槇谷桜子の古民家グリーン・リノベーション「時短収納」
人気WEBプランツショップのオーナー槇谷桜子さんは、築100年の古民家を植物が映える自宅兼会社にリノベーションしました。グリーンが映える工夫とともに、この家づくりには主婦・母・社長をこなすためのさまざまなアイデアが盛り込まれています。今回は家をつくるときに重視したい「収納」の工夫をご紹介。
家を建てる時に重視したいのが収納ですよね。すっきりと片付き、その綺麗な状態を保つためには、効率のよい収納が必要になります。我が家は極力、家具を少なくと決めていたので、つくり付けの収納スペースの配置をじっくり考えました。つくり付けは動かせない収納になるため、ライフスタイルや動線を想像し、一番使いやすい位置を吟味しました。
私が考える収納のポイントをご紹介します。
◆まずは収納量
家族が何人でどれだけの物を収納しなければならないのか。子どもたちが大きくなった時、私が年老いた時、どのくらい物が増えるのか。
おおよその物の量を計算し、それより少し大きめにスペースは取っておくことにしました。
家の大きさに応じて収納スペースにも限度がありますので、どのように収納すれば、一番効率がよいのか考え、通路の配置や幅、つくり付けの棚の間隔など、すべて私が細かく設計し、大工さんに造作していただきました。
◆何を収納するのか
我が家には大きく分けて「パントリー」「ウォークインクローゼット」「ウォークインシューズクロー」「納戸」「脱衣室収納」の5つの収納スペースがあります。
小さな収納は設けず、すべて人が出入りできる大きさの収納室になります。忘れっぽい私はどこに何をしまったのか、分からなくなってしまうので、昔から分類したものを一箇所にまとめて収納しており、このような収納室にしました。
◆使う物は使う場所の近くに収納する
効率化のためできるだけ動線を短くと考えると、作業する時に手の届く位置にあることが一番スムーズな動線になります。
ですが、「スッキリ」を優先させた場合、作業する場所に物が多いことはスッキリとは逆行することになります。まとめて一箇所に収納することが大前提なので、我が家では作業する場所から数歩のところに収納を配置することにしました。
◆使いやすさ、見つけやすさ
物を探す時間、取り出す時間はできるだけ短いほうがいいので、ほとんどの棚はオープン棚にし、一目で見つけられ、すぐに取り出せるようにしました。これは、小さな収納スペースだと物が見えてしまい、乱雑なイメージになってしまいますが、収納室として個室にすることでドアを閉めればスッキリを保てます。
パントリーだけはメインルームに隣接しており、ドアの開く向きも作業しやすい方向にしたので、お客様からよく見える位置にあります。ドアを閉めれば見えませんが、お客様にお茶をお出しする時などに開け閉めすると丸見えになってしまいます。またキッチングッズや食料は細かい物が多く、オープン棚では整理がしにくいので、棚にケースを入れて収納するようにしました。
キッチンで使う物→パントリーへ
我が家のキッチンは、玄関を開けるとすぐの位置にあります。
ここはキッチンとして、ダイニングとして、応接間として、また社内会議や休憩室としても使うメインルームです。生活感はなるべく隠しておきたい場所でした。古民家リノベーションならではの撤去できない柱がたくさんあるスペースでもありましたので、柱をできるだけ壁の中に隠せるように間取りを考えました。
柱があるため、システムキッチンは250㎝のものしか入らず、キッチングッズが収納しきれません。またお菓子作りも好きなので、その用具やキッチン家電など、もともとキッチンは物の多い場所でした。そこで、キッチンには毎日使う物だけを収納し、それ以外は全てパントリーへ収納するように、大きなスペースを確保しました。
まず考えたのが、冷蔵庫を置くスペースです。
前に建てた家でもそうしたように、冷蔵庫の後ろの壁を下げて、冷蔵庫の半分が埋め込んであるような形にしています。これで冷蔵庫だけが飛び出ることもなく、造作する棚と前面が一直線になりました。通路は大人2人が通れる幅を取り、しゃがんで作業してもお尻がぶつからないようにしました。
通路を挟んで両側に造作のオープン棚があります。
左側は入れるケースを先に決め、そのケースがぴったりと収まる幅、高さに設計しました。
上部は深さのある収納ケース、下部はよく使うキッチンツールなど細かな物を収納する浅いケースを使用しています。ここにはキッチン用具や食料だけでなく、家電の説明書や書類、置き薬や日用品なども一番上のあまり使わないゾーンに収納しています。
一番下にはキャスター付きのケースを収め、調味料や粉類などをまとめて入れています。ケースごとキッチンまで簡単に運べるので、料理中は手の届く位置に置き、必要な物がすぐ取れるようになっています。
また、棚の中間部は机のように使えるオープンスペースです。ここは一時置き場や、買い物してきた物を広げてしまう作業用のスペースとして使っています。
右側はもっと大きな収納ケースを収め、お菓子やお弁当作りの用具をまとめて入れたり、キッチン家電など大きな物を収納しています。ケースに入らない大きさのキッチン家電などを収納することも考え、ウッドブラインドを付けた時に飛び出ないように、棚は少し浅めにつくってもらいました。
中間部は電気ポットなど、出しっぱなしにしたい家電置き場にして、コンセントも多めに設けています。
下部は掃除機や箒など背の高い大きな物を収納できるようにフリースペースにしました。
メインルームには電気のスイッチなどはできるだけ付けたくなかったので、パントリー内に電気のスイッチや風呂給湯器のリモコンなどを壁付けしています。この大容量のパントリーのお陰でキッチンはいつもスッキリとし、かつ動線が短いので、効率よく短時間で素早く料理を仕上げることができています。
次回は、洋服や日用品のストックなど、使いやすい収納スタイルについてお話ししたいと思います。
建築/「中内工務店」http://www.nakauchi-koumuten.jp/
Credit
写真&文 / 槇谷桜子
まきたに・さくらこ/‘大人可愛い’をテーマにした「Junk sweet Garden tef*tef*」とクールでスタイリッシュな観葉を扱う「BOTANICAL GREEN」、2つのWebプランツショップのオーナー。高校1年生の娘と小学校4年生の息子がいるアラフォー。花好きが高じてショップを始めて10年、仕事と家庭を両立させながらショップを展開中。繊細で絵画的な寄せ植えにファン多数。
「BOTANICAL GREEN」https://shop.teftef.biz/shopbrand/ct273/
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