暑さ寒さに強い! タイサンボクの魅力と育て方|失敗しない! 剪定・病害虫対策から品種選びまで徹底解説

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初夏に咲く、純白の大きな花と芳醇な香りが魅力のタイサンボク。モクレンの仲間で、庭木としても人気の高い常緑樹です。暑さにも寒さにも強く、庭に取り入れやすいコンパクトな品種もあるので、初心者にもおすすめ。この記事では、タイサンボクの基本情報や特徴、種類、育て方、剪定のコツ、病害虫対策まで詳しく解説します。
目次
タイサンボクの基本情報

植物名:タイサンボク
学名:Magnolia grandiflora
英名:southern magnolia、bull bay
和名:タイサンボク(泰山木)
その他の名前:ハクレンボク、ギョクラン(玉蘭)、トキワハクレンなど
科名:モクレン科
属名:モクレン属
原産地:北米南東部
形態:常緑性中高木
タイサンボクはモクレン科モクレン属の花木です。モクレンやコブシと同じ仲間で、学名はMagnolia grandiflora(マグノリア・グランディフローラ)。漢字では「泰山木」と書きます。
原産地は北米南東部で、暑さや寒さに強く一年を通して戸外で栽培できます。樹高は自然樹高で20mに達しますが、毎年の剪定で樹高をコントロールすることは可能です。主に庭木として栽培されていますが、‘リトルジェム’などの矮性種を選べば、鉢での栽培も楽しめます。常緑性で、冬でもみずみずしい葉姿を保つのも魅力の一つです。
日本には明治時代に伝わり、新宿御苑に植栽されたといわれています。日本の気候によく馴染んで育てやすいために全国に広がりましたが、その多くはホソバタイサンボクです。
タイサンボクのつぼみが花開くまでを捉えたタイムラプス映像。atiger/Shutterstock.com
タイサンボクの花や葉、実の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:5〜7月
樹高:10〜30m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白
タイサンボクの開花期は5〜7月で、花色は白。純白の花は肉厚な花弁が特徴で、基本は6枚つきますが、まれに9〜12枚になることもあるようです。花の形はハクモクレンによく似ていますが、花のサイズは10〜25㎝と大きく、枝先で上向きに咲いて1〜2日ほどで散ります。また、この木の魅力を一段と引き上げるのが、芳醇な香りです。タイサンボクの精油は一般的にはあまり流通していませんが、香水に配合されることもあり、有名なものではゲラン社の「ランスタン・ド・ゲラン」などが知られています。
光沢のある濃緑の葉と花とのコントラストが美しい

タイサンボクの葉は長さ10〜25cm、幅5〜10cmほどの楕円形です。肉厚で表面にはツヤがあり、葉の裏には褐色の毛が密生します。潮風やスモッグに強く、都市の公園でもよく植栽されている花木です。
タイサンボクの実は食べられる?

タイサンボクは開花が終わると、果実をつけます。10〜15cmほどの袋の集合体で、10〜11月に果実が熟し、中から鮮やかな赤い種子が出てきます。種子は5〜6mmの楕円形で、鳥が好んで食べるので「人間も食べられるのかな?」と思うかもしれませんが、苦いので口にしないようにしましょう。
タイサンボクの名前の由来と花言葉

タイサンボクは漢字では「泰山木」と書き、大きく立派な葉や花を中国の名山である「泰山(たいさん)」に例えたとする説や、花を大きな盞(さかずき)に見立てて「大盞木(たいさんぼく)」とする説があります。
タイサンボクの花言葉は、「前途洋々」「威厳」など。樹高が高くなり、枝葉を大きく広げる姿や花姿の美しさが由来といわれています。
タイサンボクの品種

タイサンボクはモクレン科モクレン属のマグノリアの一種です。日本で出回っている種や園芸品種についてご紹介します。
ホソバタイサンボク

葉が細く、花もやや大きいのが特徴です。通常、基本種のタイサンボクと同一品種として扱われます。葉裏には産毛がありますが、時間が経つとなくなります。花は若木のうちから開花します。日本で普及しているのもこのタイプが多いです。
‘リトルジェム’

タイサンボクの園芸品種。矮性種で、樹高は2〜4mでコンパクトにまとまるので扱いやすく、鉢栽培も可能。葉の表はツヤがありますが、裏はビロード状で美しいのが特徴です。開花期は5〜11月で四季咲き。寒冷地には不向きで、地植えできるのは東北南部以南です。
斑入りタイサンボク
葉にクリーム色の斑がランダムに入ります。葉が軽やかに見え、カラーリーフプランツとしても活躍しそうです。
ヒメタイサンボク

タイサンボクとは別種ですが、同じくモクレン属の花木で、よく似た花を咲かせます。名前に「姫」がつくとおり、タイサンボクより花のサイズは小さく、花数も少なめ。葉はタイサンボクより薄く、裏は白い毛が密生してビロード状になるので、ウラジロタイサンボクの別名もあります。北関東以北では冬に落葉しやすくなるようです。
タイサンボクの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜7月
植え付け・植え替え:3月中旬〜4月
肥料:1~2月、9月頃
剪定:7月頃
種まき:5月頃
タイサンボクの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しのよい場所を好みます。あまり日当たりがよくない場所では、花つきが悪くなってしまうので注意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。ただし、寒冷地では冬は室内に取り込んで日当たりのよい場所で管理したほうが無難です。
【置き場所】水はけ・水もちがよく、有機質に富んでふかふかとした土壌を好みます。タイサンボクは樹高が高くなるので、枝葉を伸ばした時に邪魔にならないような場所をあらかじめ確保しておきましょう。根が粗くて細根が少なく、成木になると移植を嫌うため、植える場所には吟味が必要です。
耐寒性・耐暑性
日本の気候に馴染みやすく、暑さ寒さに強いので、一年を通して戸外で管理でき、冬越し対策なども特に必要ありません。ただし寒冷地では屋外での越冬が難しいときがあるため、鉢植えの場合は、冬場は暖かい室内や温室に取り込んだほうが安心です。地植えの場合は株元にマルチングをしたり、不織布などで株を覆うなどの防寒対策をするとよいでしょう。
タイサンボクの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの約2週間前に直径・深さ約50cmの穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで穴に戻しておきます。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れないよう、枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根付いたら、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期や真夏は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。タイサンボクは痩せ地でも育ちますが、木を充実させたい場合は1〜2月と5月頃、9月頃に緩効性肥料を株の周囲にばら撒き、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。
越年後は、毎年1〜2月と9月に緩効性肥料を与えましょう。
注意する病害虫

【病気】
タイサンボクが発症しやすい病気は、白絹病、黒斑病などです。
白絹病はカビが原因の周囲に伝染しやすい病気です。根や茎に発生しやすく、発症初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて株は枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに株ごと抜き取り、土も併せて処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
黒斑病は春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に発生しやすく、最初は黒または褐色の小さな斑点が発生。病斑は3〜15mmくらいで、下葉からだんだん上の葉へと広がっていきます。症状が進むと葉が縮れて黄色または褐色になり、やがて枯死します。肥料の与えすぎに注意し、株と株同士の間が狭い場合や、茎葉が茂りすぎて鬱蒼とした状態などで発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。発病した葉はただちに切り取って処分し、適用する薬剤を散布して様子を見ます。
【害虫】
タイサンボクに発生しやすい害虫は、カイガラムシ、カミキリムシなどです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mmほど。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
カミキリムシは、主に夏から秋に発生しやすくなります。カミキリムシの幼虫が幹に穴をあけて中に侵入し、木質部を旺盛に食い荒らすので注意。被害が進むと木が弱るうえ、中が空洞化して枯れてしまうこともあります。成虫が飛来して卵を産み付けるので、成虫や卵は見つけ次第補殺しましょう。また、木の株元などにおがくず状のフンを見つけたら、木の内部で活動していると推測できます。おがくずが出ている穴があれば、穴に細長い針金状のノズルを差し込むタイプの薬剤散布をして駆除してください。
タイサンボクの詳しい育て方
苗の選び方
葉の色艶がよく、主幹がまっすぐ伸びて、樹形が整ったものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え

タイサンボクの植え付けの適期は3月中旬〜4月です。植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。ただし、真夏と真冬は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。苗木が若いうちは、支柱を立てて誘引し、強風などによる倒伏を防ぎます。しっかり根付いたら支柱を取り外しても構いません。
地植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
タイサンボクを鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。苗木が若いうちは、支柱を立てて誘引し、強風などによる倒伏を防ぎましょう。しっかり根付いたら支柱を取り外しても構いません。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してあまり根鉢をくずさずに、新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定

【地植え・鉢植えともに】
タイサンボクの剪定適期は花後すぐの7月頃です。自然樹形では20mを超えて大きくなるので、一般家庭では樹高3〜4mまでに抑える剪定を行うとよいでしょう。タイサンボクは比較的樹形が自然に整うので、それほど剪定には手がかりません。地際から出てくるひこばえは付け根から切り取り、枯れ枝や木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく長く伸びている「徒長枝」なども分岐部まで遡って切り取りましょう。また、込みあっている部分があれば、日当たり、風通しがよくなるように、透かし剪定をします。
増やし方

タイサンボクは、挿し木で増やします。挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、タイサンボクは挿し木で増やすことが可能です。
タイサンボクの挿し木の適期は、7月頃です。タイサンボクは活着率が悪いため挿し木で簡単に増やせるというわけでもないので、生育のよいものを選抜することを前提に多めに挿しておくとよいでしょう。その年にのびた新しい枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して表土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
スペースに合わせて! 庭でタイサンボクの花と香りを楽しもう

優美な白い花から馥郁とした香りが漂うタイサンボクは、寒さや暑さに強く、ビギナーでも育てやすい庭木の一つです。基本種は枝葉を大きく広げるのでスペースの確保が必要ですが、矮性品種を選べば扱いやすく、限られたスペースでも育てられます。ぜひタイサンボクの栽培にチャレンジしてみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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