冬に味わう庭の恵みリンゴ&ナッツ 冬のドイツからエピソードをお届け
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Behr, Daniela
庭仕事が少なくなる冬、ガーデナーの皆さんはどうお過ごしでしょうか? 降雪の多い地域では、雪かきに追われている方も少なくないかもしれません。今回は、ドイツの冬の生活をご紹介。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、先日旅行したドイツから、雪かきや食卓のお楽しみ、冬に美味しいナッツなど、ドイツの冬の情景をレポートします。旬のリンゴで作りたいアプフェルシュトゥルーデルのレシピもお届けします。
目次
冬のドイツを旅して

クリスマス、そしてあわただしい年末とお正月も過ぎて、日常が戻ってきました。
先日まで訪れていた母国ドイツでは、最低気温がマイナス5℃、最高気温が12℃程度を繰り返す冬の気候を楽しんできました。滞在期間中、宿泊させてくれた友人宅のご主人が不機嫌になるほど雪が降った日も。雪が積もれば、駐車場スペースと、家の前の200mほどの私道をきれいに除雪しなければなりませんからね。除雪機や除雪車、スコップ、凍結した氷を取り除く専用ツール、そして塩と砂利など、雪かきのためのさまざまな道具が揃っていましたが、冬にしか出番がないこれらの道具は、ガレージのかなりのスペースを一年中占領することになります。

私も除雪を手伝いましたが、3人で作業しても、広い駐車場の除雪作業だけで1時間かかりました。ヨーロッパでは、なにもかもがビッグサイズ。駐車場などの屋外スペースだけでなく、インテリアや道具もそうです。例えば、ほうきは幅が30cmほどで重量もあり、外を掃いているだけでマメや筋肉痛が心配になるほどでした。
幸い、除雪作業が必要になったのは、2週間の滞在期間中2回だけ。多くの人が寒冷で雪の多い地域で暮らしていることを考えると、この毎日の雪かきという仕事がどれほど大変で重労働なのかが想像できます。

冬の日の食卓
寒い日は、普段より「重たい」食事をとることになります。例えば、大きな肉のローストにたっぷりのグレービーソース、赤キャベツ、自家製パスタ……。甘いものが好きな人のために、日本の我が家のオーブンの3倍はあろうかというドイツサイズの大きなオーブンを借りて、焼き菓子も作りました。

作ったのはアプフェルシュトゥルーデル。薄い生地でリンゴを包んで焼き上げる、ドイツやオーストリアのお菓子です。ドイツではとてもポピュラーで、一年を通して食べられています。今回はスーパーで、10個ほどのリンゴが入ったずっしり重い袋を購入して作りましたが、シュトゥルーデル生地で包むものはリンゴに限りません。甘いお菓子としてはもちろん、塩味にしておかずにしても美味しいですよ。
私のお気に入りは、伝統的なリンゴのアプフェルシュトゥルーデルか、チェリーフィリングを詰めたもの。たっぷりのバニラソース、または泡立てた生クリームを添えたものがあれば、1日ご機嫌で過ごせます。

オーブンも耐熱容器もビッグサイズの友人宅では、シュトゥルーデル2つをいっぺんに焼いていました。こうしてたくさん作っても、2日のうちにはなくなってしまうのですから不思議なものです。一体どこに消えたんでしょうね?
【甘いシュトゥルーデルのフィリングの例】
- リンゴ:少し酸味のあるリンゴがおすすめ。
- チェリー:夏に保存しておいたプリザーブを使って。
- モーンシュトゥルーデル:モーン(ケシの実)ペーストを入れて焼くだけ。
【塩味のシュトゥルーデルのフィリングの例】
- ホウレンソウ
- キャベツ&ひき肉&ジャガイモ
- ザワークラウト&ベーコン
- チキン
- サーモン&ホウレンソウ
などなど、バリエーションは幅広く、基本的に何を入れても美味しく仕上がります。
アプフェルシュトゥルーデルのレシピ
私流の、オーソドックスなアプフェルシュトゥルーデルの作り方をご紹介しましょう。
【シュトゥルーデルの生地のレシピ(2個分)】
<材料>
- 薄力粉 250g
- オイル 大さじ1
- 塩 5g
- 水 125cc
1.すべての材料をミキサーなどで混ぜ、ラップに包んで室温で30分休ませます。
2.30分経ったら、生地を2つに等分します。
3.清潔なティータオル(もしくは布巾)に打ち粉をし、生地を上にのせて四角く延ばします。
4.延ばした生地を手のひらにのせ、破れないように気をつけながらもう片方の手で引っ張り、薄く延ばしていきます。できるだけ薄くするのがポイントです。

【アップルフィリングのレシピ】
リンゴ4個の皮をむいて薄切りにし、砂糖とサワークリームを加えて好みの味にしましょう。


シュトゥルーデルの生地にアップルフィリングをのせ、ティータオルを巻きすのように使ってくるりと巻きます。シュトゥルーデルの生地はとても薄いので、ティータオルなどで支えてあげないと巻く際に破れてしまいます。
巻き終えたら耐熱容器にのせ、170℃に予熱したオーブンで50分焼いて出来上がり。焼く際は、上面にオイルや溶かしバター、クリーム(分量外)を刷毛で塗ると、乾燥を防ぐことができます。

寒い季節はナッツに夢中!
クルミ

クルミは、私の故郷の地域では、どこにでも育っています。
南ドイツの小さな村に住む友人の庭にも、高さ5m以上の大きなクルミの木が2本あります。秋にはたくさんの実や木の葉を落とすのですが、85歳を過ぎた彼女にとっては毎年その実を拾うのが大変で、またその木の陰になってほかの植物が育たないため、あまり気に入っていないらしく、愚痴を聞くのが恒例行事。今年は、お孫さんと一緒に集めることにしたそうです。

そんな話を聞くたびに、玄関前でクルミを拾うことができる彼女が羨ましくてたまりません。100%オーガニックなクルミが収穫できて、リスや野鳥にも嬉しいスポットなのですから!
その一方で、実際にクルミの木がある大変さも分かります。果樹やナッツを育てている友人たちからは、同じような話をよく聞きます。庭でナッツが実る暮らしを楽しむためには、心の余裕と、十分な時間が重要なのです。

クルミを収穫する際は、実が自然と木から落ち、外側の殻が開くまで待つことが大切です。殻は乾くとしわが寄り、色が濃くなります。晴れて暖かく、乾燥した日に拾うのがおすすめ。木の足元に芝生がある場合、短く刈っておくと拾う作業がラクになります。傷んだ実や質が悪い実は屋外で選り分けておき、緑色の外皮もきれいに剥いでおきます。これがなかなか大変な汚れ作業。素手で行うと、指先が黒く染まってなかなか落ちないので、作業の際は手袋をするとよいでしょう。
それから、平らなトレイなどに置いて20~25℃ほどの場所で乾燥させます。乾燥したら硬い殻を割って中身を取り出しますが、これも握力と使いやすいくるみ割り器が必要な、根気の要る作業です。

新鮮なクルミはそのまま食べることもでき、とても美味しいです。金属製や木製のしっかりしたくるみ割り器で殻を割り、薄皮を剥げば、美味しそうな白いクルミが顔を出します。ライ麦パンと一緒に食べれば、冬にぴったりの味わい。クルミにはビタミンCやオメガ3脂肪酸などが豊富に含まれ、栄養価が高い食材です。お店で購入すると高価ですし、ほとんどが輸入品なので農薬や添加物の心配もあります。
ヘーゼルナッツ(セイヨウハシバミ)

ドイツにいた頃の私の庭には、少なくとも4本のヘーゼルナッツの木がありました。ヘーゼルナッツはよく生育するため、その頃は収穫など気にせずバッサリと切り戻していました。毎週末にパウンドケーキを焼く際にはナッツを使ったこともありますが、自家栽培ではなく、スーパーで買ってきたパウダー状のものを利用していました。

30年経った今、そんな粗雑な扱いをしていたことを悔やんでいます。もっとも、今のところ、毎日の仕事に追われ、ゆったりと収穫を楽しむ心の余裕はありません。木の実を拾い、乾燥させて殻をむき、寒い季節のために備えるのは、とても豊かな時間です。
厄介者でもあり、美しくもある冬の雪

凍り付いたような夜と、それに続く雪で覆われた真っ白な朝は、とても美しいものです。雪国では、氷点下の気温の中の除雪作業など、雪には非常に苦労させられますが、同時にその美しさも見ることができます。
外気温やその他の条件によって、雪は重くなったり軽くなったり。もしすでに車や人が通ったあとであれば、除雪作業はずっと大変になります。ドイツでの滞在期間中、私は2回しか朝食後の雪かきをすることはありませんでしたが、その2回では労力がずいぶん異なりました。
1回目は寒い中、2人で30分以上かけて5cmほど積もった雪を除雪しました。2回目は冷たい雨が降る中、大人2人でやはり5cmほどの積雪を雪かき。雨を吸ってずっしりと重くなった雪を、びしょ濡れになりながら除雪するのは、まったく別の作業といっていい大変さでした。

除雪作業をしないと、道路が凍結して車を出せなくなったり、郵便配達や民間の配達サービスの人が配達できなくなったりしますし、その他の訪問者も滑りやすい路面で転倒する危険があります。ちなみにドイツでは、玄関前と庭側の歩道の雪は、7:00~22:00(日曜日は8:00~22:00)の間は除雪されていなければならないと定められています。この義務を怠って事故が発生した場合、家や土地の所有者が責任を問われる可能性があるのです。

ガーデンなど、自分で管理する土地があることは、大きなメリットとともに常に責任もついて回ります。最近では、私は管理しやすく個人のニーズを満たすには必要十分な、小さな庭を好むようになりました。ハーブや花を植えたウィンドウボックス1つだけでも、ガーデニングを十分楽しめますし、虫たちのためのちょっとした休憩スペースにもなりますよ。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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