おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-
おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-の記事
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宿根草・多年草
ユリが主役の夏の庭・ユリを害虫から守る方法
バラの後に夏の庭の見どころを作ってくれるユリの花 バラの花が終わり、6月に入ると雨が続き、梅雨の晴れ間にはいきなり気温が30℃以上になるので、庭の花たちには厳しい季節です。バラの頃は何もかもが美しく咲いてくれて、どこを見渡してもきれいな庭風景でしたが、夏へ向けてはそうはいかないものです。虫も出てきますし、うどんこ病や黒点病なども出てきて、葉っぱがかじられたり黄色くなったり…。蒸して暑い日本の夏は、頑張って庭仕事をしていても、虫も病気も出るもの。庭全体をきれいに保とうとすると、とても労力がかかり庭づくりが嫌になってしまうかもしれません。ですから、夏は庭のところどころに見どころをいくつか作っておくような庭づくりをしています。するとそちらに目が向き、庭がきれいに見えるのです。視線を集中させるものをフォーカルポイントといいますが、夏の庭ではユリがその役目を果たしてくれます。 ユリの種類・花の咲き方によって植える場所をセレクト ユリの種類はとても多くて、花の雰囲気もかなり違います。上の写真は、スカシユリ系の品種です。1茎から何輪もブーケのように咲いて、ボリュームたっぷり。球根を植えて5年くらいしたら、分球してこんなにたくさん花を咲かせるようになりました。5月はピンクや赤いバラがたくさん咲いている場所を、夏はこのユリが代わって華やかに彩ってくれます。庭の奥のほうですが、草丈も私と同じくらいの高さになり、待合室の窓からも、よくピンクの花が見えます。 この花はシャンデリアリリー。スカシユリと比較すると華奢で、細い花茎を伸ばしていくつも花を咲かせます。あちこちを向きながら下から咲き上がる花々は、まさしくシャンデリアのようで、本当にワクワク。繊細で素朴な雰囲気もあり、とても気に入っているユリです。アオダモの側に植えていますが、葉陰がちょうどよいようで、球根を植えて3年目ですが、よく増えてあちこちから出るようになりました。 黒いユリは1茎に1〜2輪しか花を咲かせませんが、シックで落ち着いた雰囲気を庭にもたらしてくれます。この不思議な花色が魅力的に見えるよう、白花のアジサイ‘アナベル’の手前に植えたり、同色のリシマキア・アトロプルプレアと一緒に咲かせたり、いろいろ工夫してみています。 ユリの害虫「ユリクビナガハムシ」にご注意! ユリは植えっぱなしで何年も咲いてくれる丈夫な花ですが、一つだけ注意しないといけないのが「ユリクビナガハムシ」です。じつはある時、この虫にとんでもない目にあわされたことがあります。暖かくなるにつれ、ぐんぐんとユリの茎が伸び、つぼみがつき始め、花を楽しみにワクワクしながら暑さの中で庭仕事をしていたある日のこと。翌朝、庭を訪れてみたら、突如として庭のすべてのユリのつぼみが一つもなくなっていたのです。一つも! 何が起きたのかさっぱりわからず、目がパチパチ。でも、原因はすぐに分かりました。犯人がそこにいたのですから。それが「ユリクビナガハムシ」です。幼虫は泥を背負ったような格好で(実際は自分のフン!)、成虫は赤褐色の艶々した甲虫です。米子のすぐ隣の島根県農業技術センターの病害虫データによると、「市販の病害虫解説書には全く触れられていない」ほど、あまり知られていない害虫だということですが、成虫も幼虫もユリを食害するユリ専門の害虫です。体長1cmほどの小さな虫ながら、株を丸坊主にしてしまう大食漢。「このユリはあなた方の食用に育てているんじゃないの!」と怒ってみたものの、時すでに遅し。その年はユリの花を一輪も見ることができませんでした。 ユリの害虫対策は「オルトランDX粒剤」と「ベニカXネクストスプレー」 前述の病害虫データによると、この虫は4月下旬頃から現れるそうです。私はユリのつぼみができ始める少し前に、殺虫剤の「オルトランDX粒剤」をユリの株の周りにまきます。さらに念には念を入れて、「ベニカXネクストスプレー」もつぼみにスプレーしています。以来、私の庭ではユリクビナガハムシの被害にあうことなく、毎年きれいな花を咲かせてくれています。インスタグラムにユリの写真を載せた際、同じ被害にあわれて、もうユリを抜いてしまおうと思っている、という方がいらっしゃいましたが、私には本当にその気持ちがよく分かります。ユリの球根は秋に植え、花が咲くまでに7〜8カ月間もかかるのです。 病害虫はガーデニングをしていれば必ず遭遇することなので、私はあまり完璧に防除しようとは思っていません。バラなどもバラゾウムシにやられてつぼみを落としてしまうものもありますが、それでも残った花で十分楽しんでいるくらいです。でも、ユリクビナガハムシといったら一輪も花を残しておいてくれないのですから…。植物を丸裸にしてしまうような虫は、庭での共存が難しいタイプです。 ユリの花後の手入れ方法 ユリの花が終わったら、1/3くらい茎を残して切ります。残った葉茎で光合成し、栄養が球根に届けられ球根が太っていきます。だから特に施肥をしなくても大丈夫。その後、秋になって茎が枯れてきたら、株元からポキッと茎を折り取ります。地上部は全く何もなくなりますが、球根はそのまま土中で冬を越し、来春になるとまた芽が出てきます。スカシユリ系のユリは、まるで竹の子のように春になるとニョキッと土の上に芽をだしてきます。その力強い芽を見ると、「あっ!また会えた!」と嬉しくなります。さまざまなことが不安定な世の中にあって、季節が巡れば必ず芽を出し、花を咲かせてくれる庭の植物たちは、癒やしそのものです。
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一年草
ポピーってかわいい!まるでバレリーナのスカートのように咲くポピー
古くから親しまれている素朴な花、シャーレーポピー シャーレーポピーは、今年初めてチャレンジした花です。特に新しい花ではなく、古くから親しまれている「ヒナゲシ」という和名は、アグネス・チャンの歌でもよく知られていますよね。昨年、初めて苗を見かけて買いましたが、咲いてびっくり。虞美人草(グビジンソウ)という中国の伝説の美女の名前が別名になっている通り、あまりのかわいらしさに、すっかり虜になってしまいました。 バレリーナのスカートにぴったりだと思いませんか? シャーレーポピーは花径が7〜8cm、存在感がありながらも、とても華奢な雰囲気で咲きます。花びらはシフォン生地のようにごく薄く、花を逆さにしたらバレリーナのスカートにぴったりだと思いませんか? 朝日が射すと光を通してシベや花弁の重なりが影絵のように映し出され、なんともメルヘンチック。 シャーレーポピーはもともと一重の赤色の花ですが、交雑しやすいようで、さまざまな花色が出ます。コーラルピンクや白とピンクのバイカラー、朱色、白の八重咲きなど、実際に咲くまで、こんなにいろいろな色があるとは思わなかったので、花が開くたびにびっくり、感動、ため息の連続。大人になって、こんなに毎日胸が躍ることがあるなんて、なんて幸せなんでしょう。こうした自然からのサプライズプレゼントがあるから、庭づくりはやめられません。 シャーレーポピーは一年草で、ちょうどバラと同じ頃に咲きます。うつむいたつぼみは白い毛で覆われており、この白鳥の首のような優雅な姿も可愛いのです。つぼみがだんだん上向きになってくると、もうすぐ開花という合図。咲く前日のつぼみは天を向いています。そして緑のつぼみがパカッと2つに割れて、花が開きます。開いたばかりの花は、真ん中の写真のようにクシュクシュと折り目がついています。あの緑のつぼみの中に、花びらが小さく折り畳まれてしまわれていたのだと思うと、本当に面白いです。数時間後には花びらはピンときれいになり、少しずつ花色も変化していきます。 バラとの共演にもぴったりなシャーレーポピー シャーレーポピーは草丈が70〜80cmくらいで、ちょうどこの庭に植えている木立ち性のバラと草丈が合うのも魅力です。低すぎても花が共演できませんし、高すぎればバラがかげってしまいます。その点、シャーレーポピーはバラよりやや低めくらいで咲いてくれるので、共演にぴったり。彩りとしてしっかり活躍しながらも、茎が細く花の雰囲気も繊細なので、目立ちすぎることもなく、バラとの相性が抜群にいいのも発見でした。 写真の左端に見えるバラは、オールドローズの‘ジャック・カルティエ’。私はこのピンク色の花が大好きなのですが、まるでこの花色に合わせるように、白とピンクのグラデーションのシャーレーポピーが咲いてくれました。ここに真っ赤なポピーが咲いていたら、また違った雰囲気になると思いますが、つぼみが開くまでは何色か分からないのでドキドキします。足元のピンクの花はゲラニウム、ブルーの花はデルフィニウム‘チアブルー’などです。この少量のブルーの小花もバラやほかの花々を引き立てる名バイプレーヤー。これらの花のお話もまた改めてご紹介しますね。 華奢なシャーレーポピーの育て方 シャーレーポピーの苗を園芸店で見つけたのは、冬。米子は冬に大雪が降ることがあるので、しばらく自宅で苗を養生し、春を待って3月に植え付けをしました。ビオラの株間にシャーレーポピーの苗を置いていっているのは、この庭をデザインしてくれたガーデンデザイナーで、私のガーデニングの師匠でもある安酸友昭さん。安酸さんは花の植え替え時に庭に来てくれて、2人で役割分担しながら庭づくりをします。といっても、安酸さんはいつも苗を置く係で、私は植え付ける係です。みなさん、置く係のほうが断然楽だと思いませんか? でも適当にポンポン置いているように見えて、ちゃんと5月の景色を計算しながら配置しているので、これはとても大事な仕事なのだと安酸さんは言います。う〜ん、5月の庭を見れば納得せざるを得ません。 しばらく小さなビニールポットで養生していた苗は、ポットの中で根がグルグル回っています。このまま植えるとなかなか根が広がっていかないので、少し崩して伸びやすくしてから植えます。米子は春に強い風が吹き、植えたばかりの幼苗がクタッとなることがあるので、私はバケツの中に水を張って、そこにドボンと苗をポットごとしばらくつけてから、根を少し解いて植え付けます。その際、メネデールという植物活力液を水に薄めて入れています。根の伸びが促進されて、活着が早いようです。 https://gardenstory.jp/gardening/68481 4〜5月にかけて、細い茎が伸びてきます。この細さがシャーレーポピーの魅力でもあるのですが、風が強いと倒れてしまうこともあるので、この庭では倒れそうな株には支柱を添えています。しばしば公園などでポピーが見事に群生している風景がありますが、群生している場合は株同士が支え合って倒れる心配はありません。でも、この庭ではバラやほかの草花の間に、あまりぎゅうぎゅうにならないように植えているので、この細い茎では立っていられないこともあります。支柱はなるべく竹などの自然素材で、目立たぬように草丈に応じて変えます。以前、どうせ大きくなるのだから初めから高い支柱でいいやと思って立てたら、安酸さんに「これじゃあ、花を見てるんだか、支柱を見てるんだか分からん庭ですね」とダメ出しをされました。以来、あくまで支柱は目立たぬように気をつけています。 来年は種まきからシャーレーポピーに挑戦! 来年はもっといっぱいシャーレーポピーを植えようと思っています。でも安酸さんにその話をしたら、「シャーレーポピーの苗はあまり流通してなくて、そんなにたくさん入ってきませんよ」とのこと。それなら自分で種を播くしかありません。今年最後に咲く花に種をつけさせて、種採りをしてみようかなと思っているところです。こぼれ種でも咲くそうですが、この庭は植え替え時に土を耕してしまうので、どれだけ残ってくれるか分かりません。種まきをして苗を作ったほうが確実です。シャーレーポピーの種まきは9〜10月。みなさんも一緒にチャレンジしてみませんか? そしてどんな花が咲いたか、来年の春、みんなで教え合えたら楽しそうですね。
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みんなの庭
木漏れ日のなかで咲く5月のバラ
バラと草花が共演するクリニックの庭 5月の庭はバラが主役です。入り口のアーチや壁をつるバラが覆い、庭の中にもたくさんのバラが咲きます。でも、バラ園のようにバラだけを咲かせるのではなく、さまざまな草花と共演させるのがこの庭のスタイルです。自然の美しさには、人を癒やす力があると私は思っています。それは、私自身が忙しい看護師時代にそうだったから。この庭も、できるだけ自然に近い美しさを表現できるように心がけています。 自然風を演出するための植物のコントロール 実際のところ、庭を「自然風」「ナチュラル」に演出するのはそうたやすくはありません。「自然風」は、自然のままに放っておいてはできないからです。まず、たくさんの種類があるバラの中から、この庭に似合う少し野趣のあるバラを選び、開花期の合う草花を選び、いい具合に茂るよう植え付けのタイミングを見計らって植えます。 「いい具合」というのは、草花の中には旺盛に茂りすぎて、バラを覆い隠すように咲いてしまうものがあるので、そうならない程度に生育してもらうよう植えどきをコントロールするのです。例えばイギリスのお屋敷の庭のように広大なスペースがあれば、思う存分育ってくれて構わないのでしょうが、ここは両脇を公道に挟まれた三角地帯で、広さは限られています。その中で多種多様な草花を咲かせるには、1種だけに盛大に育ってもらっては困ります。あるときは、ワスレナグサが繁茂して庭中が青く染まってしまい、抜くのに一苦労しました。というように、庭づくりの失敗談も含めて、これからこの庭の四季と舞台裏を皆さんにご紹介していきたいと思います。 コントロールできない自然の事象こそ庭の癒やし 庭の植物にはコントロールが不可欠ということを教えてくれたのは、私のガーデニングの師匠で、このガーデンをデザインしてくれた「ラブリーガーデン」の安酸友昭さんです。安酸さんの「咲きすぎとるがん、抜かなあかんです」という言葉を初めて聞いたときは、衝撃的でした。きれいにいっぱい咲いているものを抜くなんて、私には思いもよらぬことでしたから。 しかし、「咲けばいいというもんではないですがん。庭の美しさは、植物だけで成り立っているわけではないんです。草花をそよそよと揺らす風や、葉の間からこぼれる木漏れ日、花の陰影、飛び交う虫たちや鳥の声。人にはコントロールしきれないそういう自然の事象こそが、美しさや癒やしにつながるんです。花がぎゅうぎゅうに咲いてたら、風にも揺れんし、陰影もできませんが」と言われて、いたく納得。 庭の美しさの所以は、どこにあるのか。普段はとても寡黙な人なのですが、じつは常にそういう目で庭を見て考えているんだな、と感心した瞬間でもありました。こんな素晴らしいガーデナーに指導を受けながら庭づくりができるのは、とてもラッキーなことではありますが、大変ダメ出しも多く「なんでダメなん? だったら最初から教えといてくれたらいいがん(面谷)」、「面谷さんなら言わんでも分かると思いましたがん、まだまだでしたね(安酸)」と、いつも言い合いをしながら庭仕事をしています(笑)。 バラのセレクトは、基本的に私の好みです。香りがあり、草花とも相性がよく、どこか儚げだったり、野趣があったり、やわらかい雰囲気で咲くものが好きです。たくさんのバラを育てていると、そうした微妙な花の雰囲気の違いが分かって、好みができてくるものです。分かりやすいのは、花屋さんで売っているバラとの違い。花屋さんで売っているバラは、アレンジがしやすいように茎が真っ直ぐで長いものが多く、香りもほとんどありません。一方、庭植え用のバラは、茎が細く華奢な雰囲気で、香りのあるものもたくさんあります。両者は用途や輸送上の事情もあり、品種や育てられ方も異なるのです。 バラによく似合う「ライン状」の草花 バラに添わせて咲かせる草花は、まずは開花期が合うことが条件です。そして、この庭では先ほどもお話ししたように、限られたスペースでたくさんの種類を植えるため、一株が大きくなりすぎないものが適しています。大きくなり方には、縦方向と横方向があります。横に広がるものは場所をとりますが、縦に伸びるものならOK。というわけで、アリウムはバラに合わせる花として最適です。 草花の中には、長い茎に縦に花を連ねてライン状に咲くものがたくさんあります。ジギタリスやデルフィニウム、バーバスカムなどがそういう花で、この庭ではバラと共演する定番の草花です。木立性のバラは、木がこんもり丸い形になるので、こうしたライン状の花をそばに植えると、それぞれの美しさが際立ちます。縦にすっきりと咲いてバラと共演してくれますが、株元では葉っぱが展開するので、株間は30cmくらいあけて植栽する必要があります。 寄せ植えで庭に彩りを添えて 草花は地植えにするだけでなく、鉢植えにしてバラとコラボさせることもあります。草丈の低い一年草などは、本来バラの株元で咲きますが、鉢植えにすると高さが上がり、バラの花との共演が楽しめます。「寄せ植え」というと、玄関先などに置くイメージですが、庭の中でも手軽に色を添えたり、バラとコラボさせたり重宝します。一年草はワンシーズン限りですが、3〜4カ月咲き続けてくれるものも多く、庭でよく活躍してくれます。 5月の庭はバラが主役ではあるものの、毎年同じ風景では飽きてしまうので、草花の種類に変化をつけ、雰囲気が変わるようにしています。テーマを決め、それに合うような草花を植えます。その様子を次回ご紹介します。 ●面谷さんが使う新しい庭資材の話はこちら 『まるでバラ園!“365日美しい庭”の舞台裏に密着! バラや草花を美しく咲かせる新しい庭資材とは[PR]』
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宿根草・多年草
栽培歴15年以上の愛好家が教えるクリスマスローズを庭でかわいく咲かせるコツ
花のバリエーションは無限! 多彩な花色・花形が魅力 クリスマスローズを育てるようになって、かれこれ15年ほど。ありとあらゆる種類を育ててきましたが、私のクリスマスローズへの情熱はまだまだ冷めることがありません。それほどクリスマスローズは多彩な魅力を持つ花です。とにかく花のバリエーションがとても豊富。えんじ、ピンク、白、黒、黄、緑、グラデーション、花びらの縁が糸のように別色で縁取られるピコティ、花形もシングル(一重)、ダブル(八重)、セミダブル (半八重)とじつに個性豊か。写真のようにクリスマスローズだけを集めても華やかでユニークなブーケが楽しめます。 冬の庭に立体感を出すのに最適 冬から早春にかけては、庭で咲いている花はまだまだ多くありません。わずかに咲いている花も原種シクラメンやビオラなど、地際で小さく咲いているものがほとんどなので、庭が平面的に見えがち。そんななか、クリスマスローズは草丈が30cmほどあり、花も比較的大きいので、この季節の庭では存在感抜群。ペタッと見えがちな冬の庭にボリュームを出してくれる貴重な存在です。ですから植栽エリアの中〜後方へ配置して、手前の小さな花々と共演させることが多いです。写真のクリスマスローズはセミダブル (半八重咲き)で、花びらの縁が糸でかがられたように色づく「ピコティ」と呼ばれる花色です。 早春の庭の小径です。クリスマスローズが花の小径にボリュームを出してくれています。地植えにして2〜3年すると株が太って、ブーケのように花をたっぷり咲かせてくれるようになり、フラワーアレンジメントの花材としても活躍してくれます。花が終わった後も緑の葉が残るので、夏の庭もみずみずしく見せてくれます。 クリスマスローズと早春の花々との共演で個性を引き立てて 私はクリスマスローズが小さな花々と共演する風景が大好きです。それぞれの花の個性が引き立ち、どれもこれもいっそう魅力的に見えます。クリスマスローズは宿根草なので、毎年ここから出てきて咲いてくれます。原種シクラメンやアネモネ、クロッカスも季節になれば何年も咲いてくれる球根花です。一年草のパンジーやビオラは、毎年植え替えて組み合わせの変化を楽しんでいます。これらの花とクリスマスローズは好相性です。 これはクリスマスローズと春の球根花の寄せ植えです。中央にクリスマスローズを配置し、周辺にピンク色のムスカリやアネモネ・フルゲンスなどの淡い花色の小球根を、鉢縁はベロニカで彩りました。 クリスマスローズは落葉樹がある庭にぴったり ウワミズザクラの下で咲く大株に育ったクリスマスローズ‘プチドール’。 クリスマスローズを上手に育てるコツは、生育の特徴を理解することです。といっても、とても簡単。クリスマスローズは多くの花が生育旺盛になる初夏には半休眠状態になり、逆にほかの花々が眠りにつく晩秋から翌年春までの寒い季節に生育します。眠りについている時はできるだけ涼しく、生育期間中は光合成を促すために日光を浴びられる場所が最適です。その条件にぴったり合うのが落葉樹の下です。落葉樹は、夏は葉を茂らせて日陰を作ってくれますし、冬は葉を落として日光を遮りません。私はベイリーズセレクト(ベニバスモモ)やウワミズザクラなどの落葉樹の下にクリスマスローズを植えています。またオリーブは常緑ですが、葉が小さく冬も木漏れ日がちょうどよく届くので、その下にも植えています。 オリーブの木陰で育つクリスマスローズ。色が濃く草丈の高い種類は、庭の隅など目立たない場所の彩りとしても活躍してくれる。 北側の庭の木陰で花を咲かせるクリスマスローズ。寂しくなりがちな北側の庭も、クリスマスローズが好む条件です。ピンクの花は原種シクラメンで、クリスマスローズと同じ環境を好むので、共演の相手にぴったりです。 この花壇は隣家との間のごくわずかなスペースで、コンサバトリー(温室)の窓下にあります。日が当たる時間は限られていますが、冬は太陽が低く日が差し込むので、クリスマスローズはきれいに咲いてくれます。うつむいて咲く花が多いので、窓のそばで間近に見られるのが気に入っています。 場所さえ合っていればどんどん増えるクリスマスローズ 基本的に、多くの種類はとても丈夫で、上記のように場所さえ合っていればあまり手間なく大きく育ち、そしてよく増えます。クリスマスローズは株が太っていくだけでなく、じつはこぼれ種でもよく増えるのです。写真のクリスマスローズもここに植えたのではなく、こぼれ種でいつの間にか石の間から咲いたもの。こういう自然のサプライズはとても嬉しいものですし、人の手では生み出せないナチュラルな雰囲気が庭に生まれるのも気に入っています。 こんなレンガの隙間にも、こぼれ種で育ったクリスマスローズが。陰になり涼しいところを選んでいるのですね。その下で咲いているピンクの花は、ユキワリソウです。この花もクリスマスローズと同じ環境を好みますが、山陰の夏の暑さはこの花には過酷。こうして残って咲いているのは、とても貴重です。 クリスマスローズとの上手な付き合い方 クリスマスローズの花苗は数千円から希少種になると数万円という価格帯です。花苗のなかでは少し高めに感じられるかもしれませんが、前述の通り何年もよく咲き、こぼれ種でも増え、病害虫の被害もあまり心配することがないので、とてもコスパのよい花です。とはいえ、失敗したくはないですよね。一番の心配は夏の暑さで枯れることで、種類によって夏の暑さがとても苦手なものもあります。ですから、私は新しい種類はいきなり地植えにせずに、一年目は鉢植えで様子を見るようにしています。通気性のよい素焼きの鉢に植え替え、季節によって場所を移動しながら様子を見て、よく株が太るようなら地植えにします。希少種といわれる流通量が少ないものは大事に鉢で育てられることが多いようですが、育てにくいかというとそうとも限りません。意外と地植えにすると株が太って見事な花付きを見せることがあるので、あまり怖がらずに庭で楽しんでいます。 希少種の‘ヨシノ’も地植えで大株に育ってきている。 クリスマスローズの季節のお手入れ 【花がら切り】 クリスマスローズは先ほど言ったように、夏は半休眠状態になります。花は遅くとも5月までには切って株の体力を温存します。「花」といっていますが、じつはクリスマスローズの花に見える部分はガク片なので、「花びらが落ちる」ことがありません。段々と色があせてはいきますが、散ることがないのでなんとなくそのままにしてしまいがち。ですが、放っておくと中心部に種をつけます。種取りをしたい場合にはそのまま成熟させるとよいのでしょうが、種をつけると株は種のほうに栄養を注ぎ込んでしまい、夏を越す体力がなくなってしまいます。ですから、花が色あせてきたなと思ったら、花がらをなるべく早く切るようにしています。切った花はフラワーアレンジメントにして楽しみます。 【肥料】 肥料は、とりわけクリスマスローズのためだけに与えるというわけではありませんが、庭にはバラもたくさん植わっているため、秋や冬、早春の庭の花の植え替え時に定期的に庭全体に肥料をまいています。鉢植えの場合は、生育期間中に定期的に緩効性肥料を施し、時々液体肥料を混ぜて水やりをします。 【葉切り】 クリスマスローズは葉が大きくこんもりとよく茂りますが、秋に十分涼しくなったら古い葉は切り取り、こうして新しい葉と交代させます。そのままにしておくと株元の花芽に日光が当たらず、春になっても花が上がってこなくなってしまうことがあります。全部とってしまうと庭の自然な雰囲気が損なわれるように思うので、いくらかは残そうと思うのですが、どれを残してどれを切るか、目下の私の課題です。 【病害虫】 夏の蒸れや加湿に注意すれば、あまり病害虫にも悩まされることなく丈夫に育ちますが、「ブラックデス」という葉や株元が黒く変色する病気には注意が必要です。クリスマスローズがかかるウイルス病ですが、薬剤がなく伝染するため、見つけたら残念ですが速やかに抜き取ります。ほかのクリスマスローズも感染していないかよく周辺を確認し、ブラックデスを触った手でほかの花に触れないようにします。ブラックデスの株を抜き取ったり切ったりした園芸ツールも消毒が必要です。 ブラックデスは数カ月間の潜伏期間があるようで、病気が発生するまで気付くことができません。潜伏期間中にほかの株にウイルスが伝染しないようにするためにも、新しく買ってきた株は、いったん鉢植えで育てて様子を見るのが無難です。 今、注目のクリスマスローズ ほとんどの花形・花色を育ててきたので、何か新しいものが育てたいなと思っていたところに、近年出会ったのが‘レッドサン’(左)と‘パピエ’(右)。花郷園というクリスマスローズのナーセリーの品種ですが、花が上向きに咲いているのが他のクリスマスローズとは異なる特徴です。華やかでエレガントな雰囲気なのと、バラのようなつぼみの姿も気に入っています。 ニゲルはクリスマスローズの原種で、クリスマスローズがクリスマスローズといわれる所以の花です。多くのクリスマスローズはクリスマスには咲かず、翌年2月以降になって咲きますが、ニゲルはまさにクリスマスの時期に咲きます。定番中の定番ですが、雪の中で咲いている姿には特別な美しさがあります。 また、何度か挑戦しては枯らしてしまっているのに、どうしても育てたくなる魅惑のクリスマスローズがチベタヌスという原種のクリスマスローズです。クリスマスローズらしいうつむいて咲く姿と、ちりめんのような花びらの繊細な質感がたまらなく魅力的です。原生地では小川のほとりのような涼しい場所に咲いていて、水をとても好みます。山陰は夏に40℃近くになり、いくら木陰とはいえチベタヌスには過酷なので、鉢植えで育てているのですが、なかなかうまくいきません。今年は生育6年目の充実した株を奇跡的に手に入れたので、どうにか頑張って夏越しをさせたいと思います。
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育て方
コスモスってこんなに可愛い! 秋を彩るコスモスガーデン
コスモスは秋らしさを代表する花 秋の庭の主役は、コスモス。庭づくりでいつも気にかけているのが「季節らしさ」です。ここはクリニックの庭で、患者さんやスタッフの癒やしが庭づくりの大きな目的の一つなので、誰もが分かるような季節の花を取り入れることを大事にしています。春はチューリップ、夏はバラ、秋はコスモス、冬はクリスマスツリー。このラインナップなら、私のようなガーデンファンでなくとも、季節らしさを感じてもらえるのではないかと思い、毎年の定番にしています。 コスモスの栽培は、タネから育てる方法と花苗を植え付ける方法がありますが、私は花苗を植え付けています。タネから育てたほうがコストは安く済むのですが、タネを播いたらその場所を養生する必要があります。コスモスのタネは夏咲きの場合は3〜4月に、秋咲きは6〜7月に播きますが、その頃には一年草の入れ替えや宿根草、バラの手入れなどで植栽の中に踏み込むため、タネから育てるのはこの庭では難しいのです。そこで9月下旬から10月初旬にかけて、花苗を植え付けています。 コスモスというと、群花が風に揺れるコスモス畑が一番に思い浮かびます。秋の抜けるような青空の下で笑いさざめくように揺れる、明るく懐かしい花風景。そんなイメージを庭に再現したくて、庭中にコスモスの苗を植え付けますが、苗選びにはちょっとしたこだわりがあります。 コスモス畑のワイルドさを演出するための苗選び この庭を一緒につくっているガーデナーの安酸さんが用意してくれるコスモスの花苗は、茎が徒長したようにヒョロッと曲がっているものだったり、小さかったり、大きかったりとバラバラ。ここで一言付け加えておくと、彼のショップ「ラブリーガーデン」に置いてある花苗は、いつ行ってもそれはそれは元気いっぱい。もちろん徒長した苗などありませんし、どの苗もいきいきとしていて、いつも予定外のものまで買ってしまいます。ですから、私の庭に持ってきてくれたコスモスの花苗を最初に見た時は、なんでこんなにバラバラなのか不思議に思いました。その理由を尋ねてみると、 「ビシッと真っ直ぐ、背丈が揃ったコスモスが行儀よく横並びに咲いていても、自然のコスモス畑のような感じが出ませんよ。自然の草花はもっと野趣にあふれ、一つひとつ個性がありますがん。徒長というのも植物が光を求めて伸びた、自然な成長の姿の一つですがん。使い方によっては、いい味を出すんですよ」と安酸さん。 園芸書には、よい花苗の選び方として「茎が真っ直ぐで、徒長していないしっかりした株」がセオリーとして書かれています。徒長というのは、主に日照不足のために茎が間延びしてヒョロヒョロと伸びてしまうことで、植物によっては病害虫への抵抗力も弱くなります。基本的には徒長していない株を選ぶのがよいと思いますが、一方で安酸さんの言う通り、徒長を個性として生かすこともできます。「寄せ植えでも少し時間が経ってからのほうが、植物が互いに影響し合いながら生育し、馴染んで、自然な感じになるでしょう。ときに徒長苗を使うと、最初から馴染んだ感じを出すこともできるんですよ」と安酸さんは教えてくれました。さすが、植物をよく観察しているガーデナーの視点だなと感心してしまいました。 可愛い変わり咲きが次々に登場するコスモス ところで、最近はコスモスもとても品種が増えて、ご覧のように個性的な花色のものがたくさん。花びらの縁が違う色になっている覆輪や、ハケで一掃きしたような色合いのもの、カップ型の花、バラのような八重咲きなど、本当にウキウキしてしまいます。そうした個性的なコスモスは、近くで見てこそ面白いので、駐車場からクリニックの入り口までの「小径の庭」に植えています。ここなら歩きながら個性的なコスモスの花をじっくり楽しんでもらえます。 待合室の窓辺に置いた寄せ植え鉢にもコスモスを使って、秋らしさを演出。少し赤色の濃い花はコスモス‘アンティーク’。絞り咲きは‘バローテ’。ネメシアやスカビオサ、サルビア・アズレアなどと横長のプランターに寄せ植え。草丈が高く分枝して咲くコスモスは、寄せ植えに動きを与えてくれる素材です。一つコスモスを育てるにあたって気を付けたいのは、アブラムシとうどんこ病。私はアブラムシにもうどんこ病にも、どちらにも効果があるべニカXファインスプレーという殺虫殺菌剤を使って対処しています。 コスモスは基本的にピンク系が多いのですが、そうした中に少しブルーの花を混ぜると互いの色が引き立って、より美しく見えます。この花壇に入れたブルーの花は、一年草のブルーサルビア。暑い時期からずっと咲いてくれて、とても重宝します。花壇の縁からあふれ咲いている黄色の花は、ヘレニウム・ダコタゴールド。この花も初夏から初冬まで、ずっと長い間花壇を彩ってくれる一年草です。ヒガンバナのようにツンツンと長い雄しべが特徴的な花は、球根のネリネ。ダイヤモンドリリーとも呼ばれるように、近づいてみると花弁がキラキラと輝く素敵な花で、毎年必ずこの時期に茎を伸ばして咲いてくれます。 季節のつなぎとして活躍してくれるコスモス コスモスは一年草なので、花が終わったらすべて抜き取り、次の一年草に植え替えます。前述したブルーサルビアやヘレニウムのように長期間咲いてくれるわけではないので、季節をつなぐ花として考えています。コスモスの花が終わる頃には、ビオラやガーデンシクラメンなど冬にかけて咲いてくれる花が園芸店に並び始めるので、それらとチェンジします。こうして季節で入れ替える一年草のほかに、毎年増えてくれる球根のガーデンシクラメンも秋の庭の楽しみです。とても可愛い花なので、また次回、たっぷりその魅力をご紹介したいと思います。
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ガーデンデザイン
メドウ風ガーデンづくりの秘密と風に揺れるおすすめ草花17選
今年の庭のテーマは「メドウ」 クリニックの庭は、訪れる患者さんを飽きさせないようにと、毎年テーマを変えて庭づくりをしています。今年のテーマは「メドウ」。メドウとは自然の野原のことです。もちろん、庭は全くの自然ではないので、人が植栽によって「野原風」の風景を作り出すわけですが、メドウガーデンは最もハイテクニックな造園の一つとされています。安酸さんに「メドウ風にしたい」と言うと、「うーん…」と首をかしげながらも、花のセレクトや苗の養生の仕方を「メドウ仕様」にするなど、いろいろと知恵を絞ってくれました。 メドウ風ガーデンのポイントは「混ざり合って咲く花々」と「風に揺れる草花」。株が横に広がって大きな一塊になる草花ではなく、線の細いさまざまな草花がそこかしこで立ち上がり、それらが入り混じって咲くような構成です。どれか一つの植物だけが際立って目立つのではなく、いくつもの植物が織りなすハーモニーがメドウ風ガーデンのポイントです。さて、どんな植物たちがメドウ風ガーデンで活躍してくれたのか、ご紹介しますね。 サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’(宿根草)/草丈約60cm 濃い青紫色で直線的なフォルムの花が庭に引き締まった印象を与えてくれます。3年前に植えた当初はそれほど印象に残る花ではありませんでしたが、株の成長に伴い魅力を発揮してくれるようになりました。ふわふわチラチラと咲く花ばかりだと、庭が散らかったように見えてしまうことがありますが、カラドンナを要所要所に配置すると、適度に整った感じが出ます。 線が細く風に揺れて咲いてくれるにもかかわらず、デルフィニウムなど同様の形状の草花と異なり、カラドンナは自立してくれるので、支柱を立てる必要がないのは、私としてはとてもありがたいところです。花期も長く、5月初旬から色づき始め、いったん切り戻すとまた花穂が上がってきて、夏の庭に涼しげな彩りを提供してくれます。 また、花茎の間も適度に空いているので、他の花が入り混じって咲くことができます。間に咲いているのは、宿根リナリアの‘アプリコットチャーム’。淡いクリーム色とピンクパープルの可愛い花です。 こちらは白花のサルビア・ネモローサ‘スノーヒル’。 バーバスカム‘サザンチャーム’(宿根草)/草丈約60cm カラドンナに入り混じって咲かせているもう一つの花が、このバーバスカム‘サザンチャーム’です。5弁の丸い梅のような花が下から徐々に咲き上がってくるのですが、プチプチとした丸いつぼみの様子も愛らしく、花色は淡いアプリコットカラーで、花心とつぼみが紫色。紫色のカラドンナと好相性です。このように、2つの花の中に何か共通点を見つけるという方法は、組み合わせを考えるときにとても有効です。 このバーバスカムは私の庭では、咲き進むにつれクネっと曲がってしまうので、支柱を立てています。今年は特に梅雨入りが早く、花の最盛期に打ちつけるような激しい雨が降ったので、支柱を必要とする花々は特に心配でした。もしかしたら、もっと涼しく乾燥した地域のお庭では支柱は必要ないかもしれません。 リシマキア・アトロプルプレア‘ボジョレー’(宿根草)/草丈約40〜50cm これも前述のように、「赤紫」という共通点のある2つの花の組み合わせです。シュルシュルと細長い花がリシマキアで、クリーム色で花心が赤紫色に染まる花はフロックス‘チェリーキャラメル’です。 リシマキア・アトロプルプレア‘ボジョレー’は、ご覧のように細長いフォルムですが、こちらは自立して咲いてくれるので支柱がいりません。赤ワインのようなシックな色合いがとても魅力的な花です。 面白いことに、植えた時期で花の形状が少し異なります。上の写真はどちらもリシマキア・アトロプルプレア‘ボジョレー’ですが、左は昨年の秋に苗を植えたものです。花が上のほうへキュッと詰まって咲いています。右は今年の春に植えたもので、下から上まで長く花がついています。草丈はどちらも同じくらい。庭づくりをしていると、こんなふうに思わぬ発見があり、とても楽しいです。 リナリア・プルプレア(宿根草)/草丈約80cm 宿根性のリナリアで、何年も10cm程度のわずかな隙間から毎年咲いてくれる丈夫な花です。細い茎に紫色の小さな花をたくさん咲かせます。風に揺れても折れたり曲がったりすることもなく、本当に手間がかかりません。 ピンクのバラともとても好相性。バラはつる性の‘モーティマー・サックラー’です。 サルピグロッシス‘キューブルー’(一年草)/草丈約60cm 5月はたくさんのバラが庭を彩ります。私はバラはピンク色が好みなので、草花はバラにはないブルーや紫を選ぶことが多いです。サルピグロッシス‘キューブルー’は思わず見入ってしまうような深い紫色です。 ベルベットのような質感の花弁は、やや雨に弱いようで、激しい雨に打たれると穴があいてしまいます。それでも残って咲いてくれた一輪ですが、存在感抜群。もうちょっと穏やかに降ってくれたらいいのになぁと思う今年の梅雨です。 デルフィニウム(宿根草) デルフィニウムも「青色」を代表する宿根草で、花弁にはデルフィニジンという青い色素のもとが含まれています。さまざまな品種があり、花色も青、パープル以外にもピンクや白色などがあります。草丈も2mはある大型種から、近年は膝丈以下のコンパクトなタイプも出てきています。今年の庭づくりでは他の草花との調和を考え、あまり草丈が高くなりすぎない60〜100cm程度の品種を植えています。 こちらは、ほんのりピンクがかった紫色のデルフィニウム。デルフィニウムはこの庭では支柱が欠かせません。ガーデナーの安酸さんは、あくまで支柱が目立たぬようにといつも言います。ですから、生育に合わせて何度も長さの違う支柱に立て替えてやらないといけないので、なかなか苦労しますが、音符のようなつぼみがだんだん開いていく様子の可愛らしさには勝てず、毎年常連の花です。 カンパニュラ ‘涼姫’(一年草)/草丈60〜80cm 星のような淡いブルーの花が穂状に咲きます。花と花の間に適度な隙間があくように咲き、名前のごとく涼しげで可愛らしい可憐な花です。 メドウガーデンの特別な苗づくり 今回のメドウガーデンでは、本来は株が横に張って大きくなる草花も、秋から春まであえてポット苗のまま管理し、ヒョロヒョロとした姿に仕上げました。アグロステンマやヤグルマギク、ギリア・レプタンサといった一年草は、いつもなら晩秋から冬にかけて植え付けます。そうすると5月には立派な大株になり、庭を見事に彩ってくれます。特に、この庭はバラもたくさん植えられており、肥料もたっぷり使っているので生育旺盛な草花は、予想以上に大型になることがあるのです。ただし今回は、1株がそれぞれ大株になると「入り混じって咲く」というメドウの様子が再現できないので、ポットのままで晩秋から春先まで育て、あえて太らせないように管理しました。そして、4月半ば以降になってから庭に植え付けることで、細い株姿の草花同士が入り混じり、メドウのような雰囲気を演出しました。 4月半ばに植え付けたアグロステンマとヤグルマギク(白い背の高い花)。ヒョロッとした姿ですが、本来はもっと株が張る一年草です。 ところで、海外からの種子で「メドウミックス」というものがありますが、そこにもヤグルマギクなどの種子が入っています。ただし、これを限られた庭空間で播いてみても、なかなかメドウのような雰囲気にはならないのです。それは、草花同士が空間を競い合い、強いものが大株になって残るという生存競争があるからです。本当のメドウのような、見渡す限りの広い空間があれば叶うかもしれませんが、限られた庭では、ただ「メドウミックス」を播いたからといって、メドウを再現するのは、なかなか難しいことなのです。 メドウの雰囲気に憧れていた私は、野原に咲いているような素朴な花々を植えればメドウガーデンができると簡単に考えていましたが、それは大きな間違いでした。ガーデナーの安酸さんから「このポット苗を大切に春まで育ててくださいね」とたくさんのポット苗を昨秋渡されたときは、その意味がさっぱり分かりませんでした。「なんで植えたらいけんの?」と聞いても「まあ、春になったら分かりますがん。メドウができるかどうかは、面谷さんの管理にかかっとうですよ」と言われ、不思議に思いながら、たくさんのポット苗の管理を始めたのですが、それが本当に一苦労。まるで盆栽を育てているのと同じような状態で、数カ月間、3〜4号ポットの苗たちを根腐れさせたり、水切れしたりしないように慎重に水やりをするのはとても神経を使いました。本来は、園芸店から苗を買ってきたらすぐに植え付けるというのがセオリーです。ビニールポットのまま窮屈そうに生育している苗を見ていると、かわいそうで植えたくなってしまうもの。「ねえ、まだ植えたらいけん?」「まだです」というやりとりを何度繰り返したか分かりませんが、我慢に我慢を重ねたのは草花たちのほうですよね。 普段のガーデニングでも、株分けをしたり切り戻しをしたり、植物の生育をコントロールすることはありますが、このメドウ作りでは、植物たちの生存競争をコントロールすることがいかに難しいかを思い知らされました。そして、自然のメドウがどのようにして作られるのか、草花や、そこに訪れる虫や鳥や動物たち、風、光、雨という自然の絶え間ない営みの末にあの風景ができるのだと思うと、自然の素晴らしさや偉大さに改めて気づきました。 患者さんを飽きさせないようにと毎年、こんな風にテーマを変えて庭づくりをしていると、私自身たくさんのチャレンジができ、気づきもたくさんあるのです。 アグロステンマ(一年草)/草丈60〜90cm 白い五弁の花がアグロステンマです。ムギナデシコという素朴な名前もあり、麦の穂が揺れるがごとく、ゆったり揺れます。強い雨風に当たると倒れることがあるので、支柱が必要です。ピンクの花はハイブリッドジギタリス。入り混じって咲く姿がとても可愛らしいです。 アリウム(球根) 庭には何種類かのアリウムを植えていますが、真ん丸のこぶしより大きなアリウム・ギガンチウムは、アクセントとして大活躍してくれます。球根は1球千円以上するのですが、数年は咲いてくれますし、庭でのオーナメント的な活躍ぶりはその価値があります。 安酸さんは咲ききった時よりも、つぼみからだんだん紫に色づいていくなんともいえない色合いがアリウムの魅力だと言います。うん、確かに何色ともいえない感じ。植物だけが持っている魔法のパレットで色づいていきます。 こちらはアリウム・クリストフィー。星形の花で、ギガンチウムと同じくらいの大きさですが、草丈は30〜40cmでより淡い紫色です。空色のニゲラともぴったり。球根を植え付けてから、もう何年も経ちますが、毎年よく咲いてくれます。 ニゲラ(一年草)/草丈50〜60cm ニゲラもピンクのバラとよく似合う一年草です。糸のような細い葉を持ち、ふわふわとした緑の葉の中に花が咲く様子から、英語では「ラブインナミスト」というロマンチックな名前で呼ばれています。とても育てやすい花で、ちょうどバラの頃に咲いてくれるので、庭には欠かせません。 ジギタリス(宿根草) ベル形の花が連なって咲く様子がメルヘンチックなジギタリス。品種によっては、見上げるような高さにまで伸びるものもありますが、今年の庭のテーマ「メドウ風ガーデン」には、小さいタイプを選びました。上の写真のアプリコット色のジギタリスは、原種系のオブスクラ‘サンセット’。本当に夕焼けのようなグラデーションに見惚れてしまうオレンジの花です。 こちらも原種系のジギタリス・ルテアで、小さな、ごく淡い黄色の花を咲かせます。とても繊細な雰囲気ですが、他のジギタリスと比べてとても丈夫で、夏越しして何年も咲いてくれています。 これはジギタリス・プルプレア‘ピンクシャンパン’。園芸品種は夏越しが難しく、本来は宿根草ですが、二年草扱いとされることが多いです。本来は草丈70〜80cmほどありますが、今年は膝丈程度の小さな姿で咲いてくれました。そんな控えめな雰囲気が今年のメドウガーデンにはぴったりでしたが、来年はもっと草丈が高くなるかもしれません。 オンファロデス・リニフォリア(一年草)/草丈10〜40cm スーッと伸びる草花の足元で、ふわふわとカスミソウのような白い花を咲かせるのはオンファロデス。ベールをかけたように地面に咲き広がって、軽やかでロマンチックな雰囲気を演出してくれます。一年草ですが、こぼれダネでよく増え、毎年きれいに咲いてくれます。 ブルーに白の縁取りが可愛いオンファロデス・リニフォリア‘スターリー・アイズ’。 セントランサス(宿根草)/草丈60〜70cm 小花が集まって咲く様子がレースのような繊細な雰囲気ですが、とても丈夫な宿根草です。株自体も年々大きくなっていきますが、種子も飛んで思わぬところから生えてきます。植えてから数年経ったら間引いたり株分けして、引き算をしながら育てています。 ここまでご紹介した草花は、地植えにしている植物です。庭には要所要所に寄せ植えも置いてあり、それも庭の彩りに欠かせません。
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みんなの庭
患者さんのためにつくったバラ香る庭 面谷内科・循環器内科クリニック
患者さんのためにつくられたバラ香る癒やしの庭 一見すると病院とは思えないこの庭は、院長の面谷博紀さんと妻のひとみさんが、患者さんやスタッフの癒やしにとつくったものです。 「患者さんの辛さや不安が少しでも和らぐようにと思いましてね。というのも、私は医師として日々、診療をしたり検査をしたりして、患者さんの不調や不安を改善するのが職務なわけですが、果たしてそうした医学的な治療だけで自分の仕事は十分なのかな、という気持ちがあったんです」(面谷医師) 面谷医師は、大学病院など複数の医療施設でさまざまな患者さんに接する中で、医学的な知見からは何も問題がないケースも多く見てきたと話します。 「もちろん、そうした診断結果を伝えて不安が解消される患者さんもいらっしゃいますが、逆に、なんでもないですよ、と医師から言われることで、かえって不安が募ってしまったり、孤独感を感じてしまうケースもあるんです」(面谷医師) そうした処方箋の出せない患者さんにも寄り添い、不安を少しでも軽くしてもらえるように。また、「怖い」「痛い」という病院への固定観念を払拭し、快適な時間を過ごしてもらえるように。庭はそのための大切な空間演出です。 「だから、この庭はいつも、めいっぱいきれいである必要があるんです。具合の悪い方に、しおれた花なんか一本も見せたくないですから」と話すのは、庭づくりを担当している妻のひとみさん。毎朝早くからクリニックの庭を訪れ、花がら摘みや水やりを欠かしません。また、この庭では病害虫に対しても薬品を使わないため、4月からは虫とりも加わります。 ひとみさんも長年、看護師として働いてきましたが、医療現場の空間は、患者さんにもスタッフにも、必ずしも心地よいものではなかったと言います。 「白い蛍光灯の下で、真っ白な壁に囲まれて、外の天気も分からない状態で、一日に100人近くの患者さんと接するんです。その緊張感とストレスを身をもって知っていますから、医療従事者にとっても心地よい職場環境をつくりたいと思っていました。ですから、新しいクリニックをつくることになった時、どの窓からも緑が見えるように、というのをコンセプトにしたんです」(ひとみさん) 「そして庭は、患者さんにとっては癒やしと同時に、アッと驚くような感動を与えられるようなものにしたいと思いました。実は私、ディズニーランドが大好きで娘とよく行くんです。ディズニーランドって、あの空間に入った途端、思わず現実を忘れてしまいませんか。ディズニーマジックっていうんでしょうか。そういう高揚感や感動って、病を抱えた人にとっても、とても大事だと思うんです。具合が悪かったのを、思わず忘れてしまうくらいの圧倒的な美しさで、ガーデンマジックにかかってもらうのがこの庭の役目です」(ひとみさん) そうした要望を形にしたのが、ガーデンデザイナーの安酸友昭さん(ラブリーガーデン)。実はこの庭は、県道と生活道路が鋭角に交差する角地にあります。しかし、ひとたび庭の中に入ると、まるで別世界が広がるのは、そのデザインのおかげです。待合室に面したこの庭は建物から地面が数段低くつくられた、サンクンガーデン(沈床式庭園)のスタイルになっています。そして、住宅街が立ち並ぶ生活道路側には高い壁を設けつるバラを這わせ、県道側にはいくつかの樹木を植栽。それらが育つにつれ、緑が柔らかに視線を遮って、県道を行き交う車が気にならないようになっています。 角地の突端にはバラが這い上るモーブ色のコテージを配置し、コテージまでの通路の両脇には色彩豊かなバラと草花をたっぷり植栽。壁側にはレイズドベッドを、もう一方の植栽帯は石のペイビングを所々食い込ませ、道路側にいくに従ってなだらかに盛り土がしてあります。そうした高低差やペイビングの食い込みによって生まれる適度な空間が、バラや宿根草、一年草などたくさんの鮮やかな花が咲いた時にも、繊細で風通しのよいナチュラルな風景をつくり出しています。 「病院の待合室って、患者さんたちの間で病談義が繰り広げられることがよくあるじゃないですか。でもうちのクリニックでは、それが花談義なんです。この花キレイだね、とか、あれは私の庭でも育てたことある、とか。そういうのを聞くと、今はお身体の不安を忘れられているのかな、と嬉しくなりますね。お子さんも庭で花びらを集めて遊んだりしていて、具合が悪くなくても来たいと言ってくれたりするんです」(ひとみさん) 面谷医師の患者さんへの思いと、それに応えることのできる安酸さんの確かなデザイン力、そしてひとみさんの日々の丹念な手入れ。3つの力によって生まれたガーデンマジックは、その効力を庭の成長とともに強める一方です。
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みんなの庭
面谷ひとみさんのクリスマスの庭演出! ツリーとクリスマスカラーの寄せ植え
冬は寄せ植えに最適な季節 山陰の冬は雪が多く、とにかく空は曇りがち。12月から翌年3月までの間は、一日中爽やかな青空をキープしている日はとても貴重です。だからこそクリニックの庭は華やかに美しく、通院してくる患者さんの心をパッと晴れやかにしたいと思い、たくさんの寄せ植えを作ります。庭の花は少なくなる季節ですが、冬は寄せ植えには最適です。パンジーやビオラ、ガーデンシクラメン、アリッサムなど、開花期が長く鉢植え向きの一年草がたくさん店頭に出るようになり、寄せ植えの花材にはこと欠きません。それに、この季節は蒸れて病気になったり、害虫の心配もないので、あまり気遣いなくきれいな状態が保てます。 私の好みは淡いソフトカラーなのですが、冬は見る人に温かさを感じてもらえるよう、オレンジや黄色、赤などの暖色を多用し、パッと華やかな寄せ植えにします。上の写真は、診察室から一番よく見える場所に置いてある八角形の大鉢です。大鉢はだいたいの希望を伝えて、作成はガーデナーの安酸さんにお任せしています。 寄せ植えと庭植え、2段階で楽しめる素材チョイス 赤紫とオレンジのビオラ、黄色のビデンス(ウィンターコスモス)、チェッカーベリー、スキミア、アリッサムを寄せ植えにしてくれました。私にはなかなか思いつかない組み合わせですが、よく見ると赤紫のビオラの花心には黄色のスポットが入っていて、安酸さんらしい繊細な花選びだなあと思いました。だからこそこんな派手な色の花を組み合わせても、全体として調和しているのだなと感心しました。プチプチとしたツボミが可愛らしいスキミアは日陰を好む常緑低木なので、春になって寄せ植えを解体する際には庭の北側へ地植えにします。低木などはあまり寄せ植えに選ばれない素材ですが、こんなふうに使った後、庭植えにすることを想定して選ぶと、楽しさも倍増します。 カラーリーフがコツのクリスマス用の赤い寄せ植え こちらは玄関前に作ってくれた横長のプランターの寄せ植えです。ビオラ、チェッカーベリー、アリッサム、スキミアの赤色の花で統一しました。赤いビオラだけでも4〜5品種入っているので、単調にならず目を楽しませてくれます。鉢縁からタランと垂れた葉はルブス。ナワシロイチゴとも呼ばれ、這って伸びる性質がある常緑低木です。一年を通して使えるとても使い勝手のいいカラーリーフで、冬は寒さでチョコレート色に紅葉します。こうした這って伸びる草やつる性の植物は、寄せ植えに有機的なラインを添え、繊細な美しさをプラスしてくれます。 こんなふうに、安酸さんが作ってくれる大鉢を見ながら勉強し、私は小さな寄せ植え作りに励みます。赤い実のチェッカーベリーは艶やかで形も愛らしく、クリスマスらしい雰囲気が出る花材です。この鉢では2品種の赤系ビオラとカルーナ、ガーデンシクラメンを合わせました。カルーナのプチプチとした小花もアクセントになってくれます。 白い横長の鉢には、チェッカーベリーと黄色と紫のパンジーを合わせてみました。合うかな? と心配したものの、ネメシアやカルーナを間に挟んだおかげでいい感じにまとまったと自分では納得しているのですが、どうでしょうか? 安酸さんがいつも上手にカラーリーフを使うのを真似して、パンジーの色に合わせて黄色のカラーリーフ、ロータス‘ブリムストーン’も入れました。 こちらはアリッサム、イベリス、ダスティーミラー‘シルバーレース’など白色の植物の中に、花心だけ赤いビオラや紅葉したルブスなど、差し色として赤を少量加えた寄せ植えです。白のワントーンもクリスマスらしい雰囲気が出ます。 肥料など植栽の基本と冬の寄せ植えのコツ どんなに組み合わせに工夫を凝らしても、植物がいい具合に育ってくれなければ寄せ植えは美しくなりません。植物が健やかに育つための基本は土づくりです。寄せ植えの土の基本は、排水性がよく、水もち・肥料もちのよいこと。硬質赤玉土などを基材とした培養土に、元肥を混ぜておきます。元肥は植物が生育するために必要な栄養分です。12月に作った寄せ植えは、来年3月いっぱいくらいまでは植え替えません。ですから、その間の栄養素として最初に必要になるのがこの元肥です。元肥の効果は約1カ月くらいなので、必要に応じて追肥したり、液肥を週1回ほど水やりの際に与えます。この頃の植物は寒さでほとんど生育が止まっており、分枝してわんさか花数が増えたり、草丈が大きくなったりすることはありませんが、この間に液肥を与えておくと花色や葉色が鮮やかに保たれ、春以降生育を開始してからの勢いが違います。 ただし、冬の間は植物のサイズはほとんど変わりません。ですから、キュッと詰めて植えたほうが見栄えがいいです。しばしば株間を10cmとか20cmとかあけてというアドバイスがなされますが、生育することを見越して株間をあけすぎると、春まで土が見えるスカスカの状態の寄せ植えになってしまいます。そこで、私は春になって植物が生育し、窮屈になってしまう前に寄せ植えをバラして庭の広い場所に植え替え、鉢には新たな寄せ植えを作ることにしています。 冬の庭の主役はクリスマスツリー 冬はどうしても庭植えの花の彩りが寂しくなるので、待合室から一番よく見える場所にクリスマスツリーを設置します。ツリーといえばモミの木ですが、クリニックの庭にモミの木を植栽しているわけではなく、根を養生したモミの木を倒れないようにタイルの上に固定して、仮置きの状態で飾っています。周りにはクリスマスプレゼントの箱をイメージして、カラフルな寄せ植えをたくさん作って飾りました。にぎやかで楽しいクリスマスの雰囲気になりました。 イルミネーションのお手本は、ディズニーランドや東京駅のクリスマスツリー。毎年、飾り付けに趣向が凝らされていて、見るたびに感動してしまうのですが、私もそんなふうに患者さんにアッと驚いてほしくて、電飾がどんな風に巻き付けてあるのか、根元はどんな風になっているのか、じっくり観察してクリニックのツリーに取り入れています。飾り付けは到底1人ではできないので、娘家族にも手伝ってもらいます。てっぺんの枝から細い枝の一本一本に電飾のコードを丁寧に這わせていくことでツリーの形がきれいに出るのですが、その作業はとても時間がかかります。 先日、80代の患者さんが、「毎年、クリスマスツリーが楽しみで、この時期に健康診断に来ることに決めているの」とおっしゃってくださり、苦労して飾った甲斐があったと、とても嬉しく思いました。クリニックの患者さんはご高齢の方が多いものです。お孫さんと住んでいれば別かもしれませんが、大人だけの家庭ではクリスマスツリーもクリスマス自体も次第に縁遠くなってしまいます。でも本当は、いくつになってもキラキラしたクリスマスツリーにはときめくものです。美しく華やかな空間は誰しも気持ちが明るくなり、そういう空間にいる自分は、大事にされているという安心感があると思います。家庭の庭にも同じ役目があると思いますが、患者さんのためにそういう場所を作っておくのが、私のクリニックの庭づくりのテーマでもあります。 ツリーを見たくて、と言ってくださった患者さんのように、なるべく何ごともないうちにクリニックを受診することで、病気の早期発見に繋がり、有効な治療が行える可能性も高いのです。私も長年看護師として働きましたが、医療に携わる者にとって一番悔しいのは、患者さんを救いたくても救えない時です。もっと早く来てくれれば、ということがないように、というのがこの庭をつくった大事な理由でもあります。だからこそ、毎年、記憶に残るようなクリスマスツリー作りをしたいと思っています。 今年も家族でワイワイ言いながら、クリスマスツリーを飾り終えました。今年はシャンパンピンクのイルミネーションとオーナメントで雰囲気を変えました。 皆様もどうぞ、楽しいクリスマスをお迎えくださいませ。 Happy Merry Christmas!
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寄せ植え・花壇
コツがいっぱい! 美しい寄せ植えの作り方
花が徒長し始めたら、次のシーズン用に植え替えを 早春に植え込んだ、ビオラとアネモネの寄せ植えです。花はまだ咲いていますが、徒長して寄せ植えの形が崩れかけています。夏に向けて寄せ植えの植え替え時期です。 土の入れ替えのコツ ガーデンフォークを使って、根が張っている植物を起こしていきます。根に土がたくさん付いているので、フォークで根をたたいて土を落とします。その際、土の中に残った根も取り除きます。この根を取り除く作業で土もほぐれ、空気が入ってふわっとします。 ここで大事なのは、引き抜いた植物をすぐに捨てずに、様子を確認してみることです。葉っぱがこんもり繁っているにもかかわらず、根がない、または極端に少ない場合は、土の中にコガネムシの幼虫がいる可能性があります。もし幼虫を発見した場合は取り除き、土を全量、またはできる限り入れ替えます。そして、土の中に殺虫剤のオルトランDXを適量すき込みます。土を入れ替えできない場合は、ていねいに幼虫を取り除き、オルトランDXをすき込みます。 全て抜き終わったら、少し土を入れ替え、元肥と有機肥料を適量まき、その後よくすき込みます。 さらに、新しい土を全体の1/5程度入れます。新しい土を加えると、失われた肥料分が補給されるのでしょう、よく育ちます。 植物はジグザグに置くとナチュラルに メインになる苗を仮置きします。同じ植物が直線上に並ばないように、調整しながらジグザグに置いていきます。写真はロベリアとベロニカ。今回、植え込む植物は、以下の通りです。夏に向けて涼しげな雰囲気になるよう、ブルー系の花を揃えました。植え込んだ直後から植物が馴染んで見えるように、結構たくさんの苗を使います。 <使った苗> ロベリア×4 ベロニカ×4 オンファロデス×3 ラベンダー×4 タマシャジン×2 サルビア×4 オダマキ×6 バコパ×5 ロベリアとベロニカの隙間に、1つ目のつなぎの植物となるラベンダー、タマシャジンを置いていきます。ここでも直線上に並ばないように注意します。「つなぎの植物」というのは、ちょうどバラのブーケにカスミソウが入って、なんとなくブーケがふんわりとまとまるようなイメージです。メインとなるクッキリ・ハッキリとした色形の植物の間に、チラチラとした小花を入れることによって、間が自然につながって、全体に調和が生まれるのです。さらに、2つ目のつなぎとなる植物、オンファロデス(草丈の高い白い花)を隙間に入れていきます。この段階では仮置きなので、狭くて苦しそうな場所は、隣同士の苗を動かして調整し、並べていきます。 位置が決まったら、植えていきます。苗の株元を持って、優しくポットから抜きます。よほど根が回っていない限り、根はほぐさなくてOK。苗を隙間に入れる時は、周りの植物を傷つけないように、手の甲で隣の苗をそっと押さえながら植え付けます。 さらに、隙間にオダマキを植え込むと、もっと自然な感じになります。 手前にも隙間があるので、やさしいピンク色のバコパを植えます。花がら(しぼんだ花)がたくさんあると見苦しいので、花がらがある場合は取り除いてから植え付けます。最後に隙間に土を入れていきます。私は自作のペットボトルの土入れを使っています。細くて土がたっぷり入るので便利です。作り方は、以下の記事でご紹介しています。 ●『美しい庭をつくる人が愛用する便利な庭道具』 こんな感じで植え付けは終了です。この後は、水まきです。植え付け直後の水まきには、ちょっとしたコツがあります。 寄せ植えの植え付け直後の水やりのコツ まず、ホースで水やりをする場合、はす口をつけますが、いきなり植物にホースの水をかけてはいけません。というのも、ホース内に残っていた水が日光で温められて、意外なほど熱いお湯に変わっていることがあるからです。ですから、しばらく水を出しっ放しにして、手で触って冷たくなっているのを確かめます。次に水がやわらかく当たるよう調整します。あまり水の勢いが強いと、表面の土に穴があいてしまい、植物の根が露出してしまいます。苗と土が密着するように株元に水をまいていきます。 さらに少し高いところから、苗についた土を洗い流していきます。植え込み作業中は注意していても、植物の葉っぱなどに土がついてしまっています。特にペチュニアなど、葉が毛羽立っている植物は土がつきやすいので、優しい雨のように上からシャワーをかけて、洗い流します。植物に近づけすぎないことが大事です。 活力剤をあげて完成! 最後に、メネデールやリキダスなどの活力剤をジョウロでまき、完了です。活力剤は植え込んだばかりの根の生育を助ける働きがあります。 生育するとお互いの植物が絡み合い、さらに馴染んでナチュラルな雰囲気になります。 この横長の鉢は待合室の窓のすぐ側に置いてあり、室内からも花がよく見えます。ですから、手前から見ても、後ろから見ても綺麗な眺めになるよう植え込んでいます。植え込み後の管理は、基本的に水やりと花がら摘み。水やりの際、ときどき液肥を混ぜてやると花のもちがよくなります。 華麗なる寄せ植えの四季 同じ鉢を使った過去の季節違いの花の様子です。冬/ビオラ、ストック、アリッサム、ネメシア、カルーナなど。 早春/ビオラ、フォックスリータイム、オレガノ、チューリップなど。 初夏/ミニバラ、クレマチス、スーパーチュニア、ユーフォルビア‘ダイヤモンドフロスト’、クレオメ、ゼラニウムなど。 真夏/スーパーチュニア、ビンカ、セダム。 秋/コスモス、スカビオサ、サルビア、タイムなど。 寄せ植えは、庭がなくても一鉢の中で、こんなふうに季節の彩りを豊かに楽しむことができます。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
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寄せ植え・花壇
人気ガーデナー面谷ひとみさんと安酸友昭さんによる庭案内
春の庭の1カ月の様子 新しい暮らしがスタートする、春という季節。人生の節目とも重なる時期ですが、庭づくりをしている私にとって、春の1カ月はいつも、とてもドラマチックです。日ごと温む空気の変化を植物は敏感に感じ取り、草花は背丈を伸ばし、つぼみを膨らませ、昨日と今日とでは明らかに庭の色が変わります。庭仕事をしながら、この花が咲いた、こっちもつぼみが上がってきたと、春の庭はうれしい発見の連続です。 この庭はクリニックの庭なので、休診日以外は毎日、患者さんがご覧になります。去年と同じではつまらないので、毎年テーマを変えて植栽の雰囲気を変えています。写真は以前の様子も交えた春の風景ですが、今年はまた少し違う風景になっていますので、ぜひオンラインオープンガーデンを楽しみにしていてくださいね。 庭仕事の途中でふと立ち上がって周りを見渡すと、1カ月の間にまるで誰かが緑の絵の具でサッと色をつけたように、景色が様変わりして見えるのです。その植物の勢い、みずみずしさ、春の命のきらめきに、私は毎年飽きることなく感動せずにはいられません。 私は、さまざまな草花が入り混じって咲く風景が大好きです。それは幼い時に読んだ物語の影響かもしれません。『赤毛のアン』や『秘密の花園』、『大草原の小さな家』を愛読していた少女時代の私は、いつも主人公たちが寝転び、駆け回る花の草原のシーンを思い浮かべては、憧れていました。大人になってからもその趣向は変わらないようで、花柄で有名な英国のリバティプリントやローラアシュレイを愛用しています。 夫がクリニックを開院し、少し広いスペースで庭をつくれるということになったとき、私はそんな憧れの風景を切り取ったような庭をつくりたいと思いました。ですから、庭のテーマは自然の野原のような花々の調和です。春は特に、そんな野原のイメージに近い庭風景が展開し、心躍る季節。ここからは、私が春の庭の定番として植えている草花をご紹介します。どれもガーデニング初心者でも育てやすく、よく咲いてくれる花々です。 こぼれ種で増えるワスレナグサ ワスレナグサはブルーの小さな花を咲かせる一年草です。小さな花が群れ咲く様子は、花柄で有名な英国のリバティプリントのようで、大好きな花の一つです。英国でも日本名と同じように、‘フォーゲット・ミー・ノット’と呼ばれます。こぼれ種で増え、写真のようにいつの間にか石の隙間などからも花を咲かせます。草丈は通常20〜30cmですが、肥料が行き届いた庭では、春、暖かさが増すと、さらに草丈は高くなります。花は小さく、ビオラやチューリップなどの春の球根花との相性も抜群。花色には白やピンクもあります。 花色豊富な春の一年草の代名詞ビオラ ビオラは毎年、新しい品種が登場し、花色も咲き姿もとてもバリエーションが豊富な一年草です。花苗は秋くらいから店頭に並び始め、冬にかけて種類が増えていきます。店頭で選ぶ時は花の顔にばかり目が奪われがちですが、庭植えや寄せ植えにする場合は株姿も重要です。冬の間もきれいに咲いてくれますが、春暖かくなると一気に花数が増えて、こんもり花の茂みを作ってくれます。品種によっては驚くほどの花付きで、株全体を覆い尽くすように咲くものもありますが、庭植えにはコンパクトで葉っぱと花のバランスがよいもののほうがナチュラルな雰囲気になると思うので、私は前年の経験を生かして、そのような特徴を持った同じ系統のものを選ぶようにしています。花がら摘みをすることで開花期間を伸ばすことができ、5月のバラの開花の頃まで咲き続けます。 春風の娘、アネモネ アネモネは春に咲くキンポウゲ科の球根花ですが、球根としてより、花苗として販売されていることのほうが多いでしょう。花の大きさはチューリップほどで色も鮮やかなので、まだ彩りの少ない春の庭では存在感があります。一方、花の大きさに反して茎は細く繊細で、風に揺れる風情がなんとも素敵です。アネモネはギリシャ語で風を意味していますが、その名の通り、タネには長い毛があり風に乗って運ばれていきます。中でも花茎が細いアネモネ・フルゲンスという草丈20〜30cmの小型の原種系が私は大好き。一度植えると、毎年春に可愛い花を咲かせてくれます。 素朴で可憐なイングリッシュデージー 野の花の素朴な雰囲気をまとったイングリッシュデージーは、イギリスではまさに野の花です。本来は常緑多年草ですが、場所によっては一年草扱いになります。とはいえ、こぼれ種で増えるので、一度植えると庭のあちこちで咲いてくれます。私は写真のように小道に敷いた石の間から咲く様子が気に入っているので、草取りの際に雑草と間違えて抜いてしまわないように気をつけています。草丈は10〜20cm程度で、庭の小道の際や花壇の手前に向いています。3月から5月にかけて咲いてくれます。 春の初めを彩る宿根草クリスマスローズ 山陰では、クリスマスローズはチューリップが咲く1カ月ほど前に開花期を迎えます。この頃は地際で咲く小球根が地面をポツポツと彩り、ビオラもまだ草丈が低い時期なので、草丈がやや高く、花径も大きめのクリスマスローズは華やかな存在感で庭を彩ってくれます。一重、ダブル(八重咲き)、セミダブル、ピコティーなど花の姿は非常に豊富で、希少品種も少なくありませんが、性質はいたって丈夫。真夏は日陰ができる樹木の下などを好み、環境さえ適していれば、株は年々太って花数も増えていきます。また、こぼれ種でも増え、いつの間にか敷石の間から花を咲かせていることも珍しくありません。 ●『クリスマスローズと小さな花々が競演する春のかわいい庭』 春らしさを最も演出してくれるチューリップ チューリップは、花に詳しくない人でも、小さな子どもでも、「春」を感じられる身近な球根花です。ですから、いろいろな方が通っていらっしゃるクリニックの庭では季節感を演出するのに欠かせない花です。原種は球根を植えっぱなしでも毎年、必ず咲いてくれますが、園芸品種の多くは、2年目以降になると同じように咲いてくれるとは限りません。咲いても花色が褪せてしまったり、草丈や花の大きさが小さくなったりと、イメージ通りにならないことが多いので、花後は全て引き抜き、毎年異なる品種に植え替えて、イメージチェンジを楽しんでいます。チューリップを引き抜く頃には、宿根草や一年草の草丈が高くなってきていますし、ほどなくしてバラが咲き始めるので、抜いても寂しい印象にはなりません。 チューリップの原種系(手前の黄色と赤の花、白と赤の花)は、園芸品種と異なり、植えっぱなしでも球根が分球し、花数がどんどん増えていきます。花茎が細くしなやかで、野趣溢れる姿も魅力的です。原種系は樹木の下に植えて、自然な雰囲気を演出しています。 庭植えでどんどん増える原種シクラメン シクラメンというと、大輪の花を咲かせる贈答用の鉢花や、一年草として扱うガーデンシクラメンなどを思い浮かべるかもしれませんが、この庭では原種シクラメンが春の定番です。原種シクラメンには、秋咲きのシクラメン・ヘデリフォリウムと2月頃から咲くシクラメン・コウムがあります。クリニックではどちらも植えてあり、2つの季節を彩ってくれます。ともに草丈が10cm程度で花も小さく素朴な雰囲気で咲き、春の球根花やビオラ、クリスマスローズともよく似合います。環境さえ合っていれば、こぼれ種でどんどん増えて可愛い花をあちこちから咲かせてくれます。上の写真でも、花の手前に小さな葉っぱが出ていますよね。これがこぼれ種で増えた分で、こんな風に、ちょっとした石の陰や、夏は日陰になる樹木の下などが好みのようです。夏は蒸れに注意して、周囲の雑草をせっせと抜いています。そのほかは特別な管理をしなくても丈夫に育ち、もう何年も春の庭を彩ってくれています。「なんの花ですか?」と患者さんから聞かれることが最も多い花で、私は毎回まるで原種シクラメンの営業マンのように「可愛くて、丈夫で、よく増えて、花の少ない頃に咲いてくれて…」と、その魅力を熱弁しています。 原種シクラメンの苗は、なかなかホームセンターなどでは見かけることはありませんが、米子では、この庭の設計者でもあるガーデナーの安酸友昭さんが営む園芸店「ラブリーガーデン」で入手できます。また、池袋のサンシャインシティで毎年2月に開催されている「クリスマスローズの世界展」も、原種シクラメンとの出合いの場です。ここでは毎年、クリスマスローズと並んで、原種シクラメンの生産・育種でも有名な横山園芸さんが出店されているので、そこで買い求めたものも少なくありません。 小型のルピナス ルピナスはマメ科の花で、同じマメ科のフジのように小さな花が茎に連なって咲きます。その姿がフジを逆さにしたようなので、「ノボリフジ」とも呼ばれることがあります。草丈が1mほどになる大型の宿根草が有名ですが、近年は草丈20〜30cmの可愛い小型のルピナスが登場し、春の花壇づくりに重宝しています。ルピナスの魅力はやはり、この咲き姿です。花穂状になる縦のラインがほかの花にはない個性で、繊細さもあるので、庭のよいアクセントになってくれます。 明るい花色で軽やかに咲くゲウム ゲウムは日本に自生しているダイコンソウの仲間で、八重咲きなどの園芸品種が多くあります。丈夫で手のかからない宿根草で、毎年春になると必ず咲いてくれます。こんもりとした葉の茂みの中から細い茎を伸ばし、その先に明るい黄色やオレンジの小花を咲かせます。ベルのように少しうつむくつぼみの姿も可愛らしく、風に揺られる風情も軽やかです。私は花選びの時に、この「風に揺れる」風情を大事にしています。風も庭の大事な演出の一つです。風にそよそよと揺れる花は、室内にいても外の空気感や気持ちよさを感じられるものです。 ブーケのように咲く宿根ラナンキュラス ブーケで人気のラナンキュラスですが、「ラックス」シリーズはガーデンでも一際華やかに咲いてくれます。従来のラナンキュラスは耐寒性や耐暑性が弱く、庭植えするのは難しい植物とされてきましたが、この「ラックス」シリーズはすごく丈夫で、夏越しも冬越しもラクラク。1年で株の大きさは倍になり、写真のように1株でブーケのようにたくさんの花を咲かせます。大株になるので、2年目以降は株分けをしながらボリュームをコントロールして育てています。花弁がピカピカしているのも「ラックス」シリーズの特徴で、咲き始めから終わりまで色を変化させながら、長く咲いてくれるのも魅力です。 このクリニックでの庭づくりも、もう6年が過ぎました。毎年いろいろな花にチャレンジしながらも、ここでご紹介したものは、春の定番になりつつある草花です。定番になる花には「育てやすさ」、「可愛らしさ」、「個性」、「他の花との調和」という共通点があるように思います。どれも庭で機嫌よく咲いてくれるので、まだまだこれらの花とのお付き合いは長くなりそうです。 2020年4月18日(日)15時 オンラインオープンガーデン配信しました! 4月18日(日)15時より、ガーデンストーリークラブ会員さま向けに、面谷ひとみさんの春の庭をご案内するオンラインオープンガーデンを開催しました。今後も定期的なオンライン配信のご視聴を希望の方は、クラブ会員サイトよりお申し込みください。 ●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。 また、ガーデンストーリークラブ会員以外の方も、オンラインオープンガーデンの様子をYouTubeの同時ライブ配信でご覧いただけますので、どうぞお楽しみに! YouTubeライブ配信URLはこちら→ https://youtu.be/8r32r7c22xA