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冬に楽しむスパイスを使ったチャイ【ルーシーのおいしい暮らし】

冬に楽しむスパイスを使ったチャイ【ルーシーのおいしい暮らし】

お気に入りの温かいコートを着るのも寒い冬のお楽しみ! ですが、身体の内側から温めてあげることが一番大切! 今回はスパイスを使い、楽しく美味しく身体を内側から温めるお茶「マサラチャイ」のレシピやスパイスの効能などを、神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんがご紹介します。

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チャイとは

マサラチャイの材料
材料は大きなスーパーなどで簡単に手に入るもので作れます。

「チャイ」とはヒンディー語で「お茶」を意味する言葉で、中国語の「茶 cha」に由来しています。日本ではチャイというとスパイスの入った甘いインド風なお茶を連想しますが、本来スパイスが入ったチャイの正式名称は「マサラチャイ」です。

チャイの始まりは

チャイスタンド
インドではチャイスタンドが街の至る所に。AnnaTamila/Shutterstock.com

チャイの起源には諸説あるようですが、インドがイギリス帝国の植民地であった19世紀、上等な茶葉はイギリスへ出荷され、手元には細かくて苦い、売り物にならない粗悪な茶葉(ダストティー)しか残らなかったとか。それを美味しく飲むために、スパイスと牛乳を入れたのが始まりだそうです。

基本の3種のスパイス

シナモン、カルダモン、クローブ
マサラチャイ業界の3種の神器ならぬ、3種のスパイス。シナモン、カルダモン、クローブ。

「カルダモン」、「クローブ」、「シナモン」の3種のスパイスさえあれば、じつは家庭でも短時間で簡単にチャイを作ることができます。

マサラチャイに使われるスパイスには、加温作用(身体を温める作用)や整腸作用(おなかの調子を整える作用)があるものが多く、ぜひ寒い時期にも飲んでいただきたい一杯です。

効能を学んでから飲むマサラチャイは今まで以上に美味しく、健康的な一杯となることでしょう!

カルダモン

レモンやユーカリを彷彿とさせるような、清涼感のある上品な香りが特徴。さまざまな効能を持っていることから「スパイスの女王」とも呼ばれ、中国やインドでは3,000年以上も前から香辛料や医療品として使用されています。

カルダモン
GreenArt/Shutterstock.com

食べ過ぎてしまった時、おなかにガスが溜まりスッキリしない時にも効果を発揮します。

じつはカルダモンは乳製品ととても相性のよいスパイスなのです。

私のお気に入りは朝のチーズトーストに一振り。チーズのコクに爽やかさがプラスされてグッと大人の味に。ポタージュ系スープの隠し味にもおすすめです。

ホウレンソウのポタージュ
ホウレンソウのポタージュの隠し味はカルダモン。

クローブ

スパイシーでありながらもバニラのような甘さを秘めています。独特な香りは世界中で愛され、辛口な料理からデザート系まで幅広く使われています。

クローブ
Quality Stock Arts/Shutterstock.com

クローブには、しびれるような鎮痛作用と抗菌作用があり、「歯医者のハーブ」と呼ばれることも!

幼少の頃「今治水(こんじすい)」というお薬が家に常備されていて、歯が痛くなると今治水を浸した小さな綿を口の中に押し込まれ、痛む歯に塗られていました。

苦いのか? 甘いのか? よく分からない不思議な香りに毎回嫌気がさしていましたが、だんだんと癖になり、そのうち歯が痛くない時も小さな瓶の蓋を開け、クンクン匂いを嗅ぐようになってしまいました。

時は経ち、ティーンエイジャーになった頃のクリスマス。ノスタルジックな今治水の香りが家中に漂い、香りがするほうに導かれると、母ちゃんがオレンジにクローブを刺して、オレンジポマンダーを作っている最中でした。そう、今治水の成分にはクローブが含まれていたのです。

オレンジポマンダー
写真はオレンジポマンダー。20年ほど前に作ったオレンジポマンダーはまだまだ現役!

ポマンダーは16世紀頃のヨーロッパでペストが大流行した際に、魔除けやおまじないとして作られました。人々は香りのよいポマンダーをお守りとして持ち歩いていたといわれています。

強い殺菌作用を持つクローブを表面に隙間なく刺したオレンジは、カビてしまうことなくカラカラに乾燥します。これはスパイスが天然の防腐剤の役割を担っていた、古代のミイラ作りと同じ原理!

現代でも欧米では幸運を呼ぶシンボルとして、クリスマスシーズンにオレンジポマンダーを飾る習慣が残っています。

この出来事から、私の中でのクローブの香りは、歯が痛い思い出からクリスマスの楽しい思い出へと上書き保存されたのです。

シナモン

この中では一番身近なスパイス、シナモン。甘くてエキゾチックな香りで世界中を虜にし、「世界最古のスパイス」とも呼ばれています。

シナモンとは、厳密には上品で繊細な香りのセイロンシナモンを指しますが、シナモンと表記され販売されているものには、安価で香りの強いカシアシナモンが多いのも現状です。

セイロンシナモン
セイロンシナモンはカシアシナモンに比べて皮が薄く巻きが多いのが特徴(写真はセイロンシナモン)。matka_Wariatka/Shutterstock.com

シナモンは身体を温め風邪を予防するだけではなく、風邪の諸症状にも効果を発揮します。シナモンは桂皮とも呼ばれ、葛根湯にも配合されているのは納得です。

シナモンの香りは日本でもニッキと呼ばれ昔から愛されていますが、実はシナモンとニッキは似て非なるもの。どちらもクスノキ科の常緑樹ですが、セイロンシナモンはセイロンニッケイの幹の樹皮を乾燥させて使うのに対し、ニッキはシナニッケイの根っこの部分を使うのが特徴です。

ニッキよりもシナモンのほうが甘い香りが強く、シナモンの独特な風味のもとであるオイゲノールという成分は、セイロン産のシナモンのみに含まれる成分で、ニッキには含まれていません。

難しいことはさておき、シナモンロールと八つ橋を食べ比べると、香りの違いがよく分かると思いますのでお試しあれ!

マサラチャイは千差万別

マサラチャイに決まったレシピはありません。各家庭や地方によって、味や使用するスパイスはさまざまです。

マサラチャイ
数種類のスパイスを使うと、さらに香りが深くなります。

上記で紹介した3種の基本スパイスの他にも、ナツメグやスターアニス、ブラックペッパー、すりおろしたショウガなどをお好みで加え、自分好みの配合を探すのもマサラチャイ作りの醍醐味といってよいでしょう。

ショウガ
先日我が家の畑でショウガが採れたので、最近はショウガを多めにすりおろしてジンジャーマサラチャイを楽しんでいます。

もし可能であれば、「CTC紅茶」という丸い球形状になっている紅茶の葉を使うと、本場の濃い茶葉の味が楽しめますが、お家にあるアッサムやセイロンの茶葉を濃く入れるだけでも十分美味しくいただけますのでご心配なく。

普段使いはティーバッグで!

仕事に子育てなど、現代人のほとんどは「丁寧な暮らし」をしている暇なんてないと思います。気軽に楽しむにはティーバッグでも大丈夫! なるべく濃く出るタイプを選びましょう。

高級なブランドのものでなくても、「LIPTON」イエローラベルなどのお手軽な紅茶で十分!

Tetrayの紅茶
一応私も忙しい現代人なので、普段はティーバッグ! 最近はイギリスの老舗庶民派ブランド「Tetley」のエクストラストロングがお気に入り。「Tetley」は茶葉が細かく、濃く深い味わいなのでイギリス人が大好きなミルクティーにもぴったり。

アンティークの買い付けでイギリスへ行くたびに、さまざまな種類の紅茶を買い込むのが楽しみですが、購入するほとんどはティーバッグのものです。

Yogi teaの紅茶
インドの伝統医学アーユルヴェーダに基づき生み出された「Yogi tea」からは、ショウガやカルダモン、クローブ、シナモンがブレンドされているハーブティーのティーバッグも販売されています。
Yogi teaの紅茶
Yogi teaのティーバッグのタグにはさまざまなメッセージが書かれているので、一日の始まりにおみくじ的に楽しむのもいいでしょう!

画像のメッセージは「Spread the light; be the lighthouse.」。勝手に私のフィルターを通して和訳すると「みーんなにキラキラを分け与える、そんな灯台みたいな女になるんやで!!!」って感じかしら。

紅茶
我が家のキッチンの棚には紅茶がいっぱい! 可愛い缶やパッケージのものはそのまま飾り、他のものはヴィンテージのメイソンジャーへ。そうすることでスッキリとシンプルに。

ルーシーのマサラチャイレシピ

さてさて、前置きが長くなりました。そろそろ作り方をご紹介しましょう!

こっそりレシピの下のほうに「丁寧な暮らしをしている風」バージョンのヒントも書いておきますので、ぜひ、そちらも参考にしてください。

マサラチャイの作り方
材料はとってもシンプル。

<2〜3人分の材料>(スパイスの量はお好みで増減してください)

  • 紅茶(アッサムかセイロンがおすすめ)小さじ4杯程
  • セイロンシナモン 1本
  • カルダモン(ホール) 4個
  • クローブ(ホール) 4個
  • 生姜(スライスでもすりおろしでも) 小さじ2
  • ブラックペッパー 5個
  • 水 400ml
  • 牛乳 400ml
  • 砂糖 適量

<作り方>

  1. シナモンを割り、カルダモンは潰して皮を剥き中身を出す。
  2. 鍋にスパイス、茶葉と水を合わせて火にかける(5〜10分ほど)。
  3. 牛乳と砂糖を加え、沸騰直前で火を止める。
  4. 茶こしでこす。
マサラチャイの作り方
カルダモンは、剥いた皮の部分も捨てずに煮出します。シナモンは折り、ブラックペッパーやカルダモンなどのスパイスは、乳鉢や包丁の腹を使って潰して使うと、さらに香りが立ちます。
マサラチャイの作り方
お好みで最後にピンクペッパーを散らすときれい。

自分好みにブレンドしたパウダーで気軽に楽しむ

本格的なマサラチャイを楽しむには、ホールの状態でのスパイスを使うのがおすすめですが、忙しい朝などに気軽に楽しむなら、あらかじめパウダー状のスパイスをお好みにミックスしておき、ミルクティーに振りかければ、簡単マサラチャイ風ミルクティーに早変わり。

パウダーのスパイス
パウダーのスパイスは香りが強いので少量ずつお試しあれ!

チャイミックスでさらに気軽に

究極の面倒くさがり屋さんのあなたには、こちらがおすすめ。

さまざまなメーカーから、スパイスがブレンドされているチャイミックスが販売されているので、それを使うのが一番簡単。ミルクティーにスプーン1杯混ぜるだけで、マサラチャイのでき上がり! 正味5秒もかからずに飲めチャイます。

チャイミックス
私は千葉の大多喜にある「大多喜ハーブガーデン」のチャイミックスを常備しています。たまにカレーにも入れちゃう便利な相棒で、インターネットからも購入可能です。

隠し味はお気に入りのカップで!

イギリスから海を渡ってやって来たアンティークのカップでマサラチャイを飲むなんて、なんともロマンティック。インド人もびっくり。

ティーカップ
とびきり甘く飲みたい時はデミタスカップで、さっぱりたっぷり飲みたい時は普通のカップより一回り大きいブレックファーストカップなど、使い分けるのもいいですね。

冷えは万病のもと。今年の冬は是非マサラチャイを飲んで身体の内側から温め、不調知らずに! 材料さえ揃えればとっても簡単! ぜひ、お試しください。

今回はインドのチャイに関して書きましたが、じつは私、インドへ行ったことがありません。

インドという国に関しては「行ったことがない」というよりは、「まだ呼ばれていない」というほうが適切かもしれませんね。

だから、今日も私はスパイスを煮込み、インドがイギリス領だった頃の「ビクトリア朝時代のアンティークカップ」でチャイを飲むのであります。

未だ呼ばれぬ、遠いインドの地に思いを馳せながら。

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