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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリスを思わせる植栽豊かな北海道・藤井さんの庭

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリスを思わせる植栽豊かな北海道・藤井さんの庭

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第37回は、北海道旭川市にある、バラやクレマチスがレンガのアーチを彩るナチュラルスタイルなガーデン。ご夫婦で手作りする、藤井英子さんと卓也さんの庭をご紹介します。

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庭仲間からのメッセージから始まるご縁

クレマチス・マンジュリカ(フリミュラ系)が絡むレンガのアーチ
クレマチス・マンジュリカ(フリミュラ系)が絡むレンガのアーチ。組み合わせが絶妙だ。

昨年の7月末、僕のメッセンジャーに北海道の和田さんという方から「突然のコンタクト大変ご無礼をいたしお許しください」という書き出しのメッセージが届きました。内容は、旭川の藤井英子さんのお庭が素敵なので撮影にいらしてくださいというもの。とても丁寧な文章で綴られた最後に、藤井さんのインスタのアカウントも添えられていました。

ガーデン
経年変化で落ち着いた色合いのレンガに、ライムグリーンやブルーが引き立つさりげない一角。

じつは、このようなご連絡は時々舞い込むのですが、実際に行ってみると撮影にはちょっと難ありということもあるので、どんな庭なのか、よい庭だといいなぁ~と思いながらインスタを開いてみました。インスタの中で見た藤井さんの庭は、本当にイギリスを思わせる、古いレンガのアーチやゲートにさまざまな宿根草やバラ、クレマチスが咲く素敵なお庭でした。

早速、和田さんにはお礼のメッセージ、藤井さんには来年の7月に撮影に伺いたいというメッセージを送りました。

北海道のガーデン巡りを計画

レンガの構造物から枝垂れ咲く‘ジャスミーナ’
レンガの構造物から枝垂れ咲く‘ジャスミーナ’。レンガとバラがとてもお似合いだ。

今年の6月は、久しぶりに関西方面に行ったり、長野に行ったりしてなかなか忙しくしていましたが、そんな折、ガーデンストーリーでもお馴染みの橋本景子さんから「旭川の藤井さんのお庭に行かれるそうですね、私も友人2人と7月6日に伺いますので、ご一緒にいかがですか?」とお誘いの連絡が入りました。

クレマチス‘パゴダ’
可愛くて大好きなクレマチス‘パゴダ’も満開の季節。

撮影後にはご主人の卓也さんが美味しい夕食をご馳走してくださるそうだし、撮影もその頃がよさそうだと思っていたので、ご一緒させていただくことにしました。7月6日の午後は旭川の藤井さんのお庭に行くと決めて、その前後に、ぜひ行きたいと思っていた「いわみざわ公園」のオールドローズ、「十勝千年の森」「大森ガーデン」「真鍋庭園」「風のガーデン」「上野ファーム」「あさひかわ北彩都ガーデン」、さらには「ガーデンフェスタ北海道2022」も気になるし、時間があったら久しぶりに「イコロの森」も顔を出したいな……なんて、こんなに回れるはずもない壮大な計画に胸を膨らませていました。

悪天候の十勝から旭川へ移動

ヤマアジサイ
ヤマアジサイのブルーがいいアクセントになっている。

7月6日朝の「大森ガーデン」は、前日午後の「十勝千年の森」に続いて小雨模様でした。宿根草が美しく咲いて、グラス類もとても綺麗! これで前回(2019年)のような朝の光があったらどんなに素敵だっただろうと、低く垂れこめたグレーの雲を睨みながら2時間ほどで撮影を終了。この後は「真鍋庭園」に寄ってから「風のガーデン」「上野ファーム」を撮影して、夕方に藤井さんの庭に向かおうと車を走らせました。

ガーデニング
左/木々の間を縫うようにカーブを描く小道が奥の庭へ誘う。右/水が滴る音とギボウシが涼やかな水のコーナーも。

が、途中の峠はワイパーを一番速くしても前が見えないくらいの土砂降り。こんな天候では仕方ありませんが、前を走るトラックも超ノロノロ運転で、時間だけがどんどん過ぎていきました。絶望的な気分でやっと富良野に着いたのは、もう3時を過ぎていました。

峠が下りになって、そろそろ富良野という頃になると、天気は突然雲一つない晴天に。気を取り直してプランを変更し、「風のガーデン」「上野ファーム」は諦めて、綺麗な夕方の光を期待しながら旭川の藤井さんのお庭に直行しました。

藤井さんのお庭に着いたのはちょうど4時頃で、橋本さんたちと藤井さんが玄関の前で出迎えてくれました。光がいい感じになってきていたので、皆さんに簡単に挨拶をして、カメラを抱えてすぐに庭に直行。すると、昨年インスタで見た“まるでイギリスの庭を思わせる美しい世界”が目の前に広がっていました。

ヨーロッパの田舎のガーデンに着想を得て

ガーデンアーチ
アイアンのアーチ左側は、ピンクの小輪のバラ‘バレリーナ’と大輪の‘ペニー・レーン’。右側は、ピンクのクレマチス‘ハグレー・ハイブリッド’にグレーがかるバラ‘アッシュ・ウェンズデイ’。隣り合う花の合わせ方がうまいと思う。

藤井さんがこの庭をつくり始めたのは、今から11年前。最初は2匹の愛犬用に芝生を張った庭でしたが、部屋に花を飾れるような花の庭に変えたいと思ったのがきっかけだったそうです。仕事のかたわら、あまり知識もないままに苗を買ってきては植えてみるものの、イメージ通りにならず悩んでいた時、たまたま見た雑誌で、ヨーロッパの田舎のガーデンのレンガの小道を見つけました。

庭づくり
左/シルバーリーフのラムズイヤーが緑の濃淡の中で際立つ小道のある風景。右/クレマチス ‘プリンス・チャールズ’と‘ホワイト・プリンス・チャールズ’が見事なコラボレーションを見せている。

「庭の真ん中にレンガの小道を作ってみるのはどうだろう」と卓也さんに相談したところ、「芝生を剥がしてレンガの小道を作るから、その両側に花を植えてみたら?」と提案してくれました。そうと決まってからは、卓也さんは庭のあちこちにレンガの小径やアーチ、ゲートをつくり、英子さんは宿根草やバラやクレマチスを植え続けて、今のガーデンが出来上がったそうです。

夫婦で作るナチュラルガーデンと未来

レンガのアーチとつるバラ‘ニュー・ドーン’
レンガのアーチを優しく縁取る、つるバラ‘ニュー・ドーン’。

藤井さんご夫妻の庭は、しっとりと落ち着いていて、どこかヨーロッパのガーデンにいるような雰囲気です。それはおそらく、最初に見た雑誌のヨーロッパのガーデンの素敵なイメージを2人で共有しているからでしょうか。

ガーデン
緑の濃淡が目に心地よく、物語を感じさせる初夏の庭。

ご主人のレンガワークも素朴な手作り感があって素敵ですし、英子さんの植栽も色数を抑え気味にして、葉の緑の濃淡が生きる組み合わせです。また、バラもクレマチスもレンガのアーチを隠しすぎないように、ナチュラルな感じで誘引されています。

ガーデニング
ご主人作のアンティーク調のレンガのアーチ。赤茶色のレンガに対して、白いバラとさまざまなグリーンの葉色が浮かび上がる。

英子さんに今後の目標を伺うと、「花友さんの紹介で各地のお庭巡りをしたり、来ていただいたり、そうして素敵な出会いがあって、ますますお庭にのめり込んでいます。ワクワクが止まらない庭づくりは、やっとこれからがスタートです」と言います。

ベテランのガーデナーさんから「庭づくりに終わりはない」という言葉をよく聞きますが、藤井さんのお庭もこれからまだまだ進化し続けるのでしょう。

北海道に行く度にお邪魔したくなってしまう庭が、また一つ増えてしまいました。

藤井英子さんのInstagram  chaco0122

Credit


写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。

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