バグ・ホテルは虫たちのための可愛らしいホテル! 作り方や注意点をご紹介

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海外のガーデンでも増えている「バグ・ホテル」をご存じですか。バグ・ホテルは虫たちのために作られた場所で、冬越しするための棲みかにもなります。日本ではまだあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパでは一般的で、広く家庭の庭にも設置されています。この記事ではバグ・ホテルとはどのようなものか、その説明と作り方、注意点などについて詳しくご紹介します。
目次
バグ・ホテルとは

まずは、バグ・ホテルとはどのようなものかについてご紹介しましょう。
バグ・ホテルの概要

バグ・ホテルとは、虫たちが安全に生活できる人工的な場所で、生物多様性保全の取り組みの一環として注目されています。野鳥のための巣箱のようなものですね。都市環境の中でも虫たちが過ごしやすい場所を作ってあげることで、さまざまな虫を呼び込み、昆虫の多様性を守る手助けになるのです。また、これらの虫たちはガーデニングや農業の面でも、春になると花粉の媒介や果樹の交配をしてくれるというメリットがあります。
バグ・ホテルは、バグ・ハウスやインセクト・ホテル、インセクト・ハウスなどとも呼ばれています。日本ではまだあまり知られていませんが、ヨーロッパではよく庭に設置されており、バグ・ホテルのデザインコンテストが開催されるほどポピュラーなものです。まるでデザイナーズマンションのような作品の数々は、見るだけでも面白く、ガーデンのアクセントになってくれそうです。
バグ・ホテルの基本的な構造

基本的なバグ・ホテルの構造は、廃材のボードやパレットで枠を作り、その隙間にさまざまな素材を詰めたもの。詰める素材は多種多様で、わらやコルク、松ぼっくりなど、虫が好むものを使用します。自分のアイデアを活かして自由に作ることができます。
生物多様性とは

生物多様性とは、バラエティーに富んださまざまな生物が種類や個性、そして互いの違いを活かしながらつながり、調和して生きている状態を指します。生物多様性の国際条約では、生物多様性は3つのレベル、つまり生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性があるとされています。特に昆虫では、多様な種類が存在することでさまざまな植物の受粉を助けたり、昆虫を捕食する生き物の保全に繋がったりといったメリットがあります。科学的に解明されている以外にも生物同士のネットワークはあるとされ、可能な限り生物の多様性を損ねないような配慮が必要であると考えられています。
バグ・ホテルに必要な材料や基本的な作り方

それでは、実際にバグ・ホテルを作るにはどのようにすればよいのでしょうか。ここでは、バグ・ホテルに必要な材料や、基本的な作り方について詳しく解説します。
バグ・ホテルの材料

バグ・ホテルを作る際は、防腐剤や塗料などの化学物質を避け、昆虫が好む天然素材を活用することが大切です。基本的には、木箱をベースとして使用します。この木箱は廃材を利用して自分で組み立ててもよいでしょう。中に詰める素材は、小枝や落ち葉、松ぼっくり、コルク、石、樹皮、アシや竹の束、レンガ、素焼き鉢など、好みのものを複数用意しましょう。素材を固定するには、麻ひもなどを使用します。さらに、必要に応じて穴をあけるためのドリルや、加工するためのペンチも用意します。
基本の作り方

バグ・ホテルの基本は、木箱を作って素材を詰めるだけです。作り方の一例として、以下に手順をご紹介します。
① バグ・ホテルの設計図を作る
まず、どこにどんな虫が来てほしいかを考え、それに合わせて詰める素材を決めます。
② 必要な素材を集める
次に、設計図に基づいて素材を集めます。これらの素材は、必要に応じて長さをカットするなどして加工します。
③ 木箱を用意する
素材を集めたら、それらを詰めるための枠を用意します。これは、既製の木箱を利用するか、自分で木材を組み立てて作ります。
④ 木箱に素材を詰めていく
最後に、木箱に素材を詰めていきます。これでバグ・ホテルが完成です。
バグ・ホテルの作り方のポイント

バグ・ホテルの大きさは自由で、ワイン箱サイズもあれば手のひらサイズのものも。庭のスペースに合わせて好きな大きさで作ることができます。使用する木材や廃材は、防虫剤など虫に害がある薬剤が使用されていないかを確認しましょう。また、バグ・ホテルは雨があまり当たらず、日当たりのよい場所に設置します。鳥がつつくことがあるため、鳥よけネットをかぶせておくのもおすすめです。
バグ・ホテル管理にあたっての注意点

バグ・ホテルを作ったら、管理することも重要です。ここではバグ・ホテルの管理について解説します。
注意点

大規模なバグ・ホテルにはさまざまな種類の虫が数多く集まるため、密度が高まり、病気や寄生虫の感染リスクが高まることがあります。特に寄生虫が卵を仕込むと、バグ・ホテル中の虫が被害にあう可能性があります。また、カビが生えると、それが虫たちの病気の原因になることもあります。これらの問題を防ぐためには、適切なデザインとメンテナンスが必要です。
対処法

大きなバグ・ホテルよりも小さいもののほうが、病気や寄生虫の蔓延リスクは低くなります。そのため、ハチ用やテントウムシ用など、特定の虫を対象とした小さなバグ・ホテルをいくつか作って設置することをおすすめします。これにより、適切な環境に設置しやすく、メンテナンスもしやすくなります。
また、バグ・ホテルの中が雨に濡れないように、屋根部分をしっかりと作ることが大切です。自然な素材を使用するため、風雨による劣化が起こりますので、傷んだパーツは定期的に交換することも必要です。
バグ・ホテルを呼びたい虫別に作る方法

前述のとおり、バグ・ホテルを初めて作る方は、呼びたい虫ごとに小さなものを作るほうがメンテナンスしやすいく、おすすめです。ここでは、ハチ・テントウムシ・チョウをターゲットにしたバグ・ホテルの作り方のポイントについてご紹介します。
ハチ

「借孔性」または「管住性」と呼ばれるハチ類は、竹筒やヨシの茎など細長い筒状のスペースを好んで巣にします。日本ではこれらのハチ類が約60種類存在します。彼らは、巣の中に餌を蓄えて産卵し、卵から孵った幼虫は、その餌を食べて育ちます。
ハチのバグ・ホテルは、内径5~20mmの竹筒やヨシの茎などを20cmほどの長さに切り、束ねたり、すだれのように並べたり、箱に詰めたりして作ります。いろいろな太さの筒を混在させると、さまざまなハチが入ることができます。作ったバグ・ホテルは、軒下など雨が当たりにくい場所に設置しましょう。
テントウムシ

テントウムシは集団で越冬します。落ち葉の下や石の隙間、樹皮の下、建物の中など風の当たらない場所に集まりますが、ナナホシテントウは越冬前に産卵して寿命を終えるため、バグ・ホテルにはあまり来ません。一方、ナミテントウなどの種類は越冬します。
テントウムシのバグ・ホテルは、木箱に松ぼっくりや小枝、枯れ葉を敷き詰めます。また、松ぼっくりを直接地面に置いて重ね、その上に屋根を設置する方法もあります。さらに、マリーゴールドやコスモス、カレンデュラ、タンポポなどを庭に植えると、テントウムシを呼びやすくなります。
チョウ

成虫で越冬する種類のチョウのためのバグ・ホテルもあります。チョウは細い隙間で休むため、バグ・ホテルにも入り口となる細いスリットが必要です。バグ・ホテルの前面になる板にスリットを開け、やすりで滑らかにします。そして、ホテルの中には木の枝や樹皮を入れます。チョウのバグ・ホテルは日当たりがよく、風が当たらない場所に設置します。
バグ・ホテルを設置して庭に虫を呼び込もう

バグ・ホテルは虫たちが自然の中で暮らしやすく、また安全に越冬できるように作られた場所です。生物多様性の保全にも貢献し、庭の果樹の受粉など、植物の交配や結実も手助けしてもらえるかもしれません。初めて作る方は、管理しやすい小さめのものから始めてみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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