「ペパーミント」という植物をご存じでしょうか。アイスやお菓子としてなじみ深いミントの一種類ですが、じつは、たくさんの効能がある、魅力的なハーブなのです。この記事では、ペパーミントの効能やその使い方についてご紹介していきます。
目次
ペパーミントとは
ミントとは、ハッカ(Mentha)属の植物の総称です。全世界で栽培、交配が盛んに行われてきたため、認定されている品種だけでも100種類以上あり、認定されていないものを含めれば600種類とも。種類によって、香りも大きさも葉姿も異なります。
その中でも、今回の主役・ペパーミントは、スペアミントとウォーターミントの自然交配で生まれた交雑種で、ミントの代表的な品種の一つです。
ヨーロッパに自生し、一般に温暖で湿った場所を好みます。現在ではアジアや北米など世界各地で栽培され、草丈は50~80cm程度に生長します。
ミント特有の爽やかな清涼感のある香りで、料理のほか、ガムや歯磨き粉などにも利用されています。
ペパーミントの歴史
ミントは古くから食用だけでなく、薬用、香料としても使われてきました。歴史はメソポタミア文明までさかのぼることができ、粘土板の楔形文字にはハーブが書かれていて、その中にミントもありました。また、紀元前1000年前後のエジプトの墓から、ミントの一種が発見されていますし、古代ヘブライ人は、集会場の床にミントの葉を敷き詰めて、踏むたびに香りが広がるよう工夫をしていたとか。その後、ローマ兵によりローマ帝国全土に広がり、来客をもてなすために部屋でミントの葉をもんで、香りを漂わせていたといわれています。
そして、1700年代後半にはイギリスで大人気となり、大量に栽培されるようになっていきます。
ミントの名前の由来
ミントの名前の由来は、ギリシア神話に登場する妖精メンテ(Menthe)で、呪いにより草に姿を変えられたという話が伝わっています。
冥王ハーデースは、非常に美しいメンテに魅了されてしまいます。それを知った冥界の女王である妻・ペルセポネーの呪いで、メンテは草に変えられてしまいます。それ以来、この草はミントと呼ばれ、ハーデースの神殿の庭で咲き続けたそうです。また、地上でも芳香を放ち、人々に自分の居場所を知らせるのだといわれています。
ペパーミントの効能
ペパーミントの爽やかな清涼感と刺激的な風味の主成分は、メントール。メントールには、鎮痛・鎮痒・冷却・防腐・殺菌作用があるため、湿布や軟膏など医療分野でもよく使われますね。また、その爽快感から、歯磨き粉やガム、化粧品などにも利用されています。
メントールには胃の消化促進作用があるため、食後のティーとしてもおすすめで、食べすぎ・飲みすぎなどで胃の調子が悪い時や、胃のむかつき症状、胃潰瘍の予防にも○。
風邪の引き始めに飲むとすっきりしますし、乗り物酔いを緩和する効果も期待できます。
加えて、ペパーミントには鎮静作用があり、精神的な緊張を和らげ、イライラをしずめ、心身をリラックスさせ、安眠へ導いてくれます。
ペパーミントの使い方
生のまま
生のままの葉(フレッシュ)を使用します。
サラダやアイスくりーむ、ケーキなどに添えたり、カクテルや甘い飲み物に飾りとして使われることも多いですね。生の葉をホイップクリームや、チョコレートムースに入れたり、シャーベットに加えたりと、スイーツとの相性もぴったり! 生の葉をすり潰すことで、香りもさらに立ちますよ。
また、リーフレタスのサラダにペパーミントの葉をちぎって混ぜてもおいしく、おすすめです。オリーブオイルにレモン汁と塩コショウで、シンプルに!
ペパーミントには、苦み成分も含まれているので、慣れないうちは、少量での利用にしておくとよいでしょう。
また、生葉はハーブティーとして飲むこともできます。
葉は食べなくても、あの爽やかな香りは存分に楽しめます。フレッシュでしか味わえない、贅沢なティーになりますよ。
たくさん収穫できたら、生の葉をお風呂に入れて、フレッシュハーブバスにしてもいいですね。
ペパーミントの持つ清涼感で、汗でべたべたした体もすっきりします。
乾燥させて
乾燥させた(ドライ)状態でも使用できます。
ペパーミントは、冬にはいったん葉を落とし、春にまた出てくる多年草。晩秋に収穫しておき、一年中活用できるように工夫した方法が、乾燥(ドライ)です。
中東や地中海沿岸、ヨーロッパでは、ペパーミントの乾燥した葉を、マトンやラム肉料理などの香草焼きによく使います。もちろん、クッキーなどの焼き菓子にも。
また、ミントの持つ爽やかな香りは、ニオイ消しや殺菌作用もあります。ドライにしたものを布袋に詰めておけば、簡単匂い袋の完成! 靴の中に入れたり、車に置いたり、下駄箱やトイレなどの消臭剤として使ってもいいですね。
精油(エッセンシャルオイル)
ペパーミントは料理やお風呂で活用するだけでなく、葉から有効成分を抽出した精油(エッセンシャルオイル)としても活用されます。ペパーミントの精油には、リフレッシュ作用や消化促進作用、鎮痛作用、抗菌作用などが期待できます。
ペパーミントは、普段からなじみのある香りですし、精油初心者さんにも取り入れやすいハーブです。まずは、マグカップにお湯を入れ、そこにペパーミントの精油を1滴たらしてみてください。それだけで、リラックス作用を実感していただけるはず。
また、体の不調を整えるだけでなく、リンパの流れを促し、滞った血液や老廃物を排出する作用もありますので、美容目的としてもおすすめです。その場合は、ホホバオイルやスイートアーモンドオイルなどの植物油で希釈して、セルフトリートメントをしてみてください。
*アロマオイル・フレグランスオイルなどの記載は、人工香料を指している場合もあります。表記を確認の上、必ず植物100%の天然香料を選びましょう。
*妊娠中・高血圧・てんかんの方は使用を避けてください。
*皮膚刺激が強いため、濃度を低くして使用します。特に敏感肌の方は注意してください。
ハーブティーが定番
ミントハーブティーとは
ミントを使ったハーブティーを「ミントハーブティー」と呼びます。
飲み方は、冬はホット、夏はアイスがおすすめ! 独特の清涼感が口の中に広がり、美味しいですよ。また、鎮静作用もあり、カフェインレスですので、寝る前やリラックスタイムにもぴったりなハーブです。
ミントのハーブティーは世界中で愛用されていて、基本禁酒の国・アラブでは、アルコールの代わりに、夏を代表する飲み物として、ミントティーやミントレモネードがよく飲まれています。
その際のコツを2点。
まず、先に伝えた「効能」を体内に取り入れたいのであれば、続けること。1日1杯から始めて、まずは1カ月続けましょう。ハーブは薬ではないので、速効性はありません。じわじわと身体に作用していきますので、長い目で見ることも大切です。
2つ目は、有効成分は1度目におおよそ抽出されている点。緑茶と違い、2番茶・3番茶と飲むのではなく、1杯目を楽しみましょう。
作り方
生の葉を使用したフレッシュハーブティーと、乾燥させた葉を使用したハーブティーがあります。通常「ハーブティー」と書いてあるだけなら、乾燥した葉を使用していることが多いです。ミントは葉の部分のみを使用します。
生のミントを使う場合は、収穫したミントの葉を1枚ずつ枝から切り離し、水でさっと洗い、1杯約150ccに対し、葉を15~20枚ほどティーポットに入れます。
そこにお湯を注ぎ、3分蒸らしたら完成です。
乾燥させたミントで作る場合は、1杯約150ccに対し、ティースプーン山盛り1杯が基本の量になります。こちらも、お湯を注ぎ、3分蒸らしたら完成します。
自家製のミントをドライにして保存する場合は、開花前のミントを根元で切り、水で洗い、水分をふき取ります。その後、数本ずつ輪ゴムで茎の部分を束ね、逆さまにして、風通しのよい場所で自然乾燥させましょう。
その際、だらだらと時間をかけてしまうと、せっかくの芳香成分が揮発して、おいしく飲めない状態に…。扇風機やエアコンなどを利用して、短時間でカラッと乾燥させることがコツですよ。
育てておくと便利に使えますが、家にミントがなくても大丈夫! ハーブティー用のドライハーブは、インターネット通販を利用すれば、簡単に購入できます。
おすすめの飲み方
ハーブティーの楽しみは、香りと色。フレッシュでもドライでも、使用する種類によって、とても美しい色が楽しめます。せっかくなので、透明な耐熱ガラスのカップとティーポットを使用することをおすすめします。
また、ミントの葉だけだと青臭さが強くて飲みづらいかもしれません。その場合は、他のハーブとブレンドしてみましょう。いくつかブレンドレシピをご紹介しますね。
1. ミント×ミント
ペパーミント・スペアミント・アップルミントなどのミント類を合わせてみましょう。すべて同量、または、好きな香りがあれば、それを多めにブレンドします。
2. ミント×レモンバーム
ペパーミント・レモンバームを同量でブレンド。
3. ミント×ローズマリー
ペパーミント1に対して、ローズマリーはその半量~1/3をブレンド。
ブレンドというと、一気にハードルが上がったように感じるかもしれませんが、ハーブは、他の種類と合わせることで、お互いの角を取り、まろやかな味わいにしてくれるんですよ。ぜひ一度、試してみてください。そのあとは、割合をお好みで変えて、オリジナルブレンドを楽しんでくださいね。
また、ミントティーは幅広くアレンジもできます。
例えば、ミルクを入れてミルクティーに。好みで砂糖を入れれば、より飲みやすくなります。
ココアに入れるのも美味しく、ココアの甘さとミントの爽快感が楽しめます。アイスにして、上にミントを乗せると見た目も可愛くなりますね。
番外編として、ミントはお酒との相性もばっちり! キューバ発祥のモヒートは、夏にぴったりな爽快感溢れる定番カクテルですよね。
砂糖・ライム・ミントを混ぜて氷を入れ、ラム酒と炭酸水を注げば完成です。お酒の好きな方は、ぜひお試しを。
ペパーミントの保存方法
水に挿して
ペパーミントの生の葉は比較的日持ちがします。茎が長いものなら、コップに水を入れて、その中に挿しておき、必要な分を使用します。水は毎日替えてくださいね。この状態で常温または、冷蔵庫で保管します。
密閉して
茎が短い場合は、密閉容器か保存袋に入れて冷蔵庫で保存します。私がよくやる方法は、ミントの葉は1枚ずつカットして、水を含ませたキッチンペーパーを敷いたトレイに並べ、蓋をして冷蔵庫で保管、です。
茎が長い場合は、ミントを水で濡らしてよく絞ったキッチンペーパーで包み、寝かせて冷蔵庫で保管します。1週間ほどは持ちますが、水分が多く浸っている状態だと、葉が黒ずんだり、葉から成分が水に溶け出してしまいます。水分は、ほどほどに。
冷凍して
そのまま保存袋に入れて冷凍することができます。冷凍しておくと、一年中使えるので便利です。フリーズドライ状態ですので、手で少し触ると粉々に。スープやお料理の飾りに使ってもいいですね。
また、製氷皿に水と共に入れてアイスキューブにするのもおすすめ。夏、お水を飲むときにキューブを入れればミントの葉が浮かび、清涼感も増します。冷凍なら、芳香成分をそのまま閉じ込められるので、保存方法としても優秀です。アイスティーに入れればアイスミントティーにもなりますね。
ペパーミントでリラックス
ペパーミントの特徴と使い方が、伝わったでしょうか? ペパーミントには、体にうれしい効能がたくさんあります。特におすすめは、手軽に贅沢気分が味わえる「フレッシュハーブティー」。
すぐに飲みたいところですが、まずはカップを鼻に持っていき、香りを吸い込みながら、深呼吸。鼻から成分を取り込みましょう。芳香成分は一瞬にして脳に届くといわれています。鼻から取り入れたら、次は口から。胃に落ちていく時の爽やかな感覚と、口の中に広がるフレッシュさを感じると、「ほっ」とできるはず。一度飲んだらやみつきになります。暮らしにペパーミントを取り入れて、リラックスできるおうち時間を楽しんでくださいね。
Credit
写真&文 / 堀久恵 - 花音-kanon- 代表 -
ほり・ひさえ/ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。埼玉県熊谷市の『花音の森』にて、日々植物に囲まれ、ガーデンセラピーを実践中。
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