秋の花といえば、コスモス。近年では、おなじみのピンクの花だけでなく、八重咲きや絞り咲きなど、個性的な品種が次々に登場し、秋の庭づくりをいっそう楽しくしています。クリニックの庭を丹精する面谷ひとみさんも秋の庭の主役はコスモスを定番にしています。コスモス畑のようなワイルドな雰囲気を演出するのには、ガーデナーの安酸友昭さんのユニークな苗選びがポイントです。
目次
コスモスは秋らしさを代表する花
秋の庭の主役は、コスモス。庭づくりでいつも気にかけているのが「季節らしさ」です。ここはクリニックの庭で、患者さんやスタッフの癒やしが庭づくりの大きな目的の一つなので、誰もが分かるような季節の花を取り入れることを大事にしています。春はチューリップ、夏はバラ、秋はコスモス、冬はクリスマスツリー。このラインナップなら、私のようなガーデンファンでなくとも、季節らしさを感じてもらえるのではないかと思い、毎年の定番にしています。
コスモスの栽培は、タネから育てる方法と花苗を植え付ける方法がありますが、私は花苗を植え付けています。タネから育てたほうがコストは安く済むのですが、タネを播いたらその場所を養生する必要があります。コスモスのタネは夏咲きの場合は3〜4月に、秋咲きは6〜7月に播きますが、その頃には一年草の入れ替えや宿根草、バラの手入れなどで植栽の中に踏み込むため、タネから育てるのはこの庭では難しいのです。そこで9月下旬から10月初旬にかけて、花苗を植え付けています。
コスモスというと、群花が風に揺れるコスモス畑が一番に思い浮かびます。秋の抜けるような青空の下で笑いさざめくように揺れる、明るく懐かしい花風景。そんなイメージを庭に再現したくて、庭中にコスモスの苗を植え付けますが、苗選びにはちょっとしたこだわりがあります。
コスモス畑のワイルドさを演出するための苗選び
この庭を一緒につくっているガーデナーの安酸さんが用意してくれるコスモスの花苗は、茎が徒長したようにヒョロッと曲がっているものだったり、小さかったり、大きかったりとバラバラ。ここで一言付け加えておくと、彼のショップ「ラブリーガーデン」に置いてある花苗は、いつ行ってもそれはそれは元気いっぱい。もちろん徒長した苗などありませんし、どの苗もいきいきとしていて、いつも予定外のものまで買ってしまいます。ですから、私の庭に持ってきてくれたコスモスの花苗を最初に見た時は、なんでこんなにバラバラなのか不思議に思いました。その理由を尋ねてみると、
「ビシッと真っ直ぐ、背丈が揃ったコスモスが行儀よく横並びに咲いていても、自然のコスモス畑のような感じが出ませんよ。自然の草花はもっと野趣にあふれ、一つひとつ個性がありますがん。徒長というのも植物が光を求めて伸びた、自然な成長の姿の一つですがん。使い方によっては、いい味を出すんですよ」と安酸さん。
園芸書には、よい花苗の選び方として「茎が真っ直ぐで、徒長していないしっかりした株」がセオリーとして書かれています。徒長というのは、主に日照不足のために茎が間延びしてヒョロヒョロと伸びてしまうことで、植物によっては病害虫への抵抗力も弱くなります。基本的には徒長していない株を選ぶのがよいと思いますが、一方で安酸さんの言う通り、徒長を個性として生かすこともできます。「寄せ植えでも少し時間が経ってからのほうが、植物が互いに影響し合いながら生育し、馴染んで、自然な感じになるでしょう。ときに徒長苗を使うと、最初から馴染んだ感じを出すこともできるんですよ」と安酸さんは教えてくれました。さすが、植物をよく観察しているガーデナーの視点だなと感心してしまいました。
可愛い変わり咲きが次々に登場するコスモス
ところで、最近はコスモスもとても品種が増えて、ご覧のように個性的な花色のものがたくさん。花びらの縁が違う色になっている覆輪や、ハケで一掃きしたような色合いのもの、カップ型の花、バラのような八重咲きなど、本当にウキウキしてしまいます。そうした個性的なコスモスは、近くで見てこそ面白いので、駐車場からクリニックの入り口までの「小径の庭」に植えています。ここなら歩きながら個性的なコスモスの花をじっくり楽しんでもらえます。
待合室の窓辺に置いた寄せ植え鉢にもコスモスを使って、秋らしさを演出。少し赤色の濃い花はコスモス‘アンティーク’。絞り咲きは‘バローテ’。ネメシアやスカビオサ、サルビア・アズレアなどと横長のプランターに寄せ植え。草丈が高く分枝して咲くコスモスは、寄せ植えに動きを与えてくれる素材です。一つコスモスを育てるにあたって気を付けたいのは、アブラムシとうどんこ病。私はアブラムシにもうどんこ病にも、どちらにも効果があるべニカXファインスプレーという殺虫殺菌剤を使って対処しています。
コスモスは基本的にピンク系が多いのですが、そうした中に少しブルーの花を混ぜると互いの色が引き立って、より美しく見えます。この花壇に入れたブルーの花は、一年草のブルーサルビア。暑い時期からずっと咲いてくれて、とても重宝します。花壇の縁からあふれ咲いている黄色の花は、ヘレニウム・ダコタゴールド。この花も初夏から初冬まで、ずっと長い間花壇を彩ってくれる一年草です。ヒガンバナのようにツンツンと長い雄しべが特徴的な花は、球根のネリネ。ダイヤモンドリリーとも呼ばれるように、近づいてみると花弁がキラキラと輝く素敵な花で、毎年必ずこの時期に茎を伸ばして咲いてくれます。
季節のつなぎとして活躍してくれるコスモス
コスモスは一年草なので、花が終わったらすべて抜き取り、次の一年草に植え替えます。前述したブルーサルビアやヘレニウムのように長期間咲いてくれるわけではないので、季節をつなぐ花として考えています。コスモスの花が終わる頃には、ビオラやガーデンシクラメンなど冬にかけて咲いてくれる花が園芸店に並び始めるので、それらとチェンジします。こうして季節で入れ替える一年草のほかに、毎年増えてくれる球根のガーデンシクラメンも秋の庭の楽しみです。とても可愛い花なので、また次回、たっぷりその魅力をご紹介したいと思います。
庭施工/Lovely Garden(ラブリーガーデン)
住所:鳥取県米子市両三柳839
電話番号:0859-24-1500
http://www.lovely-garden.jp/shop.htm
Credit
話 / 面谷ひとみ - ガーデニスト -
おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
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撮影・取材・まとめ / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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