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宿根草ショップの店長が教える! 秋を知らせるオススメの宿根草
宿根草(しゅっこんそう)という植物のグループをご存じですか? ガーデニングを始めたばかりの人には、初めて知るワードかもしれない宿根草。実は手間がかからなくて、とっても簡単に育つ宿根草もたくさんあります。「ガーデニングの初心者にこそ、宿根草をオススメしたい!」という「おぎはら植物園」店長の荻原範雄さんに、秋を感じるオススメの宿根草をピックアップしていただきます。
目次
庭に植えると毎年、季節感が楽しめる!
秋の宿根草
人にも植物にも、暑く厳しい夏が過ぎ、日に日に気候がおだやかになってくる頃。庭でガーデニングをしたり、花を見て癒されたい気持ちになりませんか? そんな頃に咲く秋の宿根草は、季節感があって目にもいっそう美しく映ります。
宿根草は春から初夏にピークを迎える種類が多いので、秋に花盛りとなる種類は少ないのですが、そんな中でも丈夫で手間がかからず、植えっぱなしで毎年秋に咲いてくれるオススメの宿根草がありますので、ご紹介します。
年々ふえる! 丈夫な多年草
ユーパトリウム(フジバカマ)の仲間
フジバカマといえば、秋の七草にも数えられる代表的な秋の花です。日本に自生するフジバカマの他にも、北米産のセレスチナムやルゴサムなどをもとにした多くの園芸品種があります。どの種類も丈夫で、一度植えれば広がるようにふえて、夏の後半から秋に、たくさんの花を咲かせて、楽しませてくれます。
‘ピンク・フロスト’
日本のフジバカマの雑種であるサワフジバカマの斑入り種。葉にクリーム色の斑が広く入り、秋にはピンクを帯びます。花だけでなくカラフルな葉も楽しめる品種です。
‘アイボリータワー’
北米産のフジバカマの品種です。2mにもなる大型種で、大きな白い花穂が見事です。
セレスチナム
北米産の原種。国内では「青花フジバカマ」の名前でも流通します。草丈が低めで広がるように生育し、一面に花が咲くので、グラウンドカバーにも利用されます。白花の‘アルバ’も人気があります。
※最新の分類で、ユーパトリウムではなくAgeratina(アゲラティナ)に細分化されました。
‘チョコラータ’
北米産のルゴサムの選抜種。チョコレート色の葉が楽しめ、秋になると白い花を一面に咲かせて、葉と花のシックな組み合わせが素敵です。
※最新の分類で、ユーパトリウムではなくAgeratina(アゲラティナ)に細分化されました。
‘グリーンフェザー’
アメリカ産のカピリフォリウムの選抜種。細かい葉がふわふわと茂り、秋になるとホウキ状に花茎が伸びます。花は目立ちませんが草姿が面白いので、特にガーデニング上級者に人気があります。
ユーパトリウム 生育の様子
日当たり、水はけのよい場所を好みます。暑さ、寒さに強い宿根草で、植えっぱなしで手間がかかりません。一度植えると年々株が広がって、花の数も多くなります。花が咲き終わったら、花茎を下から切り戻して姿を整えます。冬は落葉して越冬し、春になると再び芽を出します。
【DATA】
■ キク科 宿根草(耐寒性多年草)
■ 草 丈 : 50㎝~2m前後(品種により異なる)
■ 耐寒性 : 強い
■ 耐暑性 : 強い
■ 日 照 : 日向
秋のガーデンに彩りを与える
サルビア、セージの仲間
サルビア(英名:セージ)は世界に900種類以上が分布するといわれており、料理に使うセージや、よく花壇で見かける赤いサルビア(スプレンデンス)も同じ仲間です。サルビアは一年草のイメージがありますが、実は多年生のタイプが主で、毎年楽しめる種類も多くあります。特に秋に咲く種類は、花材の少ない秋のガーデンでは利用価値が大きいと思います。背が高くなり、たくさんの花を咲かせる様子は、一見派手ですが、意外に秋の風景に溶け込んで美しいものです。
サルビア・アズレア(ブルー・セージ)
目を引くあざやかなスカイブルーのサルビア。春から伸び続け、秋に咲くタイプなので、春から夏に数回刈り込んでおくと、秋の花時に倒れずに姿よく咲かせることができます。
メキシカンセージ‘フェアリーピンク’(サルビア・レウカンサ)
ビロードのような萼(がく)が美しい、秋の代表的なサルビアです。一般的には紫色の種類が有名ですが、最近流通するようになったピンク色も可愛らしく人気が出ています。
ローズリーフセージ(サルビア・インボルクラタ)
玉のようなつぼみが面白いサルビア。1.5mほどになる大型種で、鮮やかな花色が美しいので、たくさん咲かせると見事です。
パイナップルセージ‘ゴールデンデリシャス’(サルビア・エレガンス)
パイナップルセージは1.5~2m近くまで高く伸びて、秋に真っ赤な花が一斉に咲く、見応えのあるサルビアです。この‘ゴールデンデリシャス’(写真)は葉の色が黄色でカラーリーフとしても楽しめるうえ、秋の花とのコントラストは眩しいほどに鮮やか。普通種より小型です。
コバルトセージ(サルビア・レプタンス)
秋にコバルトブルーの小花をたくさん咲かせるサルビア。放任では80㎝ほどの高さになりますが、春夏に切り戻しておけば40㎝前後のコンパクトな高さで咲かせることができます。茎が細く、風に揺れて繊細なイメージのある種類です。
サルビア‘イエローマジェスティ’(サルビア・マドレンシス)
サルビアの中でも特に大型で、開花時には高さが2mを超えることもあります。黄色の花をたくさん咲かせる様子は実に見事で、存在感が抜群です。ガーデンの後方に背景のように使うのが、上級テクニックです。
サルビア、セージ 生育の様子
秋に咲く種類は、春〜夏にぐんぐん伸びます。この頃に1~2回ほど短く切り戻しをして高さを抑えておくことで、秋に倒れたり、姿が乱れることを防ぎ、花つきもよくなります。種類によっては秋の直前に切ると咲かなかったり、花が遅れることがあるので、なるべく夏までには切っておきましょう。秋咲きタイプは暑さにとても強く丈夫です。
【DATA】
■ シソ科 宿根草(耐寒性多年草)
■ 草 丈 : 80㎝~2m前後(品種により異なる)
■ 耐寒性 : 約-5~-30℃まで(品種により異なる)
■ 耐暑性 : 強い
■ 日 照 : 日向
風に揺れる姿に秋を感じる
シュウメイギク(秋明菊、アネモネ)の仲間
細い花茎をすっと伸ばし、風にゆったりとなびく様子は、秋の情緒を感じさせてくれます。中国から渡ってきたといわれており、江戸時代には、すでに広く親しまれていた、日本で長く愛栽されてきた花です。
名前に「菊」とありますが、菊の仲間ではなくアネモネの一種類です。菊のように秋に咲くことや、花の形がその名に由来していると思われます。日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカでもジャパニーズ・アネモネの名で人気が高く、品種改良が盛んで、たくさんの品種が作出されています。
‘ハドスペン・アバンダンス’
国内では「ハドスペン」の名で流通します。鮮やかなピンクの花色で、一輪の中で花弁の色の濃さ、形が違ってユニーク。草丈はコンパクトで、たくさんの花を咲かせます。
‘プリティ・レディ・ダイアナ’
国内では「ダイアナ」の名で流通します。小型で花つきがよく、草姿が整いやすい品種です。
‘ワイルドスワン’
シュウメイギクとアネモネ・ルピコラの交配種で2010年頃から登場した新しいハイブリッド品種。今までのシュウメイギクと違い、秋だけでなく初夏から晩秋まで連続的に咲き続けます。花弁の裏側に青みを帯びる花色も、今までになく新鮮です。
‘ドリーミングスワン’
‘ワイルドスワン’をもとにした品種で、優れた特徴はそのままに、花弁が厚い半八重咲き。花もち、花つきがよく、丈夫な新品種です。
秋明菊 生育の様子
寒さ、暑さに強く、育てやすさが特に魅力の宿根草です。暖地でも寒冷地でも植えっぱなしで手間がかかりません。植え場所は、日当たりがよく、肥沃で水はけのよい場所が適しています。半日陰でも咲きますが、暗すぎたり湿気が多い場所では、花が少なく茎が倒れやすいので、なるべく日向に植えてください。冬はほとんどの葉が落ち、春になると再び新しい葉が芽吹きます。
【DATA】
■ キンポウゲ科 宿根草(耐寒性多年草)
■ 草 丈 : 60㎝~1m前後(種類により異なる)
■ 耐寒性 : 強い(約-30℃まで)
■ 耐暑性 : 強い
■ 日 照 : 日向
和の趣が美しく、海外でも人気!
ホトトギス
ホトトギスは日本の野草で、主に太平洋側に自生しています。夏の終わりごろから秋に、特有の変わった形の花を咲かせて、風情のある姿を楽しませてくれます。古くから園芸用に親しまれており、原種のほか、台湾ホトトギスとの交配種も多く、さまざまな品種があります。海外でもトード・リリーの名前で人気があり、品種も多く作出されています。
‘青竜’
‘白楽天’
キバナノホトトギス
‘インペリアル・バナー’
ホトトギス 生育の様子
自生地は、やや日陰で湿った場所なので、庭植えの場合も明るい日陰で風通しがよく、強く乾燥しない場所を選びます。どちらかといえば、小型の園芸品種よりも大きく育つ原種系のホトトギスのほうが丈夫で、庭植えに向きます。
鉢植えの場合は、水はけがよい用土を使い、こまめな水やりで乾燥を防いで、新鮮な水で根を清潔に保つとよいでしょう。水分を好む花ですが、水が溜まるような状態では根が腐りやすいので注意が必要です。
【DATA】
■ ユリ科 宿根草(耐寒性多年草)
■ 草 丈 : 20~80㎝前後(品種により異なる)
■ 耐寒性 : 強い(約-15℃まで)
■ 耐暑性 : 普通
■ 日 照 : やや半日陰
野趣に富んだ自然な美しさが魅力!
ノコンギク(野紺菊)
ノコンギクは日本各地に見られる野草で、小さな花が楚々と咲き、とても可憐です。一般に流通するものは、小型で細身の花姿が多く、大きくなりすぎないため、庭植えに適しています。落ち着いた秋の風情が楽しめますし、切り花にして一輪挿しなどに飾っても美しいものです。開花が遅い種類は、宿根草の庭で一番最後に咲き、季節ごとに多くの花々が競演した庭にシーズンの終わりを静かに告げてくれます。
‘夕映え’
‘桃山’
‘清澄’
ノコンギク 生育の様子
基本的に日当たり、水はけのよい場所を好みます。日向で栽培したほうが花つきがよく、半日陰では花が少なくなります。猛暑地では夏の暑さを考え、西日が避けられる場所を選ぶとよいでしょう。性質は丈夫で、一度植えれば特に難しい手入れもなく、放任でも育つ花です。
【DATA】
■ キク科 宿根草(耐寒性多年草)
■ 草 丈 : 30~80㎝前後(種類により異なる)
■ 耐寒性 : 強い(約-30℃まで)
■ 耐暑性 : 強い
■ 日 照 : 日向~やや半日陰
秋に定番の宿根草の中にも、改良により新しい仲間も増え、丈夫で育てやすい品種が少しずつ増えています。すでに秋咲く宿根草を植えていたら、新品種をプラスすると見慣れた景色が新鮮になりますよ。また、一度栽培に失敗した経験をお持ちなら、丈夫に改良された品種で栽培に再挑戦してみるのもいいタイミングです。宿根草は、少し早めに栽培をスタートしておくと、開花によって季節の移り変わりを知ることができます。宿根草を植えて、暮らしに季節の巡りを感じるコーナーをつくってみませんか?
Credit
写真&文 / 荻原範雄 - 「おぎはら植物園」店長 -
おぎはら・のりお/長野県上田市にある宿根草と山野草を扱う植物専門店「おぎはら植物園」の店長。1979年から植物の栽培と販売をスタートさせた「おぎはら植物園」では、現在、取り扱う宿根草と山野草は4千種を超える。全国に苗生産者のネットワークを持ち、海外からの新品種の導入なども積極的に行う。近著に『咲かせたい!四季の宿根草で庭づくり』『決定版 カラーリーフ図鑑』(ともに講談社)。
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