日本で古くから庭木や盆栽として親しまれてきたボケ。春にいち早く花を咲かせるので、春を告げる花として愛されてきました。この記事では、ボケの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方などについて、詳しくご紹介します。
目次
ボケの基本情報
植物名:ボケ
学名:Chaenomeles speciosa
英名:flowering quince、Chinese quince、Japanese quince
和名:ボケ(木瓜)
その他の名前:カラボケ(唐木瓜)
科名:バラ科
属名:ボケ属
原産地:中国
形態:落葉性低木
ボケはバラ科ボケ属の花木です。学名はChaenomeles speciosa(チェノメレス・スペシオサ)。原産地は中国で、暑さや寒さに強く一年を通して戸外で栽培できます。樹高は2〜3mの低木で管理しやすいですが、トゲを持っているので剪定などの際はガーデングローブを着用するなど、ケガをしないよう注意が必要です。ボケは開花後に10cm前後の楕円形の果実がつき、香りがよいので果実酒やジャムにも利用可能。落葉樹で、冬は葉を落として越冬します。トゲがあり、密に茂るので、侵入防止の生け垣としても利用されています。
日本には平安時代に伝わったとされ、庭木や盆栽、生け垣、切り花として多様に利用されてきました。江戸時代には開花期の長い淀ボケや花弁が多数重なる八重ボケなどの品種が存在し、さらに20世紀に入ると愛好家が増えたため多数の品種が生まれるに至っています。
ボケの花や葉の特徴
園芸分類:庭木
開花時期:3月中旬~5月上旬
樹高:2〜3m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、赤、ピンク、オレンジ、複色など
ボケの花の時期は3月中旬~5月上旬。品種によって花が咲く時期が異なり、特に冬の寒い時期から咲くものを「寒咲き」と呼んでいます。葉が展開する前に花が咲き始め、花色は白、赤、ピンク、オレンジ、複色など。基本は直径2〜5cmほどの5弁花で、花弁は先が丸く優しい印象。半八重咲き、八重咲き種もあります。品種によって、花の色や形はバラエティーに富んでおり、選ぶ楽しみがあります。
葉は長さ3~9cm程度で、卵形~楕円形、縁には鋸歯があります。枝にはトゲがあるものとないものがあります。
ボケの名前の由来と花言葉
和名のボケは中国名の「木瓜(ボクカ、モクケ、モケ)」が転じたものとされています。果実の形がウリに似ているため、木に実るウリとして「木瓜」の漢字があてられ、その音読みから「モケ」、それがボケに変わったとする説があります。別名はカラボケ(唐木瓜)。
ボケの花言葉は「先駆者」「早熟」「平凡」「熱情」など。「先駆者」「早熟」は中国での呼び名「放春花(ファンチェンファ)」に由来し、この名は「いち早く春を告げる花」「どの花よりも先に春の香りを漂わせる花」という意味です。ボケの花は戦国武将の織田信長の家紋になっており、「先駆者」や「熱情」はカリスマ性のある統率力で戦国時代に名を馳せた織田信長をイメージさせる言葉です。「平凡」は生垣としてポピュラーに利用されていることや、成長しても2~3mとあまり大きくならず、小さな庭に向いていることが由来のようです。
ボケの名前は憎まれ口の「ボケ」と同音異義語にあたるので、悪いイメージを持たれることがありますが、花言葉がよく、春にいち早く華やかな赤と白の紅白の花をつける花木として、縁起がよいとされています。贈り物にする際には、誤解を招かないようにメッセージや花言葉を添えて想いを伝えるとよいでしょう。
ボケの品種や近縁の仲間
ボケは愛好家が多いだけに品種改良が進んでおり、その数は200種を超えています。大輪一重咲きで赤、白、白地に赤の絞りと、1本でさまざまな花色がみられる‘東洋錦’、同じく大輪一重咲きでピンクの地色に紅色または白の絞りが入って咲き分ける‘高根錦’、早咲きで優しいパステルピンクの花を咲かせる‘ゆめ’、遅咲きで上品なオレンジ色の巨大輪八重咲きの‘世界一’、発色の美しい赤の大輪一重咲き‘緋の御旗’などがあります。
ボケの近縁の仲間には、カリンやクサボケがあります。カリンはボケ属の中高木で、カリン属に分けられることもあります。赤色の花の後に実る、黄色く硬い果実には咳止め効果があるとされ、カリン酒などに利用されています。クサボケは日本固有種で、中国でも栽培されています。全体に小型で、山野の日当たりのよい斜面などに自生し、地面を這うように枝を伸ばします。ボケの園芸品種にはクサボケとの交配種も多くあります。
ボケの実は漢方薬に使われている
ボケの果実は径10cm前後の楕円形です。10月頃には黄色く熟し、果実の硬さや芳香は同じボケ属のカリンに似ており、苦みや酸味が強いため生のままでは食べられませんが、果実酒やジャムなどに加工できます。また、この果実を乾燥させたものは木瓜(もっか)という生薬になります。
ボケの栽培12カ月カレンダー
開花時期:3月中旬~5月上旬
植え付け・植え替え:10〜11月
肥料:1〜2月
剪定:12月頃
ボケの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しがよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、日当たりが悪く暗い場所では、花つきが悪くなり、枝葉が間伸びして徒長してしまうので注意してください。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】低木ではありますが、株立ちタイプで横に広がりやすいので、広めの場所を確保しておくとよいでしょう。トゲを持っているので、頻繁に人が出入りする場所の近くには不向きです。また、水もちがよく腐植質に富んだ土壌を好みます。乾燥する時期は、根元にバークチップなどでマルチングをしておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
日本の気候に馴染みやすく、暑さ寒さに耐えるので、一年を通して戸外で管理でき、夏越し・冬越し対策などは特に必要ありません。
ボケの育て方のポイント
用土
【地植え】
まず一年を通して日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に直径、深さともに50㎝程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただしボケは乾燥を苦手とするので、真夏に晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料
【地植え】
1〜2月に緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。
【鉢植え】
1〜2月に緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。また、開花後の4〜5月にお礼肥として緩効性肥料を与えます。忘れずに与えて、開花によって消耗した木の体力回復を促してあげましょう。さらには木が充実する10月頃にも緩効性肥料を与えます。
注意する病害虫
【病気】
ボケに発生しやすい病気はうどんこ病、黒星病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
黒星病は、カビによる伝染性の病気です。雨が多い18〜20℃の環境を好むため5〜7月に発症しやすく、葉、枝、果実に被害が現れます。黒っぽくて丸い斑点が全体に広がっていくのが特徴です。日当たり、風通しが悪いと発病しやすくなるので、込み合っている枝などはすかすように剪定して発生を防ぎましょう。病気にかかった後に剪定した枝や落ち葉は、地中に残らないように処分することも大切です。また、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して防除します。
【害虫】
ボケに発生しやすい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
ボケの詳しい育て方
苗の選び方
ボケは接ぎ木苗だと台木の性質が現れてしまうことがあるため、挿し木苗から栽培するのが一般的です。ヒョロヒョロと徒長したものや病害虫の痕があるものは避け、幹が太くぐらつきがないもの、葉に枯れや変色がなく、元気のよいものを選ぶとよいでしょう。
植え付け
ボケの植え付け適期は10〜11月です。ただし、花苗店などでは植え付け適期以外でも苗木が出回っていることがあります。入手したら、真夏や真冬を除き、植えたい場所へ早めに定植しましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、根を傷めないように植え付けます。苗木がぐらつくようであれば、しっかり根付くまでは支柱を設置してビニールタイや麻ひもなどで誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
環境に合って順調に育っているようであれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木は根鉢をあまりくずさずに鉢に仮置きし、高さを決めたら、少しずつ培養土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して軽く根鉢をくずし、古い根はカットして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定
ボケは樹形が乱れやすいので、定期的に剪定をしてコンパクトな姿を保ちましょう。
ボケは8月頃に花芽分化し、11月頃に花芽がついて視認できるようになるので、剪定の適期は12月頃です。
ボケは株立ち状で、地際から細めの枝を放射状に伸ばす樹形が特徴で、剪定は「すかし剪定」を基本とします。地際から立ち上がっている枝のうち、太くて古い枝は元から切り取って若い枝に切り替えます。また込み合っている部分は、内側に向かって伸びる枝、下向きに伸びる枝、枯れ枝、他の枝に絡んでいる枝などを選んで分岐部まで遡って切り取りましょう。徒長枝には花がつかないので、5〜6節残して切り取ります。
残す枝のうち長い枝があれば、ふっくらと丸い花芽は残し、花芽の先にできる丸みのない葉芽を1つ残し、そこから先は切り取りましょう。葉芽を一つ残すことで翌年に新しい枝が発生し、その枝に花芽がつきます。
増やし方
ボケは、挿し木と種まきで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、ボケは挿し木で増やせます。
ボケの挿し木の適期は10月頃です。新しく伸びた枝を切り口が斜めになるように10cmほど切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に2時間ほどつけて水あげしておきましょう。3号の黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。挿し穂についた葉は1〜2枚残してほかは取り除き、水の吸い上げと葉からの蒸散のバランスをとっておきましょう。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動しましょう。十分に育ったら、植えたい場所へ定植します。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
【種まき】
ボケが開花した後、秋にできた種子を採取し、種まきをして増やすことができます。熟した果実を切り取って果肉を落とし、流水で洗って中から種子を取り出します。黒ポットに新しい培養土を入れ、種子をまいて覆土します。日当たり、風通しのよい屋外に置き、表土が乾いたら水やりをしましょう。越年した翌春には発芽が期待できます。十分に育ったら植えたい場所に定植します。ただし、開花までには数年がかかりますし、園芸品種の場合は親とまったく同じ花が咲くとは限りません。
ボケの花で季節の移ろいを楽しもう
愛好家が多いボケは品種改良が進み、花色や花形が多様に揃うため選ぶ楽しみがあります。日本の気候にもよく馴染んで栽培しやすいのでビギナーにもおすすめ。春の満開時には見応えのあるシーンを作り出すボケを、庭に植栽してはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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