冬に咲くラケナリアの育て方|初心者でも簡単! 色鮮やかでかわいい花を長く楽しむ球根栽培ガイド
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花が少なくなる寒い季節に、まるで宝石のように色鮮やかな花を咲かせるラケナリア。南アフリカ原産のこの球根植物は、愛らしい花と個性的な葉模様で、冬の窓辺を彩ってくれます。この記事では、初心者でも失敗しないラケナリアの育て方、品種の特徴、開花を長く楽しむコツを詳しくご紹介します。
目次
ラケナリアの基本情報

植物名:ラケナリア
学名:Lachenalia
英名:Cape cowslip、African hyacinthなど
和名:アフリカヒアシンス
その他の名前:アフリカンヒヤシンス、ラシュナリア
科名:キジカクシ科
属名:ラケナリア属
原産地:南アフリカ
形態:宿根草(多年草)
ラケナリアの学名はLachenaliaで、学名がそのまま流通名になっています。キジカクシ科ラケナリア属の球根植物で、旧分類ではユリ科やヒアシンス科に分類されることもあります。花茎を立ち上げて筒状の小さな花をたくさん咲かせる姿から、アフリカヒアシンス、アフリカンヒヤシンスとも呼ばれます。種類が豊富で、秋冬咲き種と春咲き種があり、冬から春に愛らしい花姿を見せてくれます。
ラケナリアの原産地

ラケナリアの原産地は南アフリカ、ケープ地方。近年人気が高まっている「ケープバルブ」(ケープ地方原産の球根植物の総称)の1つです。ラケナリアは約100種が分布しており、花色、花姿は種類によってさまざまです。主に乾燥地に自生しているため、日当たりと風通しのよい場所を好み、多湿な環境が苦手。寒さに弱く、霜が降りたり、凍結したりする場所では枯れてしまいます。一方、暑い時期には休眠しているので、暑さに生育が左右されることはありません。
ラケナリアの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:12〜翌年4月
草丈・樹高:15〜30cm
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い(休眠中)
花色:白、赤、ピンク、オレンジ、黄色、緑、青、紫、複色など
ラケナリアの開花期は12〜翌年4月で、種類によって秋冬に咲くもの、越年して春に咲くものがあります。花色は白、赤、ピンク、オレンジ、黄色、緑、青、紫、複色など、多彩に揃います。花茎を伸ばして円筒状や釣鐘形の小さな花を多数連ねて穂状になり、ムスカリの花を少し大きくしたような姿になります。種によって異なりますが、葉はやや肉厚で細長い線状または剣状の葉を全方位に広げ、また葉に斑点が入るものもあり、それぞれ個性があります。草丈は15〜30cmでコンパクトにまとまり、扱いやすい植物です。
ラケナリアの名前の由来や花言葉

ラケナリアという名前は、スイスの植物学者ヴェルナー・ド・ラシュナール(Werner de Lachenal)にちなんで名付けられました。
ラケナリアの花言葉は「移り気」「変化」「持続する愛」「好奇心」などです。
ラケナリアの代表的な種類

ラケナリアは種類が多く、鮮やかな花色や香りを持つ品種なども多くあります。ここでは、その中から人気の品種を一部ご紹介します。
ラケナリア・アロイデス

最もよく親しまれている種類です。英名はケープ・カウスリップ。冬から早春にかけて、円筒形の花が下向きに垂れ下がるように開花します。つぼみはオレンジ色で花は濃い黄色になるため、美しいグラデーションが楽しめます。多くの変種があることでも知られ、一般にラケナリア・オーレアと呼ばれるオーレアや、クアドリコロル、ルテオラなどがあります。

ラケナリア・ビリディフローラ

光沢のある透き通った翡翠色の花が美しく、人気の品種。花は横から上向きに咲きます。晩秋から初冬に開花する早咲き種。
ラケナリア・コンタミナタ

花茎を伸ばし、先端が赤茶色の小さな白花を穂状に咲かせます。英名ワイルド・ヒヤシンス。主に冬~春に開花します。
ラケナリア・プンクタータ(ラケナリア・ルビダ)

鮮やかなルビーレッドの花を垂れ下がるように咲かせます。ラケナリアの中では開花期が早く、11月頃から咲き始めます。ほかのラケナリアよりも耐寒性が高いのも特徴です。
ラケナリア・ムタビリス

花は青っぽい色から、咲き進むと赤みを帯び、先端部分は山吹色に紫褐色の斑が入ります。開花期は2~3月。
ラケナリアの栽培12カ月カレンダー

開花時期:12〜翌年4月
植え付け・植え替え:9〜10月
肥料:9~10月(元肥)
ラケナリアは秋植え球根で、9〜10月に植え付けると発芽して生育し始め、種によっては秋冬に開花するもの、越年して春に開花するものがあります。開花後は茎葉が残り、光合成をして球根を太らせ、夏前には茎葉が黄色く枯れ込んで休眠。枯れた茎葉は刈り取って処分し、球根は植えたままにしてもいいし、掘り上げて保管しておき、適期に植え直してもかまいません。
ラケナリアの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所で管理します。半日陰の場所でも生育しますが、日照不足では花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとしたか弱い茎葉ばかりが茂って草姿が間のびしたりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】冬に室内に取り入れる場合は、日当たりのよい場所で管理します。
【置き場所】ラケナリアは寒さに弱く、霜が降りたり凍結したりする環境では枯れてしまうため、基本的に鉢栽培とします。水はけのよい土壌を好むので、乾きやすいテラコッタ鉢などに植えるのがおすすめ。鉢内に水が残らないよう、大きすぎるものは避け、適したサイズの鉢に植えましょう。
耐寒性・耐暑性
生育適温は10〜20℃前後で、寒さに弱く、霜に当たると枯れてしまいます。冬に凍結する地域では室内の日当たりのよい窓辺や温室などで管理しましょう。暖房が強く効いた部屋では間伸びすることがあります。暖地では、軒下など凍結しない場所なら戸外でも越冬します。夏は休眠しているため、断水して鉢ごと涼しい場所へ移動するとよいでしょう。
ラケナリアの育て方のポイント
ラケナリアは寒さに弱いため基本的に鉢栽培とし、季節によって適した場所に移動しながら管理しましょう。
用土

ラケナリアは、水はけのよい土壌を好みます。用土は草花用にブレンドされた市販の培養土を使うと手軽です。自身で配合土を作るなら、赤玉土6、腐葉土4の割合で混ぜて使用するとよいでしょう。
水やり

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、ラケナリアは多湿を嫌うので、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いてから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。夏に休眠した後は水やりを控え、断水します。真冬には、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
肥料

植え付けの際に、元肥として緩効性肥料を施しておきます。開花期になったら速効性のある液肥を薄めに希釈して2週間に1度を目安に、水やりがわりに与えましょう。花後も球根を充実させるために、休眠するまで同様にして液肥を与えます。基本的に肥料は控えめでよく、充実した球根であれば追肥を与えなくてもよく育ちます。
注意する病害虫

【病気】
ラケナリアはあまり病気の心配はありませんが、まれに白絹病やウイルス病を発症することがあります。
白絹病はカビが原因で、周囲に伝染しやすい病気です。根や茎に発生しやすく、発生初期は地際あたりに褐色の斑点が見られ、病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて枯れてしまいます。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
ウイルス病はアブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの虫が媒介となって発症します。したがって、発生しやすい時期はアブラムシなどの活動が活発な春から秋にかけて。主に花や葉に被害が発生し、モザイク模様が現れます。症状が進むとウイルスの種類によっては葉などが縮れてきたり、湾曲して変形したりし、株の生育が著しく悪くなります。治療効果のある薬剤はないので、発生したら抜き取って土ごと処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。アブラムシ対策をしておくことが予防につながります。
【害虫】
ラケナリアはあまり害虫の心配はありませんが、アブラムシやハダニが発生することがあります。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
ラケナリアの詳しい育て方
球根の選び方

球根を購入する際は、直径2〜3cmでふっくらとして充実し、重みがあるものを選びます。カビやシワが見られるものや、軽いもの、やわらかいものは、生育不良や病気を引き起こす恐れがあるため、避けたほうが無難です。ラケナリアの球根の主な販売時期は9〜10月です。花苗店やホームセンターなどで見つからない場合は、ネット通販などで入手することもできます。
植え付け

ラケナリアの球根植え付け適期は、9〜10月です。ラケナリアには11〜12月に咲く「冬咲き種」と4〜5月に咲く「春咲き種」があります。「冬咲き種」は早めの9月上旬頃に植え付け、芽吹くまで風通しがよく涼しい日陰で管理すると、1カ月ほどで発芽して12月中旬頃に開花します。春咲き種は、他の秋植え球根同様に十分気温が下がってきた10〜11月に植え付けて管理します。
鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を入れます。土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。5〜6号鉢に3〜5球を目安に、均等に間隔を取って覆土は1cm前後で浅植えにします。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水やりしましょう。
日常の手入れ

【花がら摘み】
ラケナリアは次々に花が咲くので、終わった花は園芸用バサミで切り取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとしてよく花がつき、長く咲き続けてくれます。また、枯れ葉があれば適宜取り除いておきます。
冬の寒さ対策

ラケナリアは寒さに弱いので、霜が降りたり凍結したりする地域では、日当たりのよい室内や温室に移動して管理します。室内に置く場合は、暖房の風が直接当たらない場所に置きましょう。凍結の心配がなく戸外で越冬できる暖地では、日当たりのよい軒下などに置き、鉢の表土にわらやバークチップを敷き詰めてマルチングをしておきましょう。不織布でふわりと鉢を覆っておくのも有効です。
増やし方

ラケナリアは球根植物で、地下の球根が分かれて増えていくので、掘り上げて分球し、増やすことができます。大株に育って込み合っているようなら、一度掘り上げてみてください。適したタイミングは、地上部が枯れて休眠に入る頃です。たくさんついている球根を分けて、ネットなどに入れて風通しのよい半日陰などに吊り下げて保存しておきましょう。10〜11月の球根植え付け適期に植え直します。
ラケナリア栽培でよくあるトラブルと対策

ラケナリアを植えたのに、咲かない、株が弱ってきたといった困りごとはありませんか? この章では、ラケナリアのトラブルや対策についてまとめました。
花が咲かない原因
ラケナリアの花が咲かない時は、以下の4つの原因が考えられます。
1 日当たりが悪い
ラケナリアは、十分な日光を受けないと花芽が作られにくく、花が咲かなくなってしまいます。日当たりの悪い場所で管理している場合は、日当たりのよいところに移動させましょう。春の開花頃には日当たりがよくても、季節が進むと同じ場所でも日陰になることもあるので、観察してみてください。開花が終わったからといって日当たりの悪い場所へ移動せずに、休眠するまでは日なたで管理します。
2 肥料分を適切に与えていない
球根植物は、地下の球根に養分をためているので、あまり肥料を与えずともよく育ちます。特にチッソ成分の多い肥料をたくさん与えていると、茎葉ばかりが茂って花が咲かなくなってしまうことがあります。
開花期にはリン酸やカリなど開花を促進する成分が配合された液肥を与えるとよいでしょう。また開花後、茎葉が光合成を行う時期に養分を吸収できずにいると、球根に養分を備蓄できずに花が咲かなくなってしまうこともあります。開花後は、お礼肥として株を回復させるために液肥を与えましょう。また、地上部が枯れて休眠するまでは、球根を太らせる目的で定期的に液肥を与えて様子を見てください。
3 花後に葉を切ってしまった
花後に葉を切ってしまうと、光合成不足によって十分に球根に養分が蓄えられず、花芽が作られなくなることがあります。花後に花茎は切り取りますが、葉はそのまま自然に枯れるまで残しておきましょう。邪魔になるからといって、葉を切ったり、しばったりするのは禁物です。
葉が黄色くなる原因
ラケナリアの葉が黄色くなる原因は、「過湿」か「病気」が考えられます。特にラケナリアは自生地が乾燥地で多湿を嫌うため、水やりをしすぎると根腐れを起こして根が養水分を吸収できなくなり、葉にも影響して黄色くなって弱るので注意。水やりは鉢の土がしっかり乾いてから行うのが基本です。また葉が黄色くなるとともに悪臭があれば、病気にかかっている場合もあります。その際は周囲に蔓延するのを防ぐため、直ちに病変株を抜き取って処分しましょう。
ラケナリアをもっと楽しむアイデア

鉢植えアレンジと寄せ植え
草姿がコンパクトにまとまり、カラフルな花色が揃うラケナリアは、暖地では冬の寄せ植えに利用することもできます。同じ開花期のパンジーやビオラ、スイートアリッサム、ムスカリなどとブーケのような寄せ植えを作ってみましょう。脇役として銅葉や銀葉などのカラーリーフをプラスするとシックにまとまります。
ギフト用として
冬に開花するラケナリアは、ギフトに利用するのもおすすめです。花が少なくなる寒い時期に、窓辺を彩るので喜ばれます。鉢にラッピングを施し、メッセージを添えて贈っても素敵です。
冬を彩るラケナリアでガーデニングライフを豊かに

球根植物のラケナリアは、生育旺盛で放任してもよく育つため、ビギナーにも育てやすい草花の一つです。大鉢にたくさん植えて迫力を出したり、寄せ植えの一員として個性を発揮させたりと、ベランダや窓辺を華やかに彩ってはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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