サボテンといえば、柱サボテンや球サボテン、ウチワサボテンなどが有名ですが、トゲのあるものないもの全部ひっくるめると、なんと2,000種類以上もあるんです! そこで今回はサボテンの種類に関して徹底解説。永久保存版のサボテン図鑑です。
目次
サボテンとは
サボテンの概要
サボテンは多肉植物の一種であり、主に北米南西部からメキシコを中心に南米の砂漠や平原などの乾燥地帯に生息しています。
中には、南米の山岳地帯や沿岸地帯など、植物の生育にとって極めて過酷な環境下で生息している種類もあります。
園芸品種も含めると、2,000種類以上が存在するとされ、この数は植物界全体では決して多くないものの、乾燥地帯に特化した植物群としては多種多様で、その適応能力とバラエティーに富んだ形態は植物の進化学や分類学研究において世界的に重要な存在とされています。
サボテンの特徴
特徴①:多肉質の茎
ぷっくりとした多肉質のボディが特徴的ですが、ボディにあたる部分は一般的な植物の茎にあたります。その茎の中には十分に水分が蓄えられているため、乾燥した環境でも生存が可能です。
特徴②:トゲ(葉の退化)
サボテンの象徴的パーツともいえるトゲ。
サボテンのトゲは進化の過程で葉が退化したものといわれています。
トゲは、茎からの水分の蒸発を防ぐとともに、外敵から身を守る役割を果たしています。また、強い陽射しを和らげ、茎肌が焼けるのを防ぐ効果もあります。
特徴③:棘座(アレオーレ)
サボテンとほかの多肉植物を区別する上で重要なのが棘座(しざ)。アレオーレとも呼ばれます。
棘座はサボテン特有の器官で、細かい綿毛集合体がトゲを乗せたクッションのような形をしており、そこからトゲ、毛、花、そして新しい茎節が生まれます。
サボテンの種類の中にはトゲがなく棘座のみ、というものもあります。
サボテンの棘座は、植物学においてサボテンの進化と適応の鍵となる重要な要素といわれています。
特徴④:サボテンの花
どんなサボテンも基本的に花を咲かせます。
トゲの合間を縫ってつぼみが現れ、やがてその見た目とは対照的な美しい花を咲かせます。
このミスマッチな味わいもサボテンの醍醐味といえます。
花の色や形はサボテンの品種によりさまざま。
しかし共通しているのは、サボテンは開花株にまで成長しなければ開花することはないということ。開花株に至るまでの年数は品種により異なり、また開花株になっても実際に開花するか否かは生育環境が鍵となります。
開花に重要なのは栽培環境作り。
品種ごとの情報をネットや本で調べ、原産地で自生している環境に近い環境を作ることで開花率も上がります。
初心者の方、もしくはすぐに花を見たい方は、すでにつぼみをつけた開花株を購入するのがサボテンの花を見るための一番の近道です。
これだけは言えます。
サボテンの花が開花するのを一度見たら、それは決して忘れられない体験になるでしょう。
特徴⑤:光合成
通常の植物は葉で光合成を行いますが、葉のないサボテンは茎、つまりボディで光合成を行います。
夜間に二酸化炭素を取り込み、日中にそれを利用して光合成を行います。この方法をCAM型光合成(ベンケイソウ酸代謝)と呼びます。
特徴⑥:浅く広がる根
サボテンの根は浅く広がる特性があり、このため少量の降雨でも効率よく水分を吸収できるようになっています。
多肉植物とサボテンの関係性
多肉植物とは、乾燥した気候や土壌条件下で水分を保持するために、葉、茎、根などの器官で貯水組織が発達し、これらが厚く、肉質で満たされた植物の総称。
サボテンもその中の一つです。
多肉植物の中にはサボテン科のほかにも、エケベリアなどを擁するベンケイソウ科、アガベなどを擁するリュウゼツラン科、ユーフォルビアなどを擁するトウダイグサ科、パキポディウムなどを擁するキョウチクトウ科、アロエやハオルチアなどを擁するススキノキ科など、さまざまな科があります。
しかしサボテン科は2,000種以上の品種を擁する多肉植物の中でも最大のグループであり、また、サボテンには前述の棘座という、ほかの多肉植物にはないサボテンのみに共通する特徴があるため、園芸界では「サボテン」と、それ以外の「多肉植物」、というように区別されています。
●棘座の有無でサボテンか非サボテンかを選別することができる。
サボテン以外の多肉植物の中にもトゲを持つ品種がありますが、サボテンとの決定的な違いはトゲの生成プロセス。
サボテンのトゲは棘座が生み出すのに対し、ほかの多肉植物のトゲは茎がそのままトゲに変化します。
下の写真はサボテン(左)とサボテンとよく間違われるトウダイグサ科の多肉植物「大雲閣」(右)を比べたものですが、大雲閣は茎の一部がトゲに変化している様子が分かります。
このトゲの生え方の違いを覚えておくと、サボテンとそれ以外の多肉植物を確実に見分けることができます。
サボテンの形による種類分け
前述したように2,000種類以上と、とても種類が多いサボテン。
種類により形がまったく異なるのも、ほかの植物にはない魅力です。ここではサボテンの形状ごとの魅力について解説します。
ウチワ型サボテン
ウチワ型のウチワサボテン属は、見た目がウサギの耳にも見えることから市場では「バニーカクタス」の名でも通っており、サボテン科の進化の中でも比較的早期に分岐したグループとされています。
茎節は水分を貯える能力が高く、極度な乾燥地帯でも生き延びることができるため、主に北アメリカから南アメリカにかけての乾燥地域に広く分布しています。
ウチワサボテンの多くには、外敵から身を守るために発達した鋭いトゲが生えており、中には微細なトゲを持つ品種もあります。
しかしそのトゲとは対照的な美しい花でも楽しませてくれます。
春から夏にかけて鮮やかな黄色や赤、オレンジ、ピンクなどの花を咲かせ、大型種のオプンチア・フィカス-インディカ(大型宝剣)などは、花が咲いた後には多肉質でとても甘い果実が実ります。
この果実はそのまま食べることができ、自生地のメキシコではジュースやジャムにも加工されます。
このように、ウチワサボテンは食用としても有名で、若い茎節(ノパル)はメキシコ料理では一般的な食材として、炒め物やサラダ、スムージーなどにも使われます。
ウチワサボテンはサボテン科の中でも最も高い適応力を持っているため、ロサンゼルスなどの都市部でも、誰が植えたわけでもなく、風に乗って飛んできたタネが発芽し、成株になったものが道端で普通に生えているケースも散見されます。
その適応能力の高さは日本においても発揮され、高温多湿な日本でも、屋外での鉢栽培や地植えが可能です。
見た目のエキゾチックさから、庭に植えてシンボルツリーにしたり、店舗やビルのファサード※に利用する例も多いです。
※建物の玄関アプローチや側面などに設けられた装飾的な構造物や植栽。
もちろん、ウチワサボテンは屋内のインテリアプランツとしても大人気。
写真下は代官山で国内外のセレクトアイテムとオリジナル商品を取り扱う「THE STORE by C’」の店内。
人の目につきやすい場所にウチワサボテンなどのエキゾチックプランツを配置することで、非日常的な空間を演出することができます。
柱サボテン
柱状サボテンは、サボテン科の中で最も進化が進んだグループとされています。
その名のように柱のごとく垂直方向に成長するサボテンで、主に米国南西部からメキシコにかけての乾燥地帯に生息しています。
柱サボテン最大の魅力は、株の大小に関わらず天に向かい高く成長すること。
米アリゾナ砂漠に自生するサワロサボテンという品種は、なんと20m以上の高さにまで成長することがあり、その自生地は国が特別保護区として厳重に管理しています。
ちなみにサワロサボテンは“西部劇に出てくるサボテン”としても知られており、その色や形はサボテンのアイコンとしてもお馴染みです。
園芸用としては小型〜大型まで品種のバリエーションも多く、どの品種も一鉢置くだけで空間がスタイリッシュになり、なおかつとても丈夫で育てやすいため、家庭、店舗、オフィスなど、さまざまな場所で愛用されています。
写真上は中目黒の設計事務所、将(はた)建築設計の事務所入り口の「鬼面角」。
この形はブランチ仕立てといって、胴切りをすると脇から子株(ブランチ)を出すサボテンの習性を利用して、何年もかけてこのようにスタイリングしたもの。
ご覧のように一鉢の存在感がこの会社の感性の高さをうかがわせます。
同じく中目黒にある発酵食品専門店、Kiyo NATUREの店内にある柱サボテン「鬼面角」。
こちらはシンプルな3頭立てですが、トゲのない鬼面角が持つ親しみやすい雰囲気が、体に優しい発酵食品が陳列された店内のイメージにとてもマッチしています。ちなみにここのおにぎりは絶品です。
場所も取らないためインテリアとの親和性も高い柱サボテン。
このような垂直に伸びる形態は、乾燥地帯で水分を効率的に貯えるための適応の一つであり、長い進化の歴史の中で今日の柱サボテン繁栄の礎となっています。
乾燥地帯での生存を成し遂げ、観賞用としても人気を誇り、柱サボテンはサボテン界で最も成功したサボテンともいえるでしょう。
球サボテン
球サボテンは、球のような丸い形状が特徴で、2,000種以上を擁するサボテン科の中にあって、その種類は数百に及びます。
主にメキシコ、中南米、アメリカ南西部などの、降水量が極端に少ない過酷な乾燥地帯に広く分布しています。
そしてそのような過酷な環境に適応するために進化してきました。
丸い形状は表面積を最小限に抑え、蒸発による水分の損失を減らすための適応です。
表面の鋭いトゲは動物からの食害を防ぐ役割を果たしており、太陽光を部分的に遮ることで表面温度の上昇を防ぎ、内部の水分を保つのにも役立っています。
しかし、球サボテンの中にはトゲのないサボテンも数多くあります。
写真下は、トゲのない品種の中でも人気のアストロフィツム属。
肌表面の白い斑点や毛玉のような棘座は、太陽光による茎肌へのダメージを防ぐ効果があり、また鳥獣による食害を防ぐための一種のカモフラージュとしての役割も担っていると考えられています。
アストロフィツム属は比較的海抜が高い場所に自生しているため、棘座をこのように毛玉化することにより、寒暖差で生まれる霧からの水分を効率よく取り込むことができます。
アストロフィツム属以外にも、代表的な球サボテンの一つにマミラリア属があり、この属には数百種が含まれています。
マミラリア属のサボテンは比較的小型で、園芸品種としては直径数cmから十数cm程度のものが人気です。
マミラリア属の多くは鮮やかな花を咲かせます(写真上)。
また、トゲのバリエーションも多く、その見た目の美しさからコレクターも多い品種です。
このように、観賞用としてはアストロフィツム属やマミラリア属といった小型〜中型種が人気ですが、エキノカクタス属の金鯱(きんしゃち)などの大型種は、ドライガーデンやファサードの植栽としても人気で、柱サボテンとは一味違う重厚な存在感が魅力です。
このように球サボテンは、その美しい花とユニークな形状から、観賞用植物として、またエクステリアを飾る植栽として、世界中で親しまれています。
サボテンの属種別の特徴と代表的な品種
ギムノカリキウム属
ギムノカリキウム属は、サボテン科の中でも特に人気のある属で、主な原産地はメキシコ中部から米テキサス州にかけての乾燥地帯。
主に球形または円筒形をしており、一般的なサイズは直径が数cm〜15cm程度と、小型〜中型のサボテンです。
明確に分かれたリブ(稜)を持ち、それぞれのリブにトゲがあります。
リブの数や形状は品種によって異なりますが、多くの場合縦に深い溝が入っているのが特徴です。
トゲは比較的短く、種類によっては白や黒、褐色などさまざまな色合いを持ち、密度や長さも品種ごとに異なるため、このサボテンに多様性をもたらしています。
またギムノカリキウム属の花は非常に美しく、直径が3〜5cmで、白やピンク、赤、黄色など多彩な色があります。
花は頭頂部や側面からトゲを押し除けて咲くため、トゲがその美しさを一層引き立てます。
【代表的な品種】
バッテリー
天王丸
牡丹玉(ぼたんぎょく)
瑞雲丸(ずいうんまる)
緋牡丹錦(ひぼたんにしき)
翠晃冠(すいこうかん)
【ギムノカリキウム属の価格の相場】
1,500円〜10,000円(牡丹玉以外は多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
フェロカクタス属
フェロカクタス属は、サボテン科の中でも特に頑丈で存在感のある種が多く、北アメリカの乾燥地帯を中心に分布しています。
フェロカクタスのフェロはラテン語で「強い」「凶暴な」を意味する通り、強力なトゲを持つことで知られていて、こういった強いトゲを持つ品種はサボテン界では「強棘系(きょうしけい)」と呼ばれ、一般的にはトゲの幅が広いほうが良株とされます。
形は球形や円筒形で、とても大きく成長することが多く、成熟した個体は直径が数十cmから1m以上になることもあります。
非常に厚いリブを持ち、それぞれのリブは強靭で長く、品種により、赤や黄色、白、グレーと、さまざまな色があり、それらが湾曲しながら密に生えているため、見た目のインパクトは最強です。
花は頂部に花径約3〜5cmの花を咲かせ、それらは品種により赤、黄、オレンジなど、とても鮮やかな色をしています。
フェロカクタス属は耐暑性が高いため、昨今の猛暑下でも屋外で問題なく育てることができます。
逆にいえば、屋内だと光量不足、温度不足になるため、成長が鈍る冬以外は屋外での管理が理想的です。
寿命も長く、数十年から百年以上生きることもあるため、一生をともにできるサボテンといえるでしょう。
【代表的な品種】
黄金冠(おうごんかん)
神仙玉(しんせんぎょく)
赤城
【フェロカクタス属の価格の相場】
3,500〜20,000円(多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
アストロフィツム属
アストロフィツム属は、そのユニークな外見と比較的管理しやすい性質から、愛好家の間で非常に人気の高いサボテンです。
主にメキシコからアメリカ南部にかけて分布しており、Astrophytum=星の植物、というラテン語による属名が示すとおり星型の模様が特徴的で、大鳳玉(たいほうぎょく)などの一部品種を除き、その大部分がトゲがない「無刺(むし)種」が多いことで知られています。
形は球形または円筒形をしており、表面には白い斑点や星形の模様が見られます。
これらの模様は、サボテンの表面を覆う微細な毛状突起(アレオーレ)によるものであり、直射日光を反射する効果があるため、ボディの冷却効果も持ち合わせています。
また、自生地の環境(地面や岩面)に擬態した模様のため、動物の食害から身を守るカモフラージュ効果も有しています。
名人といわれる栽培家は、この模様や斑点の出方をコントロールできるため、栽培家の名を冠したものとなると数万円するものもあります。
アストロフィツム属の花は大きく、美しい黄色や白色の花を咲かせます。
花は頂部から咲き、直径は2〜4cmくらいで、開花期間は1〜2日と短命のため、その儚い美しさも観賞価値を高めています。また、トゲがない分とても扱いやすく、小ぶりなボディサイズが小さなスペースに最適で、なおかつ、一鉢置くだけでインテリアのよいアクセントとなるため、老若男女問わず多くのファンを持つサボテンです。
【代表的な品種】
兜丸(かぶとまる)、瑠璃兜(るりかぶと)など。
【アストロフィツム属の価格の相場】
2,000円〜20,000円(多くが多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
マミラリア属
マミラリア属は、サボテン科の中で最も多様性に富む属の一つで、約200種類以上の種があります。
属名はラテン語の乳頭(mammilla)に由来しており、実際に多くの品種が乳頭のように突起した形をしているのが特徴です。
メキシコを中心にアメリカ南西部から中央アメリカにかけて広く分布していて、基本的に小型の品種が多く、薄いピンク、濃いピンク、紫、緋色と、花の鮮やかな色彩には定評があり、中でも写真下の豊明殿(ほうめいでん)に代表されるように、花径15mm程度の小さい花が花冠のように咲く品種などは、見た目の可愛らしさが際立ちます。
花は比較的容易に咲き、花期も長く、咲く回数も多いため、花を楽しみたい人にはおすすめです。
マミラリア属を象徴するもう一つの特徴が、トゲの密度。
短いトゲが高密度で体全体を覆う品種が多く、その規則的な配列が美しい模様のようで、丸型の品種だと日本古来の蹴鞠(けまり)のようにも見えます。
サイズも小さく、トゲの面においても扱いやすく、花も可愛らしいため、サボテンの魅力がグッと詰まった品種です。
【代表的な品種】
姫春星、月影丸、豊明殿
美女丸(写真下)
【マミラリア属の価格の相場】
4,000円〜15,000円(多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
エキノプシス属
エキノプシス属は、ボリビアやアルゼンチンなど、南アメリカを中心に分布しています。
かつては品種数もそう多くはなかったのですが、1980年代に遺伝的研究が進んだことにより、いくつかの種属が統合され、現在は約150種以上を含む大きなグループになりました。
種類が多いので、品種により球状や、柱状が混在し、とてもバラエティーに富んでいますが、どの品種にも共通するのは花の可憐さ。
花は夜に咲くことが多く、一夜限りの儚い美しさを楽しむことができます。
花の色は白、ピンク、オレンジ、赤など多岐にわたり、直径10cm以上にもなる大きな花を咲かせることがあり、香りも豊かで、うっとりするような甘い香りを放つ品種もあります。
とても丈夫で、成長力も旺盛のため、どんどん子を吹き群生株になることもしばしば。その変化の過程は見ていて楽しくなります。
日光大好き、肥料もわりと好き、寒冷地でもしっかり育つので、初心者におすすめのサボテンです。
【代表的な品種】
短毛丸
世界の図
【エキノプシス属の価格の相場】
1,000〜10,000円(「世界の図」は多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
エキノカクタス属
エキノカクタス属は、主にアメリカ南西部からメキシコにかけての乾燥地帯に分布しています。
丸みを帯びた球形や円筒形といった樽型のボディが特徴で、このため、原産地では樽(Barrel)を意味するバレルカクタスの名で通っています。
非常に成長が緩慢なため、代名詞ともいえる品種「金鯱(きんしゃち)」は成長が遅いがゆえに、サボテン界でもトップクラスの長寿を誇っています。
サイズが大きくなるまでに数十年かかり、20年以上経過してようやく開花株となるため、ある意味一生をかけてつきあえるサボテンともいえます。
どの品種も外観は美しく、リブから雄々しく伸びる長く太いトゲはまるで精密な彫刻のよう。
自然の造形美を余すことなく堪能することができる、極上のサボテンです。
ちなみにトゲの色は品種により、黄金色、赤、茶、白とさまざまな色があり、花の色も黄色、白、ピンクと品種によりさまざまですが、黄金色のトゲに黄金の花を咲かせる金鯱こそ、エキノカクタス属の王道ともいえます。
金鯱に魅了されて沼落ちした園芸家はとても多く、中にはメキシコの自生地まで足を運んだ人も。
※金鯱は系統学研究の結果、2014年4月にクレンレイニア属に変更になりましたが、市場では現在もエキノカクタス属として流通しているため、この記事ではエキノカクタス属として解説しています。
【代表的な品種】
金鯱
太平丸
雷帝(らいてい)
【エキノカクタス属の価格の相場】
3,500〜40,000円(多くが多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
エピテランサ属
エピテランサ属は、小型の種類が多く、小さいながらもメキシコの過酷な乾燥地帯に分布しています。
品種数もあまり多くなく、比較的小さなグループです。
とてもコンパクトで丸みを帯びた形状が特徴で、表面は非常に細かい白いトゲや毛で覆われており、これが外観全体をふんわりとした印象にしています。
細かいトゲは触れても痛くはなく、また茎肌が隠れるほど密集して生えることで、強い陽射しから茎を保護していて、また、擬態効果もあるため動物の食害から身を守ることができます。
花は小さく、頂部に咲き、通常は白からピンク色で直径が1cm未満です。
また開花後に小さな実ができることがあり、この実の中にはタネが入っており、このタネを用いて株を増やすこともできます。
また、エピテランサ属は子株が生じやすいため、最初はシンプルな1株だったものが、短期間で群生株になるというように、外観の変化を楽しむこともできます。綿帽子のような見た目の可愛らしさと、屋内の明るい場所でコンパクトに育てることができる手軽さもあり、サボテン初心者にもおすすめです。
【代表的な品種】
月世界(つきせかい)
【エピテランサ属の価格の相場】
2,000〜10,000円(多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
エキノセレウス(エキノケレウス)属
エキノセレウス属は、主にアメリカ南西部およびメキシコに分布しています。
この属には約100種が含まれ、比較的コンパクトな品種が多いです。
形は球状と柱状が混在していて、群生し横に広がっていくものなどもあり、とてもバラエティーに富んでいます。トゲの色も、白、黄、赤、黒など多岐にわたり、中にはトゲを持たない品種もあります。
エキノセレウス属の一番の魅力はなんといっても花の美しさ。
春から夏にかけて咲き、また開花期間も長く、一度咲いたら3〜4日間くらい咲いている品種も。
一般的なサボテンの開花は1〜2日程度なので、長い期間花を楽しむことができます。花は大きく、色は、ピンク、赤、紫、黄色、オレンジなど多岐にわたり、特に中心部に濃い色のコントラストが見られるものが多いです。
【代表的な品種】
紫太陽
美花角(びかかく)、オレンジ花桃太郎(美花角の交配種)、ピンク花桃太郎(美花角の交配種)など。
【エキノセレウス(エキノケレウス)属の価格の相場】
4,500〜20,000円(多肉専門店またはネット通販でなければ入手は不可)
オプンチア属
オプンチア属は、アメリカ大陸の乾燥地帯の広範囲にわたって自生しています。
この属は約150種以上を含み、特徴的な平たい茎節(パッド)の見た目から、ウチワサボテンやバニーカクタス(うさぎ耳サボテン)などの異名を持ちます。
パッドは節ごとに成長し、新しいパッドが古いパッドから生えてきます。
多くの品種でパッドの表面に「グロキディア(刺状毛)」と呼ばれる微細なトゲが密集しており、これが肌に触れると数十本の細かいトゲが皮膚に刺さるため、取り扱いには注意が必要です。
しかし園芸用に品種改良されたトゲのない品種もあるため、パッドが数珠つなぎになっていくという基本的な形は同じですが、トゲの有無は好みで選ぶこともできます。
オプンチア属のサボテンは、品種により手乗りサイズから屋根まで届く巨大種まで、大きさもバラエティーに富んでいます。
金烏帽子(きんえぼし)のような小型品種はテーブルアクセントになり、大型宝剣のような大型品種は地植えでさらに大きくし、シンボルツリーとして仕立て上げることもできます。
オプンチア属は花も美しいことで知られています。
春から夏にかけて平たいパッドの縁に、品種により黄色、赤、オレンジ、ピンク、白の美しい花を咲かせますが、その姿は可愛らしさが溢れています。
オプンチア属のサボテンはどの品種も基本的にとても育てやすく、そのエキゾチックな外観が多くの人を魅了しています。
【代表的な品種】
金烏帽子(きんえぼし)
銀烏帽子(ぎんえぼし)
墨烏帽子(すみえぼし)※トゲ無し品種
大型宝剣
【オプンチア属の価格の相場】
800〜10,000円(身近な街の園芸店で入手可能)
コピアポア属
コピアポア属の自生地はチリ北部のアタカマ砂漠一帯。
極端に少ない降水量と乾燥した大地、激しい風と、この一帯は植物が生きていくには極めて過酷な環境であり、コピアポア属のサボテンたちはそんな場所に排他的なコロニーを築き自生しています。
野生種は個体数が圧倒的に少なく、CITES(ワシントン条約)により国際的に保護されているサボテンの中にあって特に厳しく管理されているグループのため、その種子から育てられた子々孫々の株には常に高値がついています。
特に黒王丸という品種はコピアポア属を象徴する品種として、世界中のサボテンコレクターから羨望の的となっています。
黒王丸はオークションなどでも数万数十万円が当たり前。
基本的に初心者では育てるのが難しいサボテンですが、サボテン好きの中には「いつかは黒王丸」と夢見ている方々も多いです。
コピアポア属の多くは、球形から円柱形をしており、そのどれもが個性的な外観で、成長すると高さが3m近くになるものもあります。
表面は硬く、ワックス状の被膜で覆われていることが多く、これが強い日差しや乾燥から身を守る役割を果たしています。
ゆえに、茎肌の色が青みがかった緑色や灰色がかった緑色など、落ち着いた色合いなのも特徴的です。
花もコピアポア属の魅力の一つです。
花は直径2〜3cmと小さく、黄色やオレンジ色をしており、頂部に咲きます。
開花期間は2〜3日で、その間、荒ぶった体と可憐な花の不思議なコントラストで楽しませてくれます。
【代表的な品種】
黒王丸
黒士冠(こくしかん)
逆鱗丸(げきりんまる)
ギガンティア
フミリス
【コピアポア属の価格の相場】
6,000〜200,000円(多肉専門店またはネット通販、オークションサイトでなければ入手は不可)
1属1種系
1属1種系のサボテンは、分類系統学的に調査した結果、単独の種属として分類され、それらは植物分類上とても興味深い存在です。
ゲオヒントニア・メキシカーナやオルテゴカクタス・マクドガリーが有名です。
これら1属1種系のサボテンは、それぞれが非常に限られた地域に生息しており、その特異性は生物多様性の研究においても注目されています。
孤高の佇まいに魅了される1属1種系、我が道を征くアーティスティックな感性のある方におすすめのサボテンです。
【代表的な品種】ゲオヒントニア・メキシカーナ
ゲオヒントニア・メキシカーナは、1992年にメキシコのヌエボ・レオン州で発見され、その発見は植物学界でも話題になりました。
ゲオヒントニアという属名は、この種を発見した植物学者ジョージSの名前に由来しています。
アコーディオンのような特徴的なリブを持ち、青灰色の球形のボディと、昆虫の足のようなトゲが魅力です。
メキシカーナは石灰岩の崖や急斜面に生育しており、極度に乾燥した環境に適応しています。成長はとても遅く、あらゆる面で慎重な管理が求められるため、栽培上級者向けのサボテンです。
【代表的な品種】オルテゴカクタス・マクドガリー
オルテゴカクタス・マクドガリーは、オルテゴカクタスという独自の種属の中の唯一の品種です。
1951年にメキシコのオアハカ州の乾燥した石灰岩地帯で、植物学者トーマスB.マクドゥーガルにより発見され、氏を讃えて米国の植物学者E.J.アレクサンダーにより、発見から10年が経過した1961年に「マクドガリー」と命名されました。
小型で球形、またはやや円柱形の体を持ち、鮮やかなミントグリーンの表皮と美しい黄色の花が特徴です。
メキシカーナ同様に成長のとても遅い品種ですが、小さい株の段階でも旺盛に子を吹き、愛嬌ある容姿を楽しむことができます。
ただし栽培難易度は高いため、上級者向けのサボテンになります。
●マクドガリーは“孤独”ではなかった!
近年、植物学者P.B.ブレスリンの研究で、マクドガリーがマミラリア属やコリファンタ属の血脈を引くコケミエア属であることがわかり、2021年にコケミエア属に移行されました。正確には1属1種のサボテンではなくなりましたが、2024年現在の市場ではまだ1属1種系の扱いとなっているため、本記事ではそのように記述しました。
【1属1種系の価格の相場】
8,000〜50,000円(多肉専門店またはネット通販、オークションサイトでなければ入手は不可)
編集後記
こないだ飲み屋で、私がサボテンのTシャツを着ていたため、サボテンの話になって。
隣の客:「サボテンの何が好きなの?」
私:「トゲですね。」
隣の客:「へぇ〜。トゲのどんなところがいいの?」
私:「刺さるところですかね。」
その時私は、この“刺さる”というのに二つの意味を込めて言いました。
一つは、実際に指に刺さる=痛い
もう一つは、可愛さが心に刺さる=歓喜
私にとってサボテンは、痛みと歓喜をともに与えてくれる稀有な存在なのです。
この感覚、少年の頃の実らなかった初恋にも似ているかな。
ともかく、どんな種類でもよいですから、インスピレーションに従いサボテンを一鉢買ってみてください。
もしかしたらそのサボテンをお世話しているうちに、あなたにも初恋の記憶が蘇るかもしれませんよ。
画像協力
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 編集部員K - ライター・エディター -
フリーランスのロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。精力的に取材、執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂4歳)」に日々翻弄されている。
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