これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第31回は、宮崎県綾町のコンセプトガーデン「綾ナチュラルガーデン錦原」のドラマチックな光を受ける冬枯れのシーンをご紹介します。

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ピート・アウドルフ氏に影響を受けて

綾ナチュラルガーデン錦原
山並みを背景に、左からミソハギ、シマカンギク、スティパテヌイッシマ、セダムオータムジョイ、ミューレンベルギアカピラリスがノスタルジックな表情を見せる。

今月ご紹介するのは、宮崎県綾町にある「綾ナチュラルガーデン錦原」、冬枯れの庭です。3年前の春に、長野県須坂市の園芸店「GARDEN SOIL(ガーデン・ソイル)」の田口勇さんからピート・アウドルフさんの写真集を見せてもらい、その時、枯れた庭の美しさに目覚めて撮影を始めました。その後、ピート・アウドルフさんの映画『Five Seasons ガーデン・オブ・ピート・アウドルフ』を観賞したこともあり、近年、僕の1番興味のあるテーマが「冬枯れの庭」になったのです。

綾ナチュラルガーデン錦原
白花のノジギクとミューレンベルギア・カピラリスがコラボレーション。

2017年11月、紅葉の「GARDEN SOIL(ガーデン・ソイル)」の撮影を皮切りに、北海道の「大森ガーデン」神奈川県愛甲市の「服部牧場」、群馬県太田市の「アンディ&ウイリアムスボタニックガーデン」、横浜の新港中央広場に清里の萌え木の森……、と機会があるごとに撮影を続けてきました。そして12月、僕の冬の撮影のもう一つのテーマ「宮崎育種ビオラ」の撮影も兼ねて訪れた宮崎滞在の2日目の朝、日の出とともに撮影したのが今回ご紹介する「綾ナチュラルガーデン錦原」の写真です。

朝日が登る前にガーデンに到着

綾ナチュラルガーデン錦原
少し空気は冷たいけど、とても静かで穏やかな気持ちになるガーデンで過ごした日の出の時間。

当日は日の出が7時だったため、宮崎市内のホテルを6時過ぎに出発し、まだ薄暗い道を車で走りつつ景色を眺めながら7時少し前に馬事公苑の交差点に到着しました。ガーデナーの平工詠子さんのSNSの投稿であまり広くはない道沿いのガーデンだと言う事は分かっていたし、まだ薄暗い光の中でも黄色いマムや赤いコリウスがはっきり見えたので、ここで間違いないと確信し、邪魔にならない場所へ車を止めて庭に入っていきました。

綾ナチュラルガーデン錦原
庭の奥、桜の向こうから日が登る瞬間。逆光にほんのり輝く庭を上手く撮れた。手前には、白花のノジギクと黄花のシマカンギク。

ちょうど正面の空が明るくなってきました。その方角が東で逆光、右手が南側で庭の奥は田園風景。そのさらに奥は山並が見え、左手が北側で馬事公苑があり、共にサイドからの光になります。僕は常々、ガーデンの撮影の時の基本のライティングはサイドからの光で撮るようにしています。この庭の場合は、馬事公苑側に立って南の方向にレンズを向けるか、南の山に背を向けて馬事公苑の方向にレンズを向けて撮るのがサイド光になります。また、時々はレンズを東に向けて逆光でドラマチックな撮影をすることもあります。

綾ナチュラルガーデン錦原
セダム‘オータムジョイ’やミューレンベルギア・カピラリス、ミソハギが立ち上がって。枯れたセダムやミューレンベルギアは逆光で撮ると綺麗だ。

光の確認の後は、庭の真ん中に立ってぐるっと見回してよいアングルを探します。幸い撮影の邪魔になる電信柱や畑の網などの気になる物は何も無く、どの方向を向いてもとても綺麗でした。そうこうしているうちに、そろそろ日の出の時間が迫ってきたので、急いで車に戻り、カメラをセットしていると、東の空から一筋の光が差し込んできて庭が一気に輝き出しました。

綾ナチュラルガーデン錦原
手前からディスカンプシア‘ゴールドタウ’、セダム‘オータムジョイ’、ミソハギ、コリウス、ノジギク、モクビャッコウ、ミューレンベルギア・カピラリスの彩り。

ちょっと肌寒い、静かな日の出の瞬間。神々しいとさえいえる光に包まれた「綾ナチュラルガーデン錦原」の撮影開始です。レンズを南や北に向けてサイドの光で庭の全体を撮ったり、太陽が低い位置まで上がってきたところでレンズを東に向けて、ちょっとドラマチックな逆光の撮影をしたり。庭の中を走り回って、時計が8時を廻る頃に撮影は終了しました。

美しい冬枯れの庭の撮影を終えて

綾ナチュラルガーデン錦原
この写真も半逆光で撮影。光に透ける葉が美しい。

12月12日の夜。自宅のある千葉に帰ってすぐに写真をPCに取り込んで写真チェックをしてみると、狙い通りの美しい冬枯れの庭が写っていました。が、撮影は終始僕一人でしたし、撮影が終わった後はすぐに宮崎市に戻ってビオラの撮影だったため、「綾ナチュラルガーデン錦原」の関係の方とはお会いしていませんでした。

綾ナチュラルガーデン錦原
グラス類とコリウスも逆光が綺麗。

よい撮影ができたので『Garden Story』に掲載したいと思っていましたが、あいにく連絡先も分からず、宮崎の「こどものくに」のガーデナー、源香さんに聞いてみようと思っていたら、偶然にも僕のSNSに「綾ナチュラルガーデン錦原」の写真がアップされていました。すぐにそこから「みんなでつくる綾町花壇プロジェクト」にメール送信。自己紹介とGarden Story掲載の許可をお願いすると、ものの10分もしないうちにガーデナーの谷口みゆきさんから返信をいただきました。そのすぐ後、役場の田牧さんからも連絡をいただきました。返信を待っている間に僕のSNSにアップしていた写真をお二人とも見てくださったようで、とても喜んでくださり、掲載の許可ももらいました。

綾町に根付いている花を育てる習慣

綾ナチュラルガーデン錦原
ディスカンプシアやセダム‘オータムジョイティス’、ミソハギ、コリウスなどの花壇越しに、奥に広がる自然風景もまた素晴らしい。

この原稿を書くにあたって、谷口さんと田牧さんのお二人から町の話をうかがったのですが、綾町は50年前から「花いっぱい運動」を展開し、町のあちこちに花壇があったそうです。じつは、どうして宮崎の綾町にこんなに今風なコンセプトのガーデンがあるのだろうと不思議に思っていたのですが、綾町には「花を育てる、庭を楽しむ」という習慣が昔からあったのですね。

綾ナチュラルガーデン錦原
シマカンギク、シノグロッサムが冬の庭を明るくしていた。

町と住民のボランティアさんが一緒になって庭をつくり、花を楽しむ。そのために平工詠子さんのような専門家を招いて勉強もする。美しい自然の中で、こういった環境がしっかりできあがっている綾町。宮崎県の中でまた一つ好きな場所ができてしまいました。次回は、庭の周囲にある桜が咲く頃に撮影に伺いたいと思います。

綾ナチュラルガーデン錦原
枯れ色のフウチソウとわずかに残る緑がグラデーションに。

Credit


写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。

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