコツもご紹介!

Antares_NS/Shutterstock.com
熱帯植物は暑さに強い反面寒さには弱く、越冬させるためには室内に避難させる必要があります。しかし、スペース確保が難しいという理由で栽培を断念しているケースが多いようです。そこで今回ご紹介するのは、寒さに強い熱帯植物。温暖化により越冬できる種類が増えている昨今、主に都心部(関東地方以西の平地)を基準に、屋外で熱帯植物を越冬させるコツと、寒さに強いおすすめのトロピカルプランツ8種を園芸のプロが解説します。
目次
トロピカルプランツを屋外で越冬させるには?

熱帯原産の植物でも、寒さに強いものがあります。そのような種類を選べば、冬に室内へ移動しなくても屋外で越冬させることが可能です。寒さに強いとはいえ熱帯植物が屋外でも越冬できる第1の条件は、霜が降りにくい地域であること。また霜が少し降りる地域であっても、条件のよい場所を選び、防寒対策をすれば越冬できる可能性が高まります。
特に建物が密集している地域では、近年の温暖化の影響もあって、意外な場所で熱帯植物が越冬するケースが増えてきました。例えば関東地方では、南部の海沿いの地域や都心部などは屋外で越冬させやすく、南向きのマンションの高層階などでも越冬する可能性があります。
冬越しを成功させるポイント
最も重要なポイントは、置き場所や植える場所。建物の北側は、冬の冷たい北風により植物が傷むことが多いので、温度の下がりにくい南側を選びましょう。
また、寒さに強い種類であっても小苗は性質が弱く、屋外では枯れてしまうことが多いので、できるだけ大株を購入しましょう。
株周辺に藁などを厚く敷き詰めたり、不織布を全体にかけるなどの防寒対策も有効で、冬越しの成功率がかなり高まります。これらの冬越し成功のポイントを押さえたうえで、育ててほしいおすすめの種類をご紹介します。
ルリマツリ

学名 Plumbago auriculata
和名 ルリマツリ
英名 Cape Leadwort
科名 イソマツ科
属名 ルリマツリ属(プルンバゴ属)
原産 南アフリカ
枝がよく伸びて垂れ下がり、爽やかな青色の花を春から秋まで長期間咲かせます。地植えすると枝葉が茂って横方向にもよく広がります。高い場所に植えると下垂する枝に多くの花を咲かせ、見応えがあります。周囲に広がらないように栽培するには、鉢植えで育てるか、あんどん支柱などに枝を誘引します。
最低温度の目安はマイナス5~マイナス7℃なので、関東でも多くの地域で越冬が可能です。軽い霜が降りる程度なら耐え、地上部が枯れても根は生存して春に芽が出てきます。
育て方
日当たりと水はけのよい場所が適します。半日陰でも花は咲きますが、枝葉が間のびして花付きが悪くなります。
鉢植えは、表土が乾いたら水やりします。枝葉がよく茂っている株は、夏の晴れた日は毎日水やりしてください。地植えの場合は、ほとんど水やりの必要はないでしょう。
肥料は、鉢植えの場合は、5〜10月に3要素が等量の緩効性化成肥料などを十分与えるようにしてください。
地植えの場合は根がよく発達するので、多く与える必要はありません。春の5~6月と、秋の9月の2回与えればよいでしょう。
ニオイバンマツリ

学名 Brunfelsia australis
和名 ニオイバンマツリ
英名 Yesterday-today-and-tomorrow
別名 アメリカンンジャスミン
科名 ナス科
属名 バンマツリ属(ブルンフェルシア属)
原産 ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ
紫から白に色変わりする花がユニークで、爽やかな芳香があります。春の満開時には株全体に花をたくさん咲かせ、その後は断続的に長期間花が楽しめます。地植えするとよく茂って背丈を越えるほど大きくなり、見応えがあります。
鉢花として流通してきましたが、寒さに強いことが徐々に知られるようになり、近年は庭木として植えられることが多くなっています。マイナス5℃程度までの耐寒性があり、関東地方以南の霜の降りない地域では屋外で越冬します。関東では、南部の海沿いの地域や都心部などで越冬しているのを確認されています。
育て方
日当たりがよく、湿り気のある土壌を好みます。水が溜まりやすい水はけの悪い場所や、風当たりの強い乾燥しがちな場所は避けてください。
地植えの場合、雨が長期間降らず、土壌が過度に乾燥しているときは水やりしてください。鉢植えは表土が乾いたら水やりしますが、夏の晴天時は毎日与えてください。また乾燥を避けるため、夏は西日の当たらない半日陰で管理したほうがよいでしょう。
花をよく咲かせるには、5〜10月の生育期間は肥料を十分与えるようにしてください。
エンジェルウィングジャスミン

学名 Jasminum laurifolium (Jasminum nitidum)
和名 オオシロソケイ(大白素馨)
英名 Angelwing Jasmine
科名 モクセイ科
属名 ソケイ属(ジャスミナム属)
原産 ヒマラヤ、ネパール、インド、バングラデシュ、タイ、ミャンマー、中国
香りのよい花を咲かせるジャスミンの仲間は、多くの種類が園芸植物として育てられます。よく流通するハゴロモジャスミン(Jasminum polyanthum)のほか、エンジェルウィングジャスミンも寒さに強く、霜の降りにくい暖地では屋外で越冬します。
ヒマラヤから中国南部の広い地域が原産で、春から秋まで長期間花を咲かせます。繊細な美しさの白い花は、光沢のある濃い緑の葉との対比も鮮やかで美しいです。
最低温度の目安はマイナス5~マイナス7℃です。関東では南部の海沿いの地域や、都心部などの屋外でよく越冬しています。
ホワイトプリンセスの流通名で出回るソケイ(J. officinale)も開花期間が長く、同様に育てることができます。
育て方
日なたから半日陰で育てます。日なたではコンパクトな低木状に育ちます。半日陰ではつる性の性質が強くなり、6m程度まで枝がよく伸びます。
鉢植えは表土が乾いてから水やりしますが、夏の晴天時は毎日与えてください。地植えの場合は、夏に土壌が過度に乾燥したら水やりしてください。
花をよく咲かせるには、5~10月の生育期間はリン酸が多めの肥料を与えるようにしてください。
ハナチョウジ

学名 Russelia equisetiformis
和名 ハナチョウジ(花丁字)
英名 Firecracker Plant
科名 オオバコ科
属名 ハナチョウジ属(ラッセリア属)
原産 メキシコ、グアテマラ
高さ2mほどになる常緑低木で、スギナのような枝葉に筒状の花をたくさん咲かせます。花色は定番の赤のほか、薄ピンクや白などがあります。四季咲き性で、生育期間の春から秋まで長期間花を咲かせます。暑さや乾燥、病害虫に強く、丈夫で育てやすいです。枝葉がよく茂って垂れ下がるので、吊り鉢にしても見応えがあります。
冬に乾燥気味に保てばマイナス5℃程度までの低温に耐え、地上部が枯れ込んでも春に芽が出てきます。
育て方
日当たりのよい場所を好みますが、半日陰でも開花します。
水やりは、鉢植えの場合は表土が乾いてから行います。夏に枝葉がよく茂っている鉢植えは、晴天時は毎日水やりしてください。地植えの場合は、根付けばほぼ水やりの必要はありません。土壌が過度に乾燥したら水やりしてください。
肥料は鉢植えの場合は、5~10月に、3要素が等量、またはリン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。地植えの場合は、5~6月と、9月の2回与えればよいでしょう。
ハナセンナ(アンデスの乙女)

学名 Senna corymbosa
和名 ハナセンナ(花旃那)
英名 Argentine senna
科名 マメ科
属名 センナ属(カッシア属)
原産 アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ
樹高2~3mになる低木です。アンデスの乙女という流通名で知られ、秋に黄色の花をたくさん咲かせます。大きく育たなくても花はよく咲くので、鉢植えの開花株が一般に出回ります。羽状の濃い緑色の葉は、夜間に閉じる性質があります。日光によく当てて育てれば、病害虫の被害もほとんどありません。地植えすると、放置気味でもよく育ちます。ただし枝葉が茂るので、年に1回以上は剪定するようにしてください。
最低温度の目安はマイナス5~マイナス8℃です。軽い霜が降りても耐えます。
同じ仲間のコバノセンナ(Senna pendula)も寒さに強く、同様に育てることができます。
育て方
日当たりと水はけのよい場所で育てます。土壌は比較的選びません。
鉢植えは、表土が乾いたら水やりします。地植えの場合は、ほぼ水やりしなくてもよいでしょう。
また、地植えの場合は肥料を施さなくてもよく育ちます。マメ科の植物は、根の共生菌により空気中のチッ素を利用しています。油かすなどのチッ素肥料を与えると、かえって花付きが悪くなって軟弱に育つので注意してください。鉢植えは、リン酸が多い骨粉などの肥料を春の5~6月に与えればよいでしょう。
大きくなりすぎたら、春の4月頃に50cmくらいの高さで切り戻してコンパクトに調整することも可能です。
コエビソウ

学名 Justicia brandegeeana
和名 コエビソウ(小海老草)
英名 Shrimp Plant
科名 キツネノマゴ科
属名 キツネノマゴ属
原産 メキシコから中央アメリカ
連続開花性に優れる多年草で、重なりあった苞がエビのように見えるところから「小海老草」という名前がつきました。日当たりのよい場所ではよく分枝して、ブッシュ状の草姿になります。日照が不足気味の場所では枝がよく伸びて1m以上の高さになり、壁やほかの植物などに寄りかかるように生育します。深刻な病害虫もなく、丈夫で育てやすいです。花壇に植えてもよく、ユニークな姿で人目を引きます。
マイナス5℃程度までの低温に耐えます。室内で冬越しさせると、暖かい部屋では花が咲くことがあります。
近年は流通量が少なくなっていますが、長期間花が楽しめて育てやすいので、見直したいトロピカルプランツです。
育て方
日なた~半日陰の肥沃で湿り気のある土壌を好みます。乾燥を嫌うので、風当たりの強い場所は避けてください。明るい日陰でも花が咲きますが、あんどん支柱など支えが必要です。鉢植えは、夏は西日の当たらない半日陰に移動したほうがよいでしょう。
鉢植えの水やりは、春と秋は表土が乾いてから、夏は毎日与えます。
長期間花が咲くので、鉢植えでは肥料を十分与えるようにしてください。5~10月には、リン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。地植えした場合は5月と7月、9月に、様子を見ながら2~3回与えてください。
ランタナ

学名 Lantana
和名 七変化(しちへんげ:ランタナ・カマラ)
英名 Common Lantana
科名 クマツヅラ科
属名 ランタナ属
原産 熱帯アメリカ
ランタナの仲間で栽培されているのは、低木状になるランタナ・カマラ(Lantana camara)と、匍匐(ほふく)性のコバノランタナ(L.montevidensis)、両種の交配種などです。また、一般にランタナと呼ばれているのは、ランタナ・カマラと交配種です。
これらは連続開花性が強く、暑さに負けずに春から秋まで花が咲き続けます。その丈夫さは、花壇苗の中でも最高レベルです。ただし繁殖力が強いため熱帯~亜熱帯地域では深刻な雑草となっています。種子のできない「ブルーミファイ」シリーズや、交配種の種子ができにくい品種などを植えれば、むやみに繁殖することはないでしょう。
マイナス5℃程度の耐寒性があり、軽い霜が降りるると地上部の大部分が枯れますが、根元付近は生き残ります。
育て方
日なた~半日陰が適します。土壌は比較的選ばず、よく育ちます。
鉢植えの水やりは、春と秋は表土が乾いてから、夏は毎日与えます。地植えは、夏に雨が降らずしおれてきたら水やりしてください。
鉢植えは5~10月に、リン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。地植えの場合は、5月と9月に与えればよいでしょう。
ピンクバナナ

学名 Musa velutina
英名 Pink Banana、 Hairy Banana
別名 アケビバナナ、ベルチナバナナ
科名 バショウ科
属名 バショウ属
原産 インド
耐寒性のあるバナナの仲間で、高さは2mほどになります。みずみずしく大きな葉を広げる姿は、花がなくてもトロピカルムードの演出に最適です。ピンク色の花や実はユニークで美しく、多くの人の目を引き付けることでしょう。冬に地上部が枯れても、春には芽を出し、夏から秋にかけて花を咲かせて実を付けます。
果実はタネが非常に多いですが甘く、アケビのように食べることができます。熟すと裂けるので、鳥や虫などに食べられることが多いです。
育て方
日当たりがよく、肥沃で湿り気のある土壌を好みます。ただし雨が降った後などに水がたまるような場所は避けてください。また強風で傷みやすいので、吹きさらしのような風当たりの強い場所は避けてください。
地植えでも土壌が乾燥している場合は、水やりしたほうが早く育ちます。鉢植えは、春は表土が乾いてから、夏から秋は晴天時は毎日与えてください。
生育が早く旺盛なので、5~10月の生育期間は、骨粉入りの油かすや3要素が等量の化成肥料などを十分与えるようにしてください。
鉢植えで育てる場合は、入手したポット苗を6号鉢に植え替え、最終的に10~12号鉢くらいの鉢で育てます。
冬は株の周辺などに藁などを敷いて防寒対策をするとよいでしょう。
越冬するその他のトロピカルプランツ
今回ご紹介した8品種のほかにも、東京に似た気候の地域ならば屋外で越冬できる種類は、以下を参考にしてください。
ウキツリボク/ランタナとコバノランタナ/ミッキーマウスの木/ブーゲンビレア/シコンノボタン/ヤコウボク/エンジェルストランペット/トケイソウ/パッシフロラの園芸品種/ヘディキウム
トロピカルプランツを屋外で育てるポイント

- 冬の冷たい北風が当たる場所は避ける
- 敷き藁などの防寒対策が有効
- 建物の近くは温度が下がりにくい
- 大株は越冬しやすい
ご紹介した植物は、地植えすれば放任気味でも育ち、花が長期間楽しめるものばかりです。冬越しして大きく育った株は、珍しくもあり、大いに人目を引く美しさです。あまり手間をかけずにトロピカル風のガーデニングを楽しめるので、ぜひ栽培に挑戦してみてください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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