フリーランスのロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。精力的に取材、執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂6歳)」に日々翻弄されている。
編集部員K -ライター・エディター-

フリーランスのロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。精力的に取材、執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂6歳)」に日々翻弄されている。
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多肉・サボテン
驚異の生命力でどんどん増える、ウチワサボテンが超楽しい!|多肉植物狂いVol.9
世界中を魅了するウチワサボテン ウチワサボテンの魅力は、ウサギの耳のようなその不思議な姿がどんどん育っていく様子を観賞すること。その見た目を象徴するように、バニーカクタスとも呼ばれています。海外ではウサギというよりは、カヌーやカヤックなどの小型の舟を漕ぐ時に使用するパドルのような見た目からPaddle Cactus(パドルサボテン)と呼ばれたり、このほかにもPrickly Pears(トゲだらけの梨)、Nopal(ノパル:メキシコの古代言語で果実を意味する)という商品名で販売され、キュートな姿と育てやすさから数あるサボテンの中でもトップの人気を誇っています。また、ウチワサボテンには果実がなる品種も多く、その実がマグロの赤身を彷彿させるため、南米ではTuna(ツナ)と呼ばれることもあり、実を収穫するために栽培しているご家庭も多いです。 このようにいろいろな呼び方をされるウチワサボテンですが、その多くはサボテンの中でも最多の品種を擁する種属、オプンチアに属しており、現在約250種ほどが確認されています。属名のオプンチアは、古代ギリシャの都市オプースにちなんで名付けられたという説と、ギリシャ神話の中で豊かさを意味するオプスにちなんでいるという説がありますが、このように恵みの果実をもたらしてくれることから、おそらく後者の説のほうが有力なのでは、と個人的には思います。 金烏帽子と銀烏帽子が最も人気 ウチワサボテンといってもたくさん種類があり、私たちが最も多く目にするのは金烏帽子(きんえぼし)と銀烏帽子(ぎんえぼし)という品種。街の園芸店をはじめ、駅構内の狭小フローリストなどでも手に入るため、可愛らしい姿に一目惚れしてつい買ってしまう方も多いのではないでしょうか。 緑の肌に金色の綿毛のようなトゲが映える金烏帽子。 サボテンという植物は、他の植物に比べて光合成の効率があまりよくないため、成長に時間がかかるものですが、この金&銀烏帽子は園芸品種として作出された品種で、オプンチア属の中でもとても成長が早い品種なんです。そのため、買ったときはウサギ耳のパッド(茎節)が2〜3個しかなかったものが、日当たりや風通しのよい環境で育てれば、面白いくらい急速に成長し、あっという間にパッドが数珠繋ぎのように積み重なっていきます。 そんな育てやすさと、可愛らしい姿が日々変化していくのを眺めるのが、金・銀烏帽子、ひいてはウチワサボテン(オプンチア)を育てる醍醐味なんです。 ウチワサボテンを知る 原産地 ウチワサボテンの多くは、メキシコから米カリフォルニア州、アリゾナ州といった乾燥地帯を原産としていますが、15〜16世紀の大航海時代に人によってラテンアメリカから船で各地に運ばれ、その子々孫々の株たちが南欧、中東、アフリカなどで帰化し、現在ではとても多くの地域に分布しています。しかし、ネイティブなウチワサボテンを見るには、やはりメキシコが一番です。なにせ、メキシコ合衆国の国章(国旗の中央に描かれている紋章)にはウチワサボテンが描かれているほどですから。 ラテンアメリカの先人たちは、「蛇をくわえたイヌワシがウチワサボテンに留まっている場所」という伝説の地を求めて彷徨い、ようやく見つけたその場所にメキシコを開国したという。 ウチワサボテンは現代に蘇る生きた化石!? ここでおさらいも兼ねて、一般的なサボテンについて簡単に説明します。サボテンには一般的な植物のような茎や葉がないと思われていますが、サボテンのあのぷっくりしたボディ自体が茎なんです。遥か遠い昔、サボテンの祖先たちの自生地が気候変動で乾燥地帯へと変化し、そこで生き抜くためには茎の中にたっぷりと水分を溜め込んだほうが効率的なため、元は細かった茎が長い年月をかけて、あのような肥えた形に進化していったんです。 サボテンの原種「杢キリン」は、サボテンのボディが肥大化する前の茎の状態と、トゲと葉が混在するため、葉の進化の過程を見ることができる貴重な品種だ。 植物の葉には、蓄えた水分を蒸発させる作用があります。しかし、せっかく溜め込んだ貴重な水分を逃がさないように、思い切って葉をトゲにしてしまったのです。それにともない、それまで葉が行っていた光合成の役割は茎が担うことになりました。このように、サボテンは長い年月をかけて今私たちが知る形になったのですが、進化の過程の比較的初期の頃の状態が、このウチワサボテンだといわれています。しかし中には、ウチワサボテンにならず、別の道を歩んだものもあります。ウチワサボテンの弱点は、まさにその幾重にも成長していくパッド。パッドの間には成長過程で関節ができますが、あまりにも大きくなりすぎると自重に耐えられなくなり、関節の部分で折れてしまいます。そこで、一部のウチワサボテンは、次の進化の段階で関節を無くし、いわゆる柱サボテンになっていった、というのが定説です。 つまり、柱サボテンになる道を歩まなかったウチワサボテンたちの子孫が、現在私たちが目にするウチワサボテン、ということなのですね。あの可愛らしいウサギ耳に、遥か遠い昔の、進化半ばの太古のサボテンの姿が隠されていると思うと、どこかロマンを感じます。 強靭な再生力 ウチワサボテンは、悠久の時の流れの中で種属を繁栄させてきたとてもタフなサボテン。その強靭な再生力は想像を超えていて、折れて脱落したパッドを放置していても、なんとそこから根を張り、再び急速に成長していきます。 (矢印)脱落したパッドから新芽が現れた様子。 このため、自然に脱落したものだけでなく、積極的に関節からもいだパッドを挿し芽で発根させ、どんどん増やすという楽しみも味わえます。また、低地に生息するサボテンの中では最も耐寒性があるため、冬越しが容易です。 園芸以外でも大活躍 Pix:Kenneth A. Wilson/flickr.com ウチワサボテンの果肉は食用としても用いられており、主に南米や米カリフォルニアでは、マーケットで普通にサボテンの果肉を買うことができます。NOPALやCACTIという名で、1枚およそ100〜200円で販売されています。サボテン食の歴史は遥か紀元前まで遡り、サボテンは一般庶民の貴重な栄養源になっていました。最近の科学的な研究でも、健康補助食品としてさまざまな効果が実証されたため、いにしえの食材が、今や南米の富裕層の間で話題になっています。 お肉の下に敷いてあるサボテンの炒め物。 Pix:Shandor/Shutterstock.com さてそのお味はというと、あっさりしている一方で、独特のネバネバ感があり、オクラやジュンサイに似ています。米国やメキシコで街のステーキハウスに行くと、付け合わせに炒めたサボテンが付いてきたり、店によってはサボテン自体を鉄板で焼いたサボテンステーキを提供していることもあります(写真下)。 Pix:Suriel Ramzal/Shutterstock.com このほか、スープの具になったり、ジュースの原料になったり、果肉そのものを砂糖漬け にしてデザートとして食べるなど、南北アメリカ大陸では比較的ポピュラーな食材として扱われています。また食用以外でも、ウチワサボテンのタネから採れるオイルは、美容オイルとしてとても珍重されています。オリーブオイルを凌駕するといわれている各種栄養素は、アンチエイジングにも効果が期待されていて、とても高価なオイルですが、美容に意識の高い方々から支持されています。食用以外での変わった使い方としては、かつてのメキシコでは土地の境界線を示す植え込みとしてウチワサボテンを植えたり、その昔、キューバのアメリカ海軍基地では、キューバからの密入国者を阻止するためにウチワサボテンで天然のバリケードを築いていたそうです。 土地の境界線に植えられたウチワサボテン。 Pix:Alex Ershov/Shutterstock.com 自生地での様子 ウチワサボテンの故郷メキシコ(写真下)では、青い空と白い雲にグリーンのサボテンが映えます。これぞ、ザ・メキシコ! という光景ですよね。 Pix:Dina Julayeva/Shutterstock.com 固有種の宝庫といわれるガラパゴス諸島の沿岸では、この地域の固有種、オプンチア・ガラパゲイア(ガラパゴスウチワ)(写真下)があちらこちらで自生しています。見てください、もう木ですよ、木! 樹齢自体も相当なものですが、海水による塩害から少しでも身を守るために、高い位置で生い茂っていると考えられています。 Pix:Don Mammoser/Shutterstock.com おすすめウチワサボテン 金烏帽子・銀烏帽子 金烏帽子(左)と銀烏帽子(右)。 金烏帽子(きんえぼし)はOpuntia Microdasys(オプンチア・マイクロダシス)が正式名称ですが、ゴールデン・バニーとも呼ばれています。小種名を物語るように、うさぎ耳の中で金色の細かいトゲが密集し綿のようになっているのが特徴。このトゲの色が白い品種は、Opuntia microdasys var. Albispina(オプンチア・マイクロダシス・アルビスピーナ)となり、日本では銀烏帽子(ぎんえぼし)や白桃扇(はくとうせん)と呼ばれています。ちなみに烏帽子とは、かつて武士や公家がかぶっていた帽子で、それに似ているためこの名が付きました。 原産地はメキシコ北部から中部で、バニーカクタスといえばこの2種を指し、海外でも「バニーカクタス」や「バニーイヤーカクタス」、トゲの白い銀烏帽子は「エンジェルズ・ウイング」とも呼ばれています。共にホームセンターの園芸コーナーで700〜1,000円で販売されていて、小さいものだと100円ショップでも買うことができます。いわゆる万人に馴染みの深い“量産型”サボテンと思われていますが、じつは、英国王立園芸協会のガーデン功労賞を受賞している由緒あるサボテンなんです。 直射日光下でも日陰でも育ち、耐暑性耐寒性も強く、折れて落ちたパッドをサンダルで誤って踏んでしまっても発根するという驚異のタフさを誇り、サボテン栽培の鬼門とされる水やりも、他の品種ほど気をつかう必要もなく、最も栽培での失敗が少ないサボテンです。ただし、パッドもぷっくりとさせ、全体的に大きく整えたい場合は、太陽と風、水やりにも気をつかう必要があります。好条件下で大きく育てば、やがて開花株となり、稀に黄色い花を咲かせ、驚かせてくれます。 【金・銀烏帽子は取り扱い要注意サボテン】綿毛のような可愛いトゲが自慢の金・銀烏帽子。しかし、このトゲに皮膚が直接触れると、一度の接触で何十何百という細かいトゲが刺さるため、すぐに拡大鏡などを用いて毛抜きで慎重に抜いてください。すぐに、かつ丁寧に抜かないと、折れて皮膚の中に残ったトゲの先端がチクチクして、後々かなり不快です(そのうち排出されます)。このため、直接つかむのはNG! 取り扱いには肉厚のゴム手袋か新聞紙が必須です。 コンソレア・ルベセンス(墨烏帽子) こちらもホームセンターの園芸コーナーでよく目にするサボテン、墨烏帽子(すみえぼし)。オプンチアではなく、コンソレア(コンソラ)という種類のウチワサボテンです。コンソレアという名前は、サボテンの研究で著名な19世紀イタリアの植物学者、ミケランジェロ・コンソールにちなんで名付けられました。欧米の園芸店では、まるで車に轢かれてペシャンコになったような薄さと、轢かれてできたタイヤの跡のような凹凸が表面にあるため、「ロード・キル・カクタス」という物騒な名前で販売されています。プエルトリコやトリニダード・トバゴといった南米の沿岸地域が原産地ですが、メキシコ内陸部で自生しているコンソレアは、大きいもので6mにもなるため、上手に世話をすれば、日本でも1m を超えるような大株に育てることもできます。自生している株は朱色の花を咲かせますが、園芸品種の墨烏帽子が開花することはほとんどありません。 トゲの土台となる棘座(しざ:アレオーレとも呼ばれる)はあるものの、トゲがほとんど生えないため、どこを触ってもOKのウチワサボテンです。このため、小さなお子さんや、犬や猫などペットを飼っておられる方にもおすすめです。価格は金・銀烏帽子よりは若干高めですが、それでも大手ホームセンターで1,500円くらいと、とても入手しやすい価格帯です。金・銀烏帽子同様、とてもタフな品種で、伸びた腕をもいで土に挿しておけば簡単に株分けができるため、お友達と栽培を共有するのも面白いですよ。 オプンチア・ガラパゲイア(ガラパゴスウチワ) Pix:mizy/Shutterstock.com パッドにまるでハリネズミのようにトゲをまとった姿がカッコいい、ガラパゴスウチワ。その名のとおり、ガラパゴス諸島の固有種で、1837年に英国の司祭で植物学者のジョン・スティーブンス・ヘンスローにより発見され、彼の弟子のチャールズ・ダーウィン(進化論でお馴染み)によって植物学会に登記されました。自生地のものはIUCN(国際自然保護連合)によりレッドリスト(絶滅危惧種)に指定されているため、貴重かつ希少なウチワサボテンです。 原産地ガラパゴス島での自生風景。木に鈴生りになっているがガラパゴスウチワだ。 Pix: Don Mammoser/Shutterstock.com 市場で私たちが手にできるものは、現地株から何世代も経た実生株(種から育った株)や、カキコ(親株から切り取って発根させた株)です。成長も、数年かかってようやくパッド1枚がひょっこり顔を出す程度と大変遅いため、大人の手のひらくらいの大きさで1〜2万円はする、ウチワサボテン好きなら一度は手に入れてみたい憧れの品種です。でも、育て方は他のウチワサボテン同様、ドライな環境を意識すれば容易に育てられます。確かに美しいですね。ずっと眺めていられる・・・。下の写真は、私がアムステルダムの街角でたまたま窓越しに見つけたものですが、なんか絵画のような可愛さについ見惚れてしまいました。 Pix:Johncheeseburger.com 市場に出回っている株も、開花株になると、遺伝や土壌、気候などによって多少色が異なりますが、多くは黄色の花を咲かせます。また、大きく成長した株は赤い果実を実らせます。 オプンチア・フィカス-インディカ(大型宝剣) Pix:YanaKotina/Shutterstock.com メキシコ原産のオプンチア・フィカス-インディカは、世界各地で帰化した野生の株を見ることができるため、大型のウチワサボテンとしては最もメジャーな品種です。日本でも、大型宝剣の和名のとおり、地植えで屋根まで届くような株を、植物園や一般の邸宅で見ることができます。サボテン大国メキシコではサボテンのアイコン的品種として位置付けられており、それを物語るように、前述のメキシコの国章に描かれているウチワサボテンはこの品種であるといわれています。メキシコでは食用としての栽培も盛んで、南北アメリカのスーパーや朝市で販売されているのもこの品種です。食用以外にも、飼料となったり、バイオ燃料になったりと用途の幅も広く、メキシコの産業を支える重要なサボテンです。 メキシコのフィカス-インディカの畑。 Pix: Tjasa Janovljak/Shutterstock.com このように多用途なオプンチア・フィカス-インディカですが、開花株になると、美しい黄色い花を咲かせ、また果実もなるため、園芸品種としても親しまれています。とにかく成長も早く、地植えでどんどん大きくなるため、お庭のある方や、大きめのバルコニーのある方におすすめのウチワサボテンです。価格も2,000〜3,000円とお手頃です。 トゲと花のバランスがツンデレ好きにはたまらない。 Pix: Monika Valachovic/Shutterstock.com 我が家にも、懇意にしている園芸店が、静岡の某邸宅の庭の巨大な地植え株から切り取ってきたという大型宝剣の株があり、このタダでお裾分けしてもらった株が現在高さ140cmまで達し、なおも成長中です。ちなみに、いただいたときはこんな感じでした(写真下)。 この段ボール箱に入ったまま2週間くらい放置していたのですが、植えてもいないのに箱の中で開花していたのにはびっくりしました。ウチワサボテンのタフさを物語るエピソードですね。 最初はこんな感じで挿しておいたのですが・・・。 上の写真の状態から5年が経過し、現在は、こんな感じです。(下動画) ウチワサボテンの育て方 鉢植え(屋内) Pix:SaskiaAcht/Shutterstock.com 日当たりのよい明るい窓辺で管理してください。日中は屋外に出してあげると、本来の形で成長せずにヒョロヒョロと格好悪く伸びる「徒長」を防ぐことができます。春〜秋は屋外に出しっぱなしでも大丈夫ですが、冬は必ず屋内に取り込んでください。土は購入時のままでも大丈夫ですが、可能なら市販の多肉植物用土などの水はけのよい土を用いて、1回りくらい大きな鉢に植え替えてあげるのがおすすめ。植え替えは春〜初夏に行ってください。水やりは基本控えめに。春から晩秋にかけての生育期には、用土の表面が乾いてから2〜3日後に鉢底穴から流れ出るくらいたっぷりと。冬季は同様に1カ月に1回あげてください。 完全に室内で栽培する場合は、エアコンの風が直に当たらないよう注意してください。自然の環境に近づけるために、サーキュレーターを使用し室内の空気を循環させることにより、ウチワサボテンに付きやすいカイガラムシなどの害虫を防ぐことができます。 鉢植え(屋外) Pix:Alexander Kandiba/flicker.com よく日の当たる場所に置いてください。屋外で育てると、あっ!というまに大きくなるため、市販の多肉植物用土などの水はけのよい土を用いて、2回りくらい大きな鉢に植えてあげるのがおすすめ。鉢の縁付近に「マグアンプK」などの緩効性肥料を「置き肥」して、その後は自然に任せればOK。水やりも雨任せで大丈夫です。大きい株なら越冬も可能ですが、関東以北の場合、冬の夜間は屋内に取り込んだほうがよいでしょう。 地植え イタリア南部の庭での地植え風景。 Pix:Raphael Comber Sales/Shutterstock.com よく日の当たる場所に植えてください。花壇に植える際は、市販の多肉植物用土など水はけのよい土壌がベストですが、普通の培養土の花壇に植えても勝手に育ってくれます。株元からパッド1つ分ほど離れた場所3カ所の表土に、指の第2関節くらいまでの穴をあけ、そこに「マグアンプK」などの緩効性肥料を埋めて、あとは自然に任せればOK。水やりも雨任せで大丈夫です。ただ、幼株であったり、品種によっては関東より以北の地域では越冬が難しい場合もあるため、購入する前に園芸店で地植えが可能か確認してください。 取材後記 ウチワサボテン、いかがでしたか? 私は今でこそこうして皆さんに記事をお届けしていますが、ウチワサボテンで忘れ得ぬ失敗談があるんです。約30年前、人生で初めて購入したサボテンが金烏帽子(金ちゃんと命名)。しかし水やりを完全に勘違いしていて、ぷっくりしているからさぞや水が好きなのだろうということで、鉢皿にたっぷり水を溜めて育て、結果2週間ほどで腐らせてしまいました。呼吸できずに苦しかっただろうなぁ、金ちゃん(涙)。結局、向かないんだな、と思って、そのときはサボテン栽培をあきらめました。今思えば、こんなに育てやすくタフなウチワサボテンを、ああも簡単に枯らすとは、知らないというのはじつに残酷ですね。この記事を、あのとき枯死させてしまった金ちゃんに捧げます。金ちゃん、フォーエヴァー。
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多肉・サボテン
今年マストバイ! プロトリーフセレクションズ激推しの多肉レアプランツ7選|多肉植物狂いVol.8
多肉レアプランツとは 冬型コーデックスの人気品種、チレコドン・レティキュラータス’万物想’ 多肉レアプランツとは、その名の示す通り、入手が困難で希少価値の高い多肉植物のことを指します。パキポディウムやチレコドンなどのコーデックス(塊根植物)や、サボテンではコピアポア属などが知られていますが、そのどれもが自然界での生育条件が限られているか、人間の手が届かないような場所に生息していることが多く、入手は容易ではありません。また販売経路が特殊なこともあり、取り扱っているのは大手園芸店か、特定のナーセリー(生産者)と取り引きのある園芸店に限られます。多肉レアプランツには、美しい花を咲かせるものや、不思議な形状をしたものなど、多様な種類があります。その希少性ゆえに、コレクターたちの間では高い注目を集めており、アイテムによっては目を疑うような額で取り引きされることがあります。 パキポディウム属の中でも特に希少性の高いウィンゾリーはハイビスカスのような真っ赤な花を咲かせる。 Pix:Cacti and Things お財布との相談はもちろん、その前に必ず確認したいのは、その多肉レアプランツの出自です。多肉レアプランツは多くが絶滅危惧か、あるいは準危惧種に指定されているため、自生地で山取りされた株(自生しているものを根こそぎ採取した株)を不正な手段で入手することは犯罪になります。そのため、合法的な手段で入手することが重要であり、購入者自身も信頼のおける園芸店を見極めることが求められます。また、自生地で適切な管理が行われなければ、これらの希少な多肉植物が絶滅の危機に直面することもあります。実際にいくつかの品種は国際機関(CITES)により絶滅危惧種の指定をされており、国をまたいだ取り引きが禁じられています。 輸入株と実生株 多肉レアプランツには、輸入株(現地球)と実生株(輸入株から採取された種を元に何世代も経てきた国産株)の2種類があり、前者と後者では以下の違いがあります。 パキポディウム・グラキリスの輸入株(左)と実生株(右)。 【輸入株(現地球)】 株の容姿:自生地の過酷な環境に適応した独特な容姿。品質:検疫法により根を切った状態(ベアルート株)で輸入されるため、栽培するには発根処理の知識と技術が必要。多くは店頭に出る前に発根処理がなされるが、そうでないものは自力で発根させなければならない。また、株ごとの優劣が顕著。価格:★★★★★(数万〜数十万)育て方難度:★★★★フォトジェニック度(写真映え):★★★★★ 【実生株】 株の容姿:日本国内の気候に順応した穏やかな形(品種によっては輸入株と同様なものもある)。品質:国内で発芽させ管理しているため、常に安定した品質。株ごとの優劣も少ない。価格:★★★(数千〜数万。ただし、近年は種子の流通が減少しているため高値傾向にある)育て方難度:★★★フォトジェニック度(写真映え):★★★★★ 多肉レアプランツの育て方 多肉レアプランツには「夏成長型」と「冬成長型」の2タイプがあります。両方とも、栽培の成否は水やりが握っているといっても過言ではありません。また、水やりの頻度は品種や個体により微妙に異なるため、詳細は購入時にショップスタッフにお聞きください。以下は一般的なコーデックスの関東圏での育て方の例です。 夏成長型の水やり 夏成長型は春先から夏、そして秋にかけて成長し、寒くなるにつれ成長が鈍化し、冬は休眠します。成長の動きが始まる3月上旬あたりから徐々に水やりを始めます。具体的には下記を目安にするとよいでしょう。 日中の気温が15℃に届く(3月)霧吹きで用土の表面がしっかりと湿る程度を週2回与え、緩やかに起こす。 日中の気温が15℃を超える(4月)用土が完全に乾いている状態で、根に届くかな、くらいの量を与える。 日中の気温が20℃を超える(4月下旬〜6月)用土が完全に乾いたら、鉢底穴から流れ出るくらいたっぷりと与える。※梅雨の時期は鉢内が蒸れないよう夕刻に行う。 盛夏(7〜9月)用土表面が乾いたら、鉢底穴から流れ出るくらいたっぷりと与える。※梅雨同様夕刻に行う。 秋季(10〜11月)用土が完全に乾いて2〜3日後に、鉢底穴から流れ出るくらいたっぷりと与える。 冬季(12〜2月)ほぼ断水(完全な断水をすると稀に春の立ち上がりが遅れることがあるため、週に1回程度、気温が上がる午前中〜昼にかけての間に用土表面と株全体を霧吹きで軽く湿らせる) 冬成長型の水やり 冬成長型は秋から冬、そして春にかけて成長し、最高気温が高くなっていくにつれ成長が鈍化し、夏は休眠します。成長の動きが始まる9月下旬あたりから徐々に水やりを始めます。具体的には下記を目安にするとよいでしょう。 盛夏(7〜9月中旬)ほぼ断水(完全な断水をすると稀に秋の立ち上がりが遅れることがあるため、週に1回程度、蒸れを防ぐために夕刻以降に、用土表面と株全体を霧吹きで軽く湿らせる) 日中の気温が25℃を下回る(9月下旬〜10月)霧吹きで用土の表面がしっかりと湿る程度を週2回、夕刻に与え、緩やかに起こす。 日中の気温が15℃を下回る(11月)用土が完全に乾いている状態で、根に届くかな、くらいの量を午前中に与える。 冬季(12〜2月)用土表面が乾いたら、鉢底穴から流れ出るくらいたっぷりと、気温が上がる午前中に与える。 春季〜初夏(3〜5月)用土が完全に乾いて3〜4日後に、鉢底穴から流れ出るくらいたっぷりと与える。 梅雨(6月)用土が完全に乾いて3〜4日後に、根に届くかな、くらいの量を夕刻に与える。 用土の水分状態を確認するには 水やりのタイミングをはかる上で重要なのが鉢の中の水分状態。それを確認するのに便利なツールが竹串です。水分計を使うのも便利ですが、竹串は近所のドラッグストアやコンビニ、100円ショップなどでも販売しているため入手が容易です。試してみてはいかがでしょうか?使い方は簡単。鉢の縁に最も近い位置で奥深くまで刺し、抜いて串の湿った状態を確認するだけ。幹に近いところを刺すと根を傷つけてしまうおそれがあるため絶対に避けてください。 写真上のように串を挿します。引き抜いた串が乾いていれば(⚪︎印)、水のあげ時。湿った土が付着していたら(×印)、水をあげるのを控えます。慣れれば刺し時が分かるのですが、慣れないうちは日にちを置いて何回か刺し、タイミングをつかむとよいでしょう。 その他のポイント 【置き場所】 夏型も冬型も、基本的にたっぷりと陽に当ててあげましょう。ただし、品種や個体の状態によっては直射日光で葉焼けや塊根部の壊死が起きてしまうため、購入店で確認してください。 夏型冬型共に、夜間の気温が13℃を下回る場合は屋内に取り込みましょう。 【植え替えの際の用土】 水はけのよいものを使用します。市販のサボテン・多肉用土で構いません。 【肥料】 多肉レアプランツの多くは、観葉植物のように肥料を必要としません。逆に多肥状態が続くと徒長の原因となり、全体の形にも影響してきます。ただし、適度(少量)な肥料は株の成長を促すため、目安としてはそれぞれの品種の成長期に、規定量の半分程度の液体肥料を月2回ほど与えてください。 このように、多肉レアプランツは一般的な多肉植物よりも難度は高めですが、だからこそ育て方次第では生涯の友となります。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか? SNSとの親和性が高い多肉レアプランツ 多肉レアプランツは、どの品種もユニークな形をしているため、おしゃれな鉢などと合わせて映え写真を撮る人も多く、SNSとの相性は抜群! Instagramを例に挙げると、人気の品種ともなれば数万の投稿が確認でき、皆がさまざまなスタイルで多肉レアプランツを楽しんでいる様子をうかがい知ることができます。また、SNSは育て方やインテリアコーディネートに関しての情報収集にもなるという利点も。多肉レアプランツを手に入れたら積極的に活用してみてはいかがでしょうか? プロトリーフセレクションズは多肉レアプランツのパラダイス 今回取材にお邪魔した都内の大型園芸店『プロトリーフガーデンアイランド玉川』のB2F『プロトリーフセレクションズ』は、お馴染みのコーデックスから、滅多にお目にかかれない幻の品種まで、多肉レアプランツの商品数は都内随一。ひとたび店内に入ると時間が経つのを忘れてしまうほどの多肉パラダイスが広がっています。バイヤーの目利きもさることながら、特筆すべきはスタッフの知識の豊富さ。植物愛に溢れる親身なアドバイスには定評があります。 【店内はこんな感じ】 プロトリーフセレクションズ菊地さんの激推し、多肉レアプランツ7選 多肉レアプランツのことならなんでも聞いてください! プロトリーフセレクションズのバイヤー&ショップのアドバイザーとして活躍する菊地さんに、今年マストバイの激推し7品種を紹介していただきました。 黒王丸 【写真の商品】高さ5.5cm 幹幅6.5cm 価格110,000円(税込) [360°ルックス] サボテンが好きな方なら誰もが憧れる黒王丸ことコピアポア・シネレア。南米チリ北部の沿岸という、サボテンが育つには極めて過酷な環境に自生しています。現地では厳重な保護下にあるため、輸入数も極めて激減しているサボテンで、こちらの商品は、そんな現地球のカキコです。ちなみにカキコとは、親株から分枝した子株を切り取って輸入し、国内で手塩にかけて発根させたものを指します。国内のナーセリー(種苗業者)が種から育てたグリーン肌の実生株と違い、白い蝋質に覆われた幹肌は現地の過酷な環境を耐え抜いた証。質のよい黒トゲも自慢です。成長がとても遅い品種ですが、逆に言えば、この美しい造形美を長い間楽しめます。 ⚫︎健康優良な株に育てるには、以下の3つのポイントを押さえてください。 温度は30〜40℃で、40℃を超えないようにしつつも、それに近い高温が理想です。日光は必須。しかし近年の日本の太陽光は自生地よりも強烈なので、夏場は日焼けを防ぐためにも20〜30%遮光して陽に当ててください。水やりは普通のサボテンと同じ感覚であげてしまうと徒長につながるので、成長期の春〜秋は土の表面が乾いてから10日程度経ってあげたほうがよいです。自生地では、水分といったら早朝に海から昇ってくる霧と、ごく稀に降る少量の雨ぐらいなので、とにかく自分で思っている以上に乾かし気味に管理してください。 輸入球カキコの黒王丸はサボテンの中でも特に難度高めなので、ほかのサボテンや多肉植物とは区別し、この子中心に栽培環境を整えるくらいの気持ちで慎重に育てなければ、この美しい形が崩れる可能性があります。初心者にはおすすめできませんが、サボテンが好きな人にはぜひ一度、黒王丸の魅力を生で感じていただきたいと思います。一目見たら「こんなサボテンがこの世にあったのか!?」と、心に焼きついてしまうと思います。 オトンナ・ユーフォルビオイデス 【写真の商品】高さ14cm 幹幅7.5cm 広がり幅18cm 価格44,000円(税込) [360°ルックス] 南アフリカ共和国北部の丘陵地帯から山岳部にかけて自生している冬型のコーデックス、オトンナ・ユーフォルビオイデスの現地球になります。脱皮している生き物のような奇怪な姿の幹から生える可愛らしい多肉質の葉。初めて見る方は、このギャップを不思議そうに眺めていらっしゃいます。でもこのギャップこそ、ユーフォルビオイデスの魅力なんです。枝の先端に、葉に混じってトゲが生えているように見えますが、これはトゲではなく、花が咲いたあとに残った花柄が枯れ落ちた、その残骸。いわば、花の置き土産。花期になると、可愛らしい黄色の小花が咲くので、幹とトゲだけの無機質な状態→多肉質の葉が生えた生命力溢れる状態(成長期)→花が咲いた可愛い状態、という3つの違ったスタイルが楽しめます。 ユーフォルビオイデスの花 Pix:jérémie Guerlet/flickr.com ちなみに、誰がつけたのか「黒鬼城」という、ちょっと激しめの和名がついています。幹とトゲだけになる休眠期の姿からは、そんな和名がついたことにも納得しますが、写真のような成長期の愛嬌のある姿を見たら、そんな名前にはならなかったような気も…。育て方は、基本的には前述の育て方(水やりは冬成長型を参照)の解説に則していただければ大丈夫ですが、ユーフォルビオイデスは日光浴が足りないと株の勢いが弱まるので、冬は存分に直射日光に当ててあげてください。また、この株は極乾燥地帯の自生地からやってきた輸入球なので、とにかく乾かし気味に管理してください。 パキポディウム・ウィンゾリー 【写真の商品】高さ28cm 幹幅6.5cm 価格66,000円(税込) [360°ルックス] 白や黄色い花を咲かせるパキポディウム属の中にあって、赤い花を咲かせることで人気のバロニーと、その変異種として珍重されているウィンゾリー。こちらはウィンゾリーの実生株になります。細長く伸びる原種のバロニーに対し、ウィンゾリーはご覧のようなとっくり形。そんな愛嬌のある姿と、バロニーとはちょっと違う丸みを帯びた赤花(前出の写真を参照)を咲かせることから、原種を凌駕する人気品種となりました。もともとの流通量の少なさもブームに拍車がかかった一因で、今や実生でも形のよいものは手に入りづらくなってしまいました。そんな入手困難なウィンゾリーの中でも、今回は特に美形な壺形のものが入ってきたので、ぜひ店頭に見に来ていただきたいです。開花を目指すもよし、この愛嬌のある形を楽しむのもよしと、2つの楽しみが味わえます。パキポディウムは種子の流通が年々少なくなってきていて、ウィンゾリーに至っては種子1粒あたりの価格が以前の倍の400円以上もするので、成体価格も現在は輸入株と実生株の差がほとんどなくなってきました。しかも、今後まだまだ上昇傾向にあるため、ウィンゾリーやグラキリスなどのレアパキポディウムは、今年2023年内が買い時かと思います。育て方は、前述の育て方(水やりは夏成長型を参照)に則して行えば大丈夫です。ただ、直射日光が大好きなので、成長期はガンガン陽に当ててください。葉が日焼けするかもしれませんが、幹に葉緑体があり、葉がなくても光合成を行えるため、徐々に耐性の強い葉に生え変わってきます。希少品種だからといって繊細にならず、ワイルドに育ててほしい株です。 ケラリア・ピグマエア 【写真の商品】高さ9cm 幹幅5cm 広がり幅10cm 価格66,000円(税込) [360°ルックス] 南アフリカの北西部からナミビア南部にかけての岩場に自生している冬型コーデックス、ケラリア・ピグマエアの現地球です。魅力は、なんといってもこの木質化した幹と盆栽チックな見た目ですね。グミのようにぷにぷにとした多肉質の葉は愛らしく、女性のお客様からも大人気です。名前も可愛いですよね。ピグマエアという小種名は、現地の言葉で「小さい」を表すピグミーという言葉と、ギリシャ神話に出てくる小人戦士「ピュグマイオイ」を掛け合わせたとされていますが、確かにこの可愛さという武器には平伏します。成長はとても遅く、この9cmという高さになるまで10年以上はかかったとみられています。冬型のコーデックスなので、前出のオトンナ・ユーフォルビオイデス同様、乾かし気味で、太陽にたっぷりと当てて、冬の夜は屋内にしまう、という管理が理想的です。この子が家にあると想像しただけで、気分がアガりますね。僕も個人的に欲しい株です。眺めながら日本酒を一献、とかやったら最高なんだろうなぁ〜(笑)。 ぺラルゴニウム・トリステ 【写真の商品】高さ5cm 幹幅7cm 広がり幅29cm 価格66,000円(税込) [360°ルックス] 一見すると小さな盆栽のようなペラルゴニウム・トリステの現地球です。どこか和テイストを感じさせてくれますが、日本から遥か遠く、南アフリカ中西部の山岳地帯から南部の丘陵地帯に自生する冬型のコーデックスです。パセリのような小さな葉や、茎に白い産毛がついているのが可愛いかと思えば、木質化した塊根は古木の風格が漂うという、アンバランスな見た目こそが最大の魅力です。この塊根、原産地では土の中に埋まっている状態で自生しているため、市場に流通しているものは観賞用に土の上にあげてあるんです。同様のコーデックス’亀甲竜’と違い、1株ごとに塊根部にまったく違う個性があり、ある株は塊根が尖っていたり、ある株は塊根が屏風のような感じだったりと、さまざまなタイプから選べるのがトリステの魅力。そういった意味では、この株は全体のバランスがとてもよく、360°どこから見ても見応えのあるフォトジェニックな株です。この株が開花株であるかはどうかは未確認ですが、開花すると中央に紫色の筋の入った可愛らしい白花を咲かせます。 トリステの花。Pix : jeffs bulbesetpots/flickr.com 育て方は、前述の育て方に則していただければ大丈夫ですが(水やりは冬成長型を参照)、詰まった感じの形にするコツとしては、風通しのよいところでたっぷりと直射日光を当ててあげてください。 ユーフォルビア・オベサ 【写真の商品】高さ12cm 幹幅7cm 価格66,000円(税込) [360°ルックス] 南アフリカ中西部の北ケープ州の石と砂が混じり合った丘陵地帯に自生するユーフォルビア・オベサの現地球です。オベサは雌雄別株で、開花しないと雌雄判別ができませんが、この株は雌株であることが分かっています。ちなみに雌株が開花すると、それ自体が多肉植物のような奇妙な形の花を咲かせます。 オベサ雌株の花は先端が3つに分かれているのが特徴。 Pix:Ravens444/flickr.com オベサも今流行っているため、市場でさまざまな個体を見ることができますが、この個体は古株なため、球体下部が木質化したとても味わいのある株です。厳しい環境の現地で風雨に耐えてきた証が、この木質化として現れているため、その年月に想いを馳せると自然の作り出す造形美にロマンを感じます。卵みたいなツルスベな手触りと万華鏡をのぞき込んだときのような模様はインテリア性もあり、置いた空間にラグジュアリーなテイストを加えてくれます。育て方は前述の育て方の項目に則していただければまず大丈夫ですが(水やりは夏成長型を参照)、なんとオベサは日照がない環境にお住まいの場合、植物用LEDライトのみで育てることもできてしまうんです! 難度の高い多肉レアプランツにあって、この育てやすさもオベサの人気の秘密なんです。普通は植物用LEDライトのみで育てると徒長しがちなのですが、オベサに限ってはそのようなこともなく、植物用LEDライトとの相性がいいんです。それを物語る一例として、当店のお客様には室内で100本ものオベサを育てている方もおられるんですよ。ただし、植物育成ライト1本で育てる場合、出力が弱いものだと徒長してしまうので、1〜2株あたり20Wを目安にしてみてください。 アデニア スピノーサ雌株×グラウカ雄株 (ハイブリッド株) 【写真の商品】高さ12cm 幹幅10.5cm 価格55,000円(税込) [360°ルックス] 共に、アデニア属の雌雄別株の品種、スピノーサとグラウカを掛け合わせた夏型のコーデックス、アデニア・スピノーサ×グラウカです。単独のものだと、種子を取るためには雌雄それぞれ別株を揃えて受粉させる必要がありますが、これはその2つを雌雄で掛け合わせたハイブリッド株のため、単独で自家受粉が可能です。下部が木質化した茶色で上部は深い緑色というツートンカラーのボディはグラウカの特徴で、葉はスピノーサ寄りの明るい緑色という、その3色のコントラストがとても美しい株です。株の成長速度は緩慢ですが、枝が旺盛に伸びるので、伸びては切り伸びては切り、で盆栽のように形を作っていく楽しさもあり、これを数十年と味わえるので、竹馬の友のように大切にしているお客様が多いです。育て方は前出の育て方に則していただければ大丈夫ですが(水やりは夏成長型を参照)、直射日光を長時間当てていると肌が焼けてしまうので、ボディのこの魅力的な色彩をキープするためにも、夏場は20%ほど遮光して陽射しに当てたほうがよいです。耐寒性が強いため、休眠期の冬も最低気温が8℃程度なら外で越冬はできますが、8℃を切る場合は屋内に取り込んでください。また、枝は放置していると密になるので、リフレッシュのため1年に1回は強剪定をするのがおすすめです。 取材後記 いかがでしょうか、お宝の数々。どれをとっても多肉マニア垂涎の今をときめく逸品ばかりで、ついお財布の紐が緩んでしまいます。といっても、今回私は目の保養のみとなりますが、本記事を読み運命を感じた方は、迷わず店頭へレッツゴーです!7つのラインナップ全てが長い人生を共にできうる素晴らしい株ばかりですからね、手塩にかけた愛株と互いに語り合う10年後、20年後、素敵だと思いませんか?もちろん、売り場にはこの7品種以外にも素晴らしい株がたくさんありました。ぜひその目で、長年の友を見つけてください。今回は価格もプレミアムな特集となりましたが、次回はプロトリーフセレクションズからリーズナブルな多肉植物をピックアップした激推し特集も組む予定なので、乞うご期待です!注:掲載商品の購入をご希望の方は、事前に在庫の有無を店舗にご確認ください。
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ストーリー
多肉植物&メキシカンハウスの家主はフラをライフワークにする情熱家!|多肉植物狂いVol.7
あなたの多肉植物みせてください! とは 「あなたの多肉植物見せてください!」は、街で噂の多肉植物や、ご自慢の多肉植物について、編集部員Kが直接見に行ってお話を伺うという、連載「多肉植物狂い」のスペシャル企画です。読者から寄せられた情報だけでなく、編集部員Kが自らの足と嗅覚を使って探し当てたお宝多肉植物も紹介しちゃいます! 今回紹介するのは多肉植物を使ったエキゾチックインテリア 今回お邪魔したのは渋谷区某所のマンションの一室。ごく普通の玄関が連なる廊下を歩いていると、ひときわ派手な玄関を発見! 迎え入れていただいた高橋久里子さんはフラダンス(正式にはフラ)の先生。さぞトロピカルでハワイアンな部屋が待っているかと思えば、中はなんとまさかの南米ワールド! メキシカン雑貨とサボテンの共演がエキゾチックな部屋をご紹介します。 まずは動画で全景を体感 まるでパーティー会場に迷い込んだかのようなハッピーな空間 まるでパワースポット、それが高橋さんのお宅 頭上をカラフルにパペルピカドが彩り、ガイコツやマリア像などメキシコを象徴するインテリアグッズが満載の高橋さんの部屋。メキシコには500種以上のサボテンが自生しており、サボテンもメキシコイメージには欠かせないインテリア。というわけでオブジェの柱サボテンが部屋の随所に置かれるとともに、窓辺には本物のサボテン&多肉が並ぶコーナーがありました。 面白いのは、サボテン&多肉と自然石のコラボ。水晶やアメジストなどが植物たちと並べられ、何やら不思議なムードになっています。地球誕生と同時に出来たこれらの鉱物は、不思議なパワーを秘めるパワーストーンとして、古代のさまざまな文明で崇められてきた歴史があります。 この部屋にある水晶たちも、地球の中心付近で、1mm成長するのに100年という、気の遠くなるような時間をかけて作られた、いわば地球の作り出した芸術作品。同じ空間にいる植物たちも、何か不思議なパワーを感じているのかもしれませんね。 多肉植物とインテリア、高橋さんご自身についてお話を伺いました 最初はオブジェから。でもやがて物足りなくなり本物へ 編集部K(以下K):まずは、多肉植物に興味を持たれたきっかけを教えてください。 高橋(以下T):メキシコが好きでメキシコ雑貨を部屋に飾っていたんですが、メキシコといえばサボテン! と思って、最初は本物のサボテンではなくサボテンのオブジェを集め始めたんです。でも集めていくうちに本物が欲しくなって、家の近所の100円ショップで小さいサボテンを購入したのが多肉植物に興味を持つきっかけになりました。 K:オブジェから入るというのは珍しいですね。初めて聞きました。 T:オブジェだと枯れないしいいかな、と思っていたんですが、時間の経過と共に、水をあげたい! お世話したい! という願望が強くなってきて、ほかの観葉植物に水をあげている時に、無意識にオブジェのほうにも水をあげようとしている自分がいて…(笑)。これは本物を買わなきゃな、って思ったんです。 K:神の啓示みたいですね。 T:導かれた感じです(笑)。 K:100円ショップのサボテンから始まり、ここまで増やすことになったきっかけはなんだったのですか? T:それはバルコニーで栽培しているアガベとの出会いですね。たまたま入ったお花屋さんで一目惚れして連れて帰ったんですが、その時に根元付近から別の芽が出ていて、それがみるみるうちに大きくなり、思いきって切ってみたら、その根元からまた芽が出ていたんです。こうして切っては株分けすることを繰り返しているうちに、育てるのが面白くなっていったんです。 K:メキシコ雑貨からサボテン、そしてアガベ、なかなか面白い流れですね〜。 T:アガベで自信がついたので柱サボテン(鬼面角)に挑戦しました。植え替えを何度も重ねて、あそこまで大きくなったんです! K:あれは立派ですね〜。ちなみに高橋さんは現在はいくつくらいの多肉植物を育てていらっしゃいますか? T:多肉だけだと30株くらいです。観葉植物を含めるとさらに多くなりますね。観葉植物の中では、ベランダにあるオーガスタが一番好きですね。夏場はその前で子供たちがプール遊びをするのですが、オーガスタのバナナの葉みたいな大きな葉が、その場を南国感満載にしてくれるんです。 K:アガベといい、割とボリューム感のある植物がお好きなんですね。 T:そうですね。小さい株を徐々に鉢をサイズアップして植え替えながら、ボリュームのあるところまで持っていくのが好きですね。植え替える作業自体が好きなので、鉢にはあまりこだわらずに販売時のプラスチック鉢のままで、それが狭そうだな、と思うまで動かさずに管理しています。植え替えは5月か9月にやることが多いかな。その時期は、もう休日はずっと植え替えしてるって感じになりますが、それがまた楽しいんですよね! K:それ、激しく同意します! 成長真っ盛りな子に新しい家をあげるみたいな感覚、楽しいですよね。 アガベは我が家のマザーツリー K:ちなみにその30株ほどある多肉の中からベスト3を選んで、それらにまつわるエピソードがあれば教えてください。 T:トップは間違いなくアガベですね。私が多肉にはまるきっかけを作ってくれたので。アガベに関してはもう家族! うちのマザーツリーと思っています。 K:マザーツリー、いい言葉ですね。 T:あの子をお迎えして間もない頃に、同じ園芸店でハーフサイズくらいのアガベを買って同じ環境で育てていたんですが、そちらは半年で枯れてしまって…。それを思うと、やっぱり今いるあの子は強いんだなって。余計にあの子を大事にしなきゃって思うようになりました。 2つ目に選ぶとしたら、5〜6年前の母の日に子供たちからもらった大雲閣かな。母の日にもらったというのもありますが、最初の1年くらいは机の上に置いて栽培してたのを、バルコニーに出した途端に急に大きくなって。1,000円くらいだったものがこんなに大きくなるんだ! ってお得感もあって好きですね(笑)。 ただ大雲閣って、切ると白い液が出てきて、あれが目に入ると失明に至るって聞いたので、アガベみたいに切って増やすというのは、まだ怖くてできないですね。 K:あの白い液体は発ガン性があるとアメリカの医師の論文に書いてあったので、賢明な判断かもしれませんね。 【大雲閣の白い乳液の正体】 大雲閣を切ると出てくる白い乳液には、人体が触れると皮膚に炎症がおき、目に入った場合は角膜潰瘍を起こすおそれのある、ホルボールエステルとインゲノールエステルという成分が含まれています。両成分は発ガン物質であることも確認されています。皮膚に触れた場合は十分に石けんで洗い流し、万一目に入った場合は入念に洗眼のうえ、速やかに眼科を受診してください。また、ペットに対しても十分注意してください。 K:では続いて3つ目は? T:3つ目は、これもバルコニーにある「金のなる木」ですね。近所のスーパーのお花コーナーで400円だったんです。名前がいいですよね! 絶対金運を呼んでくれそうだなって(笑)。 でも、名前よりも魅力的なのは、その生命力でしょうか。地面に落ちた多肉質の葉からどんどん根が出てくるので、落ちた子を絶対無駄にしない! みたいなところが、すごい子だなと思いました。 K:今までの三つに共通するのは、どんどん増えていくということなので、成長が早くてダイナミックに増えるものがお好きなんですね。 T:でしょ〜。やっぱ増えると気分もアガりますよね。金のなる木にはお金も増やしてほしいし(笑)。 K:(爆)。 多肉植物、自然石、メキシコ、この3つの要素が共鳴する部屋 K:多肉植物と雑貨のコーディネートについて、何かコンセプトやテーマがあれば教えてください。 T:天然石とコーディネートすることかな。天然石がもともと好きで、地球の奥深くで育まれた天然石が持つ波動みたいなものが、植物と共鳴し合うように私は思っているんです。科学的に解明されていたり数値化されていたり、というようなものではないので、言葉にするのは少し難しいんですが、肥料を与えるような感覚で天然石を多肉植物の近くに置いていると、天然石も植物もお互いがとても気持ちよさそうなんです。なので、コンセプトとしては多肉植物と天然石を一緒に置くようにしています。 K:なかなか神秘的なお話ですね。科学的に立証されていることだけが全てではないですからね。天然石以外にも、メキシカン雑貨も多く飾られていますね。 T:これはただ私がメキシコが好きなだけです(笑)。インテリアをメキシコの感じにしたいと考えた場合、やはりサボテンは不可欠ですよね。 K:飾ってあるメキシコ雑貨がどれも素敵で私もかなり惹かれました。これらを購入したおすすめのショップなどあったら教えて下さい。 T:下北沢にある『PAD』というお店が気に入っていて、よく買いに行きます。マリア様の像や吊るし物なんかはそこで買っています。あとはメルカリとか、ネットかな。 【高橋さんお気に入りのお店『PAD』】 東京の下北沢と大阪の北堀江の実店舗のほか、下記Webショップでも購入できる。 お店のURL https://www.pad-mexico.com 次の目標はサボテンの開花かな K:多肉植物たちの管理はどうされていますか? T:夏は、基本的に室内にある多肉植物は全部ベランダに出しちゃいますね。水やりは、定石通り「用土が乾いたらたっぷり」を意識しているんですが、なかなか早いペースでカラッカラに乾いていくので、ほぼ毎日あげているような感じですね。 K:毎日! おそらく保水力が極端に低い用土をお使いなのだと思いますが、ユーフォルビア(大雲閣)はともかく、サボテンに関しては少しずつ乾き気味に慣らす方向にもっていったほうがいいかも…。 乾いたな、あげようかな、と思った日から3日くらい経ってからあげる、というサイクルに変えてみると、成長の勢いが増すかもしれません。種類にもよりますが、サボテンは夏は吸水サイクルが落ち、休眠してしまうタイプも多いので、成長を促すにはこんなふうにメリハリをつけたほうがいいと思います。 冬はどうですか? T:冬は、屋内に取り込める子は取り込んで、そうでない子は防寒対策をしてバルコニーに置いています。両方とも水やりは渇水気味にしています。あげるのは週一くらいかな。うちは二重窓なので、冬は暖房をつけないでも室温が20℃以上あり、室内の子たちは成長も止まっていないので、水やりの感覚もちょうどいいのかなと思っています。 K:なるほど、やっぱり二重窓はすごいんですね〜、いいなぁ、憧れです。 じつはですね、サボテンに限っては、部屋に取り込んでいる子も、あえて屋外に置いて「冬越し」させたほうが、株の成長のためにも、また開花を期待できるという面でもおすすめなのです。詳細はこの記事をぜひ見てみてください。 ・サボテンの冬越し参考記事 【冬のガーデニング】ベランダにも置けるおしゃれ&コンパクトなビニールハウスで植物の冬越し|多肉植物狂いVol.6 T:あ、だから私、うちのサボテンが花咲かせるところを見たことがないんだ! K:いや、それだけとも限らないんです。開花株にまで成長していなければ、花は咲きませんし、日頃の栄養状態もありますし…。いずれにしても心を鬼にして、ややスパルタになったほうがサボテンは強くなります。ただし急激な変化は避けてください。徐々に、がベストです。 T:なるほど、冬越しの記事をチェックして勉強します! 次の目標は開花かな。 K:いいですねぇ〜、開花したらぜひ教えてください。 家にいるときはライフワークのフラとは違う文化圏の匂いに囲まれたかった K:ところで、高橋さんご自身についてお聞きしたいのですが、フラダンスの先生なのですよね? お部屋がまったくハワイ感がないのは意外でした。 T:そうでしょ(笑)? 子供の学校の先生が家庭訪問でいらっしゃっても、「あれ、お母さんフラの先生ですよね?」って不思議がられます。でも、家にいるときはライフワークのフラとは違う文化圏の匂いに囲まれたかったので、その自分の気持ちを反映してか、家は自然と大好きな南米テイストになっていったんです。 K:フラダンスに関して教えてください。 T:まず「フラダンス」という呼称ですが、確かに一般的ではあるのですが、じつは「フラ」というのがハワイ語でダンスを意味するので、フラダンスだと、ダンスダンスになっちゃうんですよ。 K:"フラ"と言っているのは略して言っているのではないのですね!? 知りませんでした。 T:フラは古来よりハワイの人たちにとっては、常に生活と直結したものだったんです。例えば、言葉であったり、歴史であったり、祈りであったりと、フラにはそういう要素があるんです。あと、昔のハワイアンは文字を持たなかったので、その日のニュースを踊りで伝え合ったりもしていたんです。そういう意味ではカルチャーでもあり、自然と一体化したものでもあり、それらを伝承しているのがフラなんです。 K:これはまた意外な一面を知りました。ハワイのエンターテインメントとしか見ていなかったです。 T:いや、そういう方のほうが多いですよ。でも、歴史も長くて、300年前の人たちが作った曲が、現代に伝わっているなんて、なんかロマンを感じませんか? そのうちハワイにも西洋文化が入ってきて、文字を書き記すのも、インターネットを使うのも当たり前になりましたが、フラは、古来のものが生活と密着して語り継がれてきた文化なので、そこがまた奥が深いんです。極論を言えば、もしフラがなかったら、西洋文化が入ってくる以前のハワイの文化が伝承されなかったわけですから、フラを大切に育んできた先人たちの努力にも感謝です。 ちなみにフラは2種類あり、西洋文化がハワイに流入したのを境に、「古典フラ」と「現代フラ」に分かれているんです。ショーなどで音楽をバックに華やかな衣装で踊るのは主に現代フラで、打楽器とチャンター(打楽器を演奏しながら歌う人)のチャンティング(歌唱)に合わせて踊るのが古典フラという位置付けになっています。 K:なるほど、フラを通じてハワイを学ぶというのも粋なものですね。 人生を180°変えてしまったサンディーさんとの出会い K:ところで、高橋さんがフラを学ぼうと思ったきっかけはなんだったのですか? T:きっかけは、多分想像されているのとまったく違いまして(笑)。私の師匠にサンディー先生という方がいまして、私はサンディーさんの音楽が大好きで、高校時代、彼女の追っかけをやってたんです。 K:え、サンディー先生って、ひょっとしてあのサンディー&ザ・サンセッツのサンディーさんですか? T:そう! ご存じですか? K:もちろんです! 世代として、バンドのサンディー&ザ・サンセッツは知っていますし、何よりもサンディーさんはルパン三世の有名なエンディング曲「ラブ・スコール」を歌われていましたから、今でもサンディーさん=峰不二子ですよ(笑)。 【高橋さんの師匠サンディーさんはこんな方】 Sandii official: https://sandii.info/profile/ T:ご本人に伝えたら喜ぶと思います(笑)。 私が高校生の頃にサンディーさんの存在を知って一発でファンになりました。皆が進路を決めている時に、私は何の根拠もないんですが、たった1枚のCDが私に無限のインスピレーションを与えてくれて「あ、この人のところに行こう!」って思ったんです。当時サンディーさんはインドネシアの曲をたくさん歌っていたので、だったらインドネシア語を勉強したら近づけるのかなと思い、インドネシア語の専門学校へ通ったりしながら、思い切って事務所に電話して「高校生なんですが、何でもしますから働かせてください!」って頼み込んだんです。 K:驚きのバイタリティーですね! で、その結果は? T:もちろん働かせてなんかくれるわけがなく、でも「LIVEにおいで!」ってお誘いを受けて、そうして私のおっかけ人生が始まり、それから2〜3年した頃に、突如サンディーさんの音楽の方向性が“ハワイ”になったんです。 彼女は10代をハワイで過ごしていたので、ルーツに回帰したのかな。『サンディーズ・ハワイ』ってアルバムをリリースしたり、フラを踊っているビデオもリリースしたりして。 そして間もなく彼女がフラスタジオをオープンしたので、なら私もフラダンサーになる! そこに行けばサンディーにフラを習える! ということで私のフラ人生がスタートしました。 K:ビックリマンチョコもビックリのビックリですね! T:で、そこの会員になり、実際にレッスンに行ったら目の前に本人が座っていて、歌詞を書いていて、そりゃあもう「ひい〜〜!!」ですよ(笑)。ライブなんかより全然近い距離にいるんですよ! 参りました。 K:え、じゃあフラ自体に興味は… T:当時はまったくなかったですね(笑)。サンディーにだけ興味があったんです! でも、フラと相性がよかったのか、だんだん面白くなっちゃって。ハワイも知らず、運動神経もない私をここまで惹きつけるのって、何!? って。だって、ダンスって自分の中で一番嫌いなジャンルだったんですよ! しかも超人見知りだったし。 K:いやぁ、何がどこでどうなるか、わかったもんじゃないですね! T:そう! しかも、ダンスが上手にできるようになるとサンディーが褒めてくれるから、メチャテンション上がるじゃないですか! K:そりゃあ大好きな人に褒められるんだから上達もさぞ早かったんでしょうね。それで先生にまで登り詰めちゃうんだから、よほど相性がよかったんですね。じつは、編集部のスタッフAzもそのスタジオに通っているということで、今日は一緒にまいりました。 編集部スタッフAz:今、私もサンディーズ・フラスタジオに通っているんですが、去年、高橋先生がサンディーさんの後を継ぐということで、継承のための格式ある「儀式」が行われたんです。 K:最初はCDの中でしか声を聞けない雲の上にいた人と、ようやく同じ空気を吸えるようになったかと思ったら、それが師弟関係にまで発展し、今やその後を継ぐところに居る。これTVドラマ化できますね! でも、全ては高橋さんの情熱とバイタリティーの成せる技なのかなと思います。 T:確かに情熱の全てをそこに注ぎましたが、でもスポコンドラマ的なものではなく、意外とそこは自然な流れもあったように思います。 フラは植物と密接な関わりがある K:教える側に立つきっかけも自然な流れで行き着いたものだったのですか? T:そうですね、まだ生徒だった時のある日、サンディーさんに「フラをライフワークにしてね!」って言われたんです。その一言がこの道への決定打になったんです。1日10時間くらい練習もしたし、自分に舞い込んでくるチャンスには貪欲にチャレンジして来ました。その過程で、「教えてみる? 手伝ってみる?」、「はい!やります!」ってなったんです。当時はフラブームだったこともあり、爆発的に生徒さんの数も増えていき、サンディーさん一人で全員にレクチャーするのも大変だったので、教えるのをお手伝いさせていただくのも自然な流れだったのかもしれません。 K:高橋さんの濃厚な人生は、コロナ禍で閉塞的な時代を生きている人たちに聞かせたいお話でもありますね。人との縁(えにし)が夢に向かうパワーをくれるということを伝えたいですね。そしてまた、植物もパワーをくれますよね。 T:フラって身の回りにある自然と密接なんです。儀式などをするときは、フレッシュなグリーンで編んだレイを身につけるんですが、それは森から命をいただき、命が宿ったものを身につけることにより、そこに神様が宿り、それがお守りになっている、というような想いで儀式に臨むんです。つまり、フラは植物と密接な関わりがあるんです。 儀式を行う際に祭壇を組むのですが、そこには聖なる植物も置かなければならないので、多肉かどうかはともかく、植物と密接な関わりがあるのは確かなんです。 私がこうして多肉植物を愛し、そして地球の自然が育んだ自然石をそばに置くところも、どこかでそんなフラの文化と、大なり小なり繋がっているように思うからではないかと思います。 K:フラと大自然、大自然が育む多肉植物! 全ては一連托生ということですね。 さて、最後になりますが、ガーデンストーリーはさまざまなスタイルで園芸を楽しむ読者の皆さんにご愛読いただいています。読者の皆さんに一言いただけますか? T:え〜、私が!? そうですね…私、園芸に関しては本当に毎日が試行錯誤の連続なんですけど、植物に関する情報って、メディアを通じて容易に手に入るものですが、本当に植物との関係性を構築する上で重要なのって対話だと思うんです。毎日状態を見てあげて、話しかけてあげて、そんなふうに園芸を楽しめたら素敵だと思います。 皆さんも植物たちとの対話を楽しんでください! K:本日はお忙しい中ありがとうございました。 取材後記 高橋さんのなかなかロックンロールな半生にちょっと共鳴してしまい、多肉植物よりそっちのほうが気になってしまった今回の取材。帰り道に思ったのは、情熱を注ぐものがあると、人生はかくも豊かになるのだな、と。 今まで植物を通じて出会った人全てに言えるのですが、植物を愛する人って、豊かな人生を送っている方が多いような気がします。お金では買えない価値観を育んで来た人、とでも言ったほうがいいのかな。つまり、話をしていると引き込まれるとても魅力的な人が多いということです。この企画を通じて、今後もどんな出会いがあるのかとても楽しみですね。 高橋さんの多肉植物ライフが今後ますます面白い展開になることを祈っています! Information サンディーズ・フラスタジオ 2001年3月に渋谷に開校したフラ教室。10代からフラとハワイアンに親しみ、ハワイの伝統文化を深く学び愛するサンディーが、「アロマセラピー」をテーマにフラの心を伝えている。 レッスンは、現代フラ(アウアナ)、古典フラ(カヒコ)、タヒチアンなど多岐にわたる。渋谷本校、横浜校のほか、沖縄、広島、愛媛にも教室を展開している。 HP : https://hula.sandii.jp
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園芸用品
【冬のガーデニング】ベランダにも置けるおしゃれ&コンパクトなビニールハウスで植物の冬越し
サボテンの冬の管理 サボテンを強くする冬の寒さ 昨今の多肉植物ブームにより、園芸店の多肉植物コーナーにはとても多くのサボテンが並ぶようになりました。しかし、初心者の方の多くが、最初の冬を迎えた時に「冬の管理」という壁にぶつかるようです。サボテンは不毛の砂漠地帯で灼熱の太陽を浴びながら自生しているイメージがあるためか、冬の寒さを生き抜く印象がイマイチ湧かないという方も多いでしょう。ある意味、間違ってはいません。 しかし、サボテンの自生する米国南西部や南米諸国も、冬はそれなりに寒くなり、時には気温が0℃まで下がることもあります。そんな中を生き抜くサボテンは意外にも寒さに強く、少々の降雪にも耐えることができるんです。そして何よりも、この寒さを経験することによって、美しい花を咲かせ、色艶のよいたくましいサボテンに育つんです。 サボテンは可愛い花が咲くと聞いたのに、何年経っても咲かない・・・という方は、案外この寒さを経験させていないからかもしれませんよ。 冬の育て方のポイント 自生地でのサボテンは、日本の冬にあたる11〜2月が乾季となることから、この時期に休眠して寒さや渇きを凌ぎ、次の成長期である春〜夏に向けてエネルギーを蓄えます。しかし日本の冬は寒さが厳しいため、外で管理していると、休眠どころか、凍死してしまう危険があります。そうならないようにビニールハウスに入れたり、夜間だけ屋内に取り込んだりと、ちゃんとお世話をしてあげなければなりません。 水やりに関してですが、休眠期の12〜2月は根が水を吸い上げないため、水は断つ必要があります。断水するとみるみるうちにシワシワになっていくので、初めての方は枯れてしまったのではないかと心配になりますが、ちゃんと休眠させ、春先に少しずつ水をあげれば、徐々に元の姿へと戻るので大丈夫です。元の姿どころか、冬越ししたサボテンは色艶もよく、何よりも大きく育ちますよ! そもそも屋内でサボテンを管理している方も多いと思いますが、植物にとって自然の環境は、呼吸と光合成を促す重要な要素が盛りだくさんなので、冬場でも日中2〜3時間は外に出してあげてください。これをやらずに室内で過保護にばかりしていると「徒長(とちょう)」といって、品種本来のパフォーマンスを発揮しないまま虚弱体質に育っていき、結果的に寿命も縮めてしまいます。 サボテンを外で冬越しさせるメリット・デメリット メリット 屋外には、植物にとって大切な要素、光、風、水(水蒸気)が全て揃っています。特に自然の風は、サボテンを病害虫にも強い健康な株に育てます。自然の風は室内のエアコンの風と異なり緩急があり、何よりも新鮮です。人の手では作れない微妙な温度の変化や、ゆらぎなどのニュアンスがサボテンの細胞を活性化し、株本来のパフォーマンスを引き出します。そして自然の風に晒すことにより、休眠明けの株の色艶がよくなり、トゲの質も上がり、また開花率も高まります。 上の写真は「オレンジ花桃太郎」というちょっと変わった名前のサボテンです。屋外のビニールハウスでの越冬中は、色も茶色く変色し、この後さらにシワシワになっていきました。しかし3月上旬ごろから週に1回のペースで少しずつ水を与えると、みるみるうちに太って緑色を取り戻し、花期である初夏を迎える頃には、大変美しい花を咲かせました。ちなみに、同種類のサボテン(年齢も同じ)がもう1鉢あり、そちらは試しに屋内管理してみましたが、結局花は咲きませんでした。 デメリット 天気予報をちゃんとこまめにチェックする必要があります。サボテンの多くは0℃くらいまでの低温には問題なく耐えることができるので、ほんの1〜2時間程度なら氷点下に晒しても枯れはしませんが、これが長時間となるとさすがに枯れてしまうので、毎日最低気温は確認する必要があります。 また、冬の雨も大敵。根のパフォーマンスが落ちている時に冬の冷たい雨が鉢内に溜まると、霜や氷結により根がダメージを受ける可能性があります。大切な株のためにも、毎日の空模様のチェックは欠かせません。 このデメリットを解消できるのが、ビニールハウス、即ち温室なのです。 冬越しに最適の「パンタグラックハウス」 メリットを確保しながら、デメリットを補ってくれるのが、ビニールハウス。さまざまな種類が販売されていますが、組み立てが難しそう、スペースが確保できない、おしゃれじゃない、そもそもビニールハウスが必要な理由が分からない、などといった理由から導入を躊躇する方も多いです。しかし、世の中を見回してみると、簡単に組み立てられ、大きさも選べて、尚かつおしゃれなビニールハウスというのもあるもので、「パンタグラックハウス」がまさにそれ! 今回、私編集部員Kが、実際にそのパンタグラックハウスを取り寄せて、古くなったビニールハウスからパンタグラックハウスにサボテンを入れ替えてみました。 すでに冬本番を迎え、外で栽培している多肉系植物の冬越しをどうしようか考えている方、今からでも遅くはありませんよ! 必見です。 ビニールハウスを使うメリット ビニールハウスって必要なの? と思っている方も多いでしょう。しかし、ビニールハウスがもたらす効果を知れば、その考えは一転するかもしれません。 一般的にはビニールハウス=温室ということから、中はさぞかし暖かいのではと思われますが、プロの農家が使うヒーター付きのビニールハウスならともかく、家庭用のビニールハウスの室内は冬はそれなりに低温になります。しかし、ビニールのカバーが冷たい風や外気を遮断してくれて、尚かつ、日中の陽射しで温まった室内の空気を長時間とどめておけるので、冬の夜間の温度を室外より1〜2℃高く保つことができます。たったそれだけ? と思うかもしれませんが、我々人間と違い、植物にとってはこの1℃の差がとても大きいんです。吹き晒しで放置した鉢植えには霜が降りることもありますが、ビニールハウス内に置くことにより冬の霜害を防ぐことができます。 ただし、春も近くなり外気が暖かくなるにつれ、閉めっぱなしにしていると蒸れるというデメリットもありますが、これはカバーについている扉を開けるなどして調節すれば、簡単に解決できます。 また、パンタグラックハウスは、フォルムがとてもスタイリッシュなため、ビニールカバーを外せば、おしゃれなガーデンラックとしても活躍します。ただしサボテンの場合、直射日光で日焼けし、それが原因で枯れてしまうことも多いため、夏場はビニールカバーの代わりに20%程度の遮光ネットを付けてあげるとよいでしょう。 実際に組み立てる パンタグラックハウスは、天板と底板、棚板が1段の「Sサイズ」と、天板と底板、棚板が2段の「Lサイズ」の2タイプがあります。サボテンを大量に栽培する編集部員Kのもとには、Lサイズが届きました。 箱から取り出してみると、とてもコンパクトに収納できることが分かります。使用しない場合は場所を取らずに保管できますね! ではさっそく、同梱の説明書を見ながら組み立ててみます。 組み立てはまず、フレームの天頂部を持ち上げて全体を展開します。 パンタグラックハウスの名の由来は、電車の屋根でもお馴染みの、菱形に収縮する構造物の総称「パンタグラフ」と「ラック(棚)」を合わせた造語。一般的な家庭用ビニールハウスは何本もの部品パイプを組み立てて作るために手間と時間がかかり、工作が不慣れな人は一人では組み立てられないことも。しかしパンタグラックハウスは、パンタグラフの伸縮機構を活かして設計されているため、誰でも簡単に展開し、組み立てることができます。 実際の組み立ての様子は、この動画をご覧ください。2分間、最後までご視聴いただければ、パンタグラックハウスの組み立てがいかに簡単で、なおかつスタイリッシュであるかが分かります。 設置してみる 【設置に最適な場所】 陽の当たる場所 マンションのバルコニーなどで日照時間に限りがある場合は、少しでも多く陽が当たる場所 風の影響を受けない壁際やフェンス際 【POINT】 日中の太陽の恵みを十分活用するためにも日向が最適ですが、マンションのバルコニーはフェンスなどで下段まで陽が届かないことも。その場合は、上段に植物を置き、下段を土や空鉢などの保管場所として使用するのがおすすめです。 【設置に適さない場所】 エアコンの室外機の風の影響を受ける場所 【POINT】 パンタグラックハウスのビニールカバーはエアコンの室外機から出る風も防いではくれますが、それではカバー自体の耐用年数に大きな影響が出てしまいます。また、室外機のファンの目の前に設置することにより、屋内の暖房効率を低下させる可能性があります。 サボテンたちのお引っ越し 導入したパンタグラックハウスは、中2段タイプのLサイズ。背が高い分、バランスよく配置しないと風により倒れる懸念があります。このため、重量のある鉢を下段に置き、中段にはやや軽い鉢、上段には3〜4号鉢程度の小さいものを配置し、重心が下に向かうようにします。 【POINT】 それでも、冬の「木枯らし1号」や春の「春一番」、夏〜秋の台風など、季節ごとの強風対策のため、最下段には写真(上)のようにレンガをいくつかのせて、揺れに対する下部の強度をさらに高めます。これにより上が多少揺れても中の鉢はビクともしなくなりました。そもそも風問題は、壁際やフェンス際に設置すれば発生しないのですが、そうでない場合はこの「極低重心策」はおすすめです。 日頃のメンテナンス どのメーカーの商品も共通して、扉を開け閉めする際にジッパーの上げ下げを丁寧に行わないと、ビニールカバーは必ずこのジッパー部分から傷み始めます。ビニールハウスは屋外で日夜風雨に晒されているため、常に力が加わる開閉部から壊れるのは仕方のないことではありますが、パンタグラックハウスはその点にも配慮されています。 パンタグラックハウスは、カバーのビニール素材に適度の厚みがあり、またジッパーレールも2列縫いでしっかりと縫い付けてあるため、この部分の強度には老舗エクステリアメーカーのこだわりを感じます。 でも、ここに一番力が加わることに変わりはないので、対策として、たまにミシンオイルなど市販の機械油をレールに薄く塗ってあげるとよいでしょう。これによりジッパーの開閉がよりスムーズになるので、耐用年数も上がるように思います。ちなみに、機械油はホームセンターで200〜300円で購入できます。 ビニールカバーはメーカーも消耗品としているため、カバーのみを通販で買うこともできます。 [タカショーのカバー別売りサイト] また、ビニールハウス内の空気をリフレッシュするためにも、冬とはいえ天気のよい日はお昼過ぎくらいまでカバーの扉を開けておきましょう。 朝晩の温度差でカバーの内側に水滴が付着する場合がありますが、これを放置してしまうと、乾燥を好むサボテンにとっては大敵の蒸れが生じ、根腐れの原因になります。この場合は水滴を拭き取り、2〜3時間はカバーの扉を開けておきましょう。 収納ラックとしても機能するビニールハウス 何よりも組み立てが簡単! そしてスタイリッシュ! 私はサボテンをメインで栽培しているため、収納する植物はサボテンのみとなりましたが、パンタグラックハウスは1段あたりの高さが35cmと十分にあるため、季節の花や観葉植物など、サボテン以外の植物ともとても相性がよいように思います。 植物を置かずとも、写真(下)のように、園芸道具の収納ラックとして使うのも洒落ていますね。 場所に余裕があれば、Sサイズは鉢や道具の収納ボックスとして、Lサイズは植物の温室として使えば、狭い空間もすっきり効率的。園芸道具には金属製のものも多いので、風雨に晒されずにツールを保管できる収納ボックスとしても優秀です。 ただし、昨今の夏の凶器のような陽射しと、凍てつく冬の寒さで、ビニール製のカバーは劣化が避けられません。その点、パンタグラックハウスはカバーだけを気軽に替えられるところも便利です。 また、屋外用ではなく、屋内で植物用ラックとして使っても、かなり映えると思います。写真(下)ではビニールカバーをつけていますが、屋内使用の場合はビニールカバーを最初から外したほうがよいと思います。植物を置いてインテリア映えするラックって、あるようでなかなか出会えないものです。それがビニールハウスとしての顔もあるわけですから、まさに一石二鳥ですね。 パンタグラックハウスのラインナップと価格 【パンタグラックハウス L /A】(Lサイズ) 価格 : 9,460円 (税込) ※下記オンラインショップにおける価格 青山ガーデンオンラインショップ https://aoyama-garden.com/shop/g/g54106500/ 材質 : [本体]スチール [カバー]ポリエチレン・ポリエステル サイズ : 約幅86×奥行36×高さ121cm 本体の折りたたみサイズ:約幅86×奥行53.5×高さ8cm 棚板サイズ:[上段・下段の外寸]約幅79×奥行36cm [中段の内寸]約幅79×奥行29.5cm 重量 : 約5.9kg 棚板1枚あたりの耐荷重:[上・中段]10kgまで [下段]15㎏まで 【パンタグラックハウス S /A】(Sサイズ) 価格 : 8,250 円(税込) ※下記オンラインショップにおける価格 青山ガーデンオンラインショップ https://aoyama-garden.com/shop/g/g54103400/ 材質 : [本体]スチール [カバー]ポリエチレン・ポリエステル サイズ : 約幅86×奥行36×高さ81cm 本体の折りたたみサイズ:約幅86×奥行53.5×高さ6cm 棚板サイズ:[上段・下段の外寸]約幅79×奥行36cm [中段の内寸]約幅79×奥行29.5cm 重量 : 約4.3kg 棚板1枚あたりの耐荷重:[上・中段]10kgまで [下段]15㎏まで ビニールハウスを活用した冬越しでサボテンの花を咲かせよう! 本文序盤でも記述している通り、とても多くの方が購入したサボテンを過保護に管理されているために、本来咲くはずの美しい花をずっと見られないでいるのがもったいないなと、かねがね思っていました。 別に花が見られなくても、トゲトゲしたサボテン然とした姿をお部屋で楽しめればいいと考える方もいらっしゃるとは思いますが、花を咲かせるための方法を模索するのも、園芸の醍醐味だと思います。その醍醐味を味わうためにも、サボテンの冬越し、ぜひチャレンジしてみてください! パンタグラックハウスは、そんな冬の園芸ライフをスタイリッシュに演出してくれるスグレモノのビニールハウスなのです。 Photos / 1、3〜4、6、8〜21、23:ガーデンストーリー編集部 2:Saguaro National Park(AZ/U.S.A.) 5、7、22:株式会社タカショー Movie / ガーデンストーリー編集部
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多肉・サボテン
あなたの【多肉植物】見せてください!〜店頭に鎮座する巨大「金鯱」サボテン|多肉植物狂いVol.5
あなたの多肉植物見せてください! とは 「あなたの多肉植物見せてください!」は、街で噂の多肉植物や、ご自慢の多肉植物について、編集部員Kが直接見に行ってお話を伺うという、連載「多肉植物狂い」のスペシャル企画です。読者から寄せられた情報だけでなく、編集部員K自らの足と嗅覚を使って探し当てたお宝多肉植物もご紹介しちゃいます! 今回クローズアップした多肉植物は「金鯱」サボテン 今回クローズアップする多肉植物は「金鯱(キンシャチ)」という種類のサボテンです。私Kが、とある店の前を車で通りかかる際に、いつも目に飛び込んでくるのがこの巨大な金鯱たち。いつかこのお店にお邪魔して、鎮座する金鯱たちと面会したいと熱望していました。そしてこのたび、その想いが叶いました。 金鯱サボテンとは 金鯱(学名はエキノカクタス属グルソニー)は、メキシコ原産の球状サボテンで、現地の野生の金鯱は、国際自然保護連合の絶滅危惧種を記載するレッドリストに、最高位の「絶滅寸前種」として記載されています。このため現地では厳しい管理下に置かれており、分布図なども公開されていません。 現在日本国内で流通しているものは日本で生まれ育ったものですが、タフでスタミナ旺盛なDNAは現地株譲りで、長く育てていると直径が最大で1mを超えることも。そんな大株の中には、スペインに渡って100歳を超えたものも現存しています。 黄金のトゲをまとうその巨体から「サボテンの王様」とも呼ばれ、世界中の栽培家から羨望の眼差しを向けられているサボテンです。直径20cmを超える株になると、美しい黄色の花を咲かせます。 今回金鯱を見にお邪魔したのは「リノベ不動産」 今回のサボテンのオーナーは、リノベ物件を中心に全国各地で質の高い物件を幾つも手がける大手不動産会社、リノベ不動産を運営する「株式会社WAKUWAKU」。その恵比寿南ショールームにお邪魔してきました。 金鯱にまつわるお話を伺いました では早速、この見事な金鯱にまつわるお話を伺ってみましょう! 【伺った人】 施主:リノベ不動産 設計・施工マネージメント担当 金子美里さん 空間デザインした人:ubocoデザイナー 弓場久美さん 植えた人:OCEANSIDE GARDEN INC.代表 井坂迪詠さん 以下敬称略 素晴らしいサボテンの勇姿ですね! こちらの金鯱サボテンを植えた経緯をお聞かせください 弓場:私はリノベ不動産が2018年12月に恵比寿南にショールームを作った当初から空間デザインを手掛けているのですが、ファサード(建物の正面デザイン)の植栽は、ロンハーマンなどスタイリッシュな会社を数多く手がけている井坂社長にぜひお願いしたいと思い、幾つかアイデアを出していただきました。でも、最初は井坂社長の推すカリフォルニアドライガーデンの綺麗めなイメージが私の中でリンクしなかったんです。 そこで、井坂社長の手がけられた他の物件を拝見させていただいたんです。そしたら、同じように金鯱がファサードに使われている飲食店の写真を見て、入り口から湧き出るエネルギーの「動」と、ズッシリと構える金鯱の「静」のバランスがすごくいい雰囲気を出していて、あ、これだ! と思ったんです。 ショールームはその性質上、一般ウケするものが求められます。ですから、あまり奇をてらったものは受け入れてもらえないんですが、ファサードに関しては、ちょっと遊び心を入れてもいいかなって。そこにあの金鯱がすごくマッチしていたんです。 井坂:日本ではサボテンを使うガーデニングの認知度がとても低くてね、近年確立してきたスタイルなんですよ。破竹の勢いで成長を遂げているリノベ不動産には、最先端のスタイルであるカクタスガーデンこそ相応しいと考え、そこには王者の風格を持つサボテン金鯱がいいと思ったんです。何しろ100年生きる金鯱ですからね、この先の未来も楽しみなリノベ不動産には相応しいサボテンだと思いました。 弓場:最初は予算との兼ね合いもあって、施主としてはこのファサード案は要検討だったんですが、「ここでやらないとダメです! この機会を逃す手はないですよ!」って、私がけしかけたんです(笑)。 K:なかなか情熱的な素地があったんですね(笑)。 金子:弊社もその熱意にかなり突き動かされました。 弓場:絶対目を引くファサードになるって確信していたので、このプロジェクトにはかなりの信念を持って臨みました。 K:その目論見は当たりましたね! おしゃれなヘアサロンとかにありがちな鬼面角(トゲなし柱サボテン)と違い、黄金のトゲを全身にビッシリとまとった大きな金鯱が与えるインパクトは、「あの大きなサボテンのあるお店」と、目にした人の脳裏に焼きつくと思います。 弓場:私自身、学生時代の9年ほどを米西海岸で過ごしましたが、その時に見たホテルのファサードなどがやはり脳裏に焼きついていて、あのパッションみたいなものを今回は再現したいと思いました。 井坂:弓場さんがそんなに熱く進めてくださっていたとは(笑)。 弓場:もう4年も経つんですねぇ。最初はこんな感じで、何もない状態だったんですよ。 K:うわ、ホントだ! えらい変わりようですね。 やはりアメリカやメキシコのドライガーデンを意識されたのですか? 井坂:そうですね。石組みの感じは、僕の中ではアメリカのジョシュアツリー国立公園をモチーフにしています。組むというよりは、石を上から自然な形で落とすような感覚っていうのかな、経年で石が沈み込んでいったりするようなナチュラル感を出したかったんです。うちの施工する石組みって、大体がそんな感じですね。 弓場:この石を組んでる時は面白かったですね。食い入るように眺めていました。結構こだわっていましたよね? ああ、こうだ! いや違う、こうじゃない! って。でも、どこが違うんだろうって思って見ていました(笑)。 井坂:(爆)いや、あの時はね、自然に形成された石はそんな風にならん! こうなんだ! っていうこだわりがね、出ましたね。 K:そのこだわりの結果、あの素晴らしいファサードが生まれたのですね! 確かに石とサボテンの佇まいが、ジョシュアツリー国立公園の一部を切り取ってきた感じに見えます。 【ジョシュアツリー国立公園とは】 ロサンゼルスから車で東へ2時間ほどの場所にある、ジョシュアツリー(日本では「青年の木」として知られている)の自生する砂漠地帯のことで、キャンプ場としても有名。編集部員Kも、車でアリゾナ州フェニックスに向かう途中に訪れたことがある。 カリフォルニア観光局サイトによる紹介 ショールームを訪れるお客様の、金鯱ファサードへの反応ってどんな感じですか? 金子:休日は人通りも多くなるので、気になって覗きに来られる方も結構いらっしゃいますね。お子さんが興味を示されることもあり、やはり何かと目には留まりやすいのかと思います。 K:留まりますとも(笑)。ちなみに今までに、あのサボテン売ってくれ! とか、私のように植物屋さんと間違えた人が訪ねてくる、なんてことはなかったんですか? 金子:売ってくれというお話はないのですが、あのファサードの様子が気に入ったので、うちもこんな風につくりたい、と商談に発展したことはありますね。 弓場:あ、それ覚えています。その方、幾つものCMを手掛けている広告関係の著名な方で、自分のマンションのエントランスもあんな感じにストーリー性のあるものにしたいというお話だったんですが、地主さんとの兼ね合いもあって実現には至らなかったんですよ。せっかくあのファサードから派生したお話だったので残念でした。 K:確かに残念ですね。でも、あのファサードが似合う家って、結構限られてきますよね。 井坂:確かにそうですが、私は都内でも結構手掛けていますよ。ドライガーデンはコンクリート系の家にはとてもマッチするんです。パームスプリングス(カリフォルニア州にある保養地)あたりの邸宅は、非常にそういうのが多いです。すごくおしゃれですよね。 弓場:サボテンって、強い素材とよく合いそうですよね。 井坂:某大手串カツ屋さんの社長の家はすごいですよ! もう、パームスプリングスです(笑)。 K:うわ、気になる〜、ぜひ見てみたいですね! ファサードのサボテンの日頃のメンテナンスってどうされているのですか? 金子:逆に私がメンテの仕方を伺いたいくらいです(笑)。すごく丈夫だとは思うので基本的に放置していますが、それで大丈夫なんでしょうか? 井坂:大丈夫です! 要は、日本の降水量がソノラ砂漠(数多くのサボテンが自生する米西部からメキシコ北部に広がる砂漠)よりも5倍くらいあるので、それを考慮して土も1/5の水はけ率で作っていますから。つまりあのファサードは、都心の降雨量でちょうどソノラ砂漠と同じ感じになるので、基本放置で大丈夫です。逆に、下手に水を与えると根腐れしちゃうので、たまに草むしりをする程度でOKです。 肥料に関しては『マグアンプK』などの遅効性肥料を年1回、春頃かな、明記してある用法用量の1/3くらいを与えると、サボテンの肌艶がよくなりますよ。 ファサードの金鯱が今回思いがけなくクローズアップされましたが、それに関しての感想をお聞かせください。 金子:私は、こんな取材依頼がいただけるんだと、ただただ驚きでした! 今日どんなお話をされるのかも全然想像できなかったです。 弓場:私は、ファサードに関してはすごく思い入れが強かったので、驚きもありましたが、やはりすごく嬉しかったですね。 井坂:僕がドライガーデンにインスピレーションを受けて12年くらいになります。きっかけは12年前、アリゾナでハーレーダビッドソン屋を開業している友人を訪ねて旅行した際のことです。金鯱が惜しげもなくあちらこちらに植えてあるデッカい庭が幾つもあるのを目の当たりにして、なんだこれは!? とびっくりしたんです。それまであった、芝生に椰子の木といったステレオタイプのカリフォルニアガーデンのイメージが覆され、めちゃくちゃ格好よくって、これは絶対流行るな! いや流行らせなきゃ! っていう想いで仕事をしてきたんです。 そんな中で、弓場さんからこのお話をもらって、こうやってクローズアップされたんですから、それはもう感激ですよ! 一目見てくれれば魅力は伝わるとは思いつつも、それを広めるのって一人の力ではどうにもならない部分もあるので、この機会をいただいたことにはとても感謝しています。 植物とお客様にまつわるエピソードがあればお聞かせください。 金子:賃貸にお住まいのお客様でグリーンが好きな方は一定数いらっしゃいまして、中には自分の居場所がなくなってしまうくらい、グリーンを軸にしたリノベーションをされた方もいらっしゃるんです。住空間の6割くらいをグリーンのための場所にと希望された方なので、床材にビニール系や石系の素材をセレクトして、植物をどこに無造作に置いても気にならないような、メンテナンス性を重視したインナーバルコニーを作ったということがありました。そんな中にご自分のベッドスペースがあるという、グリーン沼落ちぶりがなかなかのお客様でしたね。 K:もう森の中に住んじゃえ! って感じですね(笑)。 金子:まぁ、レアケースですが(笑)、そこまでいかなくても、最近は新型コロナの影響もあってか、観葉植物を取り入れたいというお客様もたくさんいらっしゃるので、小さいスペースであってもインナーバルコニーを作って、その窓際に植物を置く想定で設計を行ったこともありました。このように、グリーンに関するニーズにもお応えできるように、私たちも提案させていただいています。 また、そういった施工事例から、自分たちもこういうふうにグリーンを楽しみたいな、とインスパイアされる弊社スタッフも結構いますね。 ちなみに、皆さんは何か植物を育てているんですか? 金子:私の家には180cmほどの大きめのゴムの木がありまして、昨年私も中古マンションを購入して自分で設計してリノベしたのですが、賃貸の時よりも天井が高くなったせいか、グングン伸びて天井ギリの240cmまで届いちゃったんです。 弓場:う〜ん、私は毎年何かしらやってみて、今は合計10鉢くらいはあるんですけど、そのうち4鉢は年末に枯らしちゃって・・・。また今年も枯らしちゃったな、何がいけないんだろう、なんか私の手って植物栽培に向かない性質なのかな、根本的にガーデニングが向かないのかな、って、結構ナーバス入ってます。私や主人の実家が農業や林業に関係しているので、10年後はそちらに関係した仕事を、とも思っているのですが、なんか心配です。 K:その辺のお悩みは、ガーデンストーリーの記事で解決できるものも結構あるので、ぜひ見てみてください。と宣伝です(笑)。 弓場:多肉って実際育ててみると、意外と一番難しいじゃないですか。でもお店で「これ一番手がかからないよ」って紹介されるのが多肉なんですよね。毎年多肉に綺麗に花を咲かせる知人とかに聞いてみると、やっぱりちゃんとマメにお世話をしているんですよね〜。 井坂:ただね、多肉系は、サボテンもそうですけど、家の中で栽培してほしくないですね。外で育ててこその多肉なんですから。 K:正論ですね。結局、家で栽培するにしても、元は自然のものなので、風のない室内の空気をサーキュレーターで循環させるなど、より自然の状態に近づけることは大事だと思います。室内栽培の場合、植物の発する声に耳を傾けることは大事ですよね。 井坂:そう、耳を傾ければ絶対に「喉乾いたから水ちょうだい!」って言ってきますから(笑)。特にサボテンは、意志が強いように思います。 弓場:私もそのレベルに行きたい〜(笑)。あと、エアプランツなんかも結構難しいですよね。仕事では本物とフェイクの両方とも扱う機会が多かったんですが、オフィス系になると、エアプランツを誰が世話をするのか、っていう話にもなってくるので、本物の導入に躊躇することもありましたね。 K:エアプランツって、お世話が必要なんですか? 井坂:実は必要なんですよ! エアプランツもね、10年くらい前に“水が全然いらない植物”って触れ込みで入ってきて、えらく流行りましたが、つい最近になって、じつは水が大好きな植物だった、っていうのが分かりましたからね。なので、昔そういう触れ込みでエアプランツを入れた人に対して訴訟起こしてもいいと思います。 一同:(爆笑) 井坂:でもね、結局サボテンもそうなんですよ。先達から伝承されてきた育て方の中には、正しくないものがとても多いんです。でもインターネットが当たり前の時代になって、ようやくメキシコの論文とかも読めるようになり、それで正しい知識が拡散されていったんです。 やはり大事なのは、正しい知識で植物に寄り添うことじゃないかと思います。なので、僕みたいな植物屋が言うのもなんですが、正しく育てる環境が整えられないのであれば、フェイクも全然アリだと思うんですよ。 K:弓場さんさすがですね! 植栽を頼んだ人選としては井坂さんは最高だと思います。 井坂:ありがとうございます(笑)。観葉植物だとね、亜熱帯の森林特有の、無風で日陰といった条件下でも育つものが多いから室内は向いてると思うけど、多肉はね、基本は太陽が大好きですからね。外で育てられる環境を作ってあげるのが一番かなと。そういった意味では、ここのエントランスは最高の立地だよね。 とにかく、多肉は今またブームなんで、正しい情報を模索しながら育てるという、植物目線で考えられるブームであってくれればいいと思いますよ。 私は植物を趣味にしてから30年近くになりますが、植物が何か言いたいことがある時、なんか分かるんですよね。長年やっている農家さんも同じことを言ってるんです。なので、お客様が購入されて、配達の車に乗っける時の植物たちのあの不安な感じも分かるんですよ(笑)。植物も犬や猫と同じなんです。 K:もうね、私が家を建てる時は、井坂さん以外考えられない! 一同:(爆笑) サボテンたち、ファサード、会社。3つの将来はどうなっていると思いますか? 金子:サボテンにお友達が増えたらいいですね。かたわらにアガべを植えたりするのも面白いかも。会社の成長とともに、ファサードもアップデートできたらなと思います。 K:シンボルツリーならぬシンボルカクタスの金鯱は100年生きるわけですから、会社もぜひ100歳を目指してください。 金子:ありがとうございます。今回こうしてグリーンがテーマになりましたが、弊社で中古の戸建てをお求めのお客様の中には、お庭も含めてリノベーションしたいという方もいらっしゃいます。しかし今は、まだマンパワー不足でお庭の提案までは手掛けられないので、いつかその方面のプロとの提携なども含めて、将来的にはグリーンの提案も手掛けていければな、と思います。インテリアの提案とグリーンの提案がうまい具合に噛み合って、それを住宅ローンにまとめてお客様が購入できれば一番安心だと思うので、会社としても、将来を見越して今のトレンドを積極的に取り入れていきたいと思います。 K:そのあたりワンストップでできたら夢が広がりますよね。夢を実現させるための会社、素敵だと思います。金鯱たちもきっと応援してますよ。 最後に、ガーデンストーリーの読者にメッセージをお願いします 金子:弊社は“自分らしい暮らし”を一人ひとりのお客様に提案しているところが強みなので、ちょっと今のお住まいに不便を感じてるとか、住む人はもちろん、グリーンにとってもっといい環境にしたいな、というところでリノベーションに興味がある読者様は、ぜひお声がけいただければ嬉しいです。 弓場:私は、結構幅広いジャンルの空間デザインを手掛けているんですが、どのデザインでも必ずグリーンは必須で、人に癒しを与えるグリーンって、人間社会において不可欠な要素だと思っています。仕事を通してグリーンについて学ぶこともたくさんあって、そのたびに人は自然と共にあるというメッセージも受け取ります。読者の皆さんには、グリーンを使ったいろんな空間づくりを楽しんでいただけたらなと思います。 井坂:今の日本は文化の多種多様化が定着してきて、今までの、ハワイアン風とか“○○風”といったものが廃れて、よりリアリティが重視されていると思います。ここ十数年で私たちを取り巻く多くのものが変わって、今や、かつては育たないといわれていた地中海地方やカリフォルニア地方の植物も、皮肉にも地球温暖化の影響で太平洋側沿岸地域であればガンガン育ってくれるので、昔憧れたリアリティのある庭づくりに、ぜひ皆さん挑戦してみてください。 K:今日は貴重なお時間をありがとうございました。 リノベ不動産のご紹介 不動産と建築とITテクノロジーを融合させて、お客様一人一人の自分らしい暮らしを実現するプラットフォームになっているリノベ不動産。 物件の仲介から、リノベーションの設計と施工・工事までを一気通貫のワンストップで提供する新しいタイプの不動産会社です。専任の不動産営業マンがお客様の家探しから一緒に行い、自分らしい暮らしとは何か、どんな暮らしを実現したいかにとことん寄り添いながら、リノベーションデザインと施工を行い、そのクオリティの高さは、お客様はもちろん、業界内でも高い評価を受けています。 また、ITを駆使し全国のフランチャイズ加盟店に本部の培ったノウハウを共有しているので、最寄りの店舗で高品質なサービスを受けられるのも同社の魅力です。 【リノベ不動産】 URL https://renovefudosan.com 目黒区三田2-4-4 YAMAZAKI BLDG PHONES 03-6303-3025 おわりに サボテンと不動産会社、一見して繋がりのない両者が交わり合った時、いったいどんな話題が生まれるのかと興味津々でしたが、期待を上回り、植物の話やデザインの話に花が咲いたとても楽しい取材となりました。 リノベーションか・・・お話を伺っていると、私もそろそろ賃貸を卒業してこちらでいい感じの物件を、と考えてしまいました。もちろん庭はジョシュアツリー国立公園風で(笑)。と、私は妄想するだけですが、なんとなんと、偶然にも編集部にこちらで実際にリノベ物件を購入したスタッフがいたのです! しかもそれが事例として紹介されていて、その時の担当が今回お世話になった金子さんだという・・・この偶然にはご本人たちもびっくりでした。いやはや、世の中狭いですね〜。 [編集部スタッフ邸の事例] というわけで、賑やかな第1回目となったこの企画ですが、次回はあなたの多肉植物を拝見しに伺っちゃいますよ〜! Credit Text / 編集部員K フリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年、この仕事との出会いを神に感謝し、精力的に取材、執筆を行う。 飼い猫「ここちゃん(黒猫♂3歳)」に日々翻弄されている。 Photos / 1,2,5〜7,13〜16,18:ガーデンストーリー編集部 4,8~10:uboco弓場久美 17,20:株式会社WAKUWAKU 11(Joshua Tree National Park):Dennis Silvas/shutterstock.com 12(Palm Springs):Krista Hillary/shutterstock.com 19(Tillandsia):Montree studio/shutterstock.com Special Thanx to 株式会社WAKUWAKU 金子美里 URL https://wakuwaku0909.co.jp/ 目黒区三田2-4-4 YAMAZAKI BLDG Phones:03-6303-3025 uboco 空間デザイナー弓馬久美 御殿山土地建物株式会社 uboco事業部 東京studio 東京都文京区白山2-13-4 ubocodesign@gmail.com OCEANSIDE GARDEN INC. 代表取締役 井坂迪詠 URL https://www.oceanside-garden.net Facebook https://www.facebook.com/oceansidegarden/ 千葉県木更津市港南台4-16-1 Phones:0438-53-7251
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多肉・サボテン
【亀甲竜】は冬型塊根植物の人気No.1! その魅力と育て方を徹底解説|多肉植物狂い vol.04
冬型塊根植物と夏型塊根植物 コロナ禍という環境の中で、珍奇なフォルムと気軽に栽培できることから大人気の塊根植物(コーデックス)。大手園芸店などでは特設コーナーを拡張するなど、ブームは過熱する一方です。さてその塊根植物、成長期によって、夏型と冬型の2つのタイプに分かれることをご存じですか? 冬型塊根植物とは 冬型の塊根植物が自生する場所は、5〜8月が乾季、11〜2月が雨季となっています。日本の冬にあたる時期も、日本のように寒くはならずに気温も比較的高く、また雨もよく降るため、冬型塊根植物はこの時期に成長します。対して、日本の夏にあたる時期が比較的高温のまま乾季となるため、休眠期に入ります。今回ご紹介する亀甲竜を擁するディオスコレア属や、チレコドン属などがこれに分類されています。 夏型塊根植物とは 夏型の塊根植物が自生する場所は、5〜8月が雨季、11〜2月が乾季です。日本の冬にあたる時期も、日本のように寒くはならずに比較的気温が高いまま乾季となります。夏型塊根植物は、雨季に雨をたっぷりと浴びて成長し、高温の割に水が少ない乾季は休眠期に入ります。塊根植物ブームを牽引するパキポディウムやユーフォルビア、アデニウムがこれに分類されています。ちなみに、亀甲竜にはメキシコを原産とするメキシコ亀甲竜という種類もあり、こちらは夏型に分類されます。 今注目を浴びる冬型塊根植物 このように、冬型塊根植物は寒いのが好きだから冬に成長するのではなく、また夏型塊根植物は暑いのが好きだから夏に成長するというものでもなく、塊根植物自身が自生地の気候に合った成長サイクルをDNAに刻んでいるがゆえに、夏型と冬型に分かれる、というわけです。なので、冬型塊根植物を“寒いのは平気なんだろう”と気温零下の環境に長時間置いておくと、成長どころか枯れてしまいます。でも日本で育てていると、寒くなるにつれ株の動きが活発になっていくわけですから、なんだか不思議ですよね。 そんな冬型塊根植物ですが、多肉植物好きのなかでもニッチな層に人気なのかと思いきや、そんなことはないんです。大手園芸店に聞くところによると、公式インスタグラムなどで入荷をアナウンスすると、老若男女問わず多くの問い合わせがきて、あっという間に売れてしまうそう。このように、冬型塊根植物が今、世のプランツラバーたちから注目を浴びています。 というわけで、今回と次回の「多肉植物狂い」は、冬型塊根植物にスポットを当て、前編は亀甲竜ことディオスコレア・エレファンティペス、後編では万物想ことチレコドン・レティキュラーツスをご紹介します。 では早速、前編の亀甲竜を見てみましょう! 冬型塊根植物人気No.1亀甲竜とは 冬型塊根植物の人気No.1を誇る「亀甲竜」。アフリカ大陸南端、西はクランウィリアムから東はウィローモアまでの広大なエリアに自生しています。 西部の街クランウィリアムは、アフリカ大陸最大規模のオレンジ生産地として有名で、現地に仕事で訪れたことのある知人曰く、街からちょっと出ると4WDの車なしには移動できないくらい自然が手付かずの状態の大地が続いているそうです。そんな過酷な環境の中で、亀甲竜は石や岩の間から顔を覗かせて自生しています。 写真を見てみると分かりますが、遠目だと、おそらく岩か亀甲竜かの判別は難しいでしょう。そこから察するに、亀甲竜のこの亀の甲羅のようなフォルムは、外敵から身を守るための一種の擬態なのかもしれませんね。 そんな亀甲竜ですが、他の塊根植物が隆盛を誇る夏場は休眠し、秋になり気温が下がるにつれ活発に動き始めます。そして他の塊根植物が休眠する晩秋から冬場に最盛期を迎えて成長し、初春から再び休眠へ向かうという、まさに冬型の代表的な塊根植物なのです。日本国内で発芽栽培している実生株も同様に、このサイクルで生きていますが、日本の冬は寒くて現地のように気温も穏やかというわけにはいかないので、冬場の管理には注意が必要です。 亀甲竜という、いかにもおめでたいその名は、土の上に露出している塊茎(かいけい)がひび割れて隆起し、亀の甲羅のように見えることに由来します。その塊茎にはでんぷんが多く含まれているため、「芋」とも呼ばれます。そう、お芋なんです。亀甲竜が属するディオスコレア属は、日本ではヤマノイモ属と呼ばれていることからも、芋の仲間であることが分かります。 自生地付近に住むアフリカ最古の先住民であるコイコイ人は、実際にこれを食べるのだとか。しかし、芋として食べるのではなく、焼いてパンのようにして食べるのだそうです。ゆえに、コイコイ人の昔の俗称(現在は差別用語となっている)を取って「ホッテントットズブレッド(ホッテントット族のパン)」とも呼ばれています。美味いんでしょうかね? 私は自分の亀甲竜を眺めていても、食べようという気にはなりませんが(笑)。 また、サポニンという界面活性成分も含まれるため、コイコイ人たちは亀甲竜を石鹸としても使っていたそうです。そのまま体を洗うと身体中血だらけになりそうなので、おそらく亀甲の部分を剥いで、中身を石鹸代わりに使うのでしょうね。 ちなみに、自生地の南アフリカでは切手にもなっています。切手にまでなるということは、国民にとってもメジャーな植物なのでしょう。 亀甲竜はハート形の葉が超かわいい! 過酷な環境でたくましく生き抜く亀甲竜も、私たちにとっては、雄々しい塊茎とハート形の可愛らしい葉が魅力的な観賞用植物。伸びたツルからたくさん生まれるハート形の葉は女性をキュンキュンさせます。男性もその葉の可愛らしさには、キュンキュン…ではありませんが、なかなか気分が盛り上がります。その証拠に、Instagramで「亀甲竜」を検索すると、4.7万人ものファンが、思い思いの亀甲竜を投稿しています。 冬にさしかかる成長期にハート形の葉を出しながらグングン伸びるツルを、どうおしゃれに仕立てるのかも、亀甲竜の醍醐味の一つ。ゴツゴツした塊茎と、可愛らしいハート形の葉が織りなす不思議なルックスは、一般的な植物の活動が停滞する冬になってからがより動きが活発になるため、まさにこれからの季節、亀甲竜はさまざまな表情で楽しませてくれるでしょう。 亀甲竜の価格 気になるお値段ですが、都内にある大手園芸店「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」では、小さいもの(実生2年程度、塊茎の直径3cm)では2,200円、中程度(塊茎の直径8〜9cm)で9,900円、大きいもの(実生5年以上、塊茎の直径約13〜14cm)になると、なんと66,000円で販売しています。 ただし、塊茎に現れるコブの隆起具合が整っているか否かでも値段が変わるため、大きくてコブが綺麗に整ったものだと、さらに高額になります。いかにコブを美しく仕立てられるかも、栽培手腕が問われます。とはいっても、伸びたツルをどうするのか以外は、込み入ったテクニックを必要とせずに、気軽に育てることができるのも亀甲竜の魅力。ですから形に関しては自然に任せ、出来上がった姿を個性と捉えて育てたほうが親しみも湧く気がします。 亀甲竜の育て方 気軽に育てられる亀甲竜ですが、多肉植物である以上、基本的な育て方はマスターしておく必要があります。 用土 市販の「多肉用培養土」や「サボテン用土」などでOK。これらの用土は、一般に水はけのよさをメインに、保水力と保肥力がバランスよくなるようブレンドされています。そのためオールマイティーにどんな多肉植物にも便利に使えます。 私の一番のおすすめは、大手園芸店オリジナルブレンドの多肉用土。都内の人に身近なところでは、前出の「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」や、上石神井の「オザキフラワーパーク」などで、オリジナルの多肉用土を販売していますが、これらの用土は専門家の経験値がそこに反映されているため、何よりも信頼がおけます。 市販のものを使わず、自分で土づくりをする場合も、この点を重視してブレンドするとよいでしょう。ただし、亀甲竜は、水はけがよすぎて極端に保水力のない土を使うと、塊茎の成長が遅くなる傾向があります。塊茎を亀の甲羅のようにグングン成長させるためには、保水力と保肥力を適度に保たせるように心がけてください。 亀甲竜におすすめの配合は、全体を10として、ベースになる赤玉土(小粒)4と鹿沼土(小粒)2.5、水はけをよくするための日向土(小粒)1、土の質を上げるくん炭1、保水・保肥力を上げ雑菌の繁殖を抑えるバーミキュライト1、栄養分として堆肥0.5、という感じです。 【多肉系の土でさえあれば好みでよい】 よほどミスマッチな土を使わない限り、土の違いで亀甲竜が枯れることはありません。しかし、土の違いにより成長スピードに若干の差は生じるかもしれません。私はというと、懇意にしている園芸店のオリジナル用土をここ何年も全ての多肉植物に使っています。 もちろん、大手メーカーが大量生産している土も高品質であるとは思いますが、食べ物でいうところの、出来合いのものを買うか手作りのものを買うかと似ていて、要は好みだと思います。 置き場所 亀甲竜は冬成長型のため、以下のように管理すればよいでしょう。 10〜11月:最低気温が10℃以下になるまでは表で陽射しによく当てる。 12〜2月:最低気温が10℃を切ったら室内に取り込み、日当たりのよい場所に置く。 3〜4月:最低気温が10℃を上回るようになったら日中は表に出し、夜間は室内に取り込む。 5〜6月:落葉し始めたら昼夜問わず表に出し、日中は半日陰で管理。 7〜9月:基本は表で半日陰、塊茎部へのダメージを避けるために、直射日光は厳禁。真夏の直射日光を長時間浴びた株は、塊茎表面が風化して、成長が止まってしまう場合があります。 【ポイント】 風が通らない室内では健康に育たないため、サーキュレーターなどで室内の空気を循環させましょう。エアコンの風の直当ては株にダメージを与えるため厳禁。また曇天の場合は、植物育成ライトの併用も効果的です。 水やり 多くの冬型塊根植物は、9月下旬から10月初旬頃に、目に見えて活動が始まります。しかし亀甲竜は、まだ気温も高い8月の半ばあたりから塊茎部頂上に尖りを出し、8月後半くらいには、そこからツルを伸ばし始め、徐々に成長期へと向かっていきます。ツルを伸ばし始めた頃から、以下のように水やりを行うとよいでしょう。 8月後半:ツルが伸び始めたら、まずは土の表面が湿るくらいの少量の水を与えて、それから1週間ほど様子を見ます。その後は、ツルと、そこから出始めた芽の状況を見ながら徐々に量を増やしていくのですが、あげ時を見極める目安としては、土表面を指で触って乾いているようだったらあげる、という感じでOK。 9〜10月:料理用の竹串(新品)を用意してください。鉢に竹串を刺して土の中が完全に乾いている状態(抜いた竹串に湿った土が付かない状態)を確認したら、鉢底から水が流れ出るまで。※土中に溜まった老廃物を、水で鉢底から押し流して、土の中をリフレッシュさせる効果があります。 11〜4月:土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまで。※株の大きさと鉢の大きさにもよりますが、目安としては1週間〜10日に1回です。 5月:葉が落ち始める5月から水やりを控えていきます。2週間に1回、あるいは最初、鉢に竹串を刺して土の中が完全に乾いている状態を確認してから3〜4日後にあげる、などが目安です。 6〜8月上旬:亀甲竜は休眠期に入り、根が水を吸わないため、水やりを止めます。ただし、まったく水を与えないわけではなく、2週間に1回ほど、活力剤の『メネデール』をかなり薄く希釈した水を塊茎にスプレーして、葉水ならぬ塊茎水をしてあげると、初秋の立ち上がり時に勢いがつきます。 【ポイント】 夏場は気温が高い日中に水やりをすると土の中が蒸れて根腐れの原因となるため、必ず夕刻以降に行いましょう。逆に、冬場は夕刻以降に水やりをすると冷水が根にダメージを与えてしまうため、朝以降、気温が徐々に高くなるお昼までの間に水やりを行いましょう。 肥料 緩効性肥料と即効性のある液肥を使い分けます。 緩効性肥料:植え替えの際に『マグアンプK』中粒タイプを鉢の大きさに合わせて混ぜ込むか、鉢の縁あたりに均等に3箇所、指で穴をあけ、そこにそれぞれ2粒程度入れるのでも大丈夫です。 液肥:10月下旬〜3月下旬まで、『ハイポネックス』を規定に沿って水で希釈したものを、2週間に1回与えると、塊茎部の肥大化を促進します。 目安としては、2Lのペットボトル満タンの水に対し、0.5ccくらい。写真にあるような、プラスチックシリンジ(注射器の胴体部分)を使うと、目盛りが付いているため計量に便利です。大きい園芸店に行くと園芸用のものが300円ほどで入手可能です。 活力剤:『メネデール』がおすすめ。成長期に月に1回、規定通りに希釈して、水やりの際に混ぜてあげるとよいでしょう。 ツルを整える 8月に入ると、塊茎頂上部に尖った突起物が現れ始めます。下旬くらいになると、突起部からツルを出し始めます。ツルにはところどころに節のような突起した部分があり、それが9月に入ると葉になります。生まれたばかりのハート形の葉はとても可愛らしいですよ! ツルは、葉が開く前の、まだ繊細で柔らかいうちに、支柱を立てるなどして巻き付けるようにしましょう。注意してほしいのは、ツルは9〜10月の2カ月でグングン伸びていくため、放置していると周囲のものに巻きついてしまい、それを解くのにひと苦労することになります。綺麗に形を作っていくためには、最終的にどのような形に仕上げたいのかを考えながら、ツルを誘引する支柱を立てておき、伸びるたびにそれを巻きつけていくという、意外と地味な作業を行わなければなりません。でも、これがまた楽しいのです。 また、葉を剪定することによりツルが分枝していくので、その性質を使って全体的に葉が生い茂った、盛りが強めのフォルムに仕立てることもできます。 植え替え 鉢をサイズアップするための植え替え 亀甲竜が成長し、鉢が小さくなってしまった場合の植え替えは、休眠から動き始める寸前くらいの7月から8月半ばあたりにするとよいでしょう。どの塊根植物もそうですが、これから休眠期を迎えようという時期に植え替えをしてしまうと、植え替え時に傷ついた根が修復できないまま休眠してしまい、株にダメージを与えます。しかし、これから成長期を迎えるという時であれば、根についた傷も成長過程で自己修復できます。ゆえに、休眠明けくらいの時期が推奨されるのです。 植え替えの前は水やりを止め、根が傷つかないように完全に土が乾いた状態で行います。あらかじめ用意してある鉢の鉢底に、ある程度目測で土を入れておき、そこに根を崩さないように慎重に株を配置します。株が鉢の中心になるように配置したら、周囲に均等に土を入れていきます。土を入れる際、市販の「土入れ」を使うと便利ですよ。 【ポイント】 使用する土は、すでに根が抱え込んでいる元の土と同じものがおすすめです。植物は環境の変化には敏感なので、「新しい家も住み慣れた家と同じなんだよ」と、いたわってあげれば、今まで同様に健やかに成長してくれるでしょう。今までと違う種類の土を入れたことにより枯れることはありませんが、成長スピードに大なり小なり影響を及ぼす可能性はあります。 根のダメージから塊茎を救うための植え替え 根腐れやネジラミなどにより根がダメージを受けた場合は、塊茎部を救うための“外科手術”も兼ねた植え替えを行いましょう。株を鉢から抜いた後、やさしく根をほぐしながら土を落としていき、ある程度落ちたら、次は弱水流を流しながら、残りの土を落としていきます。根腐れは細菌感染が原因の場合もあるため、残さずに洗い流して、いったん根を丸裸にします。そしてガスコンロやライターの火で刃を熱消毒したハサミで、ダメージのある根(色が黒ずんでいるのですぐに分かります)をカットし、切り口に『STダコニール1000』や『GFベンレート水和剤』などの殺菌剤を希釈して塗布します。しばらく放置し、患部が乾いてから新しい土に植え替えます。植え替えの際、最初にほぐした時の残土は使用せずに、新しい土に総入れ替えを行ってください。 亀甲竜をおしゃれに仕立てる 亀甲竜は伸びたツルをどう仕立てるかというのも大きな楽しみ。「#亀甲竜」でインスタグラムをのぞいてみると、さまざまな亀甲竜に出会うことができます。傾向としてはつるをサークル状にまとめる人が多いようですが、中にはハート形にしたり、作家鉢で個性をアピールしたりと、なかなか面白いですよ! ツルをおしゃれに仕立てる方法は簡単です。根を傷つけないようにワイヤーを土に刺して、形を作り、そこに巻き付けてあげればいいだけです。ただし、巻き付け作業は、ツルが出始めの柔らかいうちに行ってください。ツルは時間の経過と共に硬化していくため、そうなってから無理な力を加えると折れてしまう場合があります。 亀甲竜おしゃれ仕立て図鑑 亀甲竜を実生で育てる 亀甲竜は、タネから育てると、とても興味深い体験ができます。私が今育てている亀甲竜は2017年5月にタネを植え、翌月に発芽。現在5年目になります。植えた当時は、正直あまり興味はなかったんです。もともと、子どもの頃の思い出があるスズカケのタネをヤフオクで買った時に、出品者が発送遅延のお詫びとしてオマケでつけてくれたタネが亀甲竜でした。塊根植物の存在は知っていたものの、当時の私はサボテン栽培がメインだったため、亀甲竜が初塊根にして、初塊根実生という、今考えれば不思議な巡り合わせですね。 タネを植えたのも、ちゃんとしたタネまきキットにではなく、ベランダにハンギングしてあった観葉植物(確かアイビー)の横にやっつけ程度に植えたものなので、要は観葉植物用の培養土にタネを播いたんです(笑)。芽が出りゃ儲けもん、ぐらいにしか考えていませんでしたね。しかし、発芽してハート形の葉が姿を現して初めて、「おまえ、ひょっとしてかわいい子なの?」と、あわてて単独の鉢に移し、以後は腰水管理で過保護に管理しました。 そして、いつのタイミングでその亀の甲羅のような塊茎とやらができるのかなと待つこと1年、2018年5月、ついに茎の根元に茶色いドームのようなものが見え始め、表面の土を指で払ってみたら、なんと土の中に大きめの塊茎が埋まっているではありませんか! 自生地ではこのまま地中に埋まったまま塊茎が大きくなるそうですが、多湿の日本では蒸れて腐っちゃわないのかな? とちょっと心配になり、自己判断でいったん全て掘り出し、塊茎部を地上に出して植え替えてやりました。後日の調べで、その行為は正解だったことが分かり、ひと安心。と、そんな試行錯誤の末に、現在に至る感じです。 私のこの経験談はあまり参考にしないほうがよいと思いますが、一つ確実に言えるのは、発芽から塊茎がしっかりと出来上がるまで、際立った手間をかけることもなく、割と容易に育てることができたということ。にしても知らないとは怖いもので、休眠中の夏場も普通に水あげてましたからね…。それでも元気に直径14cmほどに成長したわけですから。つまり、亀甲竜は環境適応力も強く、生命力も強い! 塊根初心者ウェルカムなタフなヤツ! ということです。だから先住民も食べるのでしょうね。 亀甲竜、ぜひ育ててみてくださいね! 【ペットを飼っている人はご注意】 塊茎のデンプンに含まれている成分サポニンは、犬や猫には有毒なため、室内管理の際はペットが塊茎をかじらないようご注意ください。特に猫は爪とぎと勘違いして塊茎に爪を立てる場合があり、その際に爪に付着したサポニンを舐めてしまうと危険です。もしペットに異変があった場合は、亀甲竜の受傷状態もチェックしてから動物病院を受診してください。 おわりに いかがでしたか? 亀甲竜。ここまで読んでいただければ、なぜ今人気なのか、その理由も分かっていただけたのではないでしょうか。これから冬に向かっていく中で何か楽しいことないかな、と考えている人には亀甲竜栽培、ぜひおすすめです。パキポディウムなどは人気の品種ともなると、高価なものばかりですからね。その点、亀甲竜はお財布事情に見合った株を選べるというのも魅力です。 でも、一番おすすめしたいのは、実生でタネから育てること。お店では最初から塊茎部を露出したものが販売されていますが、タネから育てることにより、塊茎が埋まっているという自生地での姿を体験することができるし、何よりも、まぁこれはどの植物もそうですが、やはりゼロから育てると、愛着がハンパなく湧くものです。タネはネット販売などで1,000円前後で入手可能です。 この冬、亀甲竜を愛でる時間を作ってみませんか? 今回様子を見にお邪魔した「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」には、実生から2年ほどの良株が勢揃いして新しいご主人様を待ち侘びていました。 撮影協力:プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店 URL: https://www.protoleaf.com 多肉植物エリアInstagram:https://www.instagram.com/protoleaf.selections/ 東京都世田谷区瀬田2-32-14 玉川高島屋S・C ガーデンアイランド2F PHONES:03-5716-8787 冬型塊根特集、次回のチレコドン・万物想も楽しみにしていてください。See ya! Credit 文/編集部員K フリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年、この仕事との出会いを神に感謝し、精力的に取材、執筆を行う。今夢中になっているのは海外ドラマ「House of the Dragon」。 写真 / JOHN CHEESEBURGER & 編集部 現地で自生している亀甲竜写真 / Gingertomcat from shutterstock.com RSA発行亀甲竜切手 / Sergey Kohl from shutterstock.com
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【天下一植物界Vol.5】伝統園芸植物「万年青」。万年青を愛し愛された男が今、その想いを激白!
【豊明園】水野さんが語る、万年青の世界 天下一植物界2022特集最終回を飾るVol.5は、日本古来の伝統園芸植物、万年青と万年青のブース「豊明園」をご紹介します。知らなかった私は開口一番、「まんねんあお、ってどんな植物ですか?」と聞く始末。 そのブースで終始笑顔を絶やさずに、お客さん一人一人に丁寧に万年青の魅力を説く法被を着た男性。この方こそ、100年以上続く万年青専門店「豊明園」の4代目、水野豊隆さん。生まれた瞬間から万年青に囲まれて育った水野さんに、万年青の魅力を解説していただきました。 伝統園芸植物、万年青とは? K:さて今日は万年青に関していろいろ伺います。よろしくお願いします。さっそくですが、万年青は日本古来から続く伝統園芸植物なのだそうですね。どんな歴史があるのですか? 水野さん(以下M):万年青の歴史はとても古く、1,000年ぐらい前(およそ平安時代)から親しまれている植物で、徳川家康や天皇陛下が好んだことでも知られます。特に家康が好きだったことから、江戸庶民の間で将軍家御用達の観葉植物としてとても流行りまして、鉢にも凝る人が多くいました。 「万年青」と書くのですが、万年繁栄するようにという意味を込めて名付けられています。また、引っ越しの際に、その関係者が万年繁栄するように、病気もなく繁栄するようにと願いを込めて送る「引っ越し万年青」という文化もあったんですよ。自分の子どもが新しい家を作ったら、「引っ越し万年青」を子どもに送る、そんなことが日常的に行われていたのです。 K:そうなんですか、まったく知りませんでした。おそらく一般的にもあまり知られていないと思いますが、私たちの祖先がそのように植物を愛でていたと知ると、ちょっと嬉しいですね。 M:鹿児島あたりだと、今もまだ武家屋敷が結構残っていて「北東の鬼門のほうに万年青を植えよ」っていう言い伝えもあることから、今でも万年青を置いてある家庭って多いんです。置いてあるっていうか、植わっているんです。今では鉢植えのほうが主流になっちゃったんですけどね。このようにせっかく残っている伝統文化なので、それをちゃんと次の世代にも継承していこうという活動も行われています。 K:なるほど。地植えとおっしゃいましたが、本来は鉢植えより地植えのほうが向いているんですか? M:万年青はもともと国内に自生している植物なので、地植えで楽しむこともできますが、小さめの株だと地植えには向かないですね。葉長が15cm以上の株になると、花も楽しめます。この株ではまだつぼみですが、もうちょっとすると赤い花が咲きます。お正月になるとさらに赤みが増すことから、お正月の花、お祝いの花、としても珍重されています。 ※確かに、前出の図鑑にも赤い花を付けた万年青が描かれている。 K:それはおめでたい感がすごいですね! もらった方もさぞ嬉しいのではないかと思います。 M:今はマンション住まいなど、住宅事情もあってか、小ぶりな株を白い鉢に合わせるなど、インテリア性を重視したものが結構売れますね。 初心者でも簡単? 万年青の育て方 K:万年青は栽培初心者も受け入れてくれる植物ですか? M:古来より自生しているものなので、日本の気候に基づいた水あげを再現してやれば、よい株に成長していきます。例えば、梅雨の時期は雨も多いので水を多めにあげ、夏は控えめにし、秋に秋雨前線が来る頃は再び多めに水をあげるといったところでしょうか。 K:なるほど。栽培で特に気をつけなければいけない点はありますか? M:最近の日本の夏は40℃近くになり、陽射しもかなりキツいので、そういう環境は避けるようにしたほうがいいですね。万年青は、もともと林の木陰などでひっそりと自生しているものです。夏場は日除けなどの対策を行わなければ、せっかくの味わい深い葉の色や、白から緑へのグラデーションも綺麗に出ないので、そこだけは注意が必要です。 K:確かにこの白と緑のコントラストは美しいので、キープしたいですよね。 M:ただ、僕らなんかは結構、株本来の持つパワーを強くするために、逆に厳しい環境で育てるんです。葉も直射日光であえて焼いて、お客様のもとに行く頃合いを見計らって、直射に耐性のある強い葉を出す強い株になるように調整したりもするのですが、皆さんがご自分で育てられるときは絶対に真似しないでください(笑)。葉を焼かないように育てたほうが、美しいと思いますからね。 K:あえて葉を焼くとは、なかなか思い切ったことをしますね! でも、この白と緑の美しい葉にそんなストーリーがあると知ると、さらに魅力を感じます。 万年青はとても長生き M:万年青は寿命も長いんです。当店の95歳のお客様の話ですが、15歳の時に買った万年青を80年経て、今もなお大事にされているという方もいらっしゃるんです。 K:80年! ヘタしたら人間のほうが先に逝っちゃいそうですね。万年青もさることながら、その方のご長寿を心から讃えたいですね。しかし、まさに名は体を表すで、万年生きる、と例えられる所以ですね。実際に1万年は生きるのですか? M:それはないと思います(笑)。ただ、もしかしたら1万年前の日本には原種となるような植物が生い茂っていたかもしれませんね。ちなみに、万年青は長生きの割には価格も2,000円程度から楽しめる植物なので、コスパはよいと思います。ものすごく希少価値もあり、目の飛び出るような高値がつく、というような観葉植物では決してないのですが、上手に育てることでより魅力が増してきて、そうなるともう自分の子のように愛着が湧いてしまうのも万年青の魅力なんです。 K:そう聞くと、小さい株のときから大事に育てて、家族の成長と共に大きくしたいなと思いますね。 M:ですよね。まぁ、色も緑で、特に奇をてらった模様があるわけでもないので、多肉植物などに比べるとどちらかというと地味な植物ですが、ちょっと目を向けてあげると光るものがたくさんあるので、ぜひこれを機会に万年青を知り、そして育ててみようかなと思ってもらえると嬉しいです。 万年青はなんと、1,000種類もある! K:こうして拝見していると、決してバリエーションが豊富というようには見受けませんが、育ててみて初めて分かる楽しさや、何よりも、我が国の園芸文化の伝統がそこに詰まっていると考えると、レアプランツにはない、どこか気品みたいなものを感じます。 M:ですよね! バリエーションですが、今日はイベント会場という特別な機会なので、本当に丈夫なやつを5種類くらい選んで持ってきているだけで、実際は1,000種類くらいあるんですよ! K:え!? それは失礼いたしました。しかし1,000種類とはまたすごいですね! M:そうなんですよ。ぐねぐねと奇怪に曲がったものや、幅広のだるまみたいなもの、単純にすごい大型の株など、かなりの種類があります。私もYouTubeで紹介しているので、ぜひ見てください。 豊明園水野さんのYouTubeチャンネル K:なるほど、どおりで水野さん説明がお上手なはずです。YouTubeぜひ拝見いたします。大型の株とおっしゃいましたが、やはり大きくなればなるほど、値段も上がっていくっていう感じですか? M:いや、そんなことはないです。小さくても8,500円と高価なものもあるので、そこはやはり種類によりますね。今回持ってきている1,000円、2,000円の手頃なものもあれば、それよりも小さいもので100万や300万ぐらいするものもあるんです。まず最初は、この1,000円の、大きさも手に乗る程度の株からお試しいただいても、十分に魅力は伝わるかなと思います。 万年青は富士砂のマルチングがGood! K:丈夫な株を見分けるコツみたいなものってあるのですか? M:そうですね、パッと見ではあまりよく分からないのですが、よく子株を吹いて増えるもの、そうして株がいくつかあるものだと丈夫な個体といえます。よく増えると、丈夫な割には逆に価格が安くなるので、そういう株は狙い目だと思います。 K:この黒い用土は、石? これ、どういったものなのでしょうか? M:これは富士砂といって、富士山の麓でよく採れる砂でして、いろんな植物の化粧砂としてもお馴染みです。万年青に富士砂を合わせると、黒さが万年青の印象を締まって見せ、また、湿っている時は黒い富士砂が乾くことによって白っぽくなるので、水やりのタイミングも分かって一石二鳥なんです。 K:なるほど、今は湿っているからこうして黒いのですね? M:そうなんです。特に初心者の方には富士砂を乗せて栽培するのはおすすめです。なので、ここにあるものには全て富士砂を乗せてあります。 K:乗せるというと、富士砂で上層を覆っている、という感じですか? M:そうですね、1cmくらい被せている感じで、富士砂の下のほうは、底に大きめと粗めのものが混在した軽石があり、その上に中砂を株の6〜7割ぐらいまで入れ、最後は粒の細かい砂利で首元まで、という感じなので、簡単に植え替えもできます。 K:植え替えのタイミングはどんな感じですか? M:1〜2年に1回は植え替えをしたほうがいいですね。根が成長するタイミングがいいので、春か秋に植え替えしていただくと、すぐに根が活着するので、おすすめですね。 ごく自然な形でこの仕事に就いた感じがしますね K:万年青の世界、めちゃめちゃ深いじゃないですか! なんで今まで知らなかったんだろう…罪ですね。 M:まぁこうして知ったわけですから、今後とも万年青をよろしくお願いします! K:もちろんですよ! ところで水野さんは、4代目ということは、生まれた瞬間から生家の家業が万年青だったわけですが、最初からそれを継ごうと決めておられたのですか? M:物心ついた頃から父の手伝いで万年青の大会に行ったりしていたので、家業自体には興味はあったのですが、大学を卒業する直前までは、実際に自分がこの道に入るかどうかというのは漠然としていました。でも、考えてみれば、ごく自然な形でこの仕事に就いた感じがしますね。というのも、万年青自体が珍しい植物なので、お客様も、ちょっと変わってはいるけど素敵な方ばかりなんです。いい万年青ができても失敗作ができても、お客様がそれを楽しんでいる様子を見ていて、ああなんか素敵な世界だなぁ〜、と思っていたら、自然と自分もこの世界に入りたいと思うようになっていました。 K:万年青プラス、そこに関わる人々が水野さんを惹きつけたというわけですね。 M:そうですね。いざ中に入ってみると、苗から育てる上で習得しなければいけない技術の多さや、1,000種類以上という品種の多様さに戸惑ったこともあります。でも、日本どころかアメリカやヨーロッパ、アジアなど世界中から万年青を買いにきてくださるお客様がいて、とにかく面白くて、知らず知らずのうちに万年青の沼にはまっていきました。今は特に、江戸時代の品種と現代の品種を掛け合わせて、今までにない全く新しい万年青の育種にはまっています。 K:水野さんが作出する新しい万年青、大変興味があります。完成したらぜひご一報を! M:もちろんです! 万年青は人の心を豊かにする K:こうして、万年青の世界の第一人者となった水野さんですが、プロとして万年青と関わってきた中で、特に印象に残っているエピソードなんかがあれば、教えていただけますか? M:仕事で体を壊してしまい、半身麻痺になってしまわれた方が、簡単なら自宅で楽しめるから、と万年青を育て始められました。毎日、ちょっとずつ変化する万年青を見ながら水やりをしたり、砂を足したりと、万年青の世話をするうちに半身麻痺もほとんど治って、1年後に私たちに「万年青のお陰でここまで体調がよくなりました」とのお言葉を頂戴した時にはとても感動しました。もちろん、治療やリハビリなど、ご本人の努力あってこそだと思いますが、万年青にも、どこかそんな人の心と体を癒やすパワーがあるのかな、という気がしています。 K:素敵な話ですね〜。植物って、現代科学をもってしても解明しきれない神秘的な部分があると聞きます。情報ソースが少なかった古の人たちが万年青に魅了された理由の一つに、万年青の持つ、どこか信仰にも似た何かがあるのかもしれませんね。 M:歴史が長い分、独り歩きした迷信とかもあると思いますが、万年青が人の心を豊かにすることは間違いないと確信しています。 K:間違いないですね。さて最後になりますが、ガーデンストーリーの読者の中には、私のように今回万年青を初めて知った方も多いと思います。そんな読者の皆さんに、何かメッセージをいただけますか? M:今は、世界中の植物を家の外でも中でも育てられる、植物好きにとっては最高の環境だと思います。また、昔は本当のマニアのグループに入らないと教えてもらえない、植物を育てるあと一歩のコツを、ガーデンストーリーさんのように教えてくれるサイトもあります。私も植物好き、万年青好きのはしくれとして、日本の伝統園芸の魅力を世界中の人に少しでも知ってもらいたいと頑張っていますので、よろしくお願いいたします! K:今日はお忙しいなか、ありがとうございました! 万年青の魅力、存分に堪能させていただきました! 1,000年前から息づく伝統園芸植物を我が家で愛でる粋 いかがでしたか? 万年青特集。水野さんの説明なしに伝統植物と聞くと、ちょっとハードルの高さを感じてしまいますが、YouTubeでもご活躍の水野さんの巧みな話術に魅了され、私も万年青を買おうかなと真剣に考えております。赤系の花が咲く植物は好きなので、万年青が花を咲かせたところ、ぜひ見てみたいものです。お手頃価格で始められるところも好印象ですね。 何かとビザールプランツ(珍奇植物)や、レアプランツ(希少植物)が話題となっていますが、万年青のよさを、もっと多くの人たちに知ってほしいと思います。だって、1,000年前から息づく日本の伝統園芸植物が我が家にあるなんて、粋とは思いませんか? Credit 文/写真:編集部員K フリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年、この仕事との出会いを神に感謝し、精力的に取材、執筆を行う。今夢中になっているのはキツネダンス。
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【天下一植物界Vol.4】信楽焼の植木鉢と植物をかたどった陶植。植物をアートに昇華させる2人の匠に迫る。
植物だけじゃない、天下一植物界の楽しみ方 賑わいを見せる天下一植物界2022の各ブース。サボテン、コーデックス、ビカクシダと、珍奇系や希少系の植物に人気が集まっていましたが、インテリア雑貨勢も、これに負けず劣らず賑わいを見せていました。中でも、お気に入りの植物に箔がつく芸術的な植木鉢や、植物をモチーフにしたハンドメイドアクセサリー、オブジェなどが人気で、お客様も興味津々で商品を手に取って眺めていました。今回の天下一植物界特集Vol.4では、ハンドメイドで信楽焼の植木鉢を製作しているコム・ワークスタジオと、多肉植物などをモチーフにしたオリジナルデザインの陶製オブジェ「陶植」を製作するSTUDIO.ZOKにスポットを当て、2人の匠にお話を伺ってきました。 【コム・ワークスタジオ】実行委員も惚れる、信楽焼の妙技 外ブースの一角にずらりと並んだ、一見して茶器を彷彿させる独特な味わいの植木鉢たち。近くに寄り、手に取ってみると、それが植物を纏うことによって完成する芸術作品であることが分かります。 これらの鉢を作るのは、コム・ワークスタジオの吉本敏彦さん。植物が大好きで、ご自身もコーデックスなどを育てている吉本さんは、天下一植物界には今回が初の出店となります。ここに至った経緯は、天下一植物界の前身イベント「BORDER BREAK!!」で、自分の鉢に合う珍しい植物を探すのを一入場者として楽しみにしていたところ、時を同じくして吉本さんの鉢に惚れ込んだ実行委員スタッフが信楽の工房まで吉本さんを口説きに来て出店が実現したというのだから、さすがにスタッフの目も肥えていますよね。天下一植物界スタッフをも唸らせた吉本さんの作品、さっそくその魅力に迫ってみましょう。 代表の吉本敏彦さんに聞く、鉢作りの極意 作品のベースにあるのは日本的な侘び寂び K:今回の出展で、来場されたお客様に、吉本さんのブースでここを一番見てほしい! というところがありましたら教えていただけますか? 吉本(以下Y): 僕はその植物が原産地で自生している様子を想像し、その株にマッチした鉢がどんなものか、そして自生している姿に近い姿で株を育てるにはどんなものが相応しいのか、との思いで鉢を作っています。砂漠の中にみずみずしく光る緑、険しい岸壁に咲く可憐な花。植物の生命力、美しさと力強さを表現できる鉢。そんな鉢を作っていますので、ぜひ私のブースにお気に入りの一鉢を探しに来てください。 K:吉本さんの作品からは何かこう、自然の香気みたいなものを感じますね。鉢を作るときに、何かこの鉢にはこの植物が合うだろうなみたいな、具体的なイメージを浮かべながら作ったりされるのですか? Y:というよりも、ベースにあるのは日本的な侘び寂びなんですよ。このヒビとか、ちょっと朽ちた感とか、そんな土の表情を大事にして作っています。信楽の目の荒い土は、通気性と吸水性に優れており、その土の素材の特徴と美しさも大切にしています。全ての制作工程はロクロを使うことなく手でつくりますし、あとは色はもう窯まかせなんで。うちは窯が大きいので、その中の置く場所によってどうしても色が変わるんですよ。あるものは赤っぽくなり、またあるものは白っぽくなる。色がこれだけ違うと、そのばらつきもまた良さの一つなんですよね。同じ種類の鉢であっても、それぞれの表情はすべて微妙に違うので。私の鉢は、そこを楽しんでもらえればと思います。 アメリカからは、植えた人が写真を送ってきてくれるんですよ K:同じ材料、同じ工程で、そのように色が自然の技、というか、火の技で変わるというのも、どこか偶然性があって面白いですね。そうして出来た鉢ですが、拝見したところ、やはりサボテンが合いそうですね。 Y:そうですね、吸水率がいいので、多肉系、特に塊根とかサボテンとかが相性はいいですね。日本的なイメージで作ってるから、多分外国でもウケてるんだと思います。 K:では、海外からの引き合いも? Y:アメリカ、香港、台湾、あとオーストラリアにも出しています。 K:カリフォルニアの邸宅で、吉本さんの鉢を使ってサボテンをあつらえたら、さぞ映えるでしょうね! Y:アメリカからはね、植えた人が写真送ってきてくれるんですよ。 K:素晴らしい話ですね! Y:鉢って、あくまでも植物が主役ではあるんですけど、決して引き立て役というだけではなく、かといって過度には主張せず、まぁ言ってみれば服みたいなもんですからね。お客さんの大切な植物に、よく似合う服であったらいいなと思って作っています。 ないのなら作っちゃおう! で始まった Y:僕はね、植木鉢作り始めてもう15年ぐらいなんですけど、最初は、僕が買った植物に合う鉢がなくって、遊びで作ったのが始まりですから。 K:ないなら作っちゃおう! というのが、趣味人の大人の発想で、なんか素敵ですね! ちなみに、その時は何の植物だったのですか? Y:コーデックスだったんですね。価格も結構高かったので、これを駄鉢に植えるのはちょっと嫌だなと思って、じゃあ作っちゃおう! というのがきっかけで、どんどん作っているうちに、こうなっちゃったんですよ(笑)。 K:なるほど(笑)。ちなみに、吉本さんの鉢はオーダーメイドもOKなんですか? Y:ええ。受けています。ただし、こんな感じのイメージで作ってほしいっていうゼロからの依頼を受けているわけではなく、例えば、すでに僕が作った鉢の中から、直径が50cmのバージョンを作ってくれ、というような依頼を受けていて、それがアメリカからは頻繁に来ます。そんな感じで、現行モデルをベースにした特注品には、できるだけ対応させていただいてます。 K:アメリカから発注がくるのは、すごいですね! Y:えぇ、アメリカのはかなり大きいのを作りましたよ。 K:アメリカは家も植物も、何から何までデカいですからね。さぞかし壮観でしょうね! Y:僕の鉢は、カリフォルニア方面ではサボテンがメインですが、ニューヨークの方面では観葉植物がメインのようですね。 K:やはりあれだけ国土が広いと、国の東西で植える植物にも違いが出るものなのですね。対して、狭い我が日本ですが、もうしばらくしたら、鳴りを潜めていたインバウンドの熱が再来しそうな気がします。そうなれば、吉本さんの鉢の魅力、世界中のさらに多くの人に知ってほしいと思います。これからも創作活動がんばってください! 本日はお忙しいなか、ありがとうございました! Y:こちらこそ、ありがとうございました。 取材に赴く前に、吉本さんの作品群をネットで拝見して、その作品数にも驚きましたが、実物を実際に見て触ってみると、これ相当感動しますよ。私も多肉植物好きの端くれとして、お気に入りの株をいくつも持つ身ですが、帰宅後、居並ぶ子らを見るに、吉本さんの作品で飾りたいと思った株がいくつもあります。なので、吉本さんの鉢、ぜひ購入しようと思います。給料日後に(笑)。 そんな吉本さんの鉢は、こちらから購入できます。大きさの指標にとんがりコーンを使っているところがお茶目。 植木鉢一覧 tps://www.comworkstudio.jp/植木鉢工房/陶/ ※ホームページ内の問い合わせフォームに、上記URLより購入希望の鉢の型番を明記し、折り返し商品代金、送料等の見積もりが来てからの購入。 有限会社コムワークスタジオ ホームページ https://www.comworkstudio.jp 滋賀県甲賀市信楽町江田724 TEL:0748-82-2585 FAX:0748-82-2909 【STUDIO.ZOK】一見して本物、一見して違う物、両方の視線で楽しめる陶製オブジェ「陶植」 サボテンのお店? かと思って近づくと、そこにあったのは、なんとアストロフィツム属サボテンをかたどった陶製のオブジェ! 遠巻きに見ると本物に見えるのですが、近づくにつれ正体が分からなくなり、目の前にくると誰しもが「触っていいですか?」と聞いてしまうのです。何かこう、不思議な引力を持っているオブジェです。 手がけるのは、今回で天下一植物界には2度目の出店となる、愛知県の陶製工房STUDIO.ZOK。「陶植」と呼ばれるこれらの作品のバリエーションはサボテンにとどまらず、グラキリスや亀甲竜などの多肉植物にまで及びます。グラキリスに至っては、葉の部分をマグネットによる着脱式にし、葉を落としたフォルムも楽しめるなど芸が細かい! このギミックは、その植物の魅力を知っているからこその為せる技ですね。その技の主、STUDIO.ZOKのクリエイター滝上玄野さんにお話を伺い、陶植の魅力について語っていただきました。 クリエイター滝上玄野さんに聞く、創作の真髄 育てるのが苦手な方に少しでも植物の世界との繋がりを K:今回の出展で、来場されたお客様に、滝上さんのブースでここを一番見てほしい! というところがありましたら教えていただけますか? 滝上(以下 T):ん〜、どの作品も丹誠込めて制作したものたちなので、全部! と言いたいところですが、練り込み技法を使った新作の斑入り(多肉植物などにおける色素が変異した品種)陶植や、葉ものに挑戦したマクラータ(ベゴニアの種類)なんかが発表したてのホヤホヤなので、見てもらえたら嬉しいです。あとは、このイベントではブースの多くが生産者さんのため、そこに紛れ込んでいるかのように、作品をプラ鉢にセットして、イベント全体に溶け込むようなディスプレイにしてみました。本物? 作り物? と興味を持って、まずは触ってもらい、作品自体を面白いと思ってもらえたら嬉しいですね。 K:作品のリアリティーには、私も興味津々でした。滝上さんがこれらのオブジェを作ろうと思ったきっかけを教えていただけますか? T:そうですね、陶植は7年前から制作しているのですが、もともとは鉢を制作して、盆栽やサボテンなどをコラボという形で仕立ててもらっていたんです。陶植の最初のきっかけですが、イベント出展する先で、植物は好きだけど育てるとなるとちょっと、というお客様が結構いることを知ったんです。「私には育てられないから」と植物の魅力は感じながらも諦めるなんて、なんか、もったいないじゃないですか。僕も植物をいくつも枯らした経験があるので、その気持ちはすごく分かります。でも、そのもどかしさに対して僕自身、何かできることがないかなって考えていたんです。 そんな時、仕事で生産者さんと関わるようになって、サボテンやコーデックスの形の面白さや種類の多さなど、知らないことばかりで驚きの連続でした。まさにこれこそ本物のアートだと思ったんです。その時に、このアート的な面白さの力を借りて、植物をオブジェとして陶器で制作することで、植物好きな方のインテリアアイテムにもなり、育てるのが苦手な方には少しでも植物の世界に繋がりを持てるものができるんじゃないか、と思ったのが始まりです。 植物に取って代わるものを作りたいわけではない K:思いやりが原点とは、また素敵なエピソードですね。そんな優しい思いが込められているのなら、よけいに欲しくなりますね(笑)。 T:ありがとうございます! K:これらの商品、皆さんにも実際に視覚と触覚で堪能してほしいと思ったのですが、作品を作る際に、再現性だったりとか、素材選びだったりとか、特にここは意識や力を注いでいる、というものはありますか? T:作品を作るにあたっては、いろいろと注意している点はありますね。基本的に、今制作しているものは陶製の素材感を出すということは大事にしています。なので、ベースの色味は土自身の色を使って表現しているものが多いです。そして、本物に似せて作ろうとしすぎないことを軸にしています。レプリカではないというか、ここのニュアンスはとっても難しいんですが、あくまで「陶製のインテリアオブジェとして楽しむためのもの」なんです。植物に取って代わるものを作りたいわけではないんです。なので、あえて色味を寄せなかったり、形をデフォルメしたりしています。ちょっと変わった置物のほうが飾り甲斐があると思うんです。ただ、モデルによっては特性上寄せないと全く分からないものもあるので、そこはうまくバランスを取って、要はさじ加減というやつです(笑)。そんな作品を通して、お客様には植物の世界にも繋がりながら陶芸としての世界にも魅力を感じていただけたら嬉しいですね。 僕ならではの方法で植物シーンを広げていけたら K:自分の育てているサボテンやコーデックスなどの愛株をモチーフにしたオブジェやアクセサリーを滝上さんに作ってもらう、というようなオーダーメイドは可能ですか? T:オーダーメイドは受けていないんです。というのも、新しいものを作るのには膨大な時間がかかってしまいます。形によっては成形可能な範囲も限られたり、色味なども窯から出すまで分からないので、成形から焼き上げまで、1つ作るのに何十個も試さなければならないケースもあって、価格的にも難しいため、基本的にはオーダーメイドは受けていないんです。でも、そういった面をご理解いただけるようでしたら、ご相談いただけたらと思います。ただ、こんな面白い種類があるよ! とか、今これが人気だよ! とかの情報は、私自身の勉強にもなるので、ぜひ教えてもらえると嬉しいです。 K:そういう情報って、ありがたいですよね。財布の紐が緩むので困りますが(笑)。 さて最後に、ガーデンストーリーは、グリーンと共に日々の生活を楽しむためのコンテンツをお届けしているWebメディアでして、多くの読者が多様なスタイルで園芸を楽しんでいます。そんな読者のみなさんに、何かメッセージをいただけますか? T:はい、暮らしを楽しむアイテムの1つとして、ボタニカルファッションであったり、ファブリックであったりと、植物の魅力は世界を広げてくれます。僕の作る陶植は、一輪挿しにできるタイプがあったりとインテリアをより楽しむために制作していて、僕ならではの方法で植物シーンを広げていけたらと思っています。みなさんもぜひ、広い意味で「植物のある暮らし」を楽しんでもらえたらと思います。その中に陶植を選んでもらえたら一番うれしいですね! K:今日はお忙しいところ、ありがとうございました。新作情報、楽しみにしています! STUDIO.ZOK滝上さんの作る陶植は、ぜひ実際に目で見て、手で触れてみてください。触れた瞬間、あそこに置いたらこんな感じかな、あそこに置くとどう見えるかな、とか、そのオブジェが自宅の部屋を飾るシーンの数々が脳裏に浮かびます。手にとった人の想像を掻き立てるオブジェ、そこに込められた思いは、滝上さんの、植物と人とを繋ぐ架け橋になりたいという優しさでした。だからでしょうか、会場で作品を手にする人は皆、素敵な笑顔になっていました。手に取る人の心を和ませる滝上さんの作品は、植物を育てるのが得意な人も、苦手な人も、また、植物が好きな方への贈り物としても最適ですよ! 下記よりご購入できます。 STUDIO.ZOK Official Web Shop https://shop.studio-zok.com Instagram https://www.instagram.com/studio_zok/ 職人の技巧も堪能できるイベント、天下一植物界 いかがでしたか? 匠の技特集。2人とも、同じ土でも、種を植えるのではなく、形を作って火に入れるという、ある意味土を操る魔術師ですね。 しかしこの天下一植物界、上物(植物)も買え、下物(鉢)や、アート作品まで揃ってしまうなんて、ちょっと欲張りなイベントですよね。鉢を作る吉本さん、陶植を作る滝上さん、2人に共通するのは、植物を愛するがゆえの情熱に突き動かされ物作りをされていること。そんな匠の創作活動を、ガーデンストーリーは今後も応援していきます。目が離せませんよ! おすすめ記事 ●天下一植物界の全てがわかる! 天下一植物界Vol.1(総合編) ●サボテン、コーデックス好き必読! 天下一植物界Vol.2(多肉植物編) ●話題のビカクシダと食虫植物に注目! 天下一植物界Vol.3(珍奇植物編) Credit 文/写真:編集部員K フリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年、これぞ天職! と、精力的に取材、執筆を行う。好きなサボテンはゲオヒントニア・メキシカーナ、好きなコーデックスはパキポディウム・ルテンベルギアナム。
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多肉・サボテン
【癒やし系サボテン】翠冠玉に兜丸、トゲのかわりにふわふわ綿毛で癒される!育て方も教えます|多肉植物狂い vol.03
トゲのないサボテン!? 皆さんは「サボテン」と聞いて、どんなものを連想しますか? おそらく多くの人が、鋭いトゲをビッシリと全身にまとい砂漠に佇む姿を思い浮かべるでしょう。しかし、なぜあんなに尖ったものがたくさん生えているのでしょう? 不思議ですよね。 そんなトゲが嫌で、サボテンを買わない人がいるのも確か。もしあなたがそれでサボテン栽培をあきらめているのなら、それはもったいないこと。サボテンの種類は世界になんと2,000以上もあるといわれ、その中にはトゲがまったくないサボテンもたくさんあるんです。それどころか、トゲの代わりに◯が生えているものもあるんです! 今回の多肉狂いは、トゲのない、ちょっと変わったサボテンをご紹介します。 サボテンにはなぜトゲがあるのか そもそもサボテンにはなぜトゲが生えているのか、そのトゲの役割がなんなのかについてご説明します。 サボテンのトゲは、もともとは葉っぱだった!? サボテンの自生地といえば、主に南米や北米の乾燥した砂漠地帯が有名です。しかしサボテンの"祖先"となると、これが意外にも南米のジャングルなどの鬱蒼とした森林の中に自生していたことが分かっています。しかも今の形とはかけ離れた、普通の木のような形をしていたのです。中には、ツルのようにほかの木の幹を這うように生育していたものもありました。そんなサボテンの祖先がなぜ、今のようなまん丸や柱のような姿になったのか・・・。それは、遥か昔の新大陸(南北アメリカ大陸)で起きた、サボテンを取り巻く自然環境の変化が原因なのです。 その頃の新大陸では、気候の変動や、なんらかの外的な影響を受け、森林が減少してしまいました。降水量も激減したことから大地は乾燥し、たまに降った雨も強い陽射しがあっという間に蒸発させてしまいます。そこでサボテンたちは、根が吸い上げた貴重な水分を放出する「葉の蒸散作用」を不要なものと考え、葉をトゲ状に進化させました。 しかし葉は植物が光合成を行うための重要なパーツであるため、サボテンたちは思いきってその機能を茎に移し、葉のトゲ化に合わせて茎を肥大化させていきました。肥大化した茎は、貴重な水分を溜めるためのタンクなので、蒸散を防ぐために肉厚にもなりました。加えてトゲは、そんな茎が動物たちに食べられないように防御する役割も担ってくれています。トゲも茎も、まさに変わりゆく地球環境を生き抜くために、なるべくして進化を遂げたわけです。 じつは、そんなサボテンの進化の過程を、サボテン科ペレスキア属の杢キリン(モクキリン)という植物の中に見ることができます。杢キリンはサボテンの原種といわれていて、葉とトゲが混在するとても面白い姿をしています。 トゲのないサボテンはなぜトゲがないのか トゲへの進化を選ばず、綿毛に変える道を歩む サボテンの中には、鳥や獣、風などにより種子が運ばれたのか、比較的標高が高い場所を新たな自生地として選んだものたちがいます。他のサボテンの仲間同様に、水分確保のために茎は肥大化させましたが、彼らは葉をトゲにすることを選ばず、しなやかな綿毛状に進化させました。なぜなら、そこは標高が高いために朝晩の気温差が大きく、夜はかなり冷え込みます。しかし彼らが手に入れた綿毛には保温効果があり、寒さを凌ぐことができるのです。人間がダウンベストを着るのと同じですね。 また、綿毛状にすることにより、朝晩の気温差により発生する水蒸気などを毛に吸着させ、効率よく水分を捕集することもできるようになりました。中には、全身を綿毛でぐるりと覆い尽くすようになった仲間もいて、その仲間は高地ゆえの強烈な紫外線から全身を守る術を手に入れました。 このように、子孫繁栄のために葉を綿毛へと進化させたトゲなしサボテンですが、じつはもう一つ、大切な役割があります。それは、私たちがそのふさふさを触ったとき、きもちい〜! と思わせること(笑)。 トゲのないサボテンに花は咲くのか どんなサボテンも、基本的には花が咲きます。ただし、年齢、栽培環境、個体の持つスタミナなど、いくつかの条件が揃わなければなりません。トゲのあるサボテンは、トゲの間を縫うようにつぼみが姿を現し、そして花を咲かせます。その様子は、武骨さと可憐さが同居し、とても魅力的です。それに対して、トゲのないサボテンは、トゲのない分、花の美しさがより一層際立ちます。 花は、午前中の明るい時間に開き、夜は閉じます。それを2〜3回繰り返したら、しおれていきます。決して長くはない開花期間が、人をどこか情緒的にさせます。 トゲのないサボテンのおすすめ4選 トゲがないとサボテンじゃない? そんなことはありません。お饅頭みたいな姿は、眺めているだけでキュンキュンします。ずーっと眺めていると、「なんでこんなもんが生えてるんだろう?」「なんでこんな模様がついているんだろう?」と、つくづく見入ってしまいます。ここでは、そんな素晴らしきトゲのないサボテンのおすすめ4種類をご紹介します。 デフューサ(翠冠玉) ぽてっとした姿に、赤ちゃんの頭みたいな綿毛を生やしたデフューサ。ロフォフォラ属(和名ではウバタマサボテン属)という種類に属していて、翠冠玉(すいかんぎょく)という和名もついています。ロフォフォラ属のサボテンは米国南西部にも自生していますが、デフューサの原産地はメキシコ中部のケレタロ州で、この地域の固有種です。 前出の動画にもあるように、ふさふさの綿毛はずっと触っていたくなるほど気持ちよく、また、ボディーを触るとまるで大福餅みたいで、思わず食べてしまいたくなるようなサボテンです。 そんな可愛いデフューサですが、属するロフォフォラサボテンの果肉には、幻覚作用のあるメスカリンという成分が含まれていて、北米先住民たちは古来よりそれを儀式などに用いているのです。なんかイメージがガラっと変わっちゃいますね。でも、日本で種から栽培された実生株にはそういう成分はほとんど含まれていないので安心してください。 ちなみに、ロフォフォラ属のサボテンは、子株がポコポコ出てくるので、そんなところも楽しいですよ! 値段も手頃で、写真のデフューサはSサイズのみかん程度の大きさで2,000円でした。 兜丸 ギリシャ語の星を意味する「アストロン」と、植物を意味する「フィートン」をミックスした造語「アストロフィツム」と名付けられたサボテンの分類があります。日本では大変古くから親しまれていて、その見た目から「有星類(ゆうせいるい)」とも呼ばれています。 中でもこの兜丸(かぶとまる・兜とも呼ばれている)は、8つの稜(りょう:サボテンのヒダ)から生えた大小の綿毛がまるで夜空を飾る星々のようで大人気の品種です。この模様、可愛いですよね! ついつい見入ってしまいます。 でもそんな見た目に反して、兜丸という名前は、戦国時代に武士がかぶる兜の、頭頂部を保護するパーツ「兜鉢」に由来しているんです。英語圏ではSea-urchin Cactus(ウニサボテン)と呼ばれていて、国や人種によって命名センスが違うのもおもしろいですね。 原産地はメキシコ北東部から米テキサス州にかけてですが、昔から多くの日本人サボテン栽培家たちが兜丸の品種改良に挑んできたため、‘スーパー兜’や’ミラクル兜’、また作出した人の名を冠した‘村主兜’など、日本独自の種類が世界中のサボテンマニアの間で珍重されています。 ちなみに、私の持つ兜丸(写真上)は、形も模様もベーシックなタイプなので、2,600円と手頃な価格のものです。でも十分可愛いでしょ? 綿毛の触り心地もポツポツしていて、いい感じですよ。 作出者名を冠したもので有名なのは、村主康瑞さんの作出した‘村主兜’。この5月にイベント「天下一植物界」会場にいた村主康瑞さんに突撃インタビューを行ってきました。日本のサボテン栽培の裏話も聞けるので、ぜひチェックしてみてください! 【天下一植物界Vol.2】美株サボテンと話題のコーデックスが奇跡の競演! 瑠璃兜 兜丸から小さい星が消え、稜線の間に大きめの星だけが規則正しく並ぶ、いわば兜丸のシンプルバージョンの瑠璃兜。サボテンというより、名前の美しさと相まって、どこか工芸作品みたいな佇まいです。兜丸だと名前からして武骨な感じですが(見た目はそうじゃないですけどね)、“瑠璃”がついただけでエレガントなサボテンに見えてしまいます。 写真は私の手持ちの瑠璃兜ですが、一年に2〜3回、中心がオレンジ色で、外に向かってだんだんと金色になっていく、とても綺麗な花を咲かせます。初めてこの花を見た時は、その美しさに思わず息を呑みました。兜丸も同様の花を咲かせるので※、星が賑やかな兜丸、もしくは、星がシンプルなこの瑠璃兜、どちらかで、この美しい花の開花にチャレンジしてみませんか? ※兜系にはピンクや薄紫の花を咲かせる種類もあります。 福禄寿 何ともおめでたい名前です。その名も、ロホセレウス属、福禄寿(ふくろくじゅ)。毛もなにもない緑色の肌はスベスベで、ずっと触っていたくなるサボテンです。アリゾナ南部とメキシコ北西部が原産で、特にメキシコ西部のバハカリフォルニアに多く自生しています。和名の福禄寿は、御利益をもたらす七福神の中の一人、福禄寿から来ています。古い絵画ですが、この福禄寿をご覧ください。まさにサボテンの福禄寿の頭と一緒でしょ? きっと初めてこのサボテンを見た人が、あやりたくそう名付けたのかも知れませんね。 ちなみに、福禄寿という名には、子宝、財産、健康長寿という三徳が込められているので、家に置いたら何とも縁起がよくなりそうですね! しかしこのサボテン、残念ながら、なかなか流通していないのです。何軒かの多肉専門店に問い合わせてみましたが、入荷するのは非常に稀とのこと。入手するには、メルカリをこまめにチェックするなど、ネットで地道に検索して探すのが一番の近道だと思います。まさにゲットできたら来福! といった感じですね。 お値段は写真の小さめ(12cmくらい)のものが3,000円程度といったところでしょうか。やはり確実なのはメルカリなのかな・・・。この記事を執筆しながら見てみましたが、SOLD OUTだらけの中、2つだけ、まだ販売中の福禄寿を確認できました。欲しい人は、見つけたら即買いがいいと思いますよ。 トゲのないサボテンの育て方・コツは根 用土 購入したものを植え替える場合は、水はけのよい土を使ってください。園芸店やAmazonなどのネットで販売している「多肉専用土」でOKですが、多肉を専門に扱う大型店などに行くと、独自にブレンドした土を「多肉用」や「サボテン用」として販売しているところもあり、おすすめです。 水やり 春から秋にかけてが成長期です。成長期は、2週間に1度、土の中ができるだけ蒸れないように、気温が下がる夕方に、鉢底穴から水が勢いよく流れ出るくらいたっぷりと与えてください。冬の休眠期は、月に1度、同様に夕刻にたっぷりと与えてください。水が鉢にたまった老廃物を押し流し、根をとりまく土の中をリフレッシュさせ、根の生長を促進することができます。 「デフューサ」や「兜」など、綿毛のあるタイプのサボテンは、水やりの際に綿毛にかからないようにしてください。映像のように、株の周りに円を描くように水をあげれば、綿毛を濡らさずに済みます。綿毛は頻繁に濡らすと固くなってしまい、一度固くなった綿毛は再びフサフサには戻らないため、フサフサの感触をキープしたい場合は、注意しながら水やりを行ってください。映像でも紹介していますが、ペットボトルにつけて使用する「じょうろアタッチメント」が100円ショップなどで売っており、これを使うと綿毛を濡らすリスクもなく水やりができて、とても便利です。 肥料 サボテンは他の植物に比べ、肥料をあまり必要としないため、成長期は月に1回程度、『ハイポネックス』などの液体肥料を少量、水で薄めて与えればOKです。使用量は、液体肥料のボトル側面に記載してあります。『ハイポネックス』の場合、2Lのペットボトル満量の水に対し、0.5mLで大丈夫です。逆に入れすぎて多肥状態にすると、サボテンは根が繊細なため、肥料焼けという症状を起こしてしまい、枯れる原因にもなります。 日照と温度管理 トゲのないサボテンは、陽射しをたっぷりと当て、高めの温度で管理すると、ふくよかで瑞々しい個体(通称わがままボディ)へと成長します。しかし、直射日光は苦手。ほんの一瞬なら大丈夫ですが、長時間直射日光に当たっていると、せっかくの美しい肌を焼いてしまうため、7〜9月は遮光ネットの使用をおすすめします。園芸用の遮光ネットがない場合は、鉢底ネットや、100円ショップで売っている洗濯ネットでも代用できます。 冬場の温度管理は、5℃を下回らないように注意してください。5℃ギリギリまで寒い外に置いておくと、翌春、デフューサは白い花を、兜はオレンジと薄黄色のグラデーションが綺麗な花を咲かせます。ただし、個体の状況によります。サボテンは、成長期の暑さと、冬の寒さをちゃんと与えてあげることで健康に育ち、美しい花を咲かせます。 風 サボテンは風にちゃんと当ててあげないと、健康に成長してくれません。風通しが悪い状態で水やりをしていると、土から水分がなかなか蒸発せずに、根が蒸れて、根腐れの原因にもなってしまいます。夏場はそのリスクが高まります。また、無風状態はサボテンの美しい表皮にカイガラムシが付着する原因にもなります。カイガラムシは、一度ついちゃうと取るのに苦労するので厄介なんです。 サボテンにとって一番よいのは、外で遮光しつつ、めいっぱい風を感じさせながら育てることです。住環境でそれが無理な場合は、サーキュレーター(送風機)で部屋の空気を循環させるなど、少しでも自然環境に近い状況を作ってあげると、サボテンは喜びますよ。 おわりに いかがです? トゲのないサボテン、欲しくなりましたか? ここでご紹介した「デフューサ」も「兜」も、実際に現物を見ると、とても可愛いんです! お部屋にお迎えすると、雰囲気がとても和みますよ。 疲れて帰った時などは、ふと目をやると、「おかえり! お疲れ様!」って言ってくれているようなんです(笑)。トゲトゲなサボテンだと、これが「元気出せよ! 明日も尖っていこうぜ!」という声が聞こえてくるのですが、とげのないサボテンは、あのまん丸が優しく包みこんでくれて、叶うなら小さくなってあの中で眠りたいと思ってしまいます。 育てる楽しみだけでなく、一緒にいるだけでちょっと優しい気持ちになれるトゲのないサボテンを、ぜひ育ててみませんか? Credit 文/編集部員K フリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。サボテンに魅せられて以来5年、これぞ天職! と、精力的に取材、執筆を行う。好きなサボテンはゲオヒントニア・メキシカーナとサワロ(弁慶柱) 写真/JOHN CHEESEBURGER & 編集部 スーパー兜/finchfocus_shutterstock.com 福禄寿/wikipedia.org
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多肉・サボテン
話題の塊根植物「パキポディウム」その魅力を徹底解説!【多肉植物狂い vol.02】
パキポディウムとは 皆さんはコーデックス(塊根植物)という言葉を聞いたことがありますか? 根や茎に多量の水分を含む多肉系で、ひと目見たら忘れられない珍妙な形をした植物です。ひと昔前だったら一部愛好家の間でしか話題にならなかったようなコーデックス。それが今、幅広い世代でブームとなっています。そんなコーデックス人気の牽引役を担っているのが、パキポディウム。今回の多肉狂いvol.2では、そんなパキポディウムの育て方や歴史などを、隅から隅までご紹介していきたいと思います。 ちなみに、インスタグラムで「#コーデックス」とハッシュタグ検索すると、その投稿数はなんと35.7 万件! 「#パキポディウム」だけでも24.4万件の投稿があり、いかにコーデックス人気の中でもパキポディウムが群を抜いているかがうかがえます。 パキポディウムは、キョウチクトウ(夾竹桃)科に属する植物で、マダガスカルを中心に、南アフリカ、ナミビア、アンゴラといった、アフリカ大陸南部にまで分布しています。キョウチクトウは大気汚染に強いため、日本国内では幹線道路沿いの街路樹にも使われるほど環境順応性が高いタフな植物。したがってそこに属するパキポディウムも同様で、いかにタフかは、その形が証明しています。 原産地(特にマダガスカル)は日本とは季節が反対の南半球に位置するため、5~10月が冬にあたる乾季となり、この期間はほとんど雨は降りません。また、気温もしばしば10℃を下回ります。そして11~4月が夏にあたる雨季となり、この時期に年間降水量のほとんどが降ります。雨季の気温は日本の夏のように猛暑となることはなく温暖な気候です。 しかし、この地図でも分かるように、マダガスカルは日本と同じく周囲を海で囲まれた島国。このため、熱帯低気圧がやってくると激しい風雨に晒されます。そんな飴と鞭の環境に順応するために、パキポディウムは長い年月をかけて茎を肥大化させて、自らを貯水タンクにして、あの独特な形へと進化を遂げました。 ゆえに、パキポディウムという名もギリシャ語の「パキスポドス(太い足)」に由来しています。ちなみに、トゲにもちゃんと意味があり、鳥や獣などの外敵から身を守り、雨水や空気中の水分の取り込みを助けるという2つの機能を果たします。いやいや、植物の進化って凄いですね! その進化も、地球の未来が長いものと考えれば、まだまだ途中に過ぎないのかもしれませんね。 輸入株と実生株 パキポディウムには原産地の南アフリカやマダガスカル諸島から輸入された「輸入株」と、輸入された株から種子を採取し、国内で発芽、栽培、採種を何世代にも渡り繰り返してきた「実生株(みしょうかぶ)」の2種類があり、両者にはいくつかの明確な違いがあります。パキポディウムの人気品種グラキリスを例にとってみてみましょう。 【輸入株】 値段:高価(数万円〜十数万円) 日本の法律では発根した株を輸入できないため、原産地マダガスカルで掘り起こし、根を切った状態の株(ベアルート株)を業者が輸入し、業者から仕入れた園芸店が発根管理し、発根を確認してから販売するのが一般的。そうして発根させた株は数万円するのが普通で、オークションなどの個人間取引を使ってベアルート株を安価に購入することも可能。しかしこの場合、発根させるための知識と手腕も問われ、また個体によっては発根しない可能性もあるため、投機性も高い。現在は円安とブームという2つの要因から価格も高止まりしているが、園芸関係者の話だと、この先まだまだ高値を更新していくとの見方もある。 フォルム:現地の自然環境に順応すべく進化したフォルムは珍妙にして雄々しく、また味わい深い。 栽培難易度:「中級」 原産地の自然環境同様に、成長期の夏は存分に太陽に当て、風雨にも晒すなど、あまり神経質にならずに屋外でワイルドに育てると、ボディも硬く、よい株に育つ傾向にある。ただし、日本の夏は多湿のため、雨が続くような時は屋内に取り込んだほうが無難である。冬も原産地では氷点下になることがないため、栽培環境が13~14℃を下回らないよう注意することが必要。未発根で購入した株も、発根さえすればタフに育ってくれる。 醍醐味:なんといってもその独特のフォルム。自然の為せる業とはいえ、子どものお腹のようなフォルムには愛嬌を感じずにはいられない。※決して中年おやじのお腹とダブらせてはいけない。 【実生株】 値段:安価(数千円〜1万円台前半) フォルム:輸入株と比べると、写真の通り同一の植物とは思えないほど異なるフォルムをしている。言ってみれば、輸入株が海外からの転校生なのに対し、実生株は日本で生まれ育ち、日本の教育(栽培)に順応した在校生なので、差が出るのも当然といえば当然だが、実生株も室内で甘やかさずに、屋外で放任気味に育ててやれば、ツルツルまん丸な転校生に対し、無骨ながらも国産にしか出せない、とんがった魅力たっぷりの株に育ってくれる。 栽培難易度:「初級」 国内の気候に順応しているため、シーズンごとの基本的な管理方法さえ覚えておけば、初心者でも容易に育てることができる。 醍醐味:いかに輸入株のような肥満な個体に育てることができるかだが、その道程は決して厳しいものではなく、むしろかなり楽しい。また、種子から育てると、我が子のごとく愛着が湧く。 パキポディウムは、輸入株、実生株共に花が咲きます。そしてその花で自家受粉が可能なため、自分で種子から増やして楽しむこともできるんです! 自家受粉とは、受粉に他の個体を必要とせず、同一個体内で受粉できることを指します。やり方は簡単なのですが、私もまだやったことがないので、行う際にレポート記事にする予定。これからチャレンジする人は一緒に自家受粉を体験しましょう! パキポディウムはどこで買えるの? パキポディウムは、一般的なお花屋さんではほとんど取り扱っていません。大型園芸店や、多肉植物専門店、生産者や小売業者のWebサイト、ヤフオクやメルカリなどの個人間取引などで購入することができます。 しかし、偶然立ち寄った街のお花屋さんで、パキポディウム・ラメレイが売られていたことがありました。聞いたところ、ラメレイの流通は大変多いので、仕入れるのも容易とのこと。ラメレイに限らず、欲しいパキポディウムがある場合は、品種を決めておいて、最寄りの園芸店でそれが取り寄せられるかどうかを一度問い合わせてみるのも手だと思います。 パキポディウムの種類 憧れのグラキリス パキポディウムのアイコン的存在にもなっているグラキリス。マダガスカルの南西部にある、“マダガスカルのグランドキャニオン"とも呼ばれるイサロ国立公園を中心に分布しています。「象牙宮」という和名を持ち、日本ではかなり古くから親しまれている種類です。グラキリスの魅力といえば、ぷっくりと肥えたボディ。ジブリアニメの某キャラを彷彿とさせ、誰もがその形に魅了され、とても愛着が湧きます。しかしそのボディ、前述の「輸入株と実生株」のところでも説明したように、輸入株と実生株とでは見た目がかなり異なります。実生株のボディは輸入株ほど太っておらず、また、表面がなめらかな輸入株に対し、実生株はサボテンのようにトゲに覆われています。 フォルムの好き嫌いが分かれるにしても、決定的に両者を分けているのが価格。輸入株は2〜3万円するのが当たり前で、昨今のブームや円安の影響もあり、さらに上昇気味です。これに対して実生株は、小さいものだと2〜3千円、実生3年でそこそこ形が仕上がっているものでも5〜8千円と、ほとんどの場合1万円以下で入手可能です。グラキリスは、輸入株・実生株ともに、梅雨時や酷暑、厳冬期の基本的な管理方法さえ勉強すれば、パキポディウム初心者でも比較的容易に育てることができます。 入手も容易なラメレイ 全身をビッシリと長いトゲに覆われたラメレイは、パキポディウムの中では最も入門に適した種類。なぜなら、丈夫で成長も早く、入手も容易だからです。多肉植物専門店以外にも、街の園芸店でラメリーという呼び方で販売されていることも多く、価格も2千円前後と、大変リーズナブルです。実際に私も近所の園芸店でたまたま販売しているのを見つけ、幹も太く、元気旺盛な個体を1,600円で購入しました。 ラメレイは他のパキポディウム同様、マダガスカルが故郷で、自生しているマダガスカル南部では5〜6mにもなる大きな株が、まるで椰子の木のように頭頂部で大きく葉を広げています。その見た目から「マダガスカルパーム」と呼ばれることもあります。冬がある日本ではそこまで大きくなることはまずありませんが、とにかくタフなので、その強さを活かして他の種の台木として使われることもあります。 名前からしておめでたいブレビカウレ(恵比寿笑い) お饅頭が飾りをつけたみたいな形が可愛いブレビカウレは、その姿にぴったりな「恵比寿笑い」というおめでたい和名でも親しまれているパキポディウム。昭和30年代にはすでに日本に輸入されていて、その時からこの和名で呼ばれていました。 こちらもマダガスカル原産ですが、他のパキポディウムに比べ標高が高い場所に自生している“高山性パキポディウム"という、ちょっと変わった種類です。石場が多いところに根を這わして自生しているためか、根はとてもデリケートで、高価な輸入株を手に入れた場合、湿度の高い日本では、蒸れによる根腐れに注意して育てる必要があります。万一根腐れを起こした場合、そこを切り取って前出のラメレイに接木するという人も多いようです。 対して実生株は、日本の気候に順応しているため、湿度にも強く、とても育てやすいです。ただし、グラキリス同様、輸入株と実生株ではフォルムにもかなり違いがあります。私個人的には、前衛芸術作品のような個性的なフォルムが魅力の輸入株より、お饅頭みたいな実生株のほうが可愛げがあって好きですね。そんな私が育てている実生株が、春先に黄色い花を咲かせまして、これがまたとても愛おしくて、花ごと食べちゃいたくなりまし(笑)。 ※毒性があるので食べてはいけません。 ちなみに、このブレビカウレ(恵比寿笑い)とデンシフローラムという種類とを交配して作り出されたハイブリッド種デンシカウレ(恵比寿大黒)というのもあり、ノペッと横に広がっていく恵比寿笑いに対し、デンシカウレ(恵比寿大黒)は上に成長していきます。両方とも可愛いですが、これは好みですね。 価格は、小さいものだとブレビカウレ(恵比寿笑い)もデンシカウレ(恵比寿大黒)も数千円で買うことができますが、後者のほうが高価にはなります。 撮影協力:ヨネヤマプランテイション本店URL:http://thegarden-y.jp/shop/ypt.htmlInstagram:https://www.instagram.com/thegarden_honten/神奈川県横浜市港北区新羽町2582TEL 045-541-4187 コーデックスの品揃えの豊富さは見事! 人気店のため、目当ての商品が売り切れの場合もあり、事前に在庫の有無を確認することをおすすめします。 世界最大級のパキポ、ルテンベルギアナム(鬼に金棒) 自生地マダガスカルでは国土の広範囲に分布するルテンベルギアナム。名前の由来は、マダガスカルで27歳という若さで非業の死を遂げたドイツのプラントハンター「クリスチャン・ルーテンベルク」に因みます。と、せっかく著名な探検家のかっこいい名前がついているのに、和名がなんと「鬼に金棒」。しかし、小さめのトゲをまといながら上に棒のようにただひたすら伸びていく姿は、まさに鬼の金棒そのものです。そんな金棒も、自生地マダガスカルでは10mにも届くかというほどまで成長し、「世界最大級のパキポディウム」と称されるほど、巨大になります。 実生株も大変成長が早く、冬がある日本では自生地ほど巨大にはならないものの、うまく育てられれば2〜3mはいってくれます。こう聞くと、興味をそそられますよね? しかし残念ながら、細葉を規則正しく出しながら、ただただ上に大きく伸びていくその成長過程がシンプルすぎて面白くないからか、はたまた、成長の早さゆえに幼苗期を長く楽しめないからか、パキポディウムの中では不人気ぶりもナンバーワンの種類なのです。故に流通量も少なく、希少な割には3〜4千円で買えることもあり、もしかしたら今狙い目のパキポディウムかもしれないので、あえてここでご紹介します。というか、私自身、「ルテンベルギアナム」が好きだから(笑)。自分で育ててみると分かりますが、他の追随を許さない成長の早さは、とても気持ちいいですし、幹の成長痕がみるみるうちに木質化していく様子は、結構クセになります。 私は今、このルテンベルギアナムの実生にもチャレンジしているので、その様子はいずれご報告いたします。ルテンベルギアナム、個人的に超おすすめです。 白銀の肌と薄紫の輪郭を帯びた白花が美しいサンデルシー サンデルシー(サウンデルシー)は、パキポディウムの宝庫、マダガスカルから海を隔てた南西に位置するアフリカ大陸最南の国、南アフリカ共和国が原産のパキポディウム。白銀色に輝くすべすべした表皮の肌触りはとても上品で、ちょっとカールした葉の間から覗く、細長く鋭いトゲが特徴。見た目のイメージ通り、「白馬城」という和名がついています。中世ヨーロッパのお城を彷彿させるようなエレガントさと、そのお城を槍隊が守っているような勇ましさを兼ね備えた、大変美しいパキポディウムです。ちょっと紫に縁取られた白い花を咲かせるのですが、これがまた美しいのです。 サンデルシーの自生地の南アフリカは、マダガスカルよりも気温が低いため、寒さにも強く、雨ざらしでもグングン育ち、初心者でも育てやすいタフさも魅力。この花も雨ざらしで放っておいて、知らないうちに咲きました。 じつは、サボテン専門だった私が初めて興味を持ち、手に入れたパキポディウムが、このサンデルシーでした。当時はコーデックスの実態をあまり知らなかったのですが、店主から「これ育て始めたらサボテンに戻れないかも…」と意味深なことを言われ、ならば挑戦してサボテン愛を再確認しようじゃないか! と、購入したのが2年前。サンデルシーが私のパキポディウム世界への呼び水となりました。 店主の言う通りに、直射日光をガンガン当て、水やりは毎日夕方にジャンジャンあげて育てていますが、そんなのサボテンでは考えられません(サボテンのケアはもっとデリケート)。でも、パキポディウムはご覧のように、たくましく育っています。 お値段はお手頃な3〜4千円くらいです。輸入株はそうはいかないですが。 パキポディウムでは珍しい赤い花を咲かせるウィンゾリー その情熱の赤い花見たさに、世のパキポディウムファンから羨望の眼差しを浴びるウィンゾリー。パキポディウムの多くは白か黄色の花を咲かせますが、マダガスカル最北部に位置するアンツィラナナ州を中心に分布するバロニーと、ここでご紹介するウィンゾリーの2種だけは、情熱的な赤い花を咲かせます。 ウィンゾリーはバロニーの変異種。アンツィラナナ州と、南西に下ったマジュンガ州との州境付近にある、過去の戦争で使われたウインザー砦付近に自生するバロニーのうち、幹が特に肥大化するタイプのもののみ、採取地のウインザー砦に因んでウィンゾリーと名付けられました。 そんな希少性もあってか、現地では盗掘が相次ぎ、その結果、後述するワシントン条約でも最高位のCITES Ⅰに分類され、特例を除き一切の輸出入および取り引きが禁止されています。お店やネットなどで輸入株と称されるものがどのような経緯で入ってきたのかは不明ですが、現在一般に入手可能なものの多くは実生株で、しかも流通量はごく僅か。そのため、手に入ったらラッキーと思って、幸運の赤花が咲くまで大切に育ててほしいです。 基本種のバロニーに比べると全体的に小ぶりの品種なのですが、小さいうちからぷっくりと太って、熱燗を飲る時の徳利のような姿にはとても愛嬌を感じます。また、開花率もバロニーより高いため、その情熱の赤い花見たさに、世のパキポディウムファンを熱狂させてもいる品種です。入手のしにくさもあってか、価格は実生3年ほどの株で大体1万5千円前後から。 私の育てているこの実生4年目の株も、購入時は実生1年未満で1万5千円でした。でも、開花はまだ当分先かな・・・。ちなみに、基本種のバロニーは今、種から育てているんですが、なんと昨日! 発芽しました。記事の公開に合わせてくれたのか、出たがりな子だ(笑)。そちらのレポートも、いずれしますね。 【そしてこの記事公開から8ヶ月目のバロニー】 種は5つ蒔き、そのうち3つが発芽し無事成長中!一番大きい子(写真)は高さ9cmになり、顔つきも"らしく"なってきました。 パキポディウムの育て方 用土 水はけのよいものを使用します。ホームセンターなどで入手できる多肉植物栽培用の用土を買えば問題ありません。 水やり 映像はグラキリスの水やり風景ですが、水を浴びた瞬間、銀色の肌が緑色に変化する様子がクセになります! その水やりですが、春〜夏は成長期にあたるため、夕刻以降に映像のようにたっぷりと与えてください。但しこれは屋外の雨ざらしの環境で栽培している場合であり、室内栽培など、状況によっては間隔を変える必要があります。水やりのタイミングを見極める上で役立つのが竹串。株と鉢の縁の中間地点あたりで土に竹串を深めに刺して、抜いた時に先端から柄にかけて湿った土がついていれば、まだ水のやり時ではありません。この場合、1〜2日待ってから再度竹串を刺し、土の中が乾いたことを確認してから水をやりましょう。 秋から初冬にかけては冬に備えて根の給水性能を徐々に落としてくるため、土の中の状況をさらに繊細に確認しながら水やりを行います。 冬は完全に水断ちして休眠させるのが一般的ですが、根は生きているので、たまに霧吹きで用土表面を湿らせる程度の水を与え、3月中旬あたりから徐々に水をやり始めましょう。 日照 パキポディウムは、春から夏にかけて旺盛に成長するため、この時期の日光が大好き。翌年も元気な株にするためには太陽光は必須。外栽培・室内栽培を問わず、太陽光を存分に当ててください。ただし、ずっと室内で栽培していたものをいきなり直射日光下に置くと葉焼けを起こしてしまう可能性が高いので、この場合は徐々に太陽に当てるようにしましょう。どうしても日照が確保できない場合は、植物育成ライトを活用してみるのも手です。 外栽培の場合も、冬場は室内に取り込むことになるので、植物育成ライトの活用はおすすめです。 風 パキポディウムは、自生地でかなりの風雨に曝されながらタフに育っています。これはパキポディウムに限らず、植物栽培全般にいえることですが、元来自然のものなので、自然の状況に近い環境を作ってあげることで、株は健康に育っていきます。そういった意味では、室内の無風の状態というのは彼らにとって不自然な環境なので、室内で栽培する場合は、空気を循環させるためにも、サーキュレーターの使用を強く推奨します。 肥料 市販の多肉栽培用土を使っている場合、元肥は含まれているので、特に与えなくても大丈夫ですが、春から夏の成長期には、月2回程度なら、ハイポネックスなどの液肥を薄く与えてもよいと思います。ただし、与えすぎはトラブルのもとなので、注意してください。自分で土を作り込む場合は、植え替えの時にマグアンプKを元肥で混ぜ込むようにします。夏場はメネデールなどの活力剤を2週間に1回程度与えると元気に育ちます。 植え替え 一部の品種を除き、パキポディウムは基本的に成長が早いです。鉢底から根がちらほら見えるようになったら、一回り大きい鉢に植え替えると、より株の成長を促進します。あまり大きな鉢にしてしまうと、土中の水分が蒸発するのに時間がかかり、根腐れの原因となります。 発根 未発根のベアルート株などを入手し、発根を促したい場合は、入手した株の、親株から切り離した切り口(そこだけ不自然なのですぐに分かります)部分に発根促進剤『ルートン』を塗布し、放置します。それに加え、念を押したい場合は、希釈したメネデール液を、たまに霧吹きで吹きかけてあげると、さらに効果があるかもしれません。ただし、前述の通り、ベアルート株は絶対に発根することが保証されているわけではないので、根気勝負となるでしょう。“根”なだけに。 また、根腐れや病気などのトラブルがあった場合は、患部を切り落とし、発根を促しますが、その際も上記と同様の発根方法を取ります。切断に使うカッターの事前消毒は、くれぐれも忘れないように。 冬越しにチャレンジしよう 夏は放っておいても元気に成長するパキポディウムですが、冬の管理「冬越し」は神経を使うところ。というのも、冬越しに失敗してそのまま枯れてしまう、なんてことが結構多いのです。ちなみに、夏型のパキポディウムは、本格的な冬に入る前に葉が紅葉し、最終的には全ての葉を落として休眠状態に入ります。パキポディウムを初めて栽培する人の中には、これを枯れたと勘違いする人が多いのです。植物が休眠状態に入ることは、ライフサイクルを持つ生き物としてはごく普通のこと。銀杏や楓の葉も紅葉し、やがて冬を迎えると落葉し、枯れ木のようになりますよね。葉がなくなれば、そこから水分が蒸発することもないので、見た目は枯れ木みたいでも、根や幹が蓄えた最低限の水分だけで生きていけるのです。冬の休眠は、植物が次のシーズンにさらなる成長をするための大切な体力温存期間。パキポディウムも同様で、彼らを健康に成長させるためにも、このライフサイクルを与えることは重要です。 そこで試練となるのが冬の水断ち。初心者にとっては、手ずから枯らしてしまうんじゃないかと怖くなる人も多いでしょう。でも怖がらずに、水を断ち、冬の寒さを与え、見守ってください。そして、次のシーズンを生き抜くスタミナを養ってあげましょう。 ただし、休眠中とはいえ、生きているので、たまに(週1くらい)霧吹きを2〜3回して、土の表面を若干湿らせてください。また、寒さを経験させるといっても、さすがに氷点下になると枯れる恐れがあるため、冬の温度管理の目安としては、13〜14℃は下回らないようにしましょう。 パキポディウムはサボテン好きにもおすすめ! 同じ多肉でも、サボテンを育てている人は、水やりを学ぶのに結構時間をかけた(かけている)のではないでしょうか? 鰻店修行の「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」のように、明確な年数はありませんが、サボテン栽培には失敗を繰り返しながら学ばなければいけないノウハウがいくつもあります。 対して、パキポディウム栽培は、懇意にしている園芸店店主が「サボテンの苦労が馬鹿馬鹿しく思えるくらい育てやすい」と言うくらい、初心者を大歓迎してくれます。多肉界の双璧ともいえる両者、は同じ「トゲモノ」。サボテン好きはパキポディウムも好き、パキポディウム好きはサボテンも好き、ならば一緒に育てちゃいましょう! 私もそうですが、まるでウサギとカメを育てているようで、なかなか面白いですよ! パキポディウムは、サボテン好きには特におすすめしたい植物です。 SNSに投稿しよう! パキポディウムの上手な写真の撮り方 「写真はね、ハートが感じたまま撮ればいいんだよ」と高名な米国人フォトグラファーは言いますが、そういうわけにもいかないので、不肖ながらカメラマン経験のある私が説明させていただきます。写真には「日の丸構図」というものがあり、これは文字通り、被写体を構図の中心に置くことで、日本国旗のような配置になり、ダサい構図、と、されています。もちろん、あえて構図としてそうする人も大勢いますが。 では、どうすればCoolなカットを撮ることができるか、答えは簡単、日の丸構図を避け、被写体のパキポディウムを中心からずらせばいいだけです。これはインスタにアップする際に、いろんなところで使える技、って技ってほどでもないか... でもどうです? グラキリスに、なんかLIVE感が加わって、空を見ているように見えませんか? あと、全体像を撮るより、引き算するっていう感覚で、品種の特徴的なところを切り取ったほうが、ドラマチックな写真が撮れます。下の写真の場合、輸入株グラキリスのアイコンといえばやはり、まん丸なわがままボディーなので、それをドアップにすることにより、「我ここにあり!」といった存在感がアピールできます。 話しかけながら撮る 相手は植物といえど、立派な生き物です。心を通わせなければいい写真は撮れません。その都度、話しかけましょう。きっといい表情を見せてくれますよ。 パキポディウム豆知識 ペットを室内飼いしている場合は十分に注意を! パキポディウムが属するキョウチクトウ科の植物には強心配糖体(cardiac glycoside)という毒性がある、という検証結果が「AMERICAN JOURNAL OF BOTANY」という米国の植物系学術誌に記載されています。強心配糖体とは、人間にとっては心不全の薬にも用いられる成分ですが、犬や猫にとっては毒であり、特に猫に関しては死に直結する猛毒であることが分かっています。同様の成分がパキポディウムにも含まれるため、ペットがいるご家庭でパキポディウムを栽培する場合は、ペットが触れることができない場所に置くなどの注意が必要です。 特に猫は、ちょっと珍しいものが自分の縄張りに入ってくると、必ず匂いなどを確かめに行く習性があります。匂いを嗅ぐだけならいいのですが、パキポディウムの葉を好物の猫草と思ってかじってしまう場合もあるんです。大切なペットがパキポディウムの葉なり茎なりを口にした場合、嘔吐や下痢、呼吸が早い、息が荒い、食欲不振などの症状を起こすことがあります。もしこれらの症状を見せた場合は、原因の一つとしてパキポディウムを考え、速やかに動物病院に連れて行ってください。夜間であっても早急に夜間診療を行っている動物病院に連れていくことをおすすめします。 知らないとは恐ろしいもので、我が家も猫を飼っていて、冬季はパキポディウムたちを室内に取り込むため、これを園芸店の店頭で聞いたときには全身から血の気が引きました。対策として、IKEAで植物用のアクリルガラスケースを購入し、猫が触らないよう、そこで冬場の管理をするようにしています。 飲めるの!? 食べられるの!? 飲むなー! 食うなー! とふた言で済むのですが、一応ご説明しますね。 前述の「AMERICAN JOURNAL OF BOTANY」誌の中に、パキポディウムの毒性について、21の既知のパキポディウム種のうち16種を育てて検証を行った結果、背が高い品種ほど毒性が高い、という記載があります。背が高いというと、ルテンベルギアナムはまず毒性が高いということが予想されます。このほか、ラメレイやサンデルシーも自生地では背が高くなるので、これらも同様でしょう。このように、パキポディウムはその多くが強い毒性を持つ植物なので、茎を食べたり、抽出した液を飲んだりは決してしないでください。特に小さなお子様のいるご家庭では要注意です。万一口にしてしまった場合は直ちに病院へ。また、茎や葉から出た液体が手などについた場合は、かぶれる恐れもあるため、石鹸などでしっかりと洗い流してください。ちなみに、学術誌の検証は現地球(輸入株)を用いたものですが、どこかの研究機関が“実生株は安全だ”という検証結果を出さない限り、実生株も毒性は同様のものと考えておいたほうが無難かもしれません。 ワシントン条約で護られているパキポディウム ワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)、略して CITES(サイテス)とも呼ばれますが、この条約は、絶滅の危機に瀕した動植物を乱獲や密猟から国際的に保護し、種の保全を図るために1973年(昭和48年)に米国ワシントンで採択された条約で、日本も1980年(昭和55年)から発効しています。 【ワシントン条約は下記3つのカテゴリーに分かれています】 CITES Ⅰ 絶滅の可能性が極めて高く、商業目的のための国際取引は原則禁止。但し、輸出側・輸入側双方の政府が発行する許可証があれば、学術的な目的での取引は可能。 CITES Ⅱ 現時点で絶滅の可能性はないものの、厳重に取引を規制しなければ、いずれ絶滅に至る。輸出側政府の発行する輸出許可書があれば、商業目的の国際取引は可能。 CITES Ⅲ 締約している国が種を国内保護するために、他の締約国の協力が必要。当該国政府の発行する輸出許可書があれば商業目的の国際取引は可能。但し原産地が当該国以外の種を輸出する場合には原産地証明が必要。 パキポディウムは全種がCITES Ⅱ以上(バロニーとウィンゾリーはCITES Ⅰ)に指定されているため、条約に違反した取引を行うと罰せられます。知らなかった、は通用せず、日本国内でワシントン条約に違反した取引には「種の保存法」が適用され、植物の没収と多額の罰金、最悪の場合は懲役刑が科されます。 輸入株なら分かるけれど、さすがに国内で種子から育てられた実生株にはワシントン条約は適用されないのではと思い、管轄する経産省に問い合わせをしてみました。担当者によると、国内実生株も海外に輸出する際には、CITES Ⅱ扱いとなり、正規のルートで海外に出すにはとても煩雑な手続きが必要となるとのこと。滅多にいないと思いますが、実生株を輸出する場合はご注意ください。 では、これらのことから、大型の園芸店で販売されている輸入株ってどうなの? メルカリなどで売られている輸入株はどうなの? と思いますよね。信頼できるまともな園芸店さんはちゃんと必要な手続きを取って販売しているので、安心して購入できます。個人間取引の場合はトレーサビリティーが確立されていない以上、下手をしたら密輸されたものを購入してしまう可能性もあるため、出品者をよく見極める必要があります。 パキポディウムは、レアプランツやビザールプランツ(珍奇植物)として人気を博していますが、国際的に保護されているような植物を趣味にする以上、私たち購入者も、特に輸入株を求める際は、個人で大量に輸入しているなど、怪しげなところからは購入しないように心がける必要があると思います。 おわりに いかがでしたか? 多肉狂い第2弾は、今人気のパキポディウムを、これでもか! というくらい特集してみました。すでにパキポディウムを育てている人はその魅力の再認識を、今まであまり興味がなかった人にはこの記事がきっかけとなり、パキポディウムの楽しさを味わっていただけたら嬉しいです。 パキポディウムは今、女性たちからも熱い視線を浴びていて、Instagramでは「パキポ女子」なるハッシュタグも飛び交っています。この人気がいつまで続くのかは不明ですが、成長過程をいろんな顔で楽しませてくれるパキポディウムは、共に過ごすことで人生の価値も豊かにしてくれる、じつはブームに関係なく最高な植物なのです。ぜひゲットしてみてください。 Credit 文/編集部員Kフリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。以来、精力的に取材、執筆を行う。飼い猫ここちゃん(黒猫4歳ex♂)に翻弄されっぱなしの日々。 写真/JOHN CHEESEBURGER & 編集部キョウチクトウ写真/Mr.Somchai Sukkasem_shutterstock.comマダガスカル自生地写真/Monika Hrdinova_shutterstock.com