春を告げる純白の花! 憧れのハクモクレン(マグノリア・デヌダータ)の特徴を知って育ててみよう
桜の咲く頃、白く大きな花を枝いっぱいにつけるハクモクレンを街路樹などで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。満開になると白い綿雲のように青空に映える美しい姿は、春を告げる花として非常に人気があります。この記事ではそんなハクモクレンの特徴から、見た目のよく似たコブシとモクレンの違い、花言葉や育て方のコツまで、魅力とお役立ち情報をたっぷりお伝えします。
目次
ハクモクレンの特徴
ハクモクレンは春を代表するモクレン属(マグノリア属)の花木で、学名はマグノリア・デヌダータ(Magnolia denudata)です。日本では江戸時代から多くの人々に愛されてきた植物ですが、まずはその特徴について詳しくご紹介します。
ハクモクレンの全体的な特徴
ハクモクレンは中国の中央部原産で、比較的温暖な地域に自生する落葉高木です。日本へは江戸時代以前に渡来したといわれています。
モクレン属の植物の中では大型になり、樹高は10~15mほどに成長します。樹高が高く樹冠も大きいため、大きな木陰を作ってくれる樹木でもあります。そのため、公園や広い庭の植栽、緑陰樹、西日よけなどによく利用されます。
純白の花はよい香りをもち、遠くからでもひときわ目立つ存在感がありながら気品も兼ね備えた姿に加え、虫が付きにくく日本の気候でも育てやすいため、広い場所のシンボルツリーにおすすめです。
ハクモクレンの花と実の特徴
ハクモクレンの開花時期は3~4月で、葉が出る前に大きな卵形の純白の花が樹冠いっぱいに咲きます。花芽は銀色の毛に覆われ、揃って上を向いているのが特徴です。
柔らかい肉厚の大きな花弁が9枚あるように見えますが、正確には花弁は6枚で、その外側の3枚は萼片(がくへん)です。花にはレモンやライムを思わせる華やかな芳香があります。
花が散ると緑色の未受粉の花心がぽろぽろと落ちてきますが、受粉したものは木に残って実を結びます。実は長さ5~10cmの赤くデコボコとした袋果です。秋になって熟すと、袋果が裂けて種が出てきます。受粉率が高くないため、種は通常1つの花心に1~3個しかできません。
モクレンとコブシとの違い
ハクモクレンには、モクレン(シモクレン)とコブシという、よく似た見た目の庭木があります。混同されることが多いので、ここでは異なる点について解説します。
モクレンとの違い
「モクレン(木蓮)」というと、基本的にはシモクレン(紫木蓮)のことを指します。モクレンもハクモクレンも中国が原産のモクレン属の樹木で、英語圏ではどちらもマグノリアと呼ばれますが、分類上は別の種です。
モクレンとハクモクレンの違いは、主に4つあります。
まずは花の色です。モクレンは紅紫色の花ですが、ハクモクレンは白色の花をつけます。
次に、樹高の違いがあります。モクレンは中高木にあたり、樹高5m前後で横にも枝を広げます。ハクモクレンは高木で、樹高は10m~15mに達します。
またハクモクレンは花が咲き、散った後に葉が出るのに対し、モクレンは花と同時に葉が出てくる点も両者の違いの一つです。
最後は開花時期です。ハクモクレンのほうが早い時期に咲き始め、モクレンと比べて咲いている期間も短いという違いがあります。
コブシとの違い
ハクモクレンとコブシは見た目が非常に似ていますが、異なる点もいくつかあります。
ハクモクレンは中国原産ですが、コブシは日本が原産の樹木です。
ハクモクレンとコブシは、花の見た目で見分けることができます。
まずは花びらに着目しましょう。ハクモクレンは花びらが9枚に見え、肉厚です。コブシの花びらは6枚で薄いです。花の向きにも違いがあり、ハクモクレンは花が揃って上を向きますが、コブシの花は横や斜めなどバラバラの方向を向いています。花の形では、ハクモクレンは開花しても花びらが閉じたままで広がりませんが、コブシは花びらが大きく開きます。
さらにハクモクレンは開花中には葉が出ませんが、コブシは花の付け根に1枚だけ葉が出るので、開花中は葉の有無で見分けることもできます。
ハクモクレンの花言葉
ご家庭のシンボルツリーや、春を彩る生け花にするときに気になる花言葉をご紹介します。
ハクモクレンは、その花の気品ある美しさから、「気高さ」「崇高」といった花言葉がつけられています。また春に咲き、樹木が全身で春を歓び慈しんでいるようなイメージから「慈悲」「自然への愛」といった花言葉もあります。
モクレンの仲間にはほかにも種類がありますが、「気高さ」という花言葉を持つのはハクモクレンだけとされています。
ハクモクレンの育て方
ハクモクレンは日本の気候でも育てやすい花木ですが、育てる際にはいくつか注意点や、きれいに育てるためのポイントがあります。ここからは、気になる育て方について詳しく解説します。
育て方のポイント
ハクモクレンを植える際には、日陰を避けるようにしましょう。日当たりを好む植物ですので、日陰では育ちが悪くなってしまいます。土質はあまり選びませんが、湿気のある肥沃な土壌を好みます。剪定は好みません。剪定をしすぎると樹勢が衰えてしまうこともあります。
また、ハクモクレンは比較的寒さに強いですが、つぼみが生じた後に霜にあたると花が傷んでしまうので、特に寒くなる時期には注意が必要です。
植え付けのポイント
ハクモクレンの植え付けの適期は、葉が落ちてから花芽が目立ってくる前の1月~3月上旬です。少し湿った水はけのよい土を好むので、元肥として腐葉土や完熟たい肥、ピートモスなどをすき込んで、栄養の豊かな土づくりをします。
ポット植えの苗は、根を切らないように注意しながら、根鉢を優しく崩して植え付けます。その際、深植えにならないように注意しましょう。根鉢をわら縄などでまとめてある根巻き苗は、そのまま植え付けます。
幹が細いうちは、倒れないように支柱を立てて補助しておきましょう。
植える場所のポイント
ハクモクレンの生育適温は15~25℃。日当たりと風通しのよい場所を好みます。
寒さにも強いため防寒対策は特に必要ありませんが、花弁は霜に弱く、一度でも霜にあたると褐色に変色してしまいます。気になる場合は、霜にあてないよう注意しましょう。もっとも、ハクモクレンは大きな木になるため株全体に霜よけをするのは難しいもの。たびたび霜が降りる地域では、ハクモクレンの代わりにコブシを選ぶのも選択肢の一つです。
また、ハクモクレンは根が伸びやすい植物です。鉢植えの場合は、地面に直接置くと鉢底から根が伸び出て、鉢が地面にくっついてしまうことがあります。これを防ぐためには、レンガや板を鉢の下に敷き、根が伸びて地面に届くことがないようにするとよいでしょう。
水やりと肥料の与え方のポイント
地植えでは、植え付け後から根付くまでは定期的に水やりをして土を乾かさないようにするのがポイントです。その後は、特に水やりは必要なく降雨のみで育ちます。肥料は1~2月の休眠期に、緩効性化成肥料や骨粉入りの油かすを寒肥として株元にまきます。5月頃に追肥として、こちらも緩効性化成肥料を株元にまきます。
鉢植えの場合の水やりは、土の表面が乾いたらその都度たっぷりと与えます。肥料は3~6月の間は月に1回程度、骨粉入りの油かすを株元に施します。
剪定のポイント
ハクモクレンの剪定は花後に行います。
剪定では、株の内側に向かって伸びていたり混み合っている枝、下向きに生えている枝などをつけ根から切ります。樹冠から飛び出した徒長枝などもつけ根で切ります。
大きくなりすぎた木を小さくするときも、この時期に剪定しましょう。伸びすぎた枝は伸びた先端を切り詰めるのではなく、分岐部でつけ根から切るのがコツです。
春から秋の間に伸びすぎた枝は、落葉期に剪定してもいいでしょう。ハクモクレンは、秋には花芽ができています。花芽は見た目で確認できるので、できるだけ花芽を落とさないように剪定します。
鉢植えの植え替えポイント
ハクモクレンを鉢植えで育てている場合は、2~3年に1度植え替えが必要です。
植え替えの適期は、植え付けと同じ落葉期の1月~3月上旬か、花が終わった後に暖かくなってくる4月中旬~5月中旬がおすすめです。
植え替えの際は、根鉢をそっと手で崩し、一回り大きな鉢に植え替えます。この時に根を傷つけないように十分気を付けましょう。植え付けと同様に、深植えしないように注意します。
病害虫についての注意点
ハクモクレンは病気にも強く、天敵となる虫も少ない植物です。
注意が必要な害虫としては、カミキリムシの幼虫による食害が挙げられます。
カミキリムシの幼虫は幹に穴をあけ、木の幹の内部を食い荒らしてしまいます。株元におが屑のような木くずが落ちていたら、カミキリムシの幼虫がいる可能性があるので、早めに確認して駆除しましょう。駆除をするには、虫が幹にあけた穴から針金などを入れて突き刺すか、穴から適用のある薬剤を注入しましょう。駆除後も新しいおがくずが発生していないかを観察して、きちんと駆除されたことを確認するようにします。
ハクモクレンの増やし方
一般に樹木を増やす際には、挿し木や接ぎ木、種まきなどの方法がありますが、ハクモクレンは挿し木では新しい芽が育ちにくく不向きです。ここでは、ハクモクレンを接ぎ木と種まきで増やす方法について手順を追ってご紹介します。
接ぎ木の方法
接ぎ木とは、増やしたい木を別の台木に接いで株を増やす方法のことをいいます。
ハクモクレンの接ぎ木では、近縁種のコブシが台木によく使われます。接ぎ木に適した時期は落葉期である2~3月です。穂木にするハクモクレンは、枝に芽が付くようにして、枝先から5cm程のところで切り落とし使います。台木にするコブシの株元近くに切り込みを入れて、斜めに切ったハクモクレンの穂木を差し込み、接ぎ木テープで巻いて固定します。しっかりと活着するまでテープは剝がさないようにします。
種まきの方法
ハクモクレンの種まきの適期は9~10月です。
種の収穫は秋にします。枝についたままの実が熟して果実が裂けると、朱色の種がぶら下がってきますが、種まき用には、裂ける前の果実を取って陰干しし、数日後に果実が裂けて出てきた種を水洗いして用います。この種を、乾かないうちにすぐに播く「取りまき」にします。
種まきの際は、小粒の赤玉土を入れた鉢に種を置き、軽く隠れる程度に土をかぶせます。種まき後は水を切らさないように管理しましょう。春に発芽して、本葉が2、3枚になった頃から、2.5~3号鉢に1本ずつ鉢上げします。成長に合わせて植え替え、徐々に鉢を大きくしましょう。
気高さをたたえる純白のハクモクレンをシンボルツリーにしよう
ハクモクレンが春の訪れとともにわずかな間に見せる、樹冠いっぱいの純白の花や上品な香りは多くの人々を惹きつける魅力をもち、「気高さ」という花言葉にふさわしい姿を見せてくれます。さらに丈夫で手がかからず、じつは育てやすいのも嬉しいところ。見た目も育てやすさも魅力的なハクモクレンを、ぜひお庭のシンボルとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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