小さな庭でも育てやすい! 華奢でモダンな庭木コハウチワカエデの剪定・日当たり・水やり完全ガイド
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切れ込みが浅く丸みを帯びた葉が愛らしく、秋には鮮やかに紅葉するコハウチワカエデ。和にも洋にも合う上品な樹形で、新緑から開花、結実、紅葉と、四季の移ろいを強く感じられるため、シンボルツリーとして人気の高い落葉樹です。ゆっくりとコンパクトに生育するので、小さな庭や限られたスペースにもおすすめ。この記事では、コハウチワカエデの特徴・ハウチワカエデとの違い・植え付けや剪定のコツを、初心者にも分かりやすく解説します。
目次
コハウチワカエデの基本情報

植物名:コハウチワカエデ
学名:Acer sieboldianum
英名:Siebold’s Maple
和名:コハウチワカエデ(小羽団扇楓)
その他の名前:イタヤメイゲツ(板屋名月)、キバナハウチワカエデ(黄花羽団扇楓)
科名:ムクロジ科
属名:カエデ属
原産地:日本(本州・四国・九州)
形態:落葉性高木
コハウチワカエデは、漢字で「小羽団扇楓」と書き、別名イタヤメイゲツ(板屋名月)とも呼ばれます。学名はAcer sieboldianum、ムクロジ科カエデ属の落葉高木で、カエデの仲間です。コハウチワカエデの原産地は日本で、本州、四国、九州に分布。夏の強い直射日光や乾燥は苦手ですが、寒さや暑さに強く、日本の気候に馴染むので、放任してもよく育ちます。
コハウチワカエデは自然樹高が10〜15mにも達する高木です。「そんなに高くなるのなら、庭木として取り入れるのは難しいのでは?」と及び腰になってしまいそうですが、毎年きちんと剪定をすれば、樹高や樹形をコントロールすることができます。
日本の秋を彩るカエデの紅葉。pryzmat/Shutterstock.com
コハウチワカエデの葉や花の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:5〜6月
草丈・樹高:10〜15m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:クリーム色
秋に美しく色づくコハウチワカエデの葉には、5~11ほどの切れ込みが入ります。イロハモミジのようにシャープにはならず、やや丸みを帯びたフォルムで切れ込みが浅めなので、赤ちゃんの手のひらのような優しくかわいらしいイメージ。葉のサイズは5~8cmほどで、葉柄は2~5cmほど。葉裏の葉脈や葉柄、若い枝に細かな毛が多く見られるのが特徴です。
5~6月にクリーム色の花が咲く
コハウチワカエデの開花期は5~6月で、花色はクリーム色。雌雄同株で雄花と両性花があり、15~20輪ほどの5弁花がぶら下がるように咲きます。花は小さくあまり目立ちません。花序には白い毛が密生しているのが特徴。開花後には長さ2cmほどの実(翼果)がつきます。2つの種子が合着して水平のプロペラ状となり、風に乗って遠くへ運ばれるつくりになっています。緑色の実は熟すと褐色になります。
華奢で和にも洋にも合うモダンな雑木で、シンボルツリーにも人気

コハウチワカエデは自然樹形がやわらかくまとまり、生育スピードがそれほど速いほうではないので、長く繊細な樹形を楽しむことが可能です。葉のフォルムが美しくモダンな雰囲気なので、和洋問わずにどんなスタイルの庭にも調和します。軽やかな葉は密に茂りすぎることはなく、バランスよく幹や枝が見えて鬱蒼とすることはほとんどありません。

自然樹高は10〜15mにも達する高木ですが、ゆっくりと成長して庭では基本的に5mほどの樹高にとどまるため、生育が早く剪定の手間がかかる樹種に比べて住宅向きの落葉樹といえるでしょう。繊細な樹形を生かし、玄関アプローチやフロントガーデンに植栽し、その家の顔となるシンボルツリーとして愛でるのもおすすめです。
コハウチワカエデの名前の由来と花言葉

コハウチワカエデ(小羽団扇楓)という名前は、ハウチワカエデに似ていて、より小型であることから。ハウチワ(羽団扇)は、葉の形を天狗が持つ羽でできた団扇に例えたものです。また、カエデは葉の形がカエルの手に似ていることから「かへるて(蛙手)」が転じてカエデになったと考えられています。
コハウチワカエデには「イタヤメイゲツ(板谷名月)」の別名がありますが、こちらは、ハウチワカエデの別名であるメイゲツカエデのような特徴を持ちながら、イタヤカエデに似ることが由来とされています。メイゲツカエデの名は秋の名月を楽しむ時期に落葉することや月明かりで美しい紅葉を楽しめることにちなみ、イタヤカエデは葉が旺盛に茂って板で吹いた屋根のように見えることが由来とされています。また「オオイタヤメイゲツ」というカエデもあります。
カエデの花言葉は「美しい変化」「調和」「遠慮」「大切な思い出」などです。
コハウチワカエデとハウチワカエデの違い

コハウチワカエデは、ハウチワカエデよりも葉のサイズが小さいのが特徴。ハウチワカエデの葉は10cm以上で、コハウチワカエデの葉は5~8cmほどとやや小ぶりです。葉柄の長さは、ハウチワカエデは葉の長さの1/4~1/2程度、コハウチワカエデが2/3~葉と同程度と、コハウチワカエデのほうが長めなのも特徴です。また、コハウチワカエデの花はクリーム色で、ハウチワカエデは赤い花を咲かせます。
コハウチワカエデの代表的な品種

国内でポピュラーに流通しているコハウチワカエデの品種には、次のようなものがあります。
‘笠取山(かさとりやま)’は、見た目は原種とほぼ変わりませんが、樹高がコンパクトで3mほどにまとまります。また、葉が明るいグリーンなのも特徴です。
‘相合傘(あいあいがさ)’は、濃いグリーンの葉には7つほどの切れ込みが入り、サイズがやや大きいのが特徴です。
‘袖の内(そでのうち)’は生育が遅めで、葉が密生します。葉は小さめで、9つに裂けます。
コハウチワカエデを栽培するデメリット

人気の高いコハウチワカエデですが、デメリットについても把握しておきましょう。
夏の直射日光に弱く暑さで枯れやすいので注意が必要
コハウチワカエデが自生するのは深い山奥で、多様な樹種が葉を茂らせてお互いに日陰を作り出す場所のため、周囲に遮るものが何もなく真夏に直射日光が照りつける場所を苦手とする傾向にあります。強い日差しを受けて葉焼けしたり、葉を落としたりし、紅葉が楽しめなくなることもあるので、植える場所選びには吟味が必要です。
株立ちは手に入りにくい場合も
繊細な樹形が美しいコハウチワカエデを欲しがる人はとても多いのですが、近年は流通量が少なくなっており、入手しづらくなってきています。特に繊細な姿が魅力の株立ち樹形の株は人気があるためなかなか見つからないケースもあります。
落葉樹なので落ち葉の掃除は必須
コハウチワカエデは落葉樹で、晩秋に紅葉したのちにすべての葉を落とします。冬は目隠しとしての効果を失ってしまうほか、枯れ葉の掃除に手間がかかることも知っておきましょう。
コハウチワカエデの栽培12カ月カレンダー

開花時期:5〜6月
植え付け・植え替え:12〜翌年3月
肥料:12月頃(地植え)
剪定:11~12月
コハウチワカエデのライフサイクルは以下の通りです。3月頃から新芽が動き出し、暖かくなると旺盛に葉を展開していきます。5〜6月に、小さな淡黄色の花が開花。10月頃にプロペラのような形をした実をつけ、11月下旬頃に紅葉した後、すべての葉を落として休眠します。休眠の期間は短く、地域によっては1月には樹液が動き出し、3月下旬頃には新芽を再び展開し始める……という1年のサイクル。一度根づけば、長い期間にわたって楽しめる植物です。
コハウチワカエデの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】コハウチワカエデは日当たり・風通しのよい場所を好みます。日照不足では成長が遅く、紅葉も美しく発色しなくなるので注意しましょう。ただし、強い直射日光や夏の西日は葉焼けの原因になります。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】乾燥がやや苦手で、適度に水はけ・水もちのよい土壌づくりをすることが大切です。乾燥対策として、根元をバークチップなどで覆ってマルチングをしておくとよいでしょう。また、夏に西日が強く当たる場所では葉焼けすることがあるので、午前のみ日が差す東側などが植え場所に向いています。
耐寒性・耐暑性
日本の寒さ、暑さには適応しますが、栽培の北限は北海道南部くらいまでです。冬は寒風が吹きさらしにならない場所を選んでください。
コハウチワカエデの育て方のポイント
用土

【地植え】
まず一年を通して日当たり・風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、木の幹や枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。
【庭植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いてひどく乾燥する場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。また、枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が止まり、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え】
落葉してすぐの12月頃に、寒肥として有機質肥料を木の周囲にまき、土になじませます。
【鉢植え】
4〜5月、9〜10月、12月に緩効性化成肥料をまき、土になじませます。生育期に、木に勢いがなく成長が止まっているようなら、速効性のある液体肥料を水やりがわりに与えるとよいでしょう。
注意する病害虫

【病気】
コハウチワカエデに発生しやすい病気は、うどんこ病、炭疽病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢などに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたようになります。放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病害部分を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
炭疽病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点ができるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していきます。密になると発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発症しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。
【害虫】
コハウチワカエデに発生しやすい害虫は、アブラムシ、テッポウムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4㎜の小さな虫で繁殖力が大変強く、枝葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
テッポウムシは、ゴマダラカミキリの幼虫です。成虫が幹などに産卵し、木の内部に入って食害します。幼虫は1〜2年にわたって木の内部を食害し、木は徐々に樹勢が弱って枯死することも。木の周囲にオガクズが落ちていたら、内部にテッポウムシがいることが疑われます。発見次第、侵入したと見られる穴に薬剤を注入して駆除しましょう。
コハウチワカエデの詳しい育て方
苗木の購入方法
コハウチワカエデの苗木は流通が多くないため、通信販売などを利用すると便利です。幼木のコハウチワカエデは、葉の切れ込みが深いなど異なる形の葉をつけているときがありますが、成長すると通常の形の葉をつけるようになります。
植え付け

コハウチワカエデの植え付け適期は、休眠中の12〜翌年3月頃です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗木の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れたら、苗木を鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足して植え付けます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。しっかりと根づくまでは、倒伏を防ぐために支柱を立てて誘引しておきます。
剪定

コハウチワカエデは成長速度が遅いため、頻繁な剪定はほぼ必要ありませんが、不要な枝や枯れ枝などは落葉期に整理するとよいでしょう。落葉樹は、葉を落とした後の休眠期ならいつでも剪定してよいものですが、コハウチワカエデは休眠期が短いため、剪定は早めの12月までに済ませるのがポイントです。
コハウチワカエデは樹形が左右対称にはならず、幹も真っ直ぐには伸びず不定形に成長します。自然な樹形のバランスを保ちながらすかしていく剪定を心がけるとよいでしょう。幹と競合するような勢いの強い立ち枝や、地際近くから伸びて樹形を乱している枝、内側に向かって伸びている逆さ枝、他の枝に絡んで邪魔になっている絡み枝、地際から出ているひこばえなどは元から切り取ります。また、枝が込み合っている部分があれば、風通しをよくするために邪魔な枝を元から切りましょう。ただし、コハウチワカエデは真夏に強い日差しが幹に当たると焼けてしまうことがあるので、すかしすぎないようにし、葉が程よく茂るようにします。
あまり大きくなりすぎないように、樹高を抑えたい場合は、幹を外側に向かう枝の少し上で切りましょう。
コハウチワカエデの繊細な樹形と季節感を楽しもう

カエデの中でもぽってりとした葉姿がかわいらしいコハウチワカエデ。日本原産の植物のため環境に馴染みやすく、放任してもよく育つ庭木の一つです。新緑や紅葉が美しいのでシンボルツリーにするのもおすすめ。玄関アプローチやフロントガーデンに植栽してはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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