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【プロが伝授】枯れた!? 諦めるのはまだ早い! 酷暑で傷んだ植物の見極めと緊急処置【前篇】

【プロが伝授】枯れた!? 諦めるのはまだ早い! 酷暑で傷んだ植物の見極めと緊急処置【前篇】

PINTURA/Shutterstock.com

厳しい暑さが落ち着き、朝晩には少しずつ秋の気配が漂い始める9月中旬。久しぶりに植物の手入れをしようと庭やベランダに出てみたら、茶色く枯れ込み、すっかり弱ってしまった植物を見つけ、ショックを受けていませんか? でも、すぐに処分するのはちょっと待って。一見、夏枯れしているように見えて、適切に手当てをすれば回復する植物もあります。
そこで今回は、園芸家・植物バイヤーの伊藤章太郎さんに、酷暑を耐え抜いた植物が「まだ助かるのか、それとも難しいのか」を見極めるポイントと、気づいたその日からできる緊急レスキュー法を教えていただきます。まずは、植物の発しているシグナルを確認するところから始めてみましょう。

昔とは違う植物が枯れる原因

色あせて茶色く傷んだ花びらや、葉焼けした葉が見られるベランダのアジサイ。強い日差しや水不足によって傷みが。K-FK/Shutterstock.com

夏の猛暑を乗り越えたはずなのに、9月になって植物の元気がない。葉が枯れ込んだり、枝先が傷んだり、突然株全体が弱ってきたり——。じつは、今目の前に現れている不調の原因は、現在降っている雨だけとは限りません。真夏の高温と乾燥によって受けたダメージが、時間をおいて表面化しているケースもあります。今、私たちが目の前にしている植物の夏枯れの原因は、じつはここ10年で変化しています。かつて夏越し失敗の主因は水のやりすぎによる根腐れとされてきましたが、2020年代以降はそれとは真逆に、水不足(水切れ)による枯死が主流になっています。過去と現在の気象データを比較すると、その理由は一目瞭然。

上のグラフは気象庁が公表している過去の気象データを比べたものです。1981年と2025年の愛知県名古屋市の8月の気象データを比較すると、月間降水量は約6分の1に激減し、平均湿度も11%以上低下しています。一方で、35℃を超える猛暑日は、25日増加。現代の日本の夏は、植物にとって極めて過酷な乾燥砂漠と化していることが分かります。

気づいたその日に! すぐにできる緊急レスキュー

バルコニーの鉢植えに遮光ネットを。Hari darling/Shutterstock.com

「もうダメかもしれない」という植物を見つけたら悩む前に、すぐできる応急処置を施しましょう。今は、9月になっても残暑が厳しい日が続くので、少しでも早く熱から守ってあげることが優先です。鉢植えであれば直射日光を遮り、温度を下げるために、日陰で風通しのよい場所へ避難させます。地植えの場合は、遮光ネットなどを株の上に張って人工的に日陰を作ってあげましょう。

見た目で分かる植物のSOS診断

「枯れた」と諦める前に、まずはその植物のルーツを調べてみましょう。SNSの情報に惑わされず、専門書や園芸サイトで調べるのが正しいリカバリーへの唯一の近道です。植物の本来の生育環境が分かれば、SOSへの正しい対処法が見えてきます。

例えば、南アフリカ原産の植物は、もともと乾燥していて朝晩の寒暖差が大きい気候で育っているため、日本の夏のような「夜になっても気温が下がらない高温多湿な環境」が苦手です。そのため、ジメジメしやすい夏の間は水をあげすぎず、乾燥気味に育て、風通しをよくして管理するのがポイントになります。このように植物の生まれ故郷の気候を知ることは、水やりや置き場所といった日々の管理を考えるうえで大きなヒントになります。こうしたルーツの知識を頭に入れておくことが、園芸をより深く楽しむための心強い助けとなります。

【症状別の見極めと対応】

A 全体が茶色や灰色になり、カサカサに乾いている

写真は、オージープランツでつる性常緑植物のケネディア。一見、完全に枯れているように見えても、じつは深刻な水切れで葉が乾いているだけの可能性が非常に高い状態です。この場合は、鉢底から流れ出るまでたっぷりと水を与えて反応を待ちます。その後は、しっかりと乾かしてから、たっぷりと与えるという乾湿のメリハリを意識すると植物に復活のスイッチが入ります。株がシャキッと立ち上がってきたら、枯れた葉や茎を取り除きましょう。

鮮やかな赤い花が美しいケネディア・コクシネア。
結構な水切れ状態から復活リシマキア。

深刻な水切れでぐったりとしなびていたリシマキアの株が、適切な水やりを施すことで、元のみずみずしい姿へと見事に復活を遂げました。

B 下葉が黄色くなる、または中心部しか緑の葉が残っていない

水のやりすぎに加え、土が温められたことにより葉の一部が傷んだメリアンサス(枯れてはいない)。

これは常緑低木のメリアンサス・コモスス。メリアンサスが分布している南アフリカの地域は夏の湿度は低く、月間降雨量が数ミリで、晴れる日が多いです。冬は逆に降雨量が多く、曇りの日が多いです。ですから、夏に湿度が高くそれなりの降雨量があり、冬は降雨量が少なく乾燥している日本とは、逆の気候パターンが自生地の特徴です。そのため、日本の高温多湿な夏は苦手。写真の状況は病気ではなく、人間で例えると「夏バテをしたので、活動を控えめに体力を温存している」状態。この場合は下の古い葉を枯らすことで、上の新しい芽を生き残らせようとしていると考えられます。つい、枯れた葉を取りたくなりますが、枯れた葉が日光から茎を守っている場合もあるので、自然に落ちるまでそのままにしておくことをオススメします。

C 株元がグラグラする、あるいは水を与えているのに急にしおれる

株元がふにゃふにゃでぐらついた多肉。GreenThumbShots/Shutterstock.com

昨日まで元気だった株がいきなり倒れたりグラグラしたりする場合は、「根腐れ」、またはコガネムシの幼虫による根の「食害」が疑われます。コガネムシの幼虫は8月末頃から活動が活発になることが多いため、食害された株が、早いと9月に入ってすぐにグラグラする場合が多いです。なお、食害は11月上旬頃まで続くので気が抜けません。「食害」の場合、根の残り具合によっては、新しい土に植え替えることで復活の可能性があります。一方、根が溶けて異臭を放っている「根腐れ」は復活できません。

写真は、水を与えすぎたうえに猛暑で土が温められ、根がドロドロに溶けてしまい、完全に根腐れしてしまった様子。この場合は潔く諦め、原因となった置き場所や水やりなどが適切だったのかを振り返り、次に活かしましょう。

「まだ生きている!」ダメージの境界線チェック

① 株のどこかに「緑色」が残っているか

緑の部分が残っていてまだ生きている宿根スイートピー。

地上部が枯れて見えても、株の根元や中心部の成長点などに、一箇所でも緑色の生きた組織が残っていれば、復活の可能性は十分にあります。このような場合は、強光や過熱を避け、水やりは鉢内が完全に乾いてから少量与える「チビチビ水やり(下記で解説)」を行います。夏に生育緩慢な株への過剰な水やりは、根腐れを招く要因になりますので避けましょう。大切なのは、置き場が適正か、土の乾き具合はどうなのかを観察して対策する。可能であれば、朝昼晩と1日2~3回観察&対策をできるとよいですね。また、傷んだ葉はむやみに触らずに気温が下がるのを待つのがベターです。

② 鉢を抜いて「白い根」があるか

左は白い根がない状態。右は白い健康な根が残っている。

鉢植えなら、一度抜いて根を確認してみましょう。写真右のバーベナのように白い健康な根が張っていれば、その植物は生きています。白い根と黒く傷んだ根が混在している場合は、 傷んだ根をすぐに整理したくなりますが、まだ残暑が厳しい9月中旬は根を触らずそのまま戻すのが正解です。黒い根の整理や植え替えはもっと涼しくなってから行い、それまでは水やりの頻度も量も減らし静養させましょう。水やりは、鉢を持ってみて軽くなっていたら与えると考えてください。

③「休眠」と「生育緩慢」を混同していませんか?

写真は西洋オダマキです。地上部が枯れたように見えますが、じつはいたって健全な生育過程です。これは休眠ではなく、一時的に動きが止まる生育緩慢な状態で、枯れたように見えてもこのような場合が多いのです。よく見ると株の中心には新芽の生命力がしっかりと残っています。このように夏の間は動きが止まっている植物は、土に水分が多いまま気温が上がると水が太陽光で温められて熱湯のようになり、根を傷めてしまいます。 そのため、生育緩慢期にはたっぷりの水やりは避け、毎日、夕方以降に土の表面を少し湿らせる程度の「チビチビ水やり」に切り替えましょう。すぐに乾くため、根を痛めるリスクを最小限に抑えられます。また、直射日光が当たらない場所での管理が前提です。

水やりは重さでメリハリ管理

土の表面が乾いたらたっぷりという基本は、ときには過湿を招くことになります。表面は乾いて見えても、鉢の底はまだ潤っているというズレが起こるからです。 確実なタイミングを知るためには、たっぷりと水を与えたときの最大重量を手で覚えておきましょう。鉢を持ち上げて明らかに軽いと感じたときこそが本当の水やりタイミングです。写真は表土は乾いているけれど(左)、スリットから覗くとじつは鉢の底は水分をたっぷり含んでいるという状態(右)。このときはまだ水やりしません。

また、屋外に放置されたホースや蛇口に溜まっている水は、直射日光で温められ熱湯になっています。水やりの際はしばらく流し続け、冷たくなってから与えてください。

地植えの植物にも水が必要なタイミングを見極める

これまでは雨任せが基本だった地植えですが、近年の乾燥下では人工的な水やりが不可欠です。植物が発している「喉が渇いているサイン=葉に弾力がなくなり、表面に筋が入るなど」を見逃さないようにしましょう。

例えば、下記のようなサインには気をつけてみてください。

・ニチニチソウ/葉が丸まる

・ベゴニア ‘センパフローレンス’/葉色が薄くなる

・コチョウラン/葉に厚みがなくなりひらべったくなる

このように、植物ごとに水切れしたときの症状は異なります。そのため、普段から健康な時の株の状態をよく観察しておくと、異変をいち早くキャッチでき、対策を講じることができるようになります。

また、地植えの場合は表面だけに水をまいても、根まで届く前に地熱で蒸発してしまいます。地植えに水を与える際は、以下の手法を実践してください。

地面にホースを置きっぱなしにして。Riccardo Arata/Shutterstock.com

●ホースでの水やり/ホースの先端を地面に置き、水圧を弱くして株元に30分ほど流しっぱなしにします。水分が時間をかけて土壌の深部までじんわりと浸透し、根にしっかりと届きます。

●水鉢を作る/各植物の株元の土をドーナツ状に盛り上げて、一時的に水を貯める土手(水鉢)を作ります。その中に水を注ぐと水が周囲に逃げずゆっくりと真下へ染み込んでいくので効果的です。

肥料は涼しくなってから

真夏に弱った植物に肥料を与えるのは、「熱中症で倒れている人に、無理やりウナギの特盛りを食べさせる」ようなもので、根にさらにストレスを与える行為です。気温が落ち着き、植物が自ら新芽を伸ばし始めるサインを見せるまで、肥料は控え水やりをしながら見守りましょう。

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