「私の庭・私の暮らし」森の中に暮らすような癒やしの庭を目指す群馬県・新井邸
花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。SNSで全国のガーデニング仲間とつながりながら、自身も千葉の自宅でDIYと庭づくりを楽しむ橋本景子さんが、お気に入りの庭をご案内。今回は、森のように木々が葉を茂らせ、バラが優しい色を添える群馬県の新井ひろみさんの庭をご紹介します。
目次
美しいファサードの新井邸と庭
大きな三角屋根に暖炉の煙突を備えた母屋。敷地を縁取るように円錐形に刈り込まれたツゲが並び、白い壁と石張りの玄関ポーチという美しいバランスのファサードに、家主のこだわりが表れています。
今回ご紹介する新井ひろみさんのご自宅は、群馬県伊勢崎市の静かな住宅街にあります。のどかな田園風景の中で目を引く外観の新井邸に初めて伺ったのは、昨年の春のこと。それから何度か足を運び、季節ごとのガーデンの移り変わりを見せていただきました。
2000年に家を建て、ひろみさんが庭をつくり始めたのは2010年から。最初は、植物のことはよく知らず、芝生と樹木があればいいかと思っていた程度だったそうで、業者さんに木を2本だけ植えてもらい、芝生は自分たちで植えたそうです。
部屋から見える景色づくりからスタート
その後、今では師として仰ぐ I さんに出会い、庭を見せていただいた際、「まるでどこかの森の中にいるようなナチュラルな庭」に衝撃を受けたといいます。それを機に、I さんにアドバイスをもらいながら、玄関先のコニファーやシャクナゲを移植し、ウッドデッキを撤去して、石張りのテラスをつくりました。
軽井沢や八ヶ岳のような自然が好きなひろみさん。憧れだった「どの窓からも庭に育つ木々の緑が見える」ことや「蝶が舞い、小鳥がさえずる庭」を目指し、まずは I さんがすすめてくれた木々を植えました。それは、花が咲いて実がなるナツハゼやアオハダ、アオダモ、トネリコ、オトコヨウゾメなどです。そして、小鳥を呼んで害虫を食べてもらうという自然のサイクルに逆らわないナチュラルな庭づくりを目指してきました。
今では20本を超える樹木が育ち、森のような理想の庭になりました。
頑張りすぎない庭づくり
ひろみさんが植物を選ぶ時、一番に考えるのは「自分の庭に合うかどうか」だといいます。
「バラを植えたいけれど、樹木の庭には派手な雰囲気のバラが似合わないから…。たおやかに咲くオールドローズが春に一度咲いてくれるだけで十分だし、可愛い感じの寄せ植えも、なんとなくこの庭には合わない気がするの。だから、あまりたくさんは置かないんです」
「放っておいても育つ樹木と紫陽花などの手間いらずの低木があれば、無農薬で環境にも優しく、手間をかけなくてもナチュラルなガーデンができると思って、それを実践しています」
5、6年前からオープンガーデンも始めましたが、それは見に来てくれた人に「そんなに頑張らなくても、これくらいの庭はつくれるよ。だからやってみて」という勇気と、「放っておいても植物は元気に育つよ。いつもお花に囲まれていなくても、主役となる木があるだけでも庭は十分きれいだから」という想いを感じてもらいたい。ガーデニングに対するハードルを下げてもらいたいという、ひろみさんのささやかなアピールなのです。
メンテナンスフリーと無農薬の庭を目指して
「これからはメンテナンスが必要じゃない庭を目指します」というひろみさん。
まずは、雨が降ると表土に水が溜まる部分は、秋になったらレンガを敷いたり、自宅の周辺に建った4軒の住宅に配慮して、植物が越境しないように、地植えの宿根草を減らしたりして、10年を目標にメンテナンスが必要の無い庭にシフトしていく予定です。
また、「これ以上大きくならないように、木の剪定にも力を入れなくては」とも。
樹木は、3年に1回程度の強剪定も必要になります。でも、やりたいことや、やらなくてはいけないことができないのでは、せっかくの癒やし空間がストレスになるし、庭仕事だけで休日が潰れるのは本末転倒。だから、やることを減らしたり、効率のよい方法を探ることはとても大切です」
ひろみさんは無農薬でのガーデニングなので、虫がついてないかが気になるからと、いつも庭を見回っています。例えば、イラガやアメリカシロヒトリは卵のうちに駆除することが大切で、地面に落ちているフンを見つけたら、その上方を確認して、被害が拡大する前に虫を見つけるのも重要なポイントになります。
無農薬でのガーデニングだからこそ虫が来たり、鳥が来たりするのですが、それをどう上手にコントロールしていくのかも、ひろみさんにとって、これからの大きな課題です。
憧れは庭の中だけでなく自宅ショップでも実現
若い頃から雑貨が好きというひろみさんは、自由が丘や、函館や小樽などの港町にある雑貨屋さんの風景に憧れていました。いつか雑貨のお店をやってみたいと、ずっと温めてきた夢を自宅で実現することに。それは、隠れ家的な、ほっとできる空間。お店というよりも、お友達の家に遊びに行くような感覚でお買い物ができる場所を開いて17年になりました。
最初は週に1回のオープンで、子供たちに合わせて夏休みや冬休みもとっていました。現在は平日だけオープンの通年営業。ワークショップやナチュラルマーケットなどのイベントを開催したりしながら、家族に迷惑をかけない範囲でやっています。
四季折々魅力いっぱいのひろみさんの庭
【5月下旬】
玄関から庭へのアプローチでは、フタマタイチゲの小さく白い花がお迎えしてくれました。
石張りのテラスにはバラの鉢植えが並び、雑貨と調和してナチュラルに見せる工夫が感じられます。*
【6月初旬】
「将来はアジサイだけの庭にしたい」というひろみさん。庭のそこここに、色鮮やかに咲く大好きなアジサイたち。
【7月下旬】
夏の庭を華やかに彩る水無月が満開を迎える頃、シマトネリコの木には毎日のようにたくさんのカブトムシが樹液を吸いに集まってきます。
【11月中旬】
季節は流れ、木々は葉を落とし、三角屋根がくっきりと現れました。
アプローチの主役はノコンギクに交代。紅葉が始まった美しい庭を訪れたら、落葉がきれいに掃き清められていました。そんなひろみさんの心遣いに心も癒やされます。
紅葉した葉と、黒く色づいたナツハゼの実がとても魅力的。テラスの植物もすっかり秋色に。
【1月下旬】
雪が降った日の庭は、まるでどこかの別荘地のように美しく静かです。
【5月初旬】
カナダのプリンスエドワード島に憧れて、ひろみさんが植えたルピナス。今は使われていない牛舎をバックに一面に広がって、まるで北海道のような素晴らしい景色になりました。
ルピナスもこれだけ群生すると見事ですね。ちょうど満開のタイミングで庭を見せていただいた私はラッキーでした。ルピナスの隣に生えていた、花束にしたピンクのお花は「モモイロツメクサ」(写真右)でしょうか?
取材に通っていた一年間、ひろみさんの包み込むような優しさや温かさがとても心地よく、ついつい話し込み、長居をしてしまいました。植物が生き生きと育つ素敵な庭と、猫が描かれたカップで出してくれたコーヒーも美味しくて、楽しい取材となりました。
Credit
写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
写真(*)/新井ひろみ
新井ひろみさんのインスタグラム anne.panne7
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