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パキポディウム・ウィンゾリーは赤花が咲く塊根! 注目の園芸家が育て方と魅力を徹底解説

パキポディウム・ウィンゾリーは赤花が咲く塊根! 注目の園芸家が育て方と魅力を徹底解説

美しい赤花を咲かせる希少な塊根植物パキポディウム・ウィンゾリー。多肉植物のエキスパートとして今注目の園芸家が、ウィンゾリーの魅力と初心者でも安心の育て方、購入する際のコツまでを徹底解説! 読めば必ず欲しくなります。

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プロの園芸家をも虜にする「パキポディウム・ウィンゾリー」

関良和

今回お話をうかがうのは、2024年9月に世田谷区・九品仏でビザールプランツ専門店「gadintzki plants(ガディンツキー・プランツ)」をオープンさせた園芸家・関ヨシカズさん(以下、関さん)。
本連載「多肉植物狂い」でも、その深い知識と経験をたびたびご紹介しています。

そんな関さんが、数えきれないほどの多肉植物の中で「いちばん好きな品種」として挙げるのが、パキポディウム・ウィンゾリー。
店内には、販売用の若株とは別に、シンボルツリーのような巨大な親株が鎮座しており、ウィンゾリーへの並々ならぬ思いが伝わってきます。
今回は関さんに、そんな“特別な存在”であるウィンゾリーについて、たっぷりと教えていただきました。

パキポディウム・ウィンゾリー」とは?

ウィンゾリー

ウィンゾリー」の基本情報

  • 植物名: パキポディウム・ウィンゾリー
  • 学名: Pachypodium windsorii Poiss.(2004年以降※)
    ※以前はPachypodium baronii subsp. windsorii と記載された
  • 英名: P.Windsorii または、Dwarf baobab(小さなバオバブ)
  • 和名: 特になく、ウィンゾリーと呼ぶ
  • 科属: キョウチクトウ科(Apocynaceae)パキポディウム属(Pachypodium)
  • 原産地: マダガスカル北部アンツィラナナ州、ウィンザーキャッスル周辺の乾燥した岩場地帯
  • 形態: 多年草 / 夏季成長型塊根植物
  • 園芸分類: 多肉植物・塊根植物(コーデックス)
  • 開花時期: 初夏〜盛夏(6〜8月頃 / 首都圏以西の場合)
  • 草丈/樹高: 10〜30cm(栽培環境による)※野生種は1m以上の個体もある
  • 耐寒性: 弱い(10℃以上を推奨)
  • 耐暑性: 強い(高温・乾燥に強い)
  • 花色: 鮮やかな赤(中心部は黄色)
ウィンゾリー開花
ウィンゾリー開花の瞬間(筆者所有株)

黄色や白い花を咲かせる品種が多いパキポディウム属の中で、ウィンゾリーは珍しく赤い花を咲かせることから、ひときわ人気を集めています。
日本酒を温めて飲むときに使う「とっくり🍶」を思わせるユニークな幹の形は、どこかひょうきんなキャラクターを感じさせ、気づけばつい目で追ってしまう、そんなじつに摩訶不思議な植物です。

ウィンゾリー」はワシントン条約で保護されている

ウィンゾリー

ウィンゾリーは、2023年2月3日付でワシントン条約(CITES)の附属書Ⅰに掲載されました。
この附属書Ⅰに記載される種は絶滅の危険性が高く、国際取引がその存続に影響を与える可能性があるとされており、野生個体の国際商取引は原則禁止となっています。

日本国内では「種の保存法」により、CITES附属書Ⅰの種は「国際希少野生動植物種」に指定されており、譲渡や販売なども厳しく規制されています。
ただし、親株も含めて管理下で人工的に増やされた繁殖個体であれば、国内での流通・売買は可能です。

つまり、私たちが手に入れられるウィンゾリーは、ナーサリーや趣味家が育てた実生株(タネから育てた株)に限られます。
そのため流通量は少なく、とても希少で貴重な植物となっています。

※参照資料1:環境省参照資料2:CITES

バロニー」との関係|「ウインゾリー」は亜種として位置付けられていた

ウィンゾリーを語るに外せないのが、同様に赤い花を咲かせるパキポディウム・バロニーの存在。

バロニー

現在確認されているパキポディウム全25種類のうち、赤花を咲かせるのはこのウィンゾリーとバロニーだけで、ウィンゾリーは長い間、原種であるバロニーの亜種(下位区分の種)とされてきたため、バロニーに関しても解説します。

バロニー」の基本情報

  • 植物名: パキポディウム・バロニー
  • 学名: Pachypodium baronii Costantin & Bois
  • 科属: ウィンゾリーと同じ
  • 原産地: マダガスカル北西部マハジャンガ州、ベファンドリアナ(Befandriana-Nord)からマンドリツァラ(Mandritsara)にかけての標高の低い乾燥林や岩場
  • 草丈・樹高: 20〜50cm(栽培環境・個体差による)※野生種は1m以上の個体もある
  • 花色: ウィンゾリーと同様の鮮やかな赤(中心部は黄色)

「パキポディウム・バロニー」は19世紀後半に植物収集家でもある英国人宣教師バロン(Richard Baron)により発見されました。
そして氏が逝去した1907年、フランスの植物学者ジュリアン・コスタンタン(Julien Noël Costantin)とデジレ・ボワ(Désiré Georges Jean Marie Bois)によって、フランスの権威ある学術誌Annales des Sciences Naturelles, Botanique(自然科学年報・植物学シリーズ)の第9シリーズ第6巻317ページに、発見者のバロン氏に敬意を表し、Pachypodium baroniiとして記載されました。

※参考文献:BHL, 参照データ:Kew(1887年9月にバロン氏が実際に採集したバロニーの標本を確認できます。)

ウィンゾリー」の発見と、その後の経緯

バロン氏がバロニーを発見してからおよそ30年後の20世紀初頭、パキポディウム・ウィンゾリーは、フランスの植物学者ポワソン(Henri Louis Poisson)により、マダガスカル北部、アンツィラナナ州のウィンザーキャッスル周辺で発見されました。
このため、ウィンゾリーという小種名が付きました。

ウィンザーキャッスル
ガディンツキープランツから自生地ウィンザーキャッスルまでの直線距離は約10,838kmで、山手線を314周乗るのと同じ距離だ。現地に行くには航空機の乗り継ぎと地上移動も含め、約30時間を要するといわれている。

ポワソンは1916年に本種についてBulletin Trimestriel de l’Académie Malgache(マダガスカル学士院季刊誌)の新シリーズ第3巻に最初の記載をしましたが、1949年にフランスの植物学者ピション(Marcel Pichon)によって Pachypodium baronii var. windsorii 、つまりバロニーの変種として再分類されます。

しかし2004年に、パキポディウム属の分類学的整理の権威でもあるスイスの植物学者リュティ(J.M. Lüthy)が英国のサボテン・多肉植物学会の年報『Bradleya』第22号に、ウィンゾリーは独立種として扱うべきであると提唱する論文を掲載し、以降は植物分類学上は独立種とされています。

※参照データ1:Plantamor, 参照データ2:Kew, 参照データ3:Kew

バロニー」と「ウィンゾリー」、見た目の違いと価格差

前述のように、ウィンゾリーの発見と分類には複数の植物学者が関与していますが、日本国内では現在も「バロニーの亜種」として扱われることが多くあるため、その2種の違いを整理してみましょう。

最も明確な違いは、葉と幹の形状です。バロニーの葉は細くシャープな印象なのに対し、ウィンゾリーは全体的に丸みを帯びた柔らかい印象を与えます。

葉の対比

幹の違いも顕著です。
バロニーは円錐状の単幹で、分枝しないのが基本。
一方、ウィンゾリーは地際がぷっくりと膨らんだ、とっくりのような形状をしており、若いうちから分枝しやすい性質があります。

また、パキポディウム属全体において「太く丸みのある幹」が好まれる傾向があるため、この点でもウィンゾリーは人気を集めやすいのです。

ウィンゾリーとバロニー

続いて、花の違いにも注目です。

ウィンゾリー

両種とも赤い花を咲かせ、中心部が黄色く染まる点は共通しています。
しかし、ディテールに目を向けると違いがはっきりします。

バロニーの花は細長く、ひだが付いており、どこかトロピカルな雰囲気。
対してウィンゾリーの花は花弁(はなびら)がふっくらとしていて、可愛らしく、柔和な印象を与えます。

中心部の黄色い部分は「喉部(こうぶ)」と呼ばれ、「ネクターガイド(蜜標)」として虫などの送粉者(ポリネーター)に蜜の在処を示す役割を果たします。
特に、マダガスカルに生息するスズメガは赤と黄色のコントラストを認識しやすいため、これは受粉成功率を高めるための色彩戦略と考えられています。

ウィンゾリー

こうした適応は、バロニーとウィンゾリーが過酷な自然環境の中で種を残していくための“生存戦略”でもありますが、その造形美は見る者の心をつかんで離しません。

開花までの年数にも差があります。
実生から開花まで、おおよそバロニーは6〜7年、ウィンゾリーは3〜4年。
この開花スピードも、ウィンゾリーの人気を後押しする理由のひとつです。

価格面では、同じく実生2〜3年の株でも、ウィンゾリーのほうが2〜3倍ほど高価で取引される傾向にあります。
それだけに希少性と人気の高さがうかがえます。
とはいえ、どちらも個性豊かで魅力にあふれる品種。育ててみると、それぞれに異なる面白さを味わえるはずです。

ウィンゾリー」と園芸家「関ヨシカズ」

関良和

さて、そんなウィンゾリーと関さんの「出会い」、そして彼がたどってきた「ウィンゾリーとの歩み」を語っていただきました。

出会い

僕が塊根をやり初めた17年前、初めて入手したパキポディウムはグラキリスでした。
その時もウィンゾリーの存在は知ってはいたのですが、その頃のウィンゾリーはまだかなりレアな存在だったため、価格的に手が出ませんでしたね。

小さな株はいくつか手にはしましたが、親株になるレベルのものをいつかは、と憧れを抱いていて、
2016年に初めて写真(下)の大株を購入しました。
以来、この株で自家受粉を行ってきたため、旧店(フラワーガーデン・セキ)時代と現在当店で販売している多くのウィンゾリーの親株として君臨しています。
もはや御神木のような存在です(笑)。

ウィンゾリー

この株を手に入れたことでウィンゾリーの魅力に完全にハマり、現在までに200株以上のウィンゾリーを売買してきました。

ウィンゾリー
旧店(フラワーガーデン・セキ)時代に手がけたウィンゾリーの数々。 写真提供:関ヨシカズ

園芸家関ヨシカズを虜にした「ウィンゾリー」の魅力

ウィンゾリーの魅力はたくさんありますが、僕が一番初めに惹かれたのはですね。
とにかく美しい!

ウィンゾリー

この奇怪な幹から鮮烈な赤い花を咲かせるわけですから、その圧倒的な花の存在感に完膚無きまで魅了されました。
また、ほかのパキポディウムにはない独特な味わいのあるフォルムにも惹かれました。

関ヨシカズ

パキポディウムは全体的に好きなのですが、やはりウィンゾリーへの想いは格別ですね。
パキポディウムの受粉は、僕はウィンゾリーでしか行わないので、ある意味コーデックス(塊根植物)のイロハを学んだのがこのウィンゾリーだといっても過言ではないと思います。

ガディンツキープランツの「ウィンゾリー」

あいにく2025年5月の取材時は店頭にあった株すべてがSOLD OUT。
以下は、直前まであった株たちです。
いずれも、前出の親株から採取したタネからの実生株で、関さんが天塩にかけて育てた良型の株ばかり。

ウィンゾリー
参考価格:25,000円(税別) 写真提供:関ヨシカズ
ウィンゾリー
参考価格:25,000円(税別) 写真提供:関ヨシカズ
ウィンゾリー
参考価格:8,000円(税別) 写真提供:関ヨシカズ

下の写真は、現在ガディンツキープランツ店内で栽培されている、前出の親株からの稚苗(非売品)。

ウィンゾリー
2024年6月に播種した1歳の稚苗たち。
ウィンゾリー
2023年8月に播種した約2歳の稚苗。稚苗で分枝するのは珍しいため、将来の動向が楽しみ。

これらの稚苗は、基本的に限られたお客様にしか販売しないもので、値段が付いて店頭に並ぶのは3年目くらいにまで成長してから。
その時の価格は樹形により変動しますが、およそ5,000円から。

※ウィンゾリーの在庫状況は随時店頭にDMにてお問い合わせください。

「ウィンゾリー」の育て方

そもそも、初心者でも育てられるのか?

ウィンゾリー

多肉植物を育てた経験がある方であれば、コーデックス(塊根植物)も特別に難しいものではありません。
重要なのは、このあと解説しますが、「栽培に適した環境をつくれるか否か」です。

一方、多肉植物自体が初めてという方にとっては、多肉全般に共通する「乾かし気味に管理する」という点が少し難しく感じるかもしれませんが、これはコツを理解すれば心配はいりません。
ウインゾリーを“はじめてのコーデックス”として選ぶのは、ある意味でとてもよい選択といえるでしょう。

置き場所と日光管理|日差しと風が好きな「ウインゾリー」

直射日光と風が必須

ウィンゾリー

パキポディウム・ウィンゾリーは、マダガスカルの強い日差しのもとで自生している植物です。
そのため、栽培においても直射日光が欠かせません。
日照不足になると、徒長してしまったり、葉の色つやが悪くなる原因となります。

成長期である春から秋にかけては、陽当たりと風通しのよい屋外に置くことが理想的です。
その際、エアコンの室外機付近は避けてください。

日光と風にしっかりと当てることで、葉の展開や幹の締まりがよくなり、健康的に育ちます。
ただし、猛暑日や、梅雨の湿度には注意が必要です。

ウィンゾリー

レザーのような質感を持つウィンゾリーの葉は、強靭なため葉焼けしにくいのが特徴ですが、個体差があるため、年々異常さを増す昨今の真夏の強光には注意が必要。
葉焼けした場合は遮光や移動で様子を見つつ、徐々に直射日光に慣らしましょう。

室内管理の注意点

室内でパキポディウム・ウィンゾリーを育てる際の最大のポイントは、日照と風通しの確保です。ウィンゾリーは日光を非常に好むため、できるだけ長時間、陽射しが入る明るい場所に置くようにしましょう。

また、TSUKUYOMIやAMATERASなど、高出力な植物育成LEDライトを使えば、天候に左右されずに太陽光に近い光を確保できるため、こちらもおすすめです。

ウィンゾリー

日照不足になると、成長が止まったり、葉を落とす原因になります。
また、室内は空気がこもりやすく湿度も上がりやすいため、風通しを意識して管理することが大切です。
特に夏場や梅雨時期は、サーキュレーターを使って空気の流れをつくると、蒸れやカビのリスクを下げ健康に育てることができます。

サーキュレーター

エアコンの風にも注意を。
風が直接当たる場所は避けて管理しましょう。
乾燥や急激な温度変化によって、株にストレスがかかる恐れがあります。

照度と換気を意識しながら、穏やかな環境を整えてあげることが室内管理のポイントです。

水やりのコツ|塊根植物ならではの管理方法

季節ごとの水やりの頻度

パキポディウム・ウィンゾリーは季節によって水の必要量が大きく変わる植物です。
無理に一定の頻度で与えるのではなく、気温や成長状態を見ながら柔軟に対応しましょう。

  • 春(4〜5月):生育開始期
    気温が安定してきたら水やりを再開します。
    10日に1回程度を目安に、土がしっかり乾いてから与えます。
  • 夏〜秋(6〜10月):成長期のピーク
    もっとも活発に育つ時期です。
    週1回〜10日に1回が目安ですが、風通しのよい環境で乾きが早い場合はやや多めでもOK。
    ただし蒸らさないためにも、夕方以降に与えましょう。
ウィンゾリー

ここ数年の8〜9月は夜でも気温が下がらず寒暖のメリハリがなくなるため、成長が緩慢になる傾向があります。
このため、この時期の蒸れには特に注意しましょう。

  • 晩秋(11月):生育終了期
    気温が下がり始めるとともに徐々に水やりを控えます。
    2〜3週間に1回程度に減らし、塊根が休眠に入る準備を促します。
  • 冬(12〜3月):休眠期
    夏型塊根植物のウィンゾリーは、冬になると休眠に入ります。
    通常、休眠期に入ると落葉しますが、環境や個体差により葉を完全には落とさずに、数枚残したまま冬を越すこともあります。

    これは決して異常ではなく、気温が比較的高く、日照もある程度確保されている場合に見られる自然な反応です。
    ただし、葉が残っているからといって根が活発に水を吸っているわけではないため、冬の水やりはあくまでも「休眠モード」での対応が基本です。

    休眠モード中は根の活動が極端に鈍くなるため断水気味の管理が基本ですが、完全に水を絶つのではなく、月に1〜2回、用土の表面がほんのり湿る程度にごく少量を与えるのが理想的です。
    この“ほんのり加減” の湿り気が細根に刺激を与え、休眠中の枯死リスクを回避する効果があります。
ウィンゾリー冬季の水やり
ほんのり加減は、写真の4号鉢(直径12cm)くらいの大きさだと、株周りを軽く2週程度でよい。

ただ一方で、2カ月以上まったく水を与えない「完全断水」という管理法も存在します。
特に過湿になりがちな暖房の効いた室内では、完全断水のほうが根腐れを防ぎやすく、メリハリのある休眠と成長のリズムを作れるという利点があります。
さらに、しっかりとした休眠を経験した個体は、春の芽吹きが力強くなる傾向も見られます。

しかし、初めて塊根植物を育てる方にとって「完全断水」は少々ハードルが高く感じられるかもしれません。
「ほんのり潤す派」「完全断水派」、どちらも間違いではなく、栽培環境とご自身の管理スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。

「ウィンゾリー」は乾燥には超強い。ゆえに、水やりはタイミングが重要

ウィンゾリーは、塊根部分に水分を蓄える性質を持ち、乾燥に非常に強い多肉植物です。
また、CAM型光合成という特殊な光合成を行う植物で、夜間に気孔を開き、光合成に必要な二酸化炭素を取り込むことで、水分の蒸散を抑えるしくみを備えています。

こうした特性を持つ植物は、水を与えすぎると根腐れを起こす恐れがあるため、前述の頻度を参考に、適切な水やりを行ってください。

ウィンゾリー

水やりをする上で重要なのは、成長期(春から夏)と休眠期(秋から冬)でしっかりメリハリをつけること。

成長期には土の表面がしっかり乾いてから、鉢底から水が流れる程度にたっぷりと与えるのが基本ですが、全体的にギュッと詰まった感じの樹形にさせたい場合は、用土表面の乾燥を確認後1週間程度経ってから与えるという「じらし戦法」という方法もありますが、これは基本的な水やりに慣れてから行ったほうがよいでしょう。

用土と鉢の選び方|通気性がカギ

用土のポイント

用土は、市販のサボテン・多肉植物用土でOKですが、粒が大きい場合は、粗めの軽石や川砂を足して調整するとよいでしょう。
水はけが悪いと根腐れを起こしやすいので、必ず排水性のよい土を使ってください。

ガディンツキープランツで販売している用土は、多肉や塊根によい素材を網羅的にブレンドしているので、おすすめです。

用土
関さんの長年の経験が詰まったガディンツキープランツのオリジナル多肉植物用培養土。容量:2L 価格:715円(税込)

鉢選びのポイント

鉢は購入時のプラ鉢のまま栽培しても大丈夫ですが、もし自前の鉢に植え替える場合は、通気性のよい素焼きのテラコッタ鉢が理想的です。
植え替えの際、鉢底には軽石や鉢底ネットを敷いて排水をよくしてください。

鉢

また、塊根の成長に合わせて鉢サイズを選び、根詰まりに注意してください。
ちなみに関さんのおすすめはスリットが入ったプラスチック鉢。

コンテナ

プラスチック(特に黒や緑色)は熱を溜め込む性質があるため、直射日光が当たったときに鉢内の温度が上がるメリットがあります。
スリットが入っていれば、夏は適度に熱放出してくれるし、冬は温度を溜め込むことができ、塊根植物には最適です。何より安価なのも◎。

肥料の与え方|与える場合は成長期を狙って適量を

ウィンゾリーをはじめとする塊根植物は、もともと栄養の乏しい土地に自生しているため、肥料を与えすぎると徒長したり、バランスの悪い形に育ってしまうことがあります。
基本的には植え替え時に堆肥を用土に混ぜ込む程度で、小型〜中型の株であれば基本的に追肥はしなくてもOK。

ただし、繁殖のためタネを採取したあとはエネルギーを消費したため“お礼肥え”としてごく少量の液肥を与えるとよいでしょう。

液肥
目安としては水ペットボトル2Lに対し、液体肥料(『ハイポネックス』の場合)のキャップ内のシールリング(円錐状の突起)のすり切り未満くらいが適量。

一方、春〜夏の成長期に合わせて高濃度の液肥を適切に与えることで、幹の肥大化を爆速化させる栽培法もあります。
ただしこの場合、光量が不足していると徒長につながるため注意が必要です。

施肥は育て方や環境に左右されるため、これが正解というものはありません。
もし肥料を与える場合は、薄めた液体肥料を月1〜2回、ごく控えめに与える程度が無難です。
肥料はあくまで“補助的な栄養”。植物の様子を観察しながら、慎重に使うことが美しい株に育てるコツです。

冬越しの方法|低温に弱い「ウィンゾリー」を守るには?

最低管理温度と室内取り込みの目安

温暖なマダガスカル原産のウィンゾリーは、日本の冬の寒さが苦手なため、冬場の温度管理が非常に重要です。

最低温度の目安は15℃。それを下回ってすぐに枯れるわけではありませんが、春の15℃と真冬の15℃では植物の感じ方が異なるため、冬は15℃ギリギリではなく、それ以上をキープするのが理想です。

特に10℃を下回る環境に長時間置くと、枯死のリスクが高まるので注意が必要です。

ウィンゾリー

ウインゾリーをはじめとするパキポディウム属は、環境の変化に対して非常に敏感で、その反応が見た目に表れやすい植物です。
気温の変化によって紅葉したり、自然に落葉したりするので、これらのサインを観察することが室内に取り込むタイミングを見極めるポイントになります。

具体的には、11月に入り葉が黄色くなりはじめたら、それが取り込みの合図です

室内取り込み後のケア

室内に取り込んだ後も、室温が15℃を下回らないように管理しましょう。これは非常に重要なポイントです。
特に寒さの厳しい1〜2月は、夜間や留守中などに室温が10℃を下回る懸念がある場合は、鉢の温度を保つ目的で育苗用のヒーターマットを使用するのも効果的です。

育苗マット
ヒーターマットは本来育苗用だが、この上に置くだけでも保温効果がある。 写真:Amazon.co.jp

現在の住宅環境では、室内がそこまで冷え込むことは少ないかもしれませんが、寒冷地にお住まいの方や断熱性の低い住居で栽培している場合の室温管理には特に注意が必要です。

プロが教える「ウィンゾリー」を選ぶポイントと購入時の注意

よい個体の見分け方|ここをチェック!

現在市場に流通しているパキポディウム・ウィンゾリーは、基本的に実生株が主流です。
そのため、根のない状態で販売されることは少ないですが、タイや台湾で栽培された「輸入実生株」の中には、植物防疫法により根を切ったまま輸入され、未発根のまま出回っているものも存在します。

ウィンゾリー
ガディンツキープランツで販売されているタイ産の輸入実生株。もちろんしっかりと根付いている。価格:12,650円(税込)

こうした株はフリマアプリなどで相場より安く手に入る反面、発根の有無はしっかり確認をする必要があります。もし未発根株であれば、自力で発根させるための知識や技術、そして根気が求められます。
(※輸入株の発根方法については今後の連載で詳しく解説予定です。)

株の形状は好みによりますが、ウィンゾリーらしい“良形”として人気が高いのは、地際のふくらみが丸く太く、とっくり型のフォルムを持つ個体です。
この形にくびれが入り、上に幹がスッと伸びるバランスの良い株は特に評価が高く、価格も上がる傾向があります。
特に、実生3〜4年ほどの若株で徒長がなく、脇芽が出ていない個体は人気が集中します。

ウィンゾリー
筆者所有株。 購入時参考価格:18,000円

一方、ウィンゾリーは若いうちから分枝しやすいため、バランスのとれた分枝株も評価が高く、特に中〜大型株ではその傾向が顕著です。
これは、分枝が進むことで開花数が増え、採種できるタネの量も増加するためです。

ウィンゾリー
筆者所有株で関氏の旧店時代に入手したもの。購入時参考価格:25,000円

分枝の形状は、地際から錨状⚓️に伸びるタイプや、上部でY字に分かれるタイプなどさまざま。
最終的には「自分の好み」が最も大切な選定基準になります。

そもそも塊根植物には「定価」というものが存在せず、株の状態や相場、売り手の判断によって価格が決まります。
だからこそ、園芸店などで気になる株に出会ったら、その時に感じたインスピレーションを大事にしましょう。

これはウィンゾリーに限らずですが、ビザールプランツ(珍奇植物)を購入する上で何よりも大切なのは、実際に目で見て、触れて、感じることです。

あとはご自身の予算と相談しながら、納得のいく株を見つけてください。

ウィンゾリー

ハイブリッド株には要注意!

ウィンゾリーがバロニーと同じ場所で栽培されていると、両者が同じタイミングで開花した場合、虫などの送粉者(ポリネーター)の媒介によって、両者間で交配が行われていまい、バロニーの血が入ったウィンゾリー、いわゆるハイブリッド種、通称「ウィンバロ」が作出されてしまうことがあります。

ウィンゾリー
筆者所有株。発芽して葉が出て初めて判明する純血か否か。フリマアプリでウィンゾリーの種子を購入すると常にこのリスクが伴う。

上の写真は実生2年目の株ですが、幹はウィンゾリーのキャラクターを持っていますが、シャープな葉は明らかにバロニーのもの。
このように、ハイブリッドな株をウィンゾリーとして割安で販売しているケースもあるため、注意が必要です。
ただ、これはこれでどんなふうに育つのか楽しみですけどね。

まとめ|「パキポディウム・ウィンゾリー」を育ててみよう!

ウィンゾリーをうまく育てるためには、まず「強い光」、「風通し」、「適切な温度」、という3つの基本環境を整えられるかがカギになります。
これは“枯らさないため”というより、ウィンゾリー本来の“美しさを引き出すため”の育て方です。

マダガスカルの厳しい自然を生き抜いてきたウィンゾリーは、もともととても丈夫な植物。
とはいえ、必要な条件が一つでも欠けると、枝が徒長したり、花が咲かなくなったりといった、本来の魅力を失ってしまいます。
そうした個体は免疫力も落ち、病気や害虫のリスクも高まります。

植物栽培においていちばん大切なのは、「適切な愛情」を注ぐこと。
過保護にするのではなく、植物が求める環境と世話を見極めて、きちんと応えてあげる。
それが、ウィンゾリーを健やかに、美しく育てるコツであり、何よりの楽しさでもあります。

この記事を読んでその魅力を感じたら、迷わずにウィンゾリー栽培にトライしてください!
その価値がある植物ですから。

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