リンゴの美味しい季節がやってきました。リンゴは美味しいだけではなく、身体にとてもよい栄養素がたくさん含まれています。今回はカルダモンやシナモンを使った、イギリスの家庭的なデザート「アップルクランブル」を、スパイスの効能を交えて神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんが教えてくれます。
目次
デザートアップルとクッキングアップル
日本同様に、イギリスでもたくさんの種類のリンゴが作られていますが、日本と少し違うのは、「デザートアップル」(生食用のリンゴ)と「クッキングアップル」(調理用のリンゴ)に、はっきり区別されていること。日本ではリンゴを生で食べるのが一般的なので、品種改良が進んだ「酸味をなくした」生食で美味しいリンゴが流通の大半を占めています。
そんな日本でも、イギリスからやってきた‘ブラムリー’という品種のクッキングアップルが、近年注目されています。
クッキングアップルの王様とも呼ばれ、見た目はグリーンで美味しそうですが、生でかじると目が覚めるような酸味。火を通すとすぐに煮とけて、砂糖との相性も抜群。「甘酸っぱい」の理想型のような味になるのです。チーズや肉料理のソースにもおすすめです。
最近では、イギリスやオーストラリアからさまざまな種類のリンゴが輸入されるようになりました。チャンスがあれば「クッキングアップル」にもぜひ挑戦してみてください。
リンゴが赤くなると医者が青くなる
日本では昔から「リンゴが赤くなると医者が青くなる」といわれますが、欧米でも「An apple a day keeps the doctor away」、つまり「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」ということわざがあります。リンゴが旬を迎える頃には、暑い夏が終わり気候もよくなるので、体調を壊す人が減る、という比喩でもあるそうですが、実際リンゴには身体によい栄養素がたくさん詰まっています。
リンゴには、なんと! 100種類以上の「ポリフェノール」が含まれているのです。ポリフェノールとは植物由来の抗酸化物質、つまりは「体内の老化を防ぐ物質」なのです。どう? 急にリンゴが食べたくなってきたでしょう? ふふふ。
このポリフェノールを摂取することで、免疫力を高めたり、アレルギーの改善や高血圧の予防、美白効果も期待ができます。もしかしたら、白雪姫の白さの秘密はリンゴだったのかもしれません。
他にも、皮と実の間に多く含まれている「ペクチン」には整腸作用があり、日本で、よく風邪のときにはすりおろしたリンゴを食べるというのも理にかなっています。リンゴの栄養素を余さずいただくには、皮ごと食べるのがイチバン。映画のワンシーンのように、Tシャツで皮をゴシゴシしてから丸かじりしてみては?
そんな時に、ちょっと気になるのがリンゴの皮のベタベタ。あれ、じつは人為的な加工ではなく、新鮮さを保つためにリンゴが自ら分泌する天然のワックスなのです。植物としての生理現象なので、食べても問題はありません。
私の実家では、必ずリンゴが大きなボウルの中に常備され、朝のヨーグルトのトッピングや食後の口直しとして、しつこく登場します。恩田家の超人的な健康の秘訣は、おそらく「リンゴ」と「スパイス」なのかもしれません。
スパイスの効能
通常の「アップルクランブル」にはシナモンのみが使われることが多いのですが、私のレシピでは3種類のスパイスを使用します。まずは馴染みのある「シナモン」。そして、日本のお菓子では登場頻度がそれほど多くない「カルダモン」と「クローブ」。もちろんシナモンだけで作っても美味しいのですが、スパイスを数種類使うことで、香りが複雑になり味に深みが出るのです。
カルダモンとクローブはアロマセラピーとしての効能も似ている部分が多く、食用としても世界中で楽しまれています。効能を知れば、作って食べる楽しみが倍増しちゃう!
■ カルダモンとは
レモンやユーカリを彷彿とさせるような、清涼感のある上品な香りが特徴のカルダモン。さまざまな効能を持っていることから「スパイスの女王」とも呼ばれています。薬としても古い歴史を持ち、中医学とインド伝統医学アーユルヴェーダで3,000年以上もの間、生薬として広範囲に用いられてきました。
カルダモンはインド料理に使われる、スパイスミックスの「ガラムマサラ」の主要スパイス。私はポタージュスープの隠し味によく使います。乳製品とも相性がよく、チーズやミルクとの組み合わせは絶品!
カルダモン 身体への効能
消化器系のトラブルにはカルダモンの出番! 腸内のガスをすっきりさせ、消化不良や吐き気にも効果的! 血流促進作用と身体を温めてくれる作用があるので、むくみの改善も期待ができます。インドでは口臭を消すためにそのまま食べたり、消化を助けるという役割を期待して食後に噛むこともあるようです。
カルダモン心への効能
カルダモンの香りは、とってもパワフルでポジティブ! 「思考能力」が鈍くなってしまっているときには「精神集中」の手助けとなり、目の前がぱーっ! と明るく開かれるでしょう。不安や緊張で「心のバランス」が崩れているときには落ち着きを与え、心を強くしながらも、しっかりと地に足をつけるバランス感覚を取り戻すことができる香りです。催淫作用もあるので、最近ちょっと「セクシー」さを忘れてしまったあなたにもおすすめ♡
チャンスや豊かさを取り戻し「人生を気楽に楽しむ」、そう! カルダモンは「生きる力」を与えてくれるスパイス。気分は歌って踊るボリウッド(インド映画)スターなのです。
■ クローブとは
スパイシーでありながらもバニラのような甘さを秘めたクローブ。紀元前から使用され、その独特な香りで世界中から愛され、辛口な料理からデザート系まで幅広く使われています。こちらもインドのスパイスミックス「ガラムマサラ」や、中国のスパイスミックス「五香粉」にも含まれています。中世ヨーロッパでは、金と同等に扱われるほど高価なものでした。
クローブ身体への効能
抗菌と抗ウイルス作用、痺れるような鎮痛作用で「歯医者のハーブ」とも呼ばれています。歯痛や歯肉炎のケアとしてそのまま噛んだり、媚薬としても使用されていたそう。
身体を温め、免疫強化も期待ができるので、特に冬の季節にはありがたいスパイスです。カルダモン同様に、消化器系トラブルにも効果的!
クローブ心への効能
クローブの香りは、心を温めながらも背筋を「ピシッ」とさせてくれます。地に足を付け、自分の軸をしっかり持って前に進むことを思い出させてくれるでしょう。
恐れや不安などのネガティブなエネルギーを解消・変換する手助けとなり、過去や未来に捉われず、「いまこの瞬間」を生きる喜びを感じさせてくれる香りです。こちらもクローブ同様に催淫作用があります。うっふん♡
アップルクランブルとは
アップルクランブルはイギリス発祥といわれる簡単デザート。一般家庭やパブやカフェ、アンティークフェアのお食事コーナーでも見かける、本当に日常的なお菓子です。
分かりやすくいえば、アップルパイの簡素版。下に生地がないアップルパイなのです。どうやら戦時中の配給制の時に生地の材料が不足し、ありあわせのもので作って出来上がったのが、この「アップルクランブル」らしいのです。
切ったリンゴに、砂糖・バター・小麦粉を潰し混ぜた生地をのせて焼くだけのアップルクランブル。材料も少なく手間もかからないので、今でもイギリスの人気のデザートです。気合を入れて作る「本気系デザート」とは違い、食事の準備の合間にちゃちゃっと準備してオーブンに投げ込んでおく、お気軽な「なんちゃってアップルパイ」のような感じ。
イギリスでは緩めのホットカスタードやクリームと一緒に提供されることが多いですが、私のおすすめは、バニラアイス! 熱々のクランブルと冷たいアイスの競演は、アカデミー賞もの。甘酸っぱい感動作、全英が震撼したアップルクランブルで、今年最高の美味しい時間をお楽しみください。
ルーシーのアップルクランブル レシピ
アップルクランブルは失敗知らずで、老若男女に愛される本当に簡単なお菓子。あーだこーだ言わずに、一度作ってみてください。きっとあなたの十八番(おはこ)となるはずです。
材料
(フィリング)
- リンゴ 4個 (今回は紅玉3個と王林1個) ※紅玉のように酸味の強いリンゴを使ってください。
- グラニュー糖 大さじ1
- シナモン 小さじ1
- カルダモン 小さじ1/3
- クローブ 小さじ1/3
- コーンスターチ 大さじ1
(クランブル)
- 薄力粉 160g
- グラニュー糖 60g
- バター 80g
※クルミやレーズン、オートミールをお好みで少量加えてもOK
作り方
※オーブンは190℃に余熱
■ クランブルを作る
- 冷蔵庫から取り出したバターをサイコロ状にカットする。
- 大きめのボウルで薄力粉、クランブル用のグラニュー糖を混ぜ、①のバターを加え、ペストリーカッターや手でポロポロになるまで混ぜ合わせて、冷蔵庫に戻す。
■ フィリングを作る
- リンゴをお好みの形にカットする。皮は剥いても剥かなくてもお好みで (小さく切ると溶けて、大きめに切れば食感が残ります) !
- ボウルに切ったリンゴとコーンスターチ、フィリング用のグラニュー糖を入れて混ぜ合わせ、さらにシナモン、カルダモン、クローブも加えて混ぜる。
■クランブルとフィリングを合わせる - 薄くバターを塗った耐熱皿に④のフィリングを並べて、冷やしておいた②のクランブルをまんべんなくのせる。
- 190℃に予熱したオーブンで40〜50分焼き、クランブルにうっすら色が付けば完成!
お好みでアイスクリームやカスタードと召し上がれ! ちなみにバニラアイスはハーゲンダッツのような濃厚なものではなく、スーパーカップなどのさっぱり系がおすすめです。
今回使用した3種のスパイス「シナモン」「カルダモン」「クローブ」は、チャイの基本のスパイスでもあります。これらのスパイスに共通するのが、加温作用(身体を温める作用)や整腸作用(お腹の調子を整える作用)。寒い季節に活用したいスパイスたちなのです。
・冬に楽しむスパイスを使ったチャイ【ルーシーのおいしい暮らし】
この機会に3種のスパイスを揃えて、チャイを飲みながらのアップルクランブルタイムはいかがでしょうか? 心も身体もポカポカな冬になりますよーに!
編集部でアップルクランブルを作ってみました!(動画)
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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