【庭のある暮らし】ハーブを育てて使い、心と身体を整え健やかに暮らす

庭で育てたハーブを収穫し、暮らしのさまざまなシーンで利用している鈴木ハーブ研究所の鈴木さちよさん。料理やバスタイムなどはもちろん、眠れない夜や風邪のひき始めにハーブティーを飲用するなど、心身の不調を整えるのにも役立てています。500種類以上のハーブの草花や樹木が育つ鈴木ハーブ研究所の庭と、さちよさんのハーブの使い方をご紹介します。5月24日(金)〜26日(日)まで、オープンガーデンも開催中です。
目次
脳神経を活性化させるローズマリー

ローズマリーは常緑の低木で、一年中香りのよい葉を提供してくれます。木立ち性や、這うように育つほふく性、半ほふく性のものがあり、この庭では木立ち性のものをフェンスに沿わせて育てています。非常に丈夫で乾燥や真夏の日差しにも強く、これといった病害虫の心配もないので、育てている人もたくさんいるのではないかと思います。

よく皆さんに聞かれるのが、モサモサとよく生い茂るローズマリーの使い道です。生育旺盛なローズマリーは収穫を兼ねてこまめに剪定し、利用するのが株姿をきれいに保つ一番の方法です。切らずにいると2mくらいの高さになり、内側が蒸れて枯れてきたりするので、適宜切って使うのがおすすめです。さて、その使い方ですが、一番簡単なのは、枝を束ねて室内に飾るスワッグを作ることです。

ローズマリーは葉に触れると、力強く爽快感のある香りを放ち、元気がないときでも気持ちをリフレッシュさせてくれます。これは単なる私の気の持ちようではなく、近年の研究で、ローズマリーの香りは脳を活性化させ、気持ちを前向きにしたり、集中力や記憶力を高める効果に優れることが分かっています。ですから、例えば勉強部屋や仕事部屋に、ローズマリーの剪定した枝葉をぶら下げておくと、よくはかどるかもしれません。キッチンに吊しておけば、そのままドライになっても料理に使えます。

我が家では、よく子どもたちや大人のビールのおつまみに、友人から教えてもらった「トスカーナフライドポテト」を作ります。ローズマリーなどのハーブとニンニクで香り付けしたフライドポテトですが、とても簡単に作れてとってもおいしいので、ぜひお試しください。
ローズマリー香るトスカーナフライドポテトの作り方
【材料】
- ローズマリー 15cmほどを2枝
- タイム 2〜3枝
- セージの葉 5〜6枚(ハーブ類は全部揃わなくてもあるものでOK)
- ニンニク 1〜2片
- ジャガイモ 4〜5個
- ベーコンお好みの量
- 小麦粉少々
- 塩・胡椒適量
- 揚げ油適量
【作り方】
① ジャガイモもニンニクも皮付きのままでOK。ジャガイモをくし切りにして小麦粉をまぶします。ニンニクは先端をカットしておきます。切らないと高温の油の中でニンニクが弾けて危険なので、忘れないように!
② 油にハーブとニンニクを入れてから火をつけ、油が170℃に温まったらジャガイモを入れて、こんがりキツネ色になるまで5〜6分揚げます。このとき、ハーブが黒くなっても大丈夫です。
③ ベーコンを適当な大きさに切って、別のフライパンで炒めます。揚げたジャガイモとベーコンを絡めて、塩・胡椒をふり完成。
女性ホルモンを整え幸福感をもたらすバラ

バラは香水の香料に使われる代表的な植物ですが、花屋さんがブーケに使うバラは、じつは香りのあるものが少ないのです。そのわけは、香りの成分は精油に含まれており、精油分の豊富なバラの花びらは傷みやすく、流通に向かないためです。ですから、逆にいえば精油成分をたっぷり含んだ香り高いバラは、庭で育てている人だけの特権です。

バラの精油はアロマテラピーでも使われます。バラの香りには女性ホルモンの乱れを整えたり、ストレスを緩和し幸福感を得られる作用があるとされ、医療の現場で用いられることもあります。ところで、バラの精油がいくらするかご存じですか? 1mlで1万円以上。小さじ1杯が5mlですから、ほんの数滴でもとても価値があるのです。

庭でバラを育てていれば、その高貴な香りに包まれて暮らすことができます。朝、つぼみが開き始める頃のバラの香りは格別です。花に顔を近づけ息を深く吸い込むと、思わずうっとりため息がこぼれます。

この庭ではいくつかのバラを育てていますが、その一つがロサ・ガリカ・オフィキナリス。オフィキナリスという学名は「薬用の」という意味で、古くから薬として用いられてきたバラです。オフィキナリスは一季咲きなので、春は存分に香りを堪能した後、花弁を摘んでドライにし、花の季節が過ぎた後もお茶などにして一年中楽しめるように保存しています。
バラの花びらで作るローズペタルティー

ローズペタルとはバラの花びらのことです。バラの花びらを煮出してお茶にしますが、飲用する場合には無農薬で育てていることが条件です。香りが揮発しない朝のうちに花を摘み、ガクを外して花びらだけにします。ザルで洗ってから鍋に入れ、沸騰させたら火を止め、色が出てきたら完成です。

ドライのものはティーカップ1杯(約180ml)に対し、ティースプーン1〜1.5杯のローズペタルを用います。フレッシュの場合は、その2〜3倍の量を。レモン汁やはちみつを加えるのもおすすめです。
使い道豊富な日本在来の実力派和ハーブ、ドクダミ

日陰で湿り気の多い場所に群生し、独特の臭気がすることで知られるドクダミ。生育旺盛で庭中にはびこってしまい、除草しようとすると臭いが手につくので嫌われ者になりがちですが、非常に薬効が多く、強い抗菌作用のある和のハーブです。開花期に採取したものを乾燥させ、煎じて服用したり、生葉を揉んで汗疹や水虫などの湿布治療に用いたりと、古くから薬として利用されてきました。
虫刺されなどに重宝するドクダミチンキ

私はこの季節、5月下旬〜7月の開花期に、庭に生えているドクダミを収穫し、チンキを作ります。ドクダミの花や葉っぱで作るドクダミチンキは、虫刺されや汗疹、かぶれなどに重宝します。収穫した花と葉を一度水洗いして乾かした後、広口瓶の1/3ほどドクダミを入れ、ホワイトリカーや焼酎などのアルコールを瓶いっぱいに注いで3週間放置します。その後、フキンなどを使ってこし、スプレー容器に移し替えれば、ドクダミチンキとして利用できます。
500種以上のハーブや草花が育つ鈴木ハーブ研究所の庭

ご紹介したハーブに加え、鈴木ハーブ研究所の庭では、樹木や草花類を含め500種類以上のハーブを育てています。私は小さい頃から畑仕事をする祖母と一緒に暮らしてきたので、植物を育てて、収穫して、食べたり飲んだり、お風呂に入れたり、飾ったり、香りを利用したり、暮らしの中にはいつも植物があり、その移り変わりがカレンダーのように身に染み込んでいました。そのカレンダーの中に、大人になってからハーブが加わり、さらに私の植物の世界は広がりました。

ハーブは植物の中でも丈夫で育てやすい種類が多いので、地植えや鉢で育てておけば、いつでもすぐ手に取ることができます。そういう身近なものを利用して自分で自分をケアする術(すべ)を知っていれば、むやみに不安になったり、不安から体調を崩すのは防ぐことができます。予想外の事態というのは、どんな時代にも誰の人生にも起きると思いますが、そういうときに動揺するだけでなく、じゃあどうしたらいいのか、と次の一歩を考えることが大切。そのヒントを、母親として娘たちにきちんと残しておきたいなと思ったことをきっかけに、私のハーブのある暮らしを、4冊のミニブックにまとめました。
よく使うハーブの育て方、使い方をまとめた「私のハーバル手帳」

例えば、本の中でご紹介したカモミールは、娘たちが小さい頃から眠る前にミルクティーにして飲んでいます。カモミールの安眠作用はよく知られていますが、それだけではなく、喉がちょっと痛いなという、いわゆる風邪の初期症状のときにも有効です。その段階でカモミールティーを飲んでおくと、たいがい本格的な風邪に発展せずに済んでいます。こういうふうに、はっきりと「病気」とまではいかないけれど、ちょっとあれ? っていう違和感を覚えることって、日常的にありますよね。身体の不調もそうですし、なんとなく不安感が強くなったり、眠れなくなったりすることは、誰にでもあるものです。そういうときに、身近な庭や鉢植えの植物を使って対処できる知恵を持っているのは、心強いですよね。

ちょっと話はそれますが、私の地元でもあり、今も暮らす茨城県は水戸黄門で有名ですが、黄門様の命によって水戸藩医がまとめた『救民妙薬集』という書物があります。これは医者に診てもらうことができない貧しい民のために、身近な植物を用いて病を癒やせるようにと書かれたものです。お腹の痛いときはこの草を使ってこうするよ、とか、ケガをして出血したときはこうだよ、というように、自分自身で不調に対処する術が書かれているんです。私はこれを読んで、この知識がどんなにか人々を救ったことだろうし、心強かったことだろうなと思って感動しました。私は西洋からもたらされたハーブを庭で育てて、暮らしに役立ててきましたが、私自身も何度もハーブに救われてきました。自社のスキンケア商品にもそういう経験が生かされています。そして、もっと多くの人に自分がこれまで培ってきたハーブの知識を伝えたいと思い、「本」という形を選択しました。そのヒントを与えてくれたのが、『救民妙薬集』です。

「私のハーバル手帳」も、現代を忙しく生きる人々に、健やかで幸せな暮らしを送るために役立ててもらえたらという気持ちで作りました。育てやすく使いやすいハーブや、道端に生えているような身近な草花をピックアップしました。ハンドバッグに入れて移動中などに眺めてもらえるように、A5版であえて薄い作りにしました。忙しい日常の合間で、ふと本を開いたときに癒やされ、いつも健やかでいられるためのお守りになれたらうれしいです。
【私のハーバル手帳】
Vol1. カモミール、ミント、ラベンダー、セージ

Vol2. ローズマリー、タイム、オレガノ、バジル

Vol3. バラ、バタフライピー、ラバンジン、オータムベリーズ、コキア、クロモジ

Vol4. フキ、ヨモギ、スギナ、カラスノエンドウ、セイヨウタンポポ、ドクダミ、サンショウ、シソ、クスノキ、ビワ

【Information】

鈴木ハーブ研究所
オープンガーデン開催中
5月24日(金)〜26日(日)10時〜16時(最終日15時まで)
入園無料
■場所
鈴木ハーブ研究所/〒319-1112茨城県那珂郡東海村村松2461
■内容
500種以上を育てるガーデンの無料開放/ワークショップ/出店販売他
Credit
取材 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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