梅雨のしっとりとした空気は、植物の「挿し木」にとって理想的な環境。特に紫陽花(アジサイ)はこの時期に挿し木すると成功率が高く、初心者にもおすすめです。この記事では、紫陽花の挿し木に必要な道具から適した枝の選び方、よくある失敗の原因、成功の秘訣まで、丁寧に分かりやすく解説します。お気に入りの紫陽花を、あなたの手で増やしてみませんか?
目次
紫陽花の「挿し木」ってなに?
挿し木とは、植物の枝を切り取って土や水に挿し、根を出させて新しい株を作る方法です。タネから育てるよりも早く、元の株と同じ性質の植物を増やせるのが魅力。紫陽花は特に挿し木との相性がよく、梅雨時期は自然の湿度で根づきやすくなります。
【準備編】必要な道具と材料
挿し木は特別な道具がなくても始められます。以下を揃えておきましょう。

- 清潔なハサミ(アルコールスプレーなどで消毒しておく)
- 清潔なカッターナイフ
- 水を入れた器
- 小さめの駄音鉢(5〜7号程度)
- 清潔な土(挿し木用土、赤玉土小粒、鹿沼土、ピートモスなど水はけよく保水性のあるもの)
- 水さしor 霧吹き(こまめな水やり用)
【手順編】初心者でもできる! 紫陽花の挿し木の方法
1. 適した枝を選ぶ(ここがつまずきポイントその①)

- 今年伸びた緑がかった柔らかい枝(=新梢)を使うのが基本。
- 花が咲いた枝ではなく、咲いていない枝を選びます。
- 茎が太くて節間がつまった元気な枝を選びます。
※失敗しやすい例:「花が咲いていて綺麗だから」と花つきの枝を挿してしまうことがよくあります。しかし、花つきの枝は栄養が花に使われて、根が出にくいので、咲いていないものを選びましょう。
2. 枝を10~15cmに切る(葉を2~3枚残す)

- ハサミで切った枝の切り口をカッターで斜めにカットします。
- 上の葉2枚を残し、それ以外はすべて取り除きます。
- 大きな葉は半分にカットします。
- 切り口を水に30分~1時間程度浸します。

※豆知識:ハサミは押し切る道具なので細胞が潰れる可能性があります。カッターなどの引き切る道具で切り戻すと細胞が潰れないので、成功率が上がります。
3. 枝を土に挿す

- 土を水で濡らしておきます。
- 挿し穂を土に挿し、周囲の土をしっかり押さえて安定させます。
- 挿し木用の土に肥料は入れません。
挿し木用の土に肥料を入れない理由
■根がまだない → 肥料を吸えない
挿し木は、まだ根が出ていない状態から始まるため、肥料分があっても植物はそれを利用できません。
■肥料があると腐りやすくなる
肥料に含まれる栄養成分(特に窒素)は、土中の菌の繁殖を促し、切り口から雑菌が入って腐りやすくなります。
■肥料入りの培養土はNG
市販の「草花用培養土」などには元肥が入っていることが多いため、挿し木には適しません。
4. 湿度と水分を保つ(つまずきポイントその②)

- プランツタグに、挿した日と植物名を書いておきます。
- 置き場所は明るい日陰。直射日光はNG!
- 土が乾きすぎないよう毎日、水差しか霧吹きで保湿します。
- 挿した枝は動かさないように注意します。
※失敗しやすい例:「毎日お日様に当てないと…」と日向に置くと、葉がしおれ、乾いて失敗しがちです。また、根が出たか確認する為に土から抜くと、折角出た根が千切れてしまうので絶対ダメです。
5. 発根を待つ(約3~4週間)
- 約3週間〜1カ月で発根します。
- 成功のサインは、新芽が動き出す・葉がピンとしていること。
- 発根が確認できたら鉢上げして育てましょう。
【コツ編】挿し木成功のためのワンポイントアドバイス
何度挑戦しても上手くいかない、大切な植物だから少しでも成功率をあげたい。そんな方は、植物活力素メネデールを使ってみてはいかがでしょうか?

植物活力素メネデールは、発売から70年以上経つロングセラーの活力剤です。植物を植える時や弱った時などに使うと、植物の生育をサポートしてくれる働きがあり、挿し木や株分け時には新しい根の発生や水分・養分の吸収を助けてくれます。
その使い方は簡単。

挿し木の時は、挿し穂を水に浸ける際、100倍希釈になるよう水にメネデールを加えます。

また、挿し床に挿した直後と、その後の管理でも週に1度程度、水やり代わりにメネデール100倍希釈液を与えるとさらに効果的です。植え付け後1カ月を目安に継続使用するのがおすすめです。
株分けの場合にも、切り分けた後にメネデール100倍液に1~2時間浸けてから植え付けます。その後も、週に1度程度の頻度で3~4回継続的に与えるとより効果的です。

活力剤は植物の根の修復や活性化に効果的な資材なので、新芽が動き始めるまではこちらを。新芽が動き出したら栄養補給のために液肥へ切り替えると生育力アップ。
【コラム】人気の「アナベル」もこの方法で増やせます!

ふわふわの白い花が人気のアナベルも、今回ご紹介した挿し木の手順で増やせます。特に発根しやすい品種として知られており、初心者の練習にもぴったり。ただし、花が咲いた枝は避け、若くて元気な枝を選ぶのが成功のカギです。
【基本的な手順は同じ】
- 梅雨時期(6〜7月)がベストタイミング
- 今年伸びた花のついていない枝を選ぶ
- 10~15cmでカットし、葉を2枚残して他は取り除く
- 挿し木用土に挿す(肥料なし・湿度管理が重要)
- 明るい日陰で管理し、3~4週間ほどで発根
【アナベル挿し木での注意点】
① 花後の枝は避ける
アナベルは咲いた後の枝にエネルギーを使い果たしているので、花後すぐの枝は避けましょう。まだつぼみのついていない、もしくは脇芽が伸びた元気な枝が最適です。
② 茎が折れやすいことがある
アナベルの若い枝は意外と繊細で、節の部分でポキっと折れやすいです。挿すときに力を入れすぎないよう、あらかじめ穴をあけてからそっと挿すのがコツ。
③ 活力剤との相性も良好
特にメネデールを水に混ぜて切り口を浸すと、アナベルは反応がよく、発根しやすくなります。
【注意】挿し木で増やした紫陽花を他人に譲ってはいけないケースがあります
なぜダメなの? → 育成者権(知的財産権)の問題

紫陽花の中には、品種登録されているもの(登録品種)があり、それらには「育成者権(開発した人の権利)」が認められています。これはいわば植物の「著作権」のようなもので、無断で増やして配布・販売することは法律違反(種苗法違反)になります。
違反になる行為とは?
育成者権がある品種を…
- 挿し木で増やして他人に「譲る」「あげる」「売る」
- 海外に持ち出す

これらはすべてNG。営利・非営利にかかわらず禁止されています。他人にあげたり、SNSやフリマで配布するのももちろんNG。知らなかった場合でも逮捕・書類送検の前例があるので気をつけましょう。
どう見分ける? 登録品種かどうか
大手園芸店やナーセリーから購入したものはほぼ、登録品種だと思っておいたほうがよいでしょう。アジサイはここ10〜20年で人気が高まり、各ナーセリーが競って改良品種を開発しています。園芸店は「売れる」「育てやすい」品種を選定して仕入れていますので、ほとんど全て登録されています。
また、以下の特徴がある鉢も登録品種です。

- 商品名にカタカナ名やブランド名がついている。
- ラベルに「登録品種」「PVP(Plant Variety Protection)」と記載されている。
これらは生産・販売に育成者の許可が必要な品種です。挿し木で植物を増やすのはガーデニングの醍醐味ですが、登録品種は育成者の長年の研究と工夫、熱意、経費もかかっています。素敵な花を生み出してくれた育成者への敬意を忘れずに、増やしたい場合は「自宅で育てるだけ」にとどめましょう。
もし、友人に分けたい場合は、登録されていない在来品種や自分で育種したものに限る、という点を覚えておいてください。
【まとめ】紫陽花の挿し木は「今」がチャンス!

紫陽花の挿し木は、梅雨の自然な湿気を味方につけることで、初心者でも成功しやすくなります。花が終わった後の今こそが絶好のタイミング。お気に入りの紫陽花やアナベルを増やして、来年の庭をもっと華やかに育てましょう。
メネデール社のホームページ https://www.menedael.co.jp
メネデール社のInstagram公式アカウント
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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