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オージープランツに似てる⁈ 南アフリカの植物たち

DalequedAle/Shutterstock.com
切り花でも個性的なフォルムで、インパクトのある花束に使われることが多いプロテアやピンクッション、リューカデンドロン。オージープランツ(オーストラリア原産の植物)と勘違いされていることが多いこれらが、じつは違う国の植物なのはご存じでしょうか。神奈川県の自宅の庭で25年間、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主、遠藤昭さんが、日本ではまだ広く知られていない南アフリカの植物をご紹介します。
目次
オーストラリアでも勘違いされている南アフリカの植物とは
南アフリカは草花の宝庫として知られ、たくさんの草花が日本にも入ってきている。その中のいくつかは、オージープランツに非常に似ていて、実際オーストラリアでもたくさん見かけたし、オーストラリア人でもオーストラリア原産だと思い込んでいるものが多いんだなぁと感じていた。その中には、最近人気のプロテアやピンクッション、リューカデンドロンなどがあるが、これらはバンクシアと同じヤマモガシ科の植物。そして、育て方も共通している。

もともとアフリカ大陸とオーストラリア大陸は繋がっていて、2億年前に分裂したとされている。また、南アフリカとオーストラリアの一部地域は、ともに地中海式気候である。そのためオーストラリアは、プロテア、ピンクッション、リューカデンドロンの切り花の生産地にもなっており、日本にも輸出されている。
今回は、そんな3つの植物をご紹介しようと思う。
大きな花が印象的な「プロテア」

僕が初めて、オーストラリアでキングプロテアの花を見た時は、その存在感に圧倒された。直径が20cmもあり、美しさと共に、力強さをも感じさせてくれる特異なオーラを発する姿に、花というより芸術品に出合ったような感動を受けた。
プロテアの名は、ギリシャ神話のプロテウスに由来するという。自分の意志でその姿を自由自在に変えられる海神プロテウスだ。神レベルの立派さ豪華さに、荘厳な雰囲気まで持ち合わせた花なのだ。

プロテアは南アフリカ共和国の国花に指定されている。切り花での流通が多いが、最近は鉢植えの苗を時々見かける。
僕自身、実生や鉢植えで幾度か栽培に挑戦したが、随分と失敗もした。
正直、育てるのは、かなり難度の高い植物だと思う。冬の寒さだけでなく、日本の梅雨時の蒸し暑さと過肥も苦手な植物だ。のちほど育て方にも触れようと思う。
プロテアというと、どうしてもキングプロテアを連想するが、最近はもう少し小ぶりな園芸品種も出回っている。


一つはプロテア‘ジュリエット’(Protea ‘Juliet’/Protea magnifica x pudens)で、もう一つは、プロテア‘ピンク・アイス’(Protea ’Pink ice‘/Protea neriifolia x susannae)だ。
どちらも、プロテアの中では比較的日本で育てやすい。丈夫で水やりも少なく、ローメンテナンス。ローズピンクの花で、ドライフラワーとしても楽しめる。
針山のような姿「ピンクッション」

さて、次にご紹介するのは、ピンクッションだ。正式には、レウコスパルマン(Leucospermum)。
針山のような形をしているので、ピンクッションと呼ばれる。南アフリカ原産の樹木は多くの原種が極めて限られた地域に生育し、絶滅の危機に瀕しているといわれる。しかし、この常緑で華やかな大きな花木は、園芸品種として世界各地で栽培され、切り花としても人気。樹高最大1.5m程度の直立した常緑低木だ。


花は球形で、直径10〜12cm。色は黄色、オレンジ色、紅色などがある。
オーストラリアやニュージーランドでもよく見かけた。

新品種の流通がスタートしている「リューカデンドロン」

3つ目は、リューカデンドロンだ。この植物も、よくオージープランツに間違えられる。オーストラリアで生産されている切り花が日本に入ってきているせいかもしれない。
リューカデンドロンの魅力は、さまざまな葉の色合いだ。特に最近、世界各国の育種家により、じつに多くの園芸品種が作出され、流通も始まっている。これからますます人気が出ること間違いなしの植物だ。

リューカデンドロン‘サファリ・サンセット’(Leucadendron ‘Safari Sunset’)は秋から春にかけて、華やかなバーガンディの花を咲かせ、特にフラワーアレンジメントに人気だ。しっかりした株立ちの性質を持ち、庭のさまざまな用途に適している。品種によって花期が異なるが、この品種は、花後の春に剪定をして樹形を整える。

リューカデンドロン‘サマー・サンセット(Leucadendron ‘Summer Sunset’)は、初夏にクリームイエローの花を咲かせる。
用土は、水はけのよい弱酸性を選ぶ。乾燥には強いが、植えて根付くまでの1年目は、土が乾いて水切れを起こさないように、こまめな水やりが必要だ。


上の2枚の写真は、地際から最大2mまで数本の茎を伸ばす常緑の雌雄異株の低木だ。花期が長く、初冬から春まで咲く。花の周りをカラフルな葉と苞葉が囲む、魅力的な庭木だ。
丈夫な根株を持つ株立ちの低木で、山火事の後でも新芽が出る。樹高は75cm~2 mになる。温暖な地域から雪や霜の降りる山岳地帯まで、さまざまな環境下で育つ。グリーンイエローや鮮やかなオレンジ、赤の葉や苞葉など、さまざまなバリエーションがある。
近年は、南アフリカやニュージーランド、オーストラリア、そして、ヤマモガシ科を育てている国々の育種家の手により、さまざまな葉色や花の時期が異なる新品種や交雑種が作出されている。
また、南アフリカの最南端に近いポートエリザベス近くの海岸から標高2,000mの地域にわたって栽培されている。強剪定に強いので、切り花として生産者には魅力的な植物だ。
通常、リューカデンドロンの園芸品種は挿し木で増やす。挿し木の方法は、その年に成長したしっかりした茎から6〜10cmを切り出し、ホルモン液に4秒ほど漬け、25℃に保たれたミスト室で管理する。その成長は早く、1年後には移植できるほどにまでなる。
プロテア、ピンクッション、リューカデンドロンの育て方ポイント

プロテア、ピンクッション、リューカデンドロンの育て方は、オーストラリア原産のヤマモガシ科の植物、グレビレアやバンクシアと同じだ。
育て方で最も特徴的なのは、肥料だ。もともとリン酸分の少ない土地で育つため、バンクシアやグレビレア同様に、リン酸成分に対してセンシティブだ。これらの植物は、「プロテオイド・ルーツ(proteoid-roots)」と呼ばれる、毛細状の根が発達し、微量のリン酸分でも生存できるシステムを持つ。従って、リン酸分の多い化成肥料や液肥を与えると根を傷めてしまい、枯らすことになる。
ちなみに、パースのオージープランツ専門のナーサリーで配布していたチラシには、「外来種(つまり豪州以外の原生の植物)と原生種(豪州の植物)を花壇で混ぜて植栽する時の注意点として、肥料の与え方があり、Lechenaultia(初恋草)、Boronia(ボロニア)、Banksia(バンクシア)などはリンに抵抗力がないので、化成肥料は避け、油かすや堆肥など、自然の緩効性の肥料を与えるように」と書かれていた。なお、ユーカリやブラキカムはリン酸に抵抗力があるとされていた。
栽培に失敗しないため気を付けることとは
今回ご紹介した3種は、現地では手間のかからない植物とされている。日本で育てる上での多くの失敗の原因は、「水のやりすぎ」、「肥料(特にリン酸)の与えすぎ」。つまりは過保護にしてしまうことだ。鉢植えの場合は、水はけのよい、養分の少ない用土を使用し、地植えの場合は、根鉢の下に軽石を数センチ敷いて、これらの植物を植えると、かなり改善されるようだ。
日本の気候にはちょっと気難しい植物たちだが、それ故に開花したときの喜びは大きい。
さあ、栽培にチャレンジしてみよう!
Credit
写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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