白や淡いピンクの斑が入る葉が展開し、花が満開になっているような優美さをもつハクロニシキ。秋の紅葉も見事で、主に葉色の美しさを観賞する、人気が高い庭木です。この記事では、ハクロニシキの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方のポイント、注意点などについてご紹介します。
目次
ハクロニシキの基本情報
植物名:イヌコリヤナギ‘ハクロニシキ’
学名:Salix integra ‘Hakuro-nishiki’
英名:flamingo tree、Hakuro Nishiki、Japanese dappled willow
和名:ハクロニシキ(白露錦)
その他の名前:五色ヤナギ、和製フラミンゴツリー
科名:ヤナギ科
属名:ヤナギ属
原産地:原種は日本、東アジア
分類:落葉性低木
ハクロニシキの学名はSalix integra ‘Hakuro-nisiki’(サリックス・インテグラ‘ハクロニシキ’)で、イヌコリヤナギの園芸品種です。葉に白や淡いピンクなどの斑が入るので、カラーリーフとして活躍します。
ハクロニシキはヤナギ科ヤナギ属の落葉低木で、樹高は1〜3m。ヤナギの一種で、寒さや暑さに強く、もともと川岸など湿り気のある環境で自生してきたため、乾燥しやすい場所は苦手とします。地際から弓なりになる枝が多数出る株立ちの樹形が特徴で、放任すると株幅が大きくなって場所を取りがちになります。とはいえ、毎年の剪定によって程よい株幅にコントロールすることができます。
ハクロニシキの花や葉の特徴
園芸分類:庭木
開花時期:3〜5月
樹高:1〜3m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白
ハクロニシキの開花期は3〜5月で、2〜3cmの円筒形の花穂をつけます。しかし、観賞価値があるとされるのは花よりも葉。長さ4〜8cmの楕円形の葉には白やピンクの斑が入り、まるで花が満開になっているかのような華やかさがあります。芽吹いた頃には白やピンクの斑が入り混じり、初夏には白へと変化。夏はグリーン、秋に黄色へと移ろい、冬には落葉します。
ハクロニシキの名前の由来や花言葉
ハクロニシキは漢字で「白露錦」と書きます。葉に白い斑が入る姿に、朝露がおりた様子をイメージし、淡いピンク、白、グリーンが微妙に色を織りなすことから錦のように美しいとして名付けられたとされています。
ハクロニシキの花言葉は、「心変わり」「移り気」。葉色が変化することが由来となっています。
原種イヌコリヤナギはどのような植物?
学名はSalix integraで、原産地は日本。樹高は2〜3mの落葉低木で、地際から弓なりに枝を伸ばす株立ちの樹形をしています。葉にはハクロニシキのような斑が入らず、グリーン一色なのが異なる点です。
ハクロニシキに似た植物
ハクロニシキは園芸品種ですが、これ以外の品種や原種はガーデニングではほとんど利用されません。ハクロニシキに似た葉を持ち、庭木として利用される植物には、ネグンドカエデ‘フラミンゴ’があります。ネグンドカエデは北アメリカを原産とするカエデ属の落葉高木で、庭木として世界中で広く利用されています。黄金葉や斑入りなど美しい葉を持つ園芸品種も多く、中でも‘フラミンゴ’は斑入り葉に加えて新芽がピンク色を帯び、トリカラーが楽しめる華やかな品種として高い人気があります。
このほか、ヒイラギやノブドウなどにも、白やピンクの斑が入り、美しい葉が楽しめる種類があります。
ハクロニシキの栽培12カ月カレンダー
開花時期:3〜5月
植え付け・植え替え:12〜3月(真冬を除く)
肥料:2月頃
ハクロニシキの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みますが、明るい半日陰の環境でも育ちます。真夏は直射日光にさらされると葉焼けすることがあるので、木漏れ日がチラチラと差す程度の落葉樹の足元や朝のみ日が差す東側などを選び、鉢植えの場合は半日陰に移動するとよいでしょう。ただし、極端に日当たりの悪い場所では花つきが悪くなり、株もひょろひょろと徒長ぎみに伸びて軟弱になるので注意してください。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】土壌は、有機質に富んで、水はけ・水もちのよいふかふかの状態を好みます。適度に湿り気が保たれる環境を好むので、水が抜けやすく乾燥しやすい場合は土壌改良が必要です。鉢植えの場合、真夏は強い直射日光に長時間さらされると葉焼けすることがあるので、風通しのよい半日陰に移動しましょう。
耐寒性・耐暑性
暑さや寒さに強く、一年を通して屋外で植えっ放しにしてかまいません。
ハクロニシキの育て方のポイント
用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に、深さ50cmほどの植え穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込みます。再び植え穴に土を戻してよく耕しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の庭木用培養土を利用すると手軽です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
真夏は強い日差しによって乾燥しやすくなり、乾燥しすぎると弱ることがあるので、この時期は特に注意が必要です。また、冬は落葉後もカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
越年後は生育期に入る少し前の2月頃に緩効性肥料を施しましょう。施肥に適したタイミング以外でも、株の状態を見て葉色が冴えず勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守ってください。
注意する病害虫
【病気】
ハクロニシキの栽培では、病気を発症する心配はほとんどありませんが、まれにうどんこ病、さび病を発症することがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用のある薬剤を散布して防除します。
【害虫】
ハクロニシキの栽培では、害虫の心配はほとんどありませんが、アブラムシとカミキリムシが発生することがあります。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
カミキリムシは、主に夏から秋に発生しやすくなります。カミキリムシの幼虫が幹に穴をあけて中に侵入し、木質部を旺盛に食い荒らすので注意。被害が進むと木が弱るうえ、中が空洞化して枯れてしまうこともあります。成虫が飛来して卵を産み付けるので、成虫や卵は見つけ次第補殺しておきましょう。また、木の株元などにおがくず状のフンが見つかったら、木の内部で活動していると推測できます。おがくずが出ている穴があれば、穴に細長い針金状のノズルを差し込むタイプの薬剤散布をして駆除してください。
ハクロニシキの詳しい育て方
植え付け・植え替え
ハクロニシキの植え付け・植え替えの適期は12月〜翌年3月頃です。植え付け適期以外にも苗木は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。ただし、真夏と真冬は避けた方が無難です。
【地植え】
ハクロニシキは移植を嫌う性質があるので、好む環境にあっているか、成長後の樹高や株幅に余裕があるか、前もって植える場所を十分に吟味して決めましょう。土づくりをしておいた場所に、苗木の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えにしている場合は、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
ハクロニシキを鉢で栽培する場合は、大きくなるので10号以上の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから庭木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ハクロニシキの苗木をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めます。根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢を軽くくずし、新しい培養土を使って植え直します。
剪定
ハクロニシキは株立ち状で、地際から細めの枝を放射状に伸ばす樹形が特徴です。
ハクロニシキの剪定は、「すかし剪定」を基本とします。適期は休眠期の12月〜翌年2月上旬頃です。ハクロニシキは自然に樹形が整うのですが、放任していると次々に新しい枝が地際から伸びて込み合い、風通しが悪くなってしまいます。そこで、古い枝や細くて弱々しい枝、生育の邪魔になっている枝を選び、地際から切り取りましょう。残した枝のうち、込み合いすぎている部分があれば、分岐点までさかのぼって不要な枝を切り取ります。
増やし方
ハクロニシキは、挿し木で増やすことができます。
挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、ハクロニシキは挿し木で増やせます。
ハクロニシキの挿し木の適期は、5〜6月です。新しく伸びた枝を10〜15cmほど切り取り、下の方についている葉は切り取っておきます。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほど入れて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
ハクロニシキを育てる際の注意点
比較的育てやすいハクロニシキですが、育てる上で注意したいポイントがいくつかあるので、ご紹介します。
夏の葉焼けに気をつける
ハクロニシキは、真夏の強い日差しにさらされると、葉焼けすることがあるので注意。葉焼けしたからといって、木全体にダメージが及ぶわけではありませんが、少し見苦しくなってしまいます。地植えにする場合は、一日中チラチラと木漏れ日がさす程度の落葉樹の足元か、朝日のみが差す東側を選ぶのがおすすめです。そのような環境がない場合は、遮光ネットを張って日差しを弱めるのも一案です。鉢栽培にしている場合は、直射日光の当たらない半日陰などに移動します。夏の終わりに遮光ネットを外したり、鉢を日当たりのよい場所に移動したりする際は、徐々に慣らしていくとよいでしょう。
先祖返りが起きたときにすること
先祖返りとは、品種改良された植物に、元々の原種個性が現れることをいいます。ハクロニシキは、イヌコリヤナギが突然変異して葉に斑が入った性質のものを固定化させた園芸品種です。まれに先祖返りして斑の入らない葉が発生することがありますが、このような葉をつけた枝を見つけたら、早めに枝を付け根で切り取って対処しましょう。
ハクロニシキの仕立て方
ハクロニシキは、萌芽力の強い低木なので、刈り込んで生け垣にすることも可能です。また、本来は株立ちの樹形ですが、1本のみを残して太い幹にして立ち上げ、上部を丸く刈り込んだスタンダード仕立てにすることもできます。
ハクロニシキの変化する葉色の美しさを観賞しよう
芽吹きの季節は白や淡いピンクの斑が入り、一斉に開花しているような迫力のあるシーンを作り出すハクロニシキ。シンボルツリーとして、庭やベランダに取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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