トップへ戻る

【要注意】触るだけで危険!「バイカルハナウド」と身近に潜む危険植物5選

【要注意】触るだけで危険!「バイカルハナウド」と身近に潜む危険植物5選

Motalb/Shutterstock.com

北海道でバイカルハナウドに似た植物が見つかったことで、植物による「光毒性(こうどくせい)」への関心が高まっています。しかし、危険な植物はそれだけではありません。見た目は美しいのに、触れたり、食べたりすると深刻な健康被害を招く毒性植物に遭遇する場面は、夏のアウトドアや帰省シーズンに増えてきます。そこで今回は、夏のレジャーで注意すべき「触れてはいけない」「食べてはいけない」毒植物5選を、見分け方、間違いやすい植物との違いをご紹介します。

【バイカルハナウドとは?】白いレースの傘のような巨大な花に要注意!

バイカルハナウド
白い大きな花を咲かせたバイカルハナウド。Tomas Ragina/Shutterstock.com

バイカルハナウド(Heracleum sosnowskyi)は、セリ科の大型多年草で、2m近い草丈と、まるで白いレースの日傘を広げたような巨大な花が特徴です。ユニークでダイナミックな姿に思わず近寄ってしまいますが、絶対に触らないで! 茎や葉に含まれるフラノクマリン類という成分が、皮膚に付着したまま紫外線にさらされると、火傷のような炎症や水ぶくれを起こすことがあり、目に入ると失明の危険性があります。

「触れる+日光に当たる」という組み合わせで毒が発生するものを「光毒性物質(こうどくせいぶっしつ)」と呼び、バイカルハナウドは根から花、果実まで全草に強い光毒性があります。

バイカルハナウドによるヤケド
バイカルハナウドによるヤケド。負傷から1週間後も痛々しい水ぶくれが…。grisdee/Shutterstock.com

最近、このバイカルハナウドに酷似した大型のセリ科植物が北海道札幌市で確認され、環境省はジャイアント・ホグウィード(バイカルハナウド)類似植物への注意喚起を行っています。現時点では正式な「バイカルハナウド」と同定されていないものの、在来種の大型ハナウドとは特徴が異なり、光毒性を持つ可能性が高いため除去措置が行われています。

ジャイアント・ホグウィード(バイカルハナウド)の特徴と見分け方

バイカルハナウド
海外の野原に自生するバイカルハナウド。Motalb/Shutterstock.com

じつは日本にはバイカルハナウドに似ているものの、触っても無毒のセリ科植物がいくつもあり、レースのようなエレガントな花姿から、ガーデンプランツとして楽しまれているものもたくさんあります。そもそも、植物のなかには毒性をもつものは少なくなく、人類はその毒を利用して獲物を仕留めたり、薬を作ったりしてきたのです。ですから、毒があるから悪い植物というわけではなく、正しい知識を持つことが何よりも大切。バイカルハナウドは世界で最も危険な植物と言われていますが、正しい知識を持って正しい対応をすれば、危険は回避できるものです。バイカルハナウドの見た目は在来種で無毒のオオハナウドやノラニンジンと似ており、見分けが難しいのも騒動を大きくしている要因。見分け方のポイントを表にまとめました。

名前ジャイアント・ホグウィード(バイカルハナウド)在来のオオハナウドノラニンジン
草丈1.5〜3mと大型1〜2m(地域差あり)0.5〜1.2m
葉の形葉は大きくキザギザと深く切れ込みがある羽状複葉(うじょうふくよう)切れ込みが浅めでやや丸みのある羽状複葉小さめで繊細な羽状複葉
ゴボウのように太く、表面に紫の斑点や筋模様がある太めで、緑色か赤紫色細めで緑色
直径30〜50cmで白色でレース状の巨大な花傘状直径20〜30cm程度でバイカルハナウドよりやや小ぶりレース状の白い花でバイカルハナウドより小さめ
匂い苦みのある匂いや刺激臭青臭いが、強い刺激臭は少ないセリっぽい爽やかな匂い
生息地空き地、道端、河川敷、都市部にも侵入。繁殖力が強い山間の湿地や沢沿い、高原〜山地が多い野原や草地

*羽状複葉(うじょうふくよう)/1枚の葉がいくつかの小さな葉っぱに分かれている形。羽のように見えることから「羽状(うじょう)」と呼ばれます。

ジャイアント・ホグウィード(バイカルハナウド)の特徴
ジャイアント・ホグウィード(バイカルハナウド)の茎には斑点模様があり、葉は荒々しいキザギザ。Lewis Pidoux、Lioneska/Shutterstock.com
ノラニンジン
ノラニンジンは葉がより繊細で草丈も低い。LFRabanedo/Shutterstock.com

このように、バイカルハナウドは花も草丈も圧倒的にデカい! また、明確な紫色の斑点やすじ模様が目立ちます。バイカルハナウドと在来のハナウドは、見た目が似ていても「毒性」と「生態系への影響」が決定的に異なります。いずれにせよ、わからない植物には素人判断で近づかず、迷ったら写真で記録して専門家に相談するのが最善です。

また、開花中は特徴に大きな違いがあるので見分けやすいですが、小さいうちは見分けにくくリスク大。「なんだか大きくて、葉がギザギザしていて不自然」と感じたら、決して触らない・持ち帰らないことが大切です。

バイカルハナウド以外にも夏に注意! 毒性をもつ植物

ドクゼリ

日本三大有毒植物のひとつ。食用の「セリ」とよく似ているので、水辺に生えている白い花のセリ科植物=すべてドクゼリと仮定して食べないほうが安全です。

ドクゼリ
川辺に生えているドクゼリ。Maximillian cabinet/Shutterstock.com
項目内容
特徴セリ科/白い小花の傘状花序/葉は細かい切れ込みの羽状複葉
生育地湿地・田んぼの縁・川べりなどの水辺
毒性全草にシクトキシン。少量で痙攣・呼吸麻痺。解毒剤なし
間違えやすい植物セリ(食用)、ノラニンジン
見分けポイントセリは特有の爽やかな匂いがし、ドクゼリは不快な匂い

ドクウツギ

日本三大有毒植物のひとつ。日当たりのよい荒れ地に生育します。夏につける赤く美しい実は、いかにもおいしそうな色で口に入れたい誘惑にかられますが、たった3粒口に含んだだけで死に至るといわれています。幼児に注意。

ドクウツギの赤と黒の実。いかにも美味しそうな雰囲気だが絶対に口に入れてはいけない。
項目内容
特徴ドクウツギ科/低木/赤黒い果実状の偽果/
生育地山地の林の縁、低山の斜面など
毒性全草に毒性。特に果実状の部分に神経毒(コリアリアトキシン)を含み、誤食での死亡例がある
間違えやすい植物グミ、ヤマブドウなど
見分けポイント果実に見える部分は実ではなく偽果。枝先に整列

トリカブト

日本三大有毒植物のひとつ。山野草として人気ですが、全草が猛毒。根や茎がニリンソウに似ており、誤食事故が後をたちません。

トリカブト
紫の兜状の花が特徴のトリカブト。ガーデンフラワーとしても人気が高い宿根草だが注意が必要。Peter Turner/Shutterstock.com
項目内容
特徴キンポウゲ科/紫〜青の兜形の花/切れ込みの深い掌状の葉
生育地山地、林縁、沢沿いなど湿った半日陰に多い
毒性アコニチン(神経毒)。摂取で痺れ・麻痺・心停止
間違えやすい植物ニリンソウ、モミジガサ(食用)
見分けポイント葉に光沢あり、切れ込みが深く、葉裏に毛が少ない/花がない時期は要注意!

ハシリドコロ

山間部に自生。幻覚・錯乱作用があり、子どもが遊びで触れると危険。葉がジャガイモやホウレンソウに似ています。

ハシリドコロ
ホウレンソウに似た葉のハシリドコロ。
項目内容
特徴ナス科/紫がかった釣鐘型の花/楕円形の葉/若葉は山菜のようにも見える
生育地山地の林床、日陰の湿った斜面など
毒性スコポラミン、アトロピン(幻覚・錯乱・麻痺)
間違えやすい植物ホウレンソウ、フキ、ギボウシの若葉
見分けポイント若葉が不自然にツヤツヤ&肉厚で丸みがある、根や茎に独特の甘苦いにおい

これらは春先の若葉は特に見分けが難しく、専門家でも迷う植物もあるので、野山にあるものは無闇に「口にしない」のが鉄則です。

草むら、道ばた、川原…誰もが陥る“うっかり接触”とは?

毒植物によるトラブルは、特別な環境でだけ起きるわけではありません。

じつは、「いつもの公園」「祖父母の庭」「キャンプ場」など、身近な場所での“うっかり”が大半を占めています。植物のほうからこちらにやってくることはありませんから、私達が正しい知識を持って気をつければトラブルは防げます。

アウトドア
lielos_photograph/Shutterstock.com

こんなシーンに注意:

  • 小さな子どもが「キレイな花!」と触ってしまう
  • ペットが草むらで草を食べたあと、体調を崩す
  • 山菜採りでセリと間違って根を持ち帰り、家族で食中毒に
  • 親切心で摘んだ野草を人にあげてしまう(←じつは毒草だった)

特に小さな子どもや高齢者、ペットは毒に対する耐性が低いため、被害が深刻化しやすい傾向にあります。

【万が一の対処法】もしも触ったり、食べてしまったら?

毒植物に触れたり、誤って口にした場合は、初動対応と医療機関への連絡が命を守るカギになります。

手を洗う
KPG-Payless/Shutterstock.com

【触った場合】

  • すぐに石けんと流水でよく洗う
  • 紫外線に当てない(長袖で覆う、日陰に移動)
  • 症状が現れたら、早めに皮膚科を受診

【食べた可能性がある場合】

  • 無理に吐かない(かえって気道を傷つける可能性)
  • すぐに中毒110番に連絡(電話相談が可能)
     - 大阪中毒110番:072-727-2499
     - つくば中毒110番:029-852-9999
  • 速やかに救急外来へ。食べた植物の写真や現物があれば持参

まとめ:正しい知識をもって自然の美しさを楽しもう!

アウトドア
folyphoto/Shutterstock.com

バイカルハナウドは日本にこれまでない植物で、繁殖力も旺盛なことから注意喚起されていますが、一番危険なのは、正しい知識の不足です。

安全のための心得は

  1. 「自信がない植物は採らない・食べない」
  2. 子どもやペットをむやみに草むらに入れない
  3. 疑わしい植物はスマホで撮影し、専門機関に確認する
  4. 皮膚に汁が付いた場合はすぐに洗い、日光を避ける

私たちに“見分ける知識”“距離をとる意識”があれば、自然はいつも素晴らしい感動を与えてくれるでしょう。

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO