艶のある濃い緑色の葉が美しいソヨゴは、近年人気の樹木です。冬も常緑で花や実も楽しめるのも魅力です。生育は特にゆるやかで、あまり剪定する必要がなく、人気のシマトネリコなどに代わる、手間のかからない庭木としても注目されています。この記事では、ソヨゴの基本的な知識から特徴、栽培に適した場所や育て方、植え付けや剪定の方法などを栽培のプロが詳しく解説します。
目次
ソヨゴの基本情報

植物名:ソヨゴ
学名:Ilex pedunculosa
英名:Longstalk Holly
和名:冬青(ソヨゴ)
別名:フクラシバ
科名:モチノキ科
属名:モチノキ属
原産地:日本、台湾、中国
形態:常緑高木
ソヨゴは、国内の関東地方以西に自生する常緑の高木です。植える場所を比較的選ばず、丈夫で育てやすいです。生育がゆるやかで樹形がまとまりやすく、メンテナンスが容易。生育旺盛で持て余したシマトネリコを撤去した後などに、ソヨゴは最適な樹木です。

濃い緑色の葉は革質で光沢があり、縁は滑らかで波打ちます。葉の縁があまり波打たない系統もあります。雌雄異株で、春の5~6月に白い花が咲きます。雌株には、秋に赤い実が付きます。
幹が1本の単幹仕立てと、3本以上の幹がある株立ち仕立てが流通します。生育に時間がかかり人気があるため、他の樹種より高額な傾向があります。
ソヨゴの特徴・性質

園芸分類:庭木
樹高:10m
開花時期:5~6月
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白
高さ10mにもなる高木ですが、一般の庭などでは2~5mほどの大きさにとどまります。根が浅いので、樹高が高くなると台風などの強風で倒れやすくなります。
生育は特筆すべきほどゆるやかです。枝が横に広がりにくく、狭い場所に適します。樹高が高くなりにくい木を植えたい場合は、株立ちに仕立てたソヨゴが適しています。
新葉が展開する前に、古い葉が多く落ちることがあります。葉が落葉するなどのトラブルがあった場合、復活まで時間がかかります。
雌株の花は、数が少なくひっそりと咲く雰囲気です。一方、雄株は花の数が明らかに多く、花が比較的目立ちます。花を観賞したい場合は、雄株を選びましょう。
ソヨゴの仲間
ソヨゴが含まれるモチノキ属の仲間は、約560種類が世界の熱帯から温帯に広く分布します。葉や果実が美しい種類が多いです。栽培される代表的な種類として、モチノキやイヌツゲ、クロガネモチ、アオハダ、セイヨウヒイラギなどがあります。
キミソヨゴ Ilex pedunculosa f. aurantiaca
果実が黄色の変種です。
クロソヨゴ Ilex sugeroki
本州中部以西の太平洋側、四国が原産で、ソヨゴに外観や性質が似ています。ソヨゴと比較すると、樹高は2~5mほどとより低く、生育も遅いです。また葉は小さく、幹や枝が黒っぽいです。ソヨゴと同様に雌雄異株で、雌株に赤い実が付きます。流通量は少なく、庭木としては比較的珍しいです。
ソヨゴの栽培12カ月カレンダー
植え付け適期:4~5月
肥料:2月
剪定:7月
入手時期:通年
挿し木時期:9月
ソヨゴの栽培環境

適した環境・置き場所
日向から明るい日陰で育てることができます。ただし夏に高温になり乾燥が激しいと、葉色が悪くなることがあります。
西日がよく当たって乾燥しがちな場所などの植え付けは避けてください。また水が溜まりやすい場所は、根腐れして枯れることがあります。
明るい日陰でも葉数が減少しにくく、環境適応性が高いです。ただし暗すぎる場所は避けてください。
冬越し、耐寒性
寒さに強い、貴重な常緑樹です。北海道南部より南の地域で栽培できます。強い寒さに当たると、葉が黄色っぽくなることがあります。
ソヨゴの育て方・日常の手入れ

水やり
庭などに植え付けしてから1~2年くらいまでは、春から秋に土壌の表面が乾燥したら水やりしてください。根付けば水やりは不要です。
鉢植えで育てている場合は、用土の表面が乾いたら水やりしてください。
肥料
2月に油かすなどの有機肥料を、株の周辺に浅く埋めておきます。早く大きくしたい場合は、5~6月に追肥してもよいでしょう。
鉢植えは、3月に緩効性化成肥料などを規定量与えてください。
病害虫
ルビーロウムシなどのカイガラムシの発生に注意してください。薬剤が効きにくいので、見つけ次第ブラシなどでこすり落とします。植え付け後に根が周囲に張るまでの1~2年は、特に注意してください。
ソヨゴの植え付け・植え替え

植え付け
4~5月が植え付けの適期です。油かすなどの肥料と腐葉土などの有機物をよくすき込んでから、株を植え付けてください。根が張るまで時間がかかるので、支柱を必ず立てて固定するようにするとよいでしょう。
雌株の実付きをよくするために、雄株と雌株の両方を植える場合が多いです。
鉢植えの植え替え
根鉢を崩さず1~2回り大きな鉢に植え替える場合は、4~10月の生育期にいつでも行えます。
鉢の大きさを変えたくない場合は、4~5月に根鉢を1/5程度落とし、枝葉を1/4~1/5程度切って減らしてください。
用土
肥沃で排水のよい一般的な用土が適します。赤玉土小粒7と腐葉土3を混ぜた用土を使います。または樹木用の培養土などが気軽に利用できます。
ソヨゴの手入れ

剪定
ひんぱんに剪定する必要はありません。年に1回程度の剪定でほぼ問題ないでしょう。生育が遅いため、強い剪定は避けてください。
徒長枝は見つけ次第付け根から切りますが、すぐに伸びて樹姿を乱すほどではありません。株立ち仕立ての場合、枝が重なりあうなどして混みあった場所は、適宜間引いてください。
剪定の適期は新しい枝が充実し始める7月頃です。対生した枝は、互生するように間引くと形が整いやすいです。
増やし方
挿し木で増やすことができます。9月頃に今年伸びた充実した枝を10cmほど切り、下葉を取って葉を3枚程度残して挿し穂とします。小粒の赤玉土などの清潔な用土に挿し、明るい日陰で乾燥させないように管理します。鉢上げしたばかりの小苗は寒さに弱いので、室内などの暖かい場所に置くと安心です。
植え場所を選ばず手間のかからないソヨゴを育てよう

ソヨゴは、寒さや日陰にも強い貴重な常緑樹です。和風・洋風を選ばず、さまざまな雰囲気の場所になじみます。濃い緑の葉は存在感がありシンボルツリーにも最適です。周囲にカラーリーフの植物を植えると、お互いの色合いが引き立ちます。入手する際は高額ですが、その後のメンテナンスを考えれば経済的でしょう。住宅事情で狭い場所や日当たりのよくない場所だからと樹木を植えるのを諦めていた人にもおすすめですので、ソヨゴの栽培をぜひ検討してください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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