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【ハナキリン(花麒麟)】を徹底解説|多肉植物好きは沼落ち必至!編集部員Kも激推し!

年中花を楽しむことができる多肉植物を探しているなら、迷わずおすすめしたいユーフォルビア・ハナキリン(花麒麟)。無数のトゲを帯びた茎と彩り豊かな花の競演は、特に花が少ない冬のお部屋に彩りを添えてくれます。育て方も容易で、初心者も超ウェルカム! 今回はハナキリンの魅力を徹底解説します!
目次
ハナキリンとは

多肉植物の中でも品種の豊富さで大人気のユーフォルビア属。
正式な学名はEuphorbia milii(ユーフォルビア ‘ミリー’)。
日本ではハナキリン(花麒麟)の名で昭和初期から親しまれてきたため、最も馴染みが深い多肉植物かもしれません。
このため、古くから営まれている街の園芸店などでも容易に手に入ります。
トゲをまとった幹に、色彩豊かな葉、そして重なり合うように咲く赤い花。
一見して「可愛い」見た目は、一鉢あるだけでかなり気分も高めてくれます。

ちなみに私たちが園芸店で入手できるハナキリンの多くは、タネから育てられた実生株ではなく、苗床業者が挿し木繁殖したものです。
つまり、遠い祖先の原種から無数に作られたクローンといったところでしょうか。そのクローンからの品種改良による変種もたくさん生み出され、今もなお増え続けています。
そのどれもが手軽な栽培方法で美しい花を長い期間楽しめ、しかも低価格で入手できるため、そんなコスパのよさが世界中の園芸愛好家たちを魅了しています。
ではハナキリンを詳しく解説していきます。
ハナキリンの基本情報
- 学名:Euphorbia milii(ユーフォルビア・ミリー)
- 和名:ハナキリン(花麒麟)
- 科属:トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物
- 原産地:仏領レユニオン海外県

・大きさ:品種によって異なるものの、概ね20~100cmほどに成長
ハナキリンって、面白い植物なんです。
外見の特徴【茎とトゲ】

茎は細く茶色で、茎には不等間隔でトゲが多数生えています。
このトゲは、新芽を保護する役割を担う目的で現れる「托葉(たくよう)」という器官が、長い年月をかけてトゲ状に変化したものと考えられており、ハナキリンのような茎や枝から直接葉を出す単葉植物の特徴です。
トゲは、出始めたときは美しい赤みを帯びており柔らかく、茎の成長とともに茶色に変わり、硬くなります。

外見の特徴【葉】

写真は原種に近い品種スプレンデンスの葉。
手触りはマットな質感で、肉厚な緑色が特徴的。
他の変種には、小さくて光沢を帯びたものや、細身で斑が入ったヴァリエガータ(写真下)など、葉にもさまざまなバリエーションがあります。

外見の特徴【花】
ハナキリンの花は、茎の成長点付近から伸びた花序軸(かじょじく)、さらにそこから伸びる花柄(かへい)の先端が分岐して、色鮮やかな1対の苞(ほう)を成し、その中心に杯状花序(はいじょうかじょ)という微小な花が咲くという、ちょっと複雑な構造になっています。


しかし、鮮やかに色付いた苞そのものが一見して花にしか見えず、苞を花と勘違いしている人も多いのではないでしょうか。
ハナキリンの花を初めて見た方に「じつはこの中心にある小さいのが花なんですよ」と説明すると大概びっくりされます。
花期はとても長く、成長期の春から秋、場合によってはクリスマスシーズンに咲いていることも。
ちなみに下の写真はこの記事を作っている1月上旬の状態ですが、新たなつぼみもどんどん生まれてきています。

花の色は、最もメジャーなのが赤やピンクですが、白い苞の中に黄色い花を咲かせる「ルレア」や、園芸用に品種改良された「八福神」などはグラデーションや斑模様など、さまざまな花色のものがあります。

外見の特徴【総合的な樹形】
地植えや野生の株、また実生株(種から育てた株)は分枝しやすく、樹形が縦にも横にも広がっていくため、庭木や生垣に使用されたりもします。
対して、園芸品種として市場に出回っている株は挿し木繁殖されたもので、それらは縦に長く成長していく特徴があります。

Pix: Ritchie Porch/flickr.com

共に縦に真っ直ぐ伸びていくが、このヴァリエガータは脇芽をたくさん出している。
名前の由来や花言葉
ハナキリン(Euphorbia milii)はマダガスカル島から800km東に位置する仏領ブルボン島(現レユニオン島)で、同島の知事をしていたフランス海軍提督ピエール・ベルナール・ミリウス男爵により発見され、1821年、男爵は標本を本国フランスに持ち帰りました。
そして1826年にフランスの植物学者シャルル・デ・ムーランが男爵に敬意を表し、その名ミリウスにちなみEuphorbia milii(ユーフォルビア ‘ミリー’) と名付けました。

出典:INTERNATIONAL EUPHORBIA SOCIETY
ちなみにハナキリンはマダガスカル中北部のマエバタナナ地域にも自生していて、現地ではSongo Songo(ソンゴソンゴ)と呼ばれ、境界の生垣としても活用されています。
ハナキリンは欧米の園芸店では、Crown of thorns(イバラの冠)やChrist’s plant(キリストの植物)、Christ’s thorn(キリストのイバラ)という通称で販売されているのが一般的です。
この通称は、ハナキリンのトゲを帯びた茎を、「イエス・キリスト受難」の象徴であるイバラ(荊)の冠になぞらえたことに由来します。
「イエス・キリスト受難」とは、イエス・キリストが異教徒として裁かれ、イバラの冠をかぶらされ十字架につけられて死亡したことを指します。
また、死に至るその瞬間までイバラの冠のトゲの痛みにも耐え抜いたことから、ハナキリンには「Bear up under adversity(逆境に耐える)」という花言葉が付けられています。

Pix:Wikipedia.com(宗教画家El Grecoの1580年の作品「Christ carrying the cross with the crown of thorns」より)
和名のハナキリンの由来は諸説あり、現在は、トゲと葉が混在している見た目がサボテン科の「モクキリン(杢麒麟)」に似ているため、という説が有力とされていますが、実際に調査してみると、むしろハナキリンのほうが先で、モクキリンのほうがハナキリンに似ているためそう名が付いたのではないか、と唱える方もいました。

しかし、共に中国神話に登場する伝説の獣「麒麟(キリン)」を和名に入れていることから、麒麟は竜の顔と牛馬の胴体を持つハイブリッドな獣のため、トゲと葉が混在するところをそれに見立て、かつ、平和な世に現れるという麒麟伝説の縁起にあやかり、その名前をつけたのではないか、と私個人的には推察します。
このようにネーミングの由来が諸説紛紛するのも、ハナキリンの面白いところですね。
ハナキリンの育て方【おさえるべきポイント】
ハナキリンは基本的にとても育てやすい多肉植物です。
しかし、健康な株に育て上げるにはいくつかのコツを会得しなければなりません。
ここからは、ハナキリンを健康な良株に育てるための方法と、おさえるべきポイントをご紹介します。
栽培に適した環境作り
ハナキリンは太陽が大好きな植物。

【POINT】春夏は直射日光をたっぷりと。
成長期の春から秋は、屋外のよく陽が当たる場所で管理してください。
よほど小さい株でない限りは、昨今の夏の強烈な陽射しも問題ありません。
ただ、最初は葉焼けを起こしていくつかの葉が落ちるかもしれませんが、ずっと置いておけば徐々に強光線に耐性のある葉が生えてくるので心配いりません。
【POINT】12℃を区切りに屋内管理する。
晩秋、夜間の気温が12℃を下回るようになったら屋内に取り込んでください。
屋内に取り込んだら、エアコンの風が直にあたらない場所で管理してください。
エアコンの風が直にあたる場所で植物を育てると、生育不良を起こし、高い確率で枯れる可能性があるからです。
ハナキリンは強いので0℃の環境に数日置いても枯れることはなく、むしろ寒気にあてて休眠させたほうが翌春の開花も旺盛になりますが、初心者の方には若干リスクが伴うため、休眠させずに12℃以上の環境を保つことをおすすめします。
休眠に関しては後述します。
【POINT】真冬は屋内管理が原則。
12月下旬〜2月の厳冬期は基本的に24h屋内管理となります。
置き場所は、日中の陽当たりがよい場所がよいでしょう。
しかし、この時期は日照不足になりがちなため、15時から20時くらいまでは後述の植物育成LEDライトを併用すると生育に効果的です。
【POINT】環境次第では植物育成LEDライトの使用を検討。

陽当たりが悪い場所で管理するとヒョロヒョロと不健康に成長する「徒長」を起こし、開花しない、病害虫が発生するなどのトラブルが発生しやすくなります。
このため、陽当たりが確保できない場合は、午前中から日没までの間、植物育成LEDライトを用いた屋内管理を検討しましょう。
おすすめは演色評価数 (CRI値)が最大値の100に近い“フルスペクトルLED”搭載のランプ。
この仕様は太陽光と性質が近い高精度な光を照射するため、日照不足を良好に補ってくれます。
植物育成LEDライトもさまざまな商品が出回っていますが、目安としては1鉢あたり15〜20W程度のランプ1灯、という感じで選ぶとよいと思います。
ただし、生育にメリハリをつけるために、夜間は消灯してください。
サーキュレーター使用のすすめ。

24h屋内管理となる厳冬期は特にですが、多肉植物は周囲の空気が滞留していると害虫がつきやすくなります。
このため、サーキュレーターを回して室内の空気を循環させ、より自然環境に近い環境を作ってあげましょう。
ペットのいるご家庭へ

ハナキリンは、葉や茎を傷つけると白い乳液状の樹液を出します。この樹液にはホルボールエステルという成分が含まれており、この成分は犬や猫の消化器系に対して毒性があるため、口にした場合はよだれや嘔吐、下痢を起こす可能性があります。
犬も猫も茎にはトゲがあるので危険なものと認識して近寄らない場合が多いですが、万一口にした場合は速やかに動物病院を受診してください。
※一般的にユーフォルビア属の多くはペットに対する毒性があるとされていますが、当連載で指針にしている米国動物虐待防止協会のANIMAL POISON CONTROL (ペットに対する有毒無毒リスト)にハナキリンの記載がないため、直接連絡してハナキリンの毒性有無の確認を行いました。
・アメリカ動物虐待防止協会ANIMAL POISON CONTROL/Toxic and Non-Toxic Plants List (ペットに対する有毒無毒リスト)
用土

ハナキリンは多肉植物なので、基本的に用土は水はけのよいものを好みます。
植え替えなどの際、用いる土は市販の「多肉用培養土」や「サボテン用土」などで大丈夫です。
自分で配合する場合は、全体を10として、
- ベースになる赤玉土(小粒)=3
- 鹿沼土(小粒)=3
- 水はけをよくするための日向土(小粒)=1
- 土の質を上げるくん炭=1
- 保水・保肥力を上げ雑菌の繁殖を抑えるバーミキュライト=1
- 栄養分として堆肥=1
という配分がおすすめです。
休眠について
休眠とは
自生地での野生のハナキリンは乾季になると休眠します。
休眠中のハナキリンは、溜め込んだ水分が葉から逃げないように全ての葉を落とし、また、根の吸水力も落として、エネルギー消費を極限まで抑え込みます。
園芸品種は休眠させるかどうかを自分で選ぶことができます。
日本の乾季は冬にあたるため、休眠させるかどうかの判断は秋口までにはしておきましょう。
ただし、休眠させても、させなくてもそれぞれメリット&デメリットがあります。
【POINT】休眠させるメリット&デメリット
メリットは、自然界では本来休眠をするため、ちゃんと自然に即した成長リズムを与えて育てると、比較的早いペースで大きくなり、幹も極太で花数が多い株に育っていきます。
デメリットは、管理方法を誤ると休眠から醒めずに枯死してしまうことも。
特に、成長期に日照不足などにより成長不良を起こしている場合は、その傾向が多いです。
何よりも、長期間葉を全て落としたまま動きがないため、初心者にとっては本当に春になったら起きてくれるのか不安に思うでしょう。
後述しますが、休眠中は水やりにもコツが伴うため、初心者の方は、最初の冬は休眠させずに越冬することをおすすめします。
【POINT】休眠させないメリット&デメリット
メリットは、冬の間も花を咲かせ続けるため、花が少ない冬の室内に彩りが加わります。
デメリットは、休眠させる株に比べると成長が遅く、花数も休眠を経験させた株ほどは多くならないです。
水やり

成長期の水やりは乾いたらすぐ
成長期の春〜秋は、用土表面が乾いたら、鉢底穴から水が勢いよく流れ出るくらいたっぷりと水をあげます。
たっぷりとあげることにより、根回りの老廃物を鉢底穴から押し流し、鉢内をリフレッシュできます。
夏季の水やりは、鉢内が蒸れないよう日没以降に行ってください。
冬の水やりはちょっと特殊
※休眠の有無によりやり方が異なります
【POINT】休眠させる場合の水やり方法
秋になったら徐々に水やりの間隔をあけていってください。
日照時間の変化や気温差がスイッチとなって、株は徐々に休眠モードに入って行くので、12月下旬〜2月は断水“気味”にします。
“気味”というのは、完全に渇水させるのではなく、2週に1度は霧吹きで用土表面が湿る程度に湿らせてあげましょう。そうすることで、末端の細根が枯れずに、翌春の立ち上がり(目覚め)が良くなります。
3月に入ったら霧吹きからじょうろに戻し、最初は鉢に「の」の字を描く程度から始め、徐々に増やしていきます。
【POINT】休眠させない場合の水やり方法
休眠させないとはいえ、株は日照時間や気温の微妙な変化で乾季を察知し、活動が緩慢になるため、水やりは土が完全に乾いてから4〜5日経ってからたっぷりとあげる、といったサイクルにしてください。
竹串を使うと、土の中の湿った状態が分かるので便利です。

肥料
多肉植物の多くは施肥をしなくても、管理場所の条件さえ良ければ市販の培養土に含まれている栄養素のみで十分に育ちます。
ハナキリンも同様ですが、施肥を行う場合は微量の肥料のみで十分です。
あげすぎて過肥になると開花しないなどのトラブルが起こるため、注意が必要です。
施肥を行う場合は、3月下旬から11月までの成長期限定で、月に1回ハイポネックスなどの液体肥料をあげましょう。
冬の間は施肥は行わないでください。

液体肥料は希釈して使用するため、慣れていない方はどの程度希釈すればよいか迷うところですが、ハナキリンの場合、2Lのペットボトルに1ccが目安。
計量道具がない場合は、市販の飲料(国産メーカーに限る)のペットボトルのキャップ内側のラインまでで1ccなので、目安になると思います。(写真上)
活力剤
成長期は月に2度、休眠させない冬は月に1度、活力剤「メネデール」をあげると根を強くする効果が期待できます。
あげ方は動画を参考にしてください。
休眠させる場合は、2月に入ったら、用土表面を湿らせる際に霧吹きのタンクにごく少量(3滴くらい)を垂らしてあげてみてください。
そうすることで、春の立ち上がりも良くなる傾向があります。
植え替え
購入時は基本的に植え替えをする必要はありませんが、お気に入りの鉢で育てたいなど、購入と同時に植え替えをする場合は極力細根を落とさず、そのまま移植しましょう。
【POINT】2年に一度は植え替えをしよう
2〜3年ほど経つと根詰まりを起こし、栄養不足や土の団粒構造の維持が難しくなります。
このため、購入後2年が経過したら、以降は2年に1度のペースで新しい土に植え替えを行ってください。
適期は、日中の気温が温暖で湿度も少ない4〜5月の間で、現状より一回り大きな鉢に植え替えます。
方法は、古くなった細根と共に土を半分くらい落としてから新しい鉢に植え替え、そのまま半日陰の場所で管理し、1週間程度経ってから水をたっぷりあげます。
その際、メネデールを希釈した水をあげると、発根促進につながります。
10日くらい経ったら直射日光にあてても大丈夫です。
【トゲで怪我をしないために】
トゲトゲのハナキリンを素手で扱うのは危険なので、バラやサボテンなどのトゲものを扱うための園芸用グローブ(手のひらの部分の生地が肉厚になっている)などを使用するのをおすすめします。
ホームセンターで販売している皮革製の工業用グローブなんかもおすすめです。
特に、写真下の鋼管作業用のグローブはかなり肉厚のスエード製で、園芸用のものよりもトゲに強いので、トゲものを扱うことが多い方には重宝すると思いますよ。
日常のお手入れ
【POINT】咲き終わった花は摘み取る。
ハナキリンは開花の頻度が高いため、次に出てくる芽の邪魔にならないよう、咲き終わった花は摘み取りましょう。
映像のように自然に摘み取れますが、花序軸はカットします。
摘み取った花柄は、乾燥させると赤みが深くなり、ワインレッドのような美しい濃い赤になるため、そのままドライフラワーとして、またポプリとしても楽しむことができます。
ちなみにポプリとは乾燥した花にエッセンシャルオイルを染み込ませて香りを楽しむもので、我が家でも乾燥したハナキリンの花にジャスミンのエッセンシャルオイルを染み込ませて、お手洗いを香りで飾っております。
剪定のすすめ
ハナキリンはひたすら上へと比較的早く成長していきます。
通常の植物は上へ伸びると幹が太くなりバランス良く見えるのですが、ハナキリンは横方向への成長が鈍く、伸びすぎるとヒョロっとした感じになるため、バランスを崩すと鉢ごと倒れる可能性も。
このため、伸びすぎた茎はカットし、切り戻しをすることをおすすめします。
わりとガッツリと強剪定をしても問題ないです。
そうすることにより幹が太くなりますし、分枝もしやすくなるため、横方向へと樹形を広げていくことができます。

何度か剪定し手慣れてくると、自生地で生えているようなワイルドな樹形に仕立て上げて楽しむこともできます。
ただし剪定は新芽が出やすい春〜夏に行ってください。
【樹液には要注意!】
剪定の際に注意しなければならないのは樹液。
この樹液がペットに対して有害であると前述しましたが、じつは人に対しても有害で、樹液の成分ホルボールエステルは皮膚がんの発生因子であることがわかっています。
また、過去には目に入ったことにより失明に至った事例もあります。
このため、剪定はゴム手袋などをつけて行い、万一樹液が肌に付着した場合は速やかに石鹸で入念に洗い流してください。
花柄を曲げた際に若干折れただけなのに、溢れるように樹液が出てくる。
注意すべき病害虫
カイガラムシは要注意!
ハナキリンは基本的に病害虫に強い品種です。しかし「栽培に適した環境作り」でも述べたように、部屋の空気が滞留していると、カイガラムシやハダニがつきやすくなります。
【POINT】風通しのよい環境で病害虫知らず
特にカイガラムシは厄介で、生きている時は見つけにくく、見つけた時は糞や死骸という場合が多いのです。
この場合、爪楊枝やピンセットを使い、地道な作業で頑固にこびりついた残骸を剥がし落とすしかないので、そうならないためにもできるだけ風通しのよい環境で育てましょう。
ハナキリンを挿し木で増やす
ハナキリンは挿し木で増やすこともできます。
挿し木のやり方10ステップ

1〜2カ月もすれば発根し、芽吹くなどの変化を見せるので、その後は通常の育て方で大丈夫です。
挿し木の作業を行う時は、樹液が手に付着しないように必ずゴム手袋などを着用してください。
ハナキリンの種類
ハナキリンは可変種のため品種改良が盛んで、現在確認されているだけでも30品種ほどあり、実際には100品種に近いともいわれています。その中でも人気の品種を紹介します。
スプレンデンス

最も人気なのが1955年にフランスの植物学者ジャック・デジレ・レアンドリによって登記されたEuphorbia milii var.’splendens’(ユーフォルビア・ミリー・スプレンデンス)。
原種に最も近く、現在市場に流通しているハナキリンといえば、これを指す場合が多いです。
花は赤く、直径1cmほどあるため、苞の直径も3〜4cmと大きく、一気に咲くととても見応えがあります。
煌めきや神々しさを意味するSplendensの名の通り、花も葉も、そして茎に無数に生えるトゲの雄々しさも、まさに代表品種にふさわしいハナキリンです。
市場流通価格は全長が25cmくらいの株でおよそ1,500円くらいですが、手のひらサイズの株をダイソーが300円で販売しているとの情報も。
ちなみにスプレンデンスは英国のガーデニング慈善団体である王立園芸協会でガーデンメリット賞を受賞しています。そんな栄誉ある植物が安価に買えるのは、これはもう買いですね!
ダイソーの300円には驚きですが・・・。
ヴァリエガータ(ハナキリン錦)

園芸用に品種改良されたEuphorbia milii var.’Variegated’ syn. Variegata(ユーフォルビア・ミリー・ヴァリエガータ)は、Fireworks Crown of thorns(トゲ冠の花火)との異名が示すように、斑模様を帯びたライムグリーンの美しい葉と、小さな赤い花が、まるで花火のように鮮やかさを競い合う、ちょっと珍しいタイプのハナキリンです。
日本では花麒麟錦というとても雅やかな和名がついています。
価格はベーシックなスプレンデンスに比べてちょっと高めで、同程度の大きさのものでも約2倍の価格がしますが、実店舗もネット通販もSOLD OUTが多いので、興味がある方は見つけたら即買いがおすすめです。
ジェロルディー

トゲナシハナキリンの名でも知られているジェロルディー(Euphorbia geroldii)は、厳密にいえばハナキリンとは異なる品種なのですが、その名の通りトゲのない“ハナキリン”として世界中で親しまれています。
海外ではThornless Crown of Thorns(トゲのないイバラの冠)と呼ばれ、トゲがないので生垣にも用いられています。
耐寒性が弱いため、日本では本州での地植えは難しいですが、年間通して温暖な沖縄だと地植えすることも可能です。
写真(上)は沖縄の出版社「ボーダーインク」がInstagramに投稿した、地植えのトゲナシハナキリンを生垣にしている風景ですが、こんなにも旺盛に育つのですね!
ちなみに本種はマダガスカルの固有種で、自生地での個体数減少により2004年にIUCN(国際自然保護連合)により絶滅危惧種に指定されています。ただし、園芸品種として市場に流通している苗は問題なく購入でき、値段も2,000円前後とお手頃なので、トゲが苦手だけどハナキリンを育ててみたい、という方にはおすすめです。
ハナキリンをSNSで楽しもう!

世界のハナキリン好きの皆さんは、どんなもんなのかな、と#euphorbiamiliiでのぞいてみたら、3.8万もの投稿が!
さてどんな方々がいるのでしょうか? 興味津々です!
ivet.suculentasymas

まずは、アメリカ南東部に位置するノースカロライナ州から。
写真のイベットさんはメキシコ出身の園芸家で、ものすごい多くのハナキリンを育てておられる、まさにハナキリンのエキスパート!
ご自身の園芸のノウハウをYouTube(全編スペイン語)でも紹介しており、そのチャンネル登録者数はなんと 69.6万人!
そんなイベットさんに尋ねてみたところ、ハナキリンは特にラテン系の方々に人気だそうで、イベットさん自身はハナキリンの丈夫さと1年中花が咲いているところに惹かれたのだとか。
ちなみにイベットさんが持っているピンクの大輪が美しいハナキリンは、日本では八福神寿老人(ジュロウジン)という小種名で、2,000円前後から購入することが可能です。
「ガーデンストーリー読者の皆さんとも、ぜひハナキリンの素晴らしさを共有したいです!」と、お気に入りの株の写真と共にメッセージをいただきました。

laterrazadelkoala

お次は、島自体がユネスコ世界遺産のイビザ島(スペイン)から。
写真の「aterrazadelkoala」(以下コアラテラスさん)さんは、この日購入したばかりのハナキリンを満面の笑みで紹介してくれています!
お話を伺ってみたところ、コアラテラスさんは、ハナキリン以外にも多肉植物が大好きとのことで、確かにInstagramの他の投稿を拝見すると、サボテンなどとお茶目に戯れている投稿が多数あり、とても楽しげなお人柄がうかがえます(笑)。
スペインでもハナキリンは大人気で、花を多く付けた株はすぐに売り切れてしまうのだとか。
そんなハナキリンの色彩美に惚れ込んだコアラテラスさんから「ガーデンストーリー読者の皆さん、1年中花が咲いているハナキリンで、お庭を彩って楽しみましょう!」とのメッセージをいただきました!
mustafaatun

最後は、地中海東部の島国、キプロス島(キプロス共和国)から。
キプロスの大自然を撮り続けているMustafa Atun(以下ムスタファ)さんの撮った地植えのハナキリンは、お見事以外言葉がありません!
乾燥気味で温暖な地中海性気候は多肉植物にとっては天国みたいなものなので、まるで原産地のごとく、かくもワイルドに育つのでしょうね。
旅が大好きなムスタファさんは現在も長期の旅に出ているそうで、そんな中、写真掲載の許可をいただきました。
キプロスでは街路樹としてもハナキリンを見ることができるようなので、この空と緑と赤の美しい光景、ぜひ生で見てみたいものですね。
ムスタファさん、よい旅をしてください!
編集後記:ハナキリンを温かい場所で育てて愛らしい花を楽しもう!
いかがでしたか? 今回はタイトルにもあるように、私個人的に激推しのハナキリンの大特集をお送りしました。
いかにも多肉植物! という感じのトゲを帯びた茎に、まるで花火のように艶やかな花と葉のコントラスト。
夏は屋外で野生的に、冬場も休眠を避け暖かい場所で管理すれば、年中その美しい花を楽しむことができる稀有な多肉植物なので、これからハナキリンをはじめたいという方はもちろん、既に育てている方も、ぜひ違う品種でその楽しみを倍増させてほしいですね。
私自身も本記事でたびたび写真に登場した「スプレンデンス」と「ヴァリエガータ」を育てていますが、執筆中この2株に目をやるたびに、なんかこう、愛情が増してきまして(笑)。
最後にご紹介したムスタファさんのInstagramの写真のような壮大な株に仕立て上げたいな、と思いました。
道は遠いですが・・・。
この記事を読んでハナキリンをぜひ育ててみたい! と思っていただけたらすごく嬉しいです。
多肉植物狂い、次回特集もお楽しみに!
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 編集部員K - ライター・エディター -

フリーランスのロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。精力的に取材、執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂6歳)」に日々翻弄されている。
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