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【注目の新刊】北欧の『庭を彩る野バラ』に学ぶ! 日本でも参考になる“自然と共生する庭づくり”

【注目の新刊】北欧の『庭を彩る野バラ』に学ぶ! 日本でも参考になる“自然と共生する庭づくり”

風景や植物から癒やしを得ることを求める中で人気が高まっている「ナチュラルガーデン」。注目のガーデンスタイルのエッセンスを伝える書籍『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』が、この春発売されました。北欧スウェーデンの女性ガーデンデザイナーが執筆したこの本には、日本でも栽培可能なバラが多数掲載されているほか、野バラの利用法など、あなたの庭でも「自然と共生する庭」を実現するためのヒントが満載です。日本語版監修をつとめたローズライフコーディネーターの元木はるみさんに書籍の魅力を教えていただきます。

北欧スウェーデンで育てられているバラとは?

『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』
新刊本『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』マリカ・デリーン著、元木はるみ監修、中村冬美訳 グラフィック社刊

植物とガーデニングを愛する家庭で育ち、独学でガーデンデザインを習得した北欧、スウェーデンの女性ガーデンデザイナー、マリカ・デリーン(Marika Delin)さんによる書籍が今年春、日本語に翻訳されて発売されました。『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』(グラフィック社刊)では、野バラは野生種とその近縁のバラと定義され、彼女の視点による選りすぐりの野バラが38種紹介されています。

スウェーデン
スウェーデンは冬が長く寒いため、暖かい季節は貴重。自然や植物との触れ合いを楽しむガーデニング文化が根付いています。Tanhu/Shutterstock.com

北欧は、春から夏にかけて日照時間が長く、ガーデニングを楽しむ人々も多い国。バラの栽培環境は、日本でいうと避暑地としての人気が高い八ヶ岳などの気候に似ていることからも、日本においても栽培可能なバラが多数掲載されています。

初めてこの原書を目にした時、著者が野バラを生かしたガーデンデザインを行っていることにとても驚きました。何故なら、新しい庭づくりやガーデンデザインに利用されるバラは、現代バラが中心であると、当たり前のように思っていたからです。

野バラが咲く自然体の北欧ガーデン

北欧ガーデン

原書のページをめくっていくうちに気付いたのは、ガーデンといっても北欧のガーデンは、造り込まれたガーデンではなく、木々が茂り、まるで小鳥のさえずりが聞こえてきそうな、自然な風景を生かしたナチュラルスタイルであること。それはまさに今注目されている「自然との共生」をテーマにした庭空間であることが解りました。

バラ‘フィンランズヴィータ’
北欧で愛されるバラ‘フィンランズヴィータ’(意味:フィンランドの白いバラ)。

ナチュラルスタイルのガーデンには、現代バラの花形や花の大きさ、花色、樹形、醸し出す華やかな雰囲気よりは、確かに、野バラのような、周りの風景に自然と溶け込むような雰囲気、花形、花の大きさ、花色、樹形のほうが、マッチしているように思えました。

北欧で息づく日本の野バラと北欧独自の野バラ

『Vildare ROSOR』
原書『Vildare ROSOR』

本書のP.12~13には、著者がピックアップした世界中の野生種のバラが紹介されています。ピックアップされた野生種のバラたちは、北欧の気候にも合い、北欧での栽培が可能な品種です。また、北欧の野バラの中では、スピノシッシマ系統が一番多いことが言及されています。

『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』
Screenshot

そこにリストアップされた野生種の中には、日本生まれのロサ・ルゴーサ・アルバ(別名:シロバナハマナス/P.52掲載)と、ロサ・ヒルトゥーラ(別名:サンショウバラ/P.96掲載)がありました。この2種のバラは、スウェーデンでの栽培にも適しているとのことです。

ロサ・ルゴーサ・アルバとロサ・ヒルトゥーラ
左/ロサ・ルゴーサ・アルバ 右/ロサ・ヒルトゥーラ 写真/元木はるみ

特に原書で印象的だったのは、かつて日本から海を渡ったロサ・ルゴーサ(別名:ハマナス)が、スウェーデンのハッランド地方などの長い砂浜に植えられていることです。生育に適した場所であったために繁殖が旺盛となり、根が砂を押さえ、そして現在、砂浜が浸食されるのを防いでいる様子が紹介されています。

『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』

また、野生種だからこその強烈な特徴をもつ、個性的なバラについても紹介されています。

ロサ・セリケア・オメイエンシス・プテラカンタ
4~5枚の花弁と恐竜のような棘を持つ、ロサ・セリケア・オメイエンシス・プテラカンタ。

現代バラでは、ローズヒップを実らせることは、樹勢を弱らせてしまうことに繋がりかねません。しかし、野生種とその近縁のバラたちは、花の数だけローズヒップをたくさん実らせ、それによって樹勢が著しく弱くなることはあまりありません。

本書では、ローズヒップの美しさや利用方法にも触れ、秋から冬にかけてのバラのある暮らしを、より豊かにしてくれるヒントも紹介されています。

ローズヒップ
北欧に多いスピノシッシマ系統のバラの美しい黒いローズヒップ。食用に利用されています。

美しい野バラと暮らすヒントを読み解く

野バラ

また本書の特徴として、どの写真も美しく、野バラの魅力を存分に伝えてくれています。

日本でも今、よりナチュラルで、自然と共生するガーデンのスタイルに注目が集まっています。もちろん、バラを中心とした庭、紫陽花を中心とした庭、野菜やハーブを中心とした庭など、ガーデナーの好みによってガーデンのスタイルはさまざまです。もしかしたら以前より、ガーデンも多様性の時代になってきたのかもしれません。

そんな中でも、特にナチュラルスタイルのガーデンは、現代人が日々のストレスから解放され、風景や植物から得られる癒やしによって英気を養い、よりよい自分自身でいたいなどの目的を持つ人たちに特に人気が上がりつつあるようです。

『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』

ここでご紹介している『庭を彩る野バラ』の本は、そんな「自然との共生」をテーマにした庭づくりを目指している人に、とても参考になるエッセンスが詰まっています。

ナチュラルな庭に合う野バラと、ナチュラルな庭づくりには欠かせない野バラと相性のよい植物の解説や、植え付けなど、北欧においての栽培法も紹介されています。

ページをめくるたびに「自然との共生」を感じる北欧のガーデンの中に身を置くような感覚を楽しめる一冊です。北欧でのバラとの付き合い方を読み解くうちに、ご自分のお庭でも取り入れることのできるアイデアに出会えることでしょう。

『庭を彩る野バラ 野生種とその近縁のバラ38種』

マリカ・デリーン著、元木はるみ監修、中村冬美訳 グラフィック社刊
単行本(ソフトカバー)カラー176ページ

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