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【亀甲竜】は冬型塊根植物の人気No.1! その魅力と育て方を徹底解説|多肉植物狂い vol.04

【亀甲竜】は冬型塊根植物の人気No.1! その魅力と育て方を徹底解説|多肉植物狂い vol.04

亀甲竜は塊茎部が亀の甲羅のようにゴツゴツした摩訶不思議な塊根植物。冬に成長する冬型塊根植物としてはNo.1の人気を誇ります。管理も簡単なため、塊根初心者でも容易に育てることができます。連載「多肉植物狂い」、今回はそんな亀甲竜の魅力に迫ります。

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冬型塊根植物と夏型塊根植物

冬型夏型top

コロナ禍という環境の中で、珍奇なフォルムと気軽に栽培できることから大人気の塊根植物(コーデックス)。大手園芸店などでは特設コーナーを拡張するなど、ブームは過熱する一方です。さてその塊根植物、成長期によって、夏型と冬型の2つのタイプに分かれることをご存じですか?

冬型塊根植物とは

冬型の塊根植物が自生する場所は、5〜8月が乾季、11〜2月が雨季となっています。日本の冬にあたる時期も、日本のように寒くはならずに気温も比較的高く、また雨もよく降るため、冬型塊根植物はこの時期に成長します。対して、日本の夏にあたる時期が比較的高温のまま乾季となるため、休眠期に入ります。今回ご紹介する亀甲竜を擁するディオスコレア属や、チレコドン属などがこれに分類されています。

夏型塊根植物とは

夏型の塊根植物が自生する場所は、5〜8月が雨季、11〜2月が乾季です。日本の冬にあたる時期も、日本のように寒くはならずに比較的気温が高いまま乾季となります。夏型塊根植物は、雨季に雨をたっぷりと浴びて成長し、高温の割に水が少ない乾季は休眠期に入ります。塊根植物ブームを牽引するパキポディウムやユーフォルビア、アデニウムがこれに分類されています。ちなみに、亀甲竜にはメキシコを原産とするメキシコ亀甲竜という種類もあり、こちらは夏型に分類されます。

今注目を浴びる冬型塊根植物

このように、冬型塊根植物は寒いのが好きだから冬に成長するのではなく、また夏型塊根植物は暑いのが好きだから夏に成長するというものでもなく、塊根植物自身が自生地の気候に合った成長サイクルをDNAに刻んでいるがゆえに、夏型と冬型に分かれる、というわけです。なので、冬型塊根植物を“寒いのは平気なんだろう”と気温零下の環境に長時間置いておくと、成長どころか枯れてしまいます。でも日本で育てていると、寒くなるにつれ株の動きが活発になっていくわけですから、なんだか不思議ですよね。

亀甲竜
冬型塊根植物の人気No.1亀甲竜の幼苗。

そんな冬型塊根植物ですが、多肉植物好きのなかでもニッチな層に人気なのかと思いきや、そんなことはないんです。大手園芸店に聞くところによると、公式インスタグラムなどで入荷をアナウンスすると、老若男女問わず多くの問い合わせがきて、あっという間に売れてしまうそう。このように、冬型塊根植物が今、世のプランツラバーたちから注目を浴びています。

というわけで、今回と次回の「多肉植物狂い」は、冬型塊根植物にスポットを当て、前編は亀甲竜ことディオスコレア・エレファンティペス、後編では万物想ことチレコドン・レティキュラーツスをご紹介します。

では早速、前編の亀甲竜を見てみましょう!

冬型塊根植物人気No.1亀甲竜とは

亀甲竜
実生3年目の亀甲竜

冬型塊根植物の人気No.1を誇る「亀甲竜」。アフリカ大陸南端、西はクランウィリアムから東はウィローモアまでの広大なエリアに自生しています。

亀甲竜自生地
Pix from Google Earth

西部の街クランウィリアムは、アフリカ大陸最大規模のオレンジ生産地として有名で、現地に仕事で訪れたことのある知人曰く、街からちょっと出ると4WDの車なしには移動できないくらい自然が手付かずの状態の大地が続いているそうです。そんな過酷な環境の中で、亀甲竜は石や岩の間から顔を覗かせて自生しています。

亀甲竜
現地で自生している亀甲竜。

写真を見てみると分かりますが、遠目だと、おそらく岩か亀甲竜かの判別は難しいでしょう。そこから察するに、亀甲竜のこの亀の甲羅のようなフォルムは、外敵から身を守るための一種の擬態なのかもしれませんね。

そんな亀甲竜ですが、他の塊根植物が隆盛を誇る夏場は休眠し、秋になり気温が下がるにつれ活発に動き始めます。そして他の塊根植物が休眠する晩秋から冬場に最盛期を迎えて成長し、初春から再び休眠へ向かうという、まさに冬型の代表的な塊根植物なのです。日本国内で発芽栽培している実生株も同様に、このサイクルで生きていますが、日本の冬は寒くて現地のように気温も穏やかというわけにはいかないので、冬場の管理には注意が必要です。

亀甲竜という、いかにもおめでたいその名は、土の上に露出している塊茎(かいけい)がひび割れて隆起し、亀の甲羅のように見えることに由来します。その塊茎にはでんぷんが多く含まれているため、「芋」とも呼ばれます。そう、お芋なんです。亀甲竜が属するディオスコレア属は、日本ではヤマノイモ属と呼ばれていることからも、芋の仲間であることが分かります。

自生地付近に住むアフリカ最古の先住民であるコイコイ人は、実際にこれを食べるのだとか。しかし、芋として食べるのではなく、焼いてパンのようにして食べるのだそうです。ゆえに、コイコイ人の昔の俗称(現在は差別用語となっている)を取って「ホッテントットズブレッド(ホッテントット族のパン)」とも呼ばれています。美味いんでしょうかね? 私は自分の亀甲竜を眺めていても、食べようという気にはなりませんが(笑)。

また、サポニンという界面活性成分も含まれるため、コイコイ人たちは亀甲竜を石鹸としても使っていたそうです。そのまま体を洗うと身体中血だらけになりそうなので、おそらく亀甲の部分を剥いで、中身を石鹸代わりに使うのでしょうね。

亀甲竜
実生5年目の亀甲竜。これが食べられたり石鹸になったりするとは…。

ちなみに、自生地の南アフリカでは切手にもなっています。切手にまでなるということは、国民にとってもメジャーな植物なのでしょう。

亀甲竜切手

亀甲竜はハート形の葉が超かわいい!

亀甲竜の葉

過酷な環境でたくましく生き抜く亀甲竜も、私たちにとっては、雄々しい塊茎とハート形の可愛らしい葉が魅力的な観賞用植物。伸びたツルからたくさん生まれるハート形の葉は女性をキュンキュンさせます。男性もその葉の可愛らしさには、キュンキュン…ではありませんが、なかなか気分が盛り上がります。その証拠に、Instagramで「亀甲竜」を検索すると、4.7万人ものファンが、思い思いの亀甲竜を投稿しています。

 

Instagram

冬にさしかかる成長期にハート形の葉を出しながらグングン伸びるツルを、どうおしゃれに仕立てるのかも、亀甲竜の醍醐味の一つ。ゴツゴツした塊茎と、可愛らしいハート形の葉が織りなす不思議なルックスは、一般的な植物の活動が停滞する冬になってからがより動きが活発になるため、まさにこれからの季節、亀甲竜はさまざまな表情で楽しませてくれるでしょう。

亀甲竜の価格

気になるお値段ですが、都内にある大手園芸店「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」では、小さいもの(実生2年程度、塊茎の直径3cm)では2,200円、中程度(塊茎の直径8〜9cm)で9,900円、大きいもの(実生5年以上、塊茎の直径約13〜14cm)になると、なんと66,000円で販売しています。

亀甲竜(小)
小さめの個体、2,200円(税込)
亀甲竜(中)
中程度の個体、9,900円(税込)
亀甲竜(大)
大きい個体、66,000円(税込)

ただし、塊茎に現れるコブの隆起具合が整っているか否かでも値段が変わるため、大きくてコブが綺麗に整ったものだと、さらに高額になります。いかにコブを美しく仕立てられるかも、栽培手腕が問われます。とはいっても、伸びたツルをどうするのか以外は、込み入ったテクニックを必要とせずに、気軽に育てることができるのも亀甲竜の魅力。ですから形に関しては自然に任せ、出来上がった姿を個性と捉えて育てたほうが親しみも湧く気がします。

亀甲竜の育て方

気軽に育てられる亀甲竜ですが、多肉植物である以上、基本的な育て方はマスターしておく必要があります。

用土

soil for 亀甲竜

市販の「多肉用培養土」や「サボテン用土」などでOK。これらの用土は、一般に水はけのよさをメインに、保水力と保肥力がバランスよくなるようブレンドされています。そのためオールマイティーにどんな多肉植物にも便利に使えます。

私の一番のおすすめは、大手園芸店オリジナルブレンドの多肉用土。都内の人に身近なところでは、前出の「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」や、上石神井の「オザキフラワーパーク」などで、オリジナルの多肉用土を販売していますが、これらの用土は専門家の経験値がそこに反映されているため、何よりも信頼がおけます。

soil

市販のものを使わず、自分で土づくりをする場合も、この点を重視してブレンドするとよいでしょう。ただし、亀甲竜は、水はけがよすぎて極端に保水力のない土を使うと、塊茎の成長が遅くなる傾向があります。塊茎を亀の甲羅のようにグングン成長させるためには、保水力と保肥力を適度に保たせるように心がけてください。

亀甲竜におすすめの配合は、全体を10として、ベースになる赤玉土(小粒)4と鹿沼土(小粒)2.5、水はけをよくするための日向土(小粒)1、土の質を上げるくん炭1、保水・保肥力を上げ雑菌の繁殖を抑えるバーミキュライト1、栄養分として堆肥0.5、という感じです。

【多肉系の土でさえあれば好みでよい】
よほどミスマッチな土を使わない限り、土の違いで亀甲竜が枯れることはありません。しかし、土の違いにより成長スピードに若干の差は生じるかもしれません。私はというと、懇意にしている園芸店のオリジナル用土をここ何年も全ての多肉植物に使っています。

もちろん、大手メーカーが大量生産している土も高品質であるとは思いますが、食べ物でいうところの、出来合いのものを買うか手作りのものを買うかと似ていて、要は好みだと思います。

置き場所

亀甲竜

亀甲竜は冬成長型のため、以下のように管理すればよいでしょう。

  • 1011月:最低気温が10℃以下になるまでは表で陽射しによく当てる。
  • 12〜2月:最低気温が10℃を切ったら室内に取り込み、日当たりのよい場所に置く。
  • 3〜4月:最低気温が10℃を上回るようになったら日中は表に出し、夜間は室内に取り込む。
  • 5〜6月:落葉し始めたら昼夜問わず表に出し、日中は半日陰で管理。
  • 7〜9月:基本は表で半日陰、塊茎部へのダメージを避けるために、直射日光は厳禁。真夏の直射日光を長時間浴びた株は、塊茎表面が風化して、成長が止まってしまう場合があります。

【ポイント】
風が通らない室内では健康に育たないため、サーキュレーターなどで室内の空気を循環させましょう。エアコンの風の直当ては株にダメージを与えるため厳禁。また曇天の場合は、植物育成ライトの併用も効果的です。

水やり

水やり

多くの冬型塊根植物は、9月下旬から10月初旬頃に、目に見えて活動が始まります。しかし亀甲竜は、まだ気温も高い8月の半ばあたりから塊茎部頂上に尖りを出し、8月後半くらいには、そこからツルを伸ばし始め、徐々に成長期へと向かっていきます。ツルを伸ばし始めた頃から、以下のように水やりを行うとよいでしょう。

  • 8月後半:ツルが伸び始めたら、まずは土の表面が湿るくらいの少量の水を与えて、それから1週間ほど様子を見ます。その後は、ツルと、そこから出始めた芽の状況を見ながら徐々に量を増やしていくのですが、あげ時を見極める目安としては、土表面を指で触って乾いているようだったらあげる、という感じでOK
  • 9〜10月:料理用の竹串(新品)を用意してください。鉢に竹串を刺して土の中が完全に乾いている状態(抜いた竹串に湿った土が付かない状態)を確認したら、鉢底から水が流れ出るまで。※土中に溜まった老廃物を、水で鉢底から押し流して、土の中をリフレッシュさせる効果があります。
  • 11〜4月:土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまで。※株の大きさと鉢の大きさにもよりますが、目安としては1週間〜10日に1回です。
  • 5月:葉が落ち始める5月から水やりを控えていきます。2週間に1回、あるいは最初、鉢に竹串を刺して土の中が完全に乾いている状態を確認してから3〜4日後にあげる、などが目安です。
  • 6〜8月上旬:亀甲竜は休眠期に入り、根が水を吸わないため、水やりを止めます。ただし、まったく水を与えないわけではなく、2週間に1回ほど、活力剤の『メネデール』をかなり薄く希釈した水を塊茎にスプレーして、葉水ならぬ塊茎水をしてあげると、初秋の立ち上がり時に勢いがつきます。

【ポイント】
夏場は気温が高い日中に水やりをすると土の中が蒸れて根腐れの原因となるため、必ず夕刻以降に行いましょう。逆に、冬場は夕刻以降に水やりをすると冷水が根にダメージを与えてしまうため、朝以降、気温が徐々に高くなるお昼までの間に水やりを行いましょう。 

肥料

緩効性肥料と即効性のある液肥を使い分けます。

  • 緩効性肥料:植え替えの際に『マグアンプK』中粒タイプを鉢の大きさに合わせて混ぜ込むか、鉢の縁あたりに均等に3箇所、指で穴をあけ、そこにそれぞれ2粒程度入れるのでも大丈夫です。
マグアンプK
  • 液肥:10月下旬〜3月下旬まで、『ハイポネックス』を規定に沿って水で希釈したものを、2週間に1回与えると、塊茎部の肥大化を促進します。
ハイポネックス

目安としては、2Lのペットボトル満タンの水に対し、0.5ccくらい。写真にあるような、プラスチックシリンジ(注射器の胴体部分)を使うと、目盛りが付いているため計量に便利です。大きい園芸店に行くと園芸用のものが300円ほどで入手可能です。

  • 活力剤:『メネデール』がおすすめ。成長期に月に1回、規定通りに希釈して、水やりの際に混ぜてあげるとよいでしょう。
メネデール

ツルを整える

亀甲竜ツル

8月に入ると、塊茎頂上部に尖った突起物が現れ始めます。下旬くらいになると、突起部からツルを出し始めます。ツルにはところどころに節のような突起した部分があり、それが9月に入ると葉になります。生まれたばかりのハート形の葉はとても可愛らしいですよ! ツルは、葉が開く前の、まだ繊細で柔らかいうちに、支柱を立てるなどして巻き付けるようにしましょう。注意してほしいのは、ツルは9〜10月の2カ月でグングン伸びていくため、放置していると周囲のものに巻きついてしまい、それを解くのにひと苦労することになります。綺麗に形を作っていくためには、最終的にどのような形に仕上げたいのかを考えながら、ツルを誘引する支柱を立てておき、伸びるたびにそれを巻きつけていくという、意外と地味な作業を行わなければなりません。でも、これがまた楽しいのです。

また、葉を剪定することによりツルが分枝していくので、その性質を使って全体的に葉が生い茂った、盛りが強めのフォルムに仕立てることもできます。

植え替え

植え替え
  • 鉢をサイズアップするための植え替え

亀甲竜が成長し、鉢が小さくなってしまった場合の植え替えは、休眠から動き始める寸前くらいの7月から8月半ばあたりにするとよいでしょう。どの塊根植物もそうですが、これから休眠期を迎えようという時期に植え替えをしてしまうと、植え替え時に傷ついた根が修復できないまま休眠してしまい、株にダメージを与えます。しかし、これから成長期を迎えるという時であれば、根についた傷も成長過程で自己修復できます。ゆえに、休眠明けくらいの時期が推奨されるのです。

植え替えの前は水やりを止め、根が傷つかないように完全に土が乾いた状態で行います。あらかじめ用意してある鉢の鉢底に、ある程度目測で土を入れておき、そこに根を崩さないように慎重に株を配置します。株が鉢の中心になるように配置したら、周囲に均等に土を入れていきます。土を入れる際、市販の「土入れ」を使うと便利ですよ。

【ポイント】
使用する土は、すでに根が抱え込んでいる元の土と同じものがおすすめです。植物は環境の変化には敏感なので、「新しい家も住み慣れた家と同じなんだよ」と、いたわってあげれば、今まで同様に健やかに成長してくれるでしょう。今までと違う種類の土を入れたことにより枯れることはありませんが、成長スピードに大なり小なり影響を及ぼす可能性はあります。

  • 根のダメージから塊茎を救うための植え替え

根腐れやネジラミなどにより根がダメージを受けた場合は、塊茎部を救うための“外科手術”も兼ねた植え替えを行いましょう。株を鉢から抜いた後、やさしく根をほぐしながら土を落としていき、ある程度落ちたら、次は弱水流を流しながら、残りの土を落としていきます。根腐れは細菌感染が原因の場合もあるため、残さずに洗い流して、いったん根を丸裸にします。そしてガスコンロやライターの火で刃を熱消毒したハサミで、ダメージのある根(色が黒ずんでいるのですぐに分かります)をカットし、切り口に『STダコニール1000』や『GFベンレート水和剤』などの殺菌剤を希釈して塗布します。しばらく放置し、患部が乾いてから新しい土に植え替えます。植え替えの際、最初にほぐした時の残土は使用せずに、新しい土に総入れ替えを行ってください。

亀甲竜をおしゃれに仕立てる

亀甲竜

亀甲竜は伸びたツルをどう仕立てるかというのも大きな楽しみ。「#亀甲竜」でインスタグラムをのぞいてみると、さまざまな亀甲竜に出会うことができます。傾向としてはつるをサークル状にまとめる人が多いようですが、中にはハート形にしたり、作家鉢で個性をアピールしたりと、なかなか面白いですよ!

ツルをおしゃれに仕立てる方法は簡単です。根を傷つけないようにワイヤーを土に刺して、形を作り、そこに巻き付けてあげればいいだけです。ただし、巻き付け作業は、ツルが出始めの柔らかいうちに行ってください。ツルは時間の経過と共に硬化していくため、そうなってから無理な力を加えると折れてしまう場合があります。

亀甲竜おしゃれ仕立て図鑑

おしゃれ亀甲竜1
odenyeahさんは、サークルの仕立ての上手さもさることながら、塊茎の素晴らしいこと!
おしゃれ亀甲竜2
mkt_squadさん(左)はサークルに仕立てた葉の向きに統一感があって、胡蝶蘭のよう。エレガントさが漂います。
tmak.wさん(右)は今にも猫ちゃんがくぐりそうで可愛い! 塊茎もなかなかパンチがきいています。
おしゃれ亀甲竜3
moja_sanさんは、鉢のチョイスと塊茎の形、ツルの仕立てが相まって、どこか盆栽の雰囲気が漂います。
おしゃれ亀甲竜4
lily_plantsさん(左)は、実生2〜3年目くらいでしょうか、小さい塊茎と葉が密集していないツルにはハートの可愛さが際立ちます。
akimameさん (右)は、仕立てもお上手なのですが、「象と亀」というテーマで、輸入株のグラキリス(象牙宮)との共演が面白いですね。
亀甲竜8
iwasakiengeiさんは、かわいいハート仕立て。ハート上部のくぼみのところにうまくツルが絡めなかったのは残念ですが、ハートを作ろうという心意気が素敵です!

亀甲竜を実生で育てる

亀甲竜タネ
亀甲竜のタネ

亀甲竜は、タネから育てると、とても興味深い体験ができます。私が今育てている亀甲竜は2017年5月にタネを植え、翌月に発芽。現在5年目になります。植えた当時は、正直あまり興味はなかったんです。もともと、子どもの頃の思い出があるスズカケのタネをヤフオクで買った時に、出品者が発送遅延のお詫びとしてオマケでつけてくれたタネが亀甲竜でした。塊根植物の存在は知っていたものの、当時の私はサボテン栽培がメインだったため、亀甲竜が初塊根にして、初塊根実生という、今考えれば不思議な巡り合わせですね。

タネを植えたのも、ちゃんとしたタネまきキットにではなく、ベランダにハンギングしてあった観葉植物(確かアイビー)の横にやっつけ程度に植えたものなので、要は観葉植物用の培養土にタネを播いたんです(笑)。芽が出りゃ儲けもん、ぐらいにしか考えていませんでしたね。しかし、発芽してハート形の葉が姿を現して初めて、「おまえ、ひょっとしてかわいい子なの?」と、あわてて単独の鉢に移し、以後は腰水管理で過保護に管理しました。

亀甲竜の芽
発芽した亀甲竜。このかわいらしいハート形の芽を見た時、この植物はちょっと普通じゃないなと思いました。

そして、いつのタイミングでその亀の甲羅のような塊茎とやらができるのかなと待つこと1年、2018年5月、ついに茎の根元に茶色いドームのようなものが見え始め、表面の土を指で払ってみたら、なんと土の中に大きめの塊茎が埋まっているではありませんか! 自生地ではこのまま地中に埋まったまま塊茎が大きくなるそうですが、多湿の日本では蒸れて腐っちゃわないのかな? とちょっと心配になり、自己判断でいったん全て掘り出し、塊茎部を地上に出して植え替えてやりました。後日の調べで、その行為は正解だったことが分かり、ひと安心。と、そんな試行錯誤の末に、現在に至る感じです。

亀甲竜

私のこの経験談はあまり参考にしないほうがよいと思いますが、一つ確実に言えるのは、発芽から塊茎がしっかりと出来上がるまで、際立った手間をかけることもなく、割と容易に育てることができたということ。にしても知らないとは怖いもので、休眠中の夏場も普通に水あげてましたからね…。それでも元気に直径14cmほどに成長したわけですから。つまり、亀甲竜は環境適応力も強く、生命力も強い! 塊根初心者ウェルカムなタフなヤツ! ということです。だから先住民も食べるのでしょうね。

亀甲竜、ぜひ育ててみてくださいね!

【ペットを飼っている人はご注意】
塊茎のデンプンに含まれている成分サポニンは、犬や猫には有毒なため、室内管理の際はペットが塊茎をかじらないようご注意ください。特に猫は爪とぎと勘違いして塊茎に爪を立てる場合があり、その際に爪に付着したサポニンを舐めてしまうと危険です。もしペットに異変があった場合は、亀甲竜の受傷状態もチェックしてから動物病院を受診してください。

おわりに

いかがでしたか? 亀甲竜。ここまで読んでいただければ、なぜ今人気なのか、その理由も分かっていただけたのではないでしょうか。これから冬に向かっていく中で何か楽しいことないかな、と考えている人には亀甲竜栽培、ぜひおすすめです。パキポディウムなどは人気の品種ともなると、高価なものばかりですからね。その点、亀甲竜はお財布事情に見合った株を選べるというのも魅力です。

でも、一番おすすめしたいのは、実生でタネから育てること。お店では最初から塊茎部を露出したものが販売されていますが、タネから育てることにより、塊茎が埋まっているという自生地での姿を体験することができるし、何よりも、まぁこれはどの植物もそうですが、やはりゼロから育てると、愛着がハンパなく湧くものです。タネはネット販売などで1,000円前後で入手可能です。

この冬、亀甲竜を愛でる時間を作ってみませんか? 今回様子を見にお邪魔した「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」には、実生から2年ほどの良株が勢揃いして新しいご主人様を待ち侘びていました。

入荷仕立ての亀甲竜
在庫の有無はお店に必ずチェックしてくださいね。

撮影協力:プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店

URL: https://www.protoleaf.com

多肉植物エリアInstagram:https://www.instagram.com/protoleaf.selections/

東京都世田谷区瀬田2-32-14 玉川高島屋S・C ガーデンアイランド2F

PHONES:03-5716-8787

冬型塊根特集、次回のチレコドン・万物想も楽しみにしていてください。See ya

Credit

Profilepix

文/編集部員K
フリーランスのロックフォトグラファーを経て2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年、この仕事との出会いを神に感謝し、精力的に取材、執筆を行う。今夢中になっているのは海外ドラマ「House of the Dragon」。

写真 / JOHN CHEESEBURGER & 編集部
現地で自生している亀甲竜写真 / Gingertomcat from shutterstock.com
RSA発行亀甲竜切手 / Sergey Kohl from shutterstock.com

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