草木の緑や花々の色彩は、私たちの暮らしを生き生きと彩ってくれます。日々の暮らしを営む町中にも、もっと緑のスペースが広がれば、人間はもちろん、虫や鳥といった生き物にとってもより過ごしやすい環境になるかもしれません。そんな緑を育むスペースの一つの案が、ラウンドアバウトの植栽です。ドイツで暮らすガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが、町で見つけたラウンドアバウトの植栽実例を紹介します。

Print Friendly, PDF & Email

日々の暮らしや旅行に欠かせない道路

初秋のガーデン
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

夏休みが終わる頃になると、ドイツの南部にあるバイエルンでさえ、夏の暑さは和らいで、季節の終わりを告げています。この休みの期間、ドイツ人の多くは長期の旅行には出ず、家にとどまっていたため、大都市近くの遊興施設は盛況でしたし、ある地点にいる人の数を示す指標も、緑化空間や公園、森、湖、そして山々ではずいぶん増えていました。3月から続くこの非常事態の中、多くの人は自然の中で過ごす休日を求めていたのでしょう。ただし、近場に限りますが!

道路
Alex Polo/Shutterstock.com

いま、ドイツでもっとも一般的な旅行手段は車です。他の旅行者との接触を最小限にでき、感染の恐れを減らすことができて安全だと考えられているからです。もっとも、多くの人が車を利用したため、混雑などによる問題も浮上しています。山間の美しい村々は、混雑緩和のため旅行人数に制限を掛けましたし、緑の牧草地の中には、禁止されていたにも関わらず駐車する人が絶えなかったため、ダメージを受けたところもあります。非常用の通路も車によってふさがれてしまったため、助けが必要な人々にとって、時に大きな支障になることもありました。

このように、新たな問題も引き起こしている車での旅行ですが、ドイツ人にとって、たとえ庭を持っていても、休日を全て家で過ごすということはなかなか難しいものです。100~150km圏内にある場所への日帰り旅行が最低ラインでしょうか。車により引き起こされる問題にも目を向けつつ、旅行を楽しみたいものですね。

バカンス
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Linnhoff, Angelica

ドイツでも普及しつつあるラウンドアバウト

ラウンドアバウト
Mariusz Szczygiel/Shutterstock.com

さて先日、私も車で小旅行をしたのですが、その際、たくさんの小さな村々や、緑の美しいエリア、そしてラウンドアバウトを通り過ぎました。ラウンドアバウトは環状交差点やロータリーとも呼ばれますね。信号を使わずに、道路の渋滞を緩和し、車を減速させる交差点システムです。

ラウンドアバウトというシステムについては30年以上前から知っていました。世界的に、もっとも有名なラウンドアバウトは、パリにあるエトワール凱旋門のラウンドアバウトかもしれません。放射状に伸びた12の道路が円形道路に集まっていき、その中心には見上げるような歴史的建造物、世界的にも有名なエトワール凱旋門があるのです。

世界一有名? なラウンドアバウト、エトワール凱旋門

凱旋門

凱旋門といえばエトワール凱旋門を指すほど世界的にも有名で、とても重要なパリのシンボル。この凱旋門のラウンドアバウトには、植栽や緑化スペースはありませんが、中央の凱旋門は堂々たる威容があり、美しく印象的なラウンドアバウトです。ちなみに、地上部の道はもちろん、シャンゼリゼ通りから続く地下道からもアクセスすることができます。階段を上り、凱旋門の上から美しいパリの街並みを見下ろすのは素晴らしいものです。

凱旋門
dietmint/Shutterstock.com

もちろん、これほど壮麗なラウンドアバウトは多くはありませんが、各国には古く歴史のあるラウンドアバウトがたくさんあります。

例えばベルギーでも、ラウンドアバウトが古くから使われてきました。以前、ベルギーの郊外で、木々に囲まれ、半日陰になっているラウンドアバウトを通ったことがあります。中心部分の小高くなっている部分には、シャクナゲが植えられていて、赤や紫の大きな茂みが木々に覆われたロケーションに素晴らしくマッチしていて、運転していても気持ちがよく、ほとんど無意識の内に減速して景色を楽しんでいました。美しいラウンドアバウトは、交通事故の減少にも効果がありそうです。

ドイツでも普及し始めたラウンドアバウト

このような美しく、場所柄に合ったラウンドアバウトに比べると、ドイツで見かけるラウンドアバウトのデザインは、まだ改善の余地があるように思えます。最近になって、ラウンドアバウトタイプの交差点も次第にポピュラーになってきているように思いますが、他の国と比べると、ドイツでのラウンドアバウトの歴史はまだとても浅いのです。

それでも、私が普段から使う道路にも、いくつかのラウンドアバウトがあります。このラウンドアバウトのデザインや植栽が、観察してみると面白いのです。生き生きとしたものや、ちょっと退屈なものまでさまざま。今回は、私の町の身近な植栽スポットでもあるラウンドアバウトを観察していきましょう。

ここでは、私なりの見方で、いくつかにタイプ分けしてご紹介します。

ラウンドアバウト4タイプ

1.生き物の姿がなくて単調なもの

ラウンドアバウト
gopixgo/Shutterstock.com

舗装やアスファルトだけが中央にあるラウンドアバウト。平面的で、中央は周囲の円形道路と同じ高さです。近所にも一つあるのですが、ラウンドアバウトだということが分かりにくく、危うく事故を起こすところでした。

もっとも、この円形道路の場合は中央に十分な面積が無かったため、このようなデザインにせざるを得なかったのでしょう。私がよく使うラウンドアバウトでは、できる限りのことをするため、宿根草の植栽されたコンテナが周囲に並べられていたりします。

2.奔放に植物が茂っているもの

ラウンドアバウト

仕事に行くとき、毎日のようにこのようなラウンドアバウトを通ります。4本の道しか集まっていないロータリーなので、ほとんど混雑はありません。ロータリーの中心は1mほど盛り上がっていて、オレガノやルドベキア、ヘメロカリスにグラウンドカバープランツで覆われています。虫たちにとっては人気のようですが、コンテストで入賞はできないでしょう! よいスタート地点だと思いますし、年々よくなっていくことを期待しています。

3.美しく手入れの行き届いたもの

ラウンドアバウト

ラウンドアバウトによっては、植栽やメンテナンスがガーデニングクラブや他の組織によってサポートされていることがあります。これは、景色の美しさは文句なしですが、ボランティアをどのように確保するかや、その地域の人々に協力してもらえるかといった点が課題です。印象に残った例として、たくさんの花色のバラがヘメロカリスやアルケミラモリスと共に植え込まれたラウンドアバウトがありました。バラの花期には、とても美しい光景が楽しめましたが、確実にメンテナンスや日々の水やりといった作業が必要になりますね。

4.虫たちが棲みやすく、ナチュラルなもの

ラウンドアバウト

やや高くなった中央のスペースに在来種の木を植えられたラウンドアバウト。中央に樹木があると、見た目の中心点をつくるとともに、周囲の宿根草植栽の骨格にもなります。さらに樹木があるため、鳥たちにとっては格好の場所。下方に植わる宿根草の近くを飛び回る虫を捕まえたら、枝に隠れて休むこともできます。

鳥
虫が集まる花々があれば、鳥も餌をとりやすくなります。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Wothe, Konrad

木陰があることで、植栽された草花も乾きにくくなりますし、ところどころに影ができるので、日陰を好む植物を植えることもできます。

ラウンドアバウト

ラウンドアバウトのエレガントな植栽の例として、乾燥に強い植物を、銀葉の植物や青い花を咲かせる宿根草、そして球根類と一緒に植えたものがあります。カラーリーフや株姿の異なる植物を組み合わせるのも、魅力的に見せるコツです。

ラウンドアバウト

私の家から一番近いラウンドアバウトは、円形の内側が小高い丘状になっていて、そこにたくさんの植物が植えられています。自然のままに保たれるよう考えられていて、野生のオレガノやルドベキア、ヘメロカリス、アキレア、その他乾燥に強い植物が植えられています。人間の目から見てもとてもカラフルですし、虫たちにとってもきっと棲みやすい環境でしょう。

ヘメロカリスやアキレア
ヘメロカリスやアキレアは、乾燥に強く、低メンテナンスでも育つので、公共空間の植栽にもよく使われます。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

住民参加型の緑の町づくり

ガーデン
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

適切なタイミング選びや手入れの方法といった技術面は別にしても、組織運営における課題があるため、地域住民にラウンドアバウトの管理に関わってもらうのは、そう簡単なことではありません。また、道路の真ん中というちょっと特殊な環境で活動することは、このような環境に慣れていないと事故につながる危険があることを承知している専門家向きのように思えます。それでは、地域住民が参加しやすい緑の町づくりには、どのような方法があるでしょうか。

現在、私の暮らすバイエルンでは、住民が地域の生物多様性に貢献するための面白い取り組みが行われています。それは、生物多様性をもたらすための場所になる、一定の区画のスポンサーになるということです。

花畑
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

一年前、バイエルンでは「Save the Bees(ミツバチを救え)」という大きなキャンペーンがありました。住民投票を通じて、より多くのバイエルン市民が、生物多様性の必要性と、ミツバチのみならず、虫たちのためのスペースを作っていく必要があるという問題に気づきました。

さて、170万人以上が請願書に署名したこの一大キャンペーンの重要な点の一つは、農地もまた、使い方次第で野生のハチの習性にもっと適した環境になりうるということです。地元農家の中には、彼の持つ農地を使って、生物多様性を支えるスポンサーになるための機会を提供した人もいました。このスポンサー制度には、最初の1年間で40以上の応募が集まったそうです。

このような生物多様性を支えるスポンサーシステムにはさまざまなメリットがあります。土地を提供する農家にとっては、花咲く野原へと姿を変えた農地の一画から、ベーシックインカムを定期的に得ることができます。スポンサーになった人は、「自分だけの花畑」に頻繁に訪れるモチベーションになり、存分に自然を楽しむことができます。若い家族がよくこのスポンサーに参加していますが、子どもが自然と親しむ機会となる、とてもよい方法だと思います。

花畑
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

ある男性のスポンサーは、11日生まれで自然が大好きだという奥さんに、11区画を購入してプレゼントしたのだとか。彼女の誕生日にジュエリーとか実用的でないものを買うのはつまらないから、「花咲く野原」を贈ってみた、なんて言っていましたよ。

農家によっては、花の季節が終わるころ、サポーターを招いて過ぎ去る季節を惜しむ素敵なパーティーをしたりもします。

このような公共空間やプライベート空間で育まれる生物多様性のコンセプトは、私たちの住む環境をよりよくし、暮らしに自然や喜びを取り戻す素晴らしい方法になると思います。

Credit

ストーリー&写真(表記外)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

Print Friendly, PDF & Email