育種家が手がけるパンジー&ビオラは、“色がにじむ”ような繊細さが特徴です。複数の色が重なり合い、花弁の縁や中心でやわらかく溶け合う――そんな表情は、見れば見るほど奥行きを感じさせます。その繊細な美しさを、ガーデンデザイナーの武島由美子さんは色を主張しない“シルバーリーフ”で生かします。組み合わせのコツは「何を足すか」よりも「何を足さないか」。今回は、育種家パンジー&ビオラの魅力を最大限に引き出す武島流「シルバーリーフという引き算の寄せ植え術」を紹介します。
目次
育種家パンジー&ビオラの色は、なぜ“にじんで見える”のか

花の色、模様、咲き方、草姿までを意図して掛け合わせ、時間をかけて選び抜かれた育種家のパンジー&ビオラ。一輪ごとの色の重なりや光の当たり方で変わる表情など、その魅力は近くで見てこそ分かる繊細さにあります。

色と色の境界がはっきり区切られていないため、視線を向けたときに「ぱっと目に飛び込んでくる」というより、じわっと染み込むように印象的。この繊細な色合いは、寄せ植えで他の色や質感を重ねすぎると、簡単に埋もれてしまいます。だからこそ、花そのものを“主役”として扱う構成が求められます。
シルバーリーフは花色を濁らせない“名脇役”

そんな育種家パンジー&ビオラに武島さんが合わせるのは、シルバーリーフ。そこには「おしゃれだから」というだけでなく、きちんとした理由があります。
シルバーリーフは
- 無彩色に近い
- 明度が高く、光をやわらかく反射する
だからこそ繊細な花の色を濁らせず、静かに引き立ててくれるのです。白やグレーに近い葉が背景になることで、パンジー&ビオラのにじむような紫、ブルー、ピンク、イエローは、より澄んで見えます。
「シルバーリーフは主役にはなりませんが、工芸品のような繊細な花色を持つ主役の花を一段引き上げるために、寄せ植えには欠かせない名脇役です」(武島さん)
初心者でもすぐ真似できる2種の寄せ植え

育種家パンジー&ビオラの繊細な色を楽しむなら、植物はあえて2種類だけという選択も、とても有効です。この寄せ植えで組み合わせているのは、主役のビオラ‘パスフリ ブルー’と、引き立て役のオレアリア‘リトルスモーキー’のみ。
主役の花を手前中央に配置し、後方にも2株、鉢の中で三角形になるように配置します。その三角形の間を埋めるように、シルバーリーフを逆三角形に配置すると、ナチュラルに仕上がります。植物の数を増やさないことで、ビオラの紫や青みがより澄んで、育種家ビオラの魅惑の色合いが際立ちます。
4種のシルバーリーフがつくる、静かな奥行き

この寄せ植えでは、シルバーリーフ4種類を組み合わせています。それでも雑多な印象にならず、むしろ静かで上品に見えるのは、それぞれのシルバーリーフが「色」ではなく「質感の違い」として使われているからです。

中心的な存在になっているのが、この冬、武島さんがお気に入りのシルバーリーフのカルーナ。葉の美しさとともに、ごく淡いピンクの八重咲きの花が連なる姿は、花木と草花の中間のような、落ち着いた佇まいを見せてくれます。
そこに合わせているほかのシルバーリーフは、
- 葉が細かいもの
- 線的に立ち上がるもの
- ふわっと広がるもの
と、形や動きがそれぞれ異なります。4種使っているのに「多い」と感じさせないのは、色数を増やさず、質感だけで変化をつけているからです。

花をたくさん咲かせなくても、色を重ねなくても、静かに整えられた寄せ植えは、冬の光の中でこそ、その品格をあらわにします。

武島さんの寄せ植えに学ぶ「色を引き立てる配置」
育種家パンジー&ビオラを引き立たせるには、色だけでなく配置にもコツがあります。

- パンジー&ビオラは、視線が集まる中央やや前方に
- シルバーリーフは、縁や背景、流れを作る位置に
- 立体感は、葉の高さや細さで表現する
シルバーリーフは、こんもりまとめるのではなく、流す・揺らす・抜けをつくるように配置することで、主役の花が浮かび上がるように見えます。色数を抑えながらも、単調にならない理由は、葉の形と質感の違いにあります。
シルバーリーフ、何を選ぶ?

今回の寄せ植えで選ばれているシルバーリーフには、いくつかの共通点があります。
- 葉が細かい、または線的である
- 白すぎず、ややグレーがかる
- 冬の低温でも傷みにくい

いずれも「色で主張しないけれど、存在感はある」植物です。大切なのは、花より前に出ないこと。あくまで背景、あくまで土台として選びます。
ご紹介したシルバーリーフはいずれも常緑性の低木・半低木で、次のシーズンの寄せ植えにも再利用することができます。ただし日本の夏の高温多湿は苦手なものも多いので、春以降は置き場所を見直すことで、状態よく育てやすくなります。
冬の寄せ植えは「色数を減らす」と美しくなる

育種家パンジー&ビオラを主役にするなら、寄せ植え全体の色数は思い切って減らすと成功しやすいでしょう。足し算をやめることで、繊細な花の一色一色がきちんと“見える”ようになります。
色を盛らない。飾りすぎない。シルバーリーフという静かな存在だけで、花はいっそう澄み、深く、心に残ります。
冬の光の下で、色を引き算した寄せ植えを、ぜひ楽しんでみてください。
Credit
寄せ植え制作&アドバイス / 武島由美子

愛知県Anne’s Garden主宰。一般社団法人日本ハンギングバスケット協会理事。日本フラワーデザイナー協会(NFD)1級フラワーデザイナー。個人邸や店舗、ショーガーデンなどのガーデンプランニングや植栽管理のほか、コンテナガーデンスクールや日本ハンギングバスケット協会認定試験スクール、フラワーアレンジメントスクールなど複数の教室を主催。地植えの庭からコンテナ、ハンギング、フラワーアレンジメントまで、屋内外あらゆるシーンを花で彩る美しい暮らしを提案。
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写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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