【涼を呼ぶインテリア】アナベル・ハーブ・シダ……「夏の緑」で五感を潤そう
酷暑が続く日々、庭の植物でお部屋に涼やかな風を呼び込みませんか? 花の少ない盛夏も、庭に育つアナベルやハーブ、シダ植物といったグリーンは、暮らしを豊かに彩ってくれる救世主。小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんに、目と香り、心に潤いを与える、五感で楽しむ植物の演出を教えていただきます。
目次
ライムグリーンのアナベルで華やかに

雨の季節に見頃を迎えるアナベル。大輪の白い花の清らかな美しさはもちろん、ライムグリーンに褪色した夏の花姿もまた、とても魅力的です。日焼けで変色する前にカットして室内で楽しみます。
大輪のアナベルに合わせる器は、できるだけ高さと重量感のあるものを。数本挿しても安定感があるので活けやすく、花と器のバランスも良好です。バサっと投げ入れたり一輪挿しにしても様になるアナベルですが、残念ながら水揚げがあまり良くありません。

その解決方法の一つが、花茎の先端を斜めにカットして、中心にある白い綿のようなものを取り除くこと。これは学生時代に花屋さんでアルバイトしていた時に教わりました。ちょっと手間はかかりますが、このひと手間で水揚げが格段に良くなり、驚くほど瑞々しさが保てます。
それにしても、40年前の経験が今も役に立っているとは何とも有難い。アナベルを活ける度に、花市場から仕入れた西洋アジサイを、一輪ずつ手が痛くなるほどこうして水揚げしていたなと、当時を懐かしく思い出します。

ガラスの器に活けると、ライムグリーンの大輪花が清々しくとても華やか。和洋問わずどんな場所にも馴染みますが、特に気に入っているのがキッチンです。と言うのも、北東にあるわが家のキッチンは、朝陽は当たるものの日中はやや暗め。ライムグリーンのアナベルが辺りをパッと明るく清々しい空気で満たしてくれます。
また、ドライフラワーにして楽しめるのも嬉しいところ。暑さが厳しくなるにつれ億劫になりがちな台所仕事も、こんなふうにキッチンが快適だと心なしかやる気スイッチが入ります。

五感が潤う瑞々しいハーブ

アナベルの他によくキッチンに飾るのがハーブ類。もちろん料理用ですが、見た目も香りも爽やかで最適です。庭のバジルやミント、ディルの他、特に気に入っているのが友人の庭から届くレモンバーベナ。

軽く葉に触れただけで濃厚なシトラスの香りを放ち、和名は「香水木」だとか。まさにその名の通り香り高いハーブです。また、柳色の披針形の葉も美しく、ガラスの器に挿すと何とも涼しげ。届いてしばらくはキッチンカウンターの上で楽しんでからハーブティーをいただきます。

秋冬はドライにしたホットティー、夏は何と言ってもフレッシュグリーンのアイスティーが美味。ガラスのティーポットにレモンバーベナとスライスレモンと氷を入れ、冷えた炭酸水を注ぎます。シュワシュワと泡立つ音に香り立つシトラスの香り、泡水に浮かぶの柳色の葉とレモンイエローの果実。そして、喉を潤す心地よい爽快感……。
五感が「極上の涼」で満たされます。そう、このアイスティーは、酷暑の夏を乗り切る何よりの清涼剤です。
シダ植物と斑入り植物で涼やかに

花の少ないわが家の夏の庭は、リーフ類の緑が主役に。中でも、つる性のシダ植物、カニクサ(別名ツルシノブ)とクジャクシダは夏の花あしらいの定番です。とは言え、カニクサは勝手に繁茂するいわゆる雑草です。繁殖力が旺盛でいつの間にか庭のあちこちに生えるので、根が張らないうちに抜いたりこまめに剪定しています。

庭ではちょっと厄介者のカニクサですが、器にあしらうと見違えるほど表情が一変します。水を張った浅いガラスの器につるを巻きつけると、まるで水草のよう。掛花入れにあしらうと、しなやかに枝垂れる極細のつるとレースのように繊細な小葉が際立ち、その美しさに目を奪われます。庭ではなかなか気付けないカニクサのこの表情。厄介者扱いしたらバチが当たりそうですね。

そして、もう一つのクジャクシダは、羽状複葉の枝を扇のように広げた姿がクジャクの尾を思わせる美しい品種。細く硬い茎は黒漆のような光沢があり、長さも30cmほどあるので観賞価値が高く切花に最適です。
器は、極細の茎と葉の形状に合う鶴首の一輪挿しを。ふわっとした扇型の葉を魅せるために、あえて1、2本だけあしらいます。すると軽快な余白が生まれ、この余白に一服の涼を感じます。
更に、仄暗い玄関にしつらえると、和紙のスクリーンから漏れる光に反射して浮かび上がるフロストガラスの器と、凛としたクジャクシダのシルエットの何と美しいこと。その佇まいに得も言われぬ心の安らぎを感じます。
まさに、この「陰影」と「余白」は、古来より受け継がれたわたしたち日本人の美学。
授かったその美意識と感性をしみじみと有り難く思います。

庭の緑をより豊かにしてくれる斑入り植物もまた、夏の花あしらいに最適です。中でも、イネ科の斑入りワイルドオーツ(コバンソウ)は、軽やかな穂と若草色の斑入り葉がとても涼しげ。ガラスの器に挿すと、暑苦しい空気にひとひらの心地良い風を感じます。根締めに黄緑色の斑入り葉のホトトギスを一輪添えると、器とのバランスも良くなり、より明るくナチュラルな印象になります。何処となく水辺の風景を思わせる爽やかな風情に火照った心身が癒やされます。
初々しい実物で季節感を

春から初夏に咲いた可憐な花が、盛夏に緑の実を付ける野バラと西洋カマツカは、この時季の実の初々しいさも魅力の一つ。どちらもたくさん実を付けるので、目立たない所をカットして室内でも楽しみます。

器は、できるだけ草丈と同じ高さのものを。口の縁から垂れるようなイメージで挿すとひと粒ひと粒の表情が見てとれます。こうして見ると、色も形も大きさまでも瓜二つ。庭では気付けなかったちょっとした発見です。
更に、つる性の五色ノブドウを添えると、しなやかなつるの動きとカラーリーフがアクセントになって洒落た印象に。この時季らしい季節感を味わえるこんなあしらいは、ダイニングルームの窓辺が良く似合います。

そして、パーゴラに絡む一才ヤマブドウの緑の実も、ガラスの器に挿すと夏らしい花あしらいに。秋に収穫する実を残しつつカットしてダイニングテーブルの上に飾ります。水揚げがあまり良くないのでつるを短めにして、水を張ったキャンドルホルダーに。意外とこのキャンドルホルダーが夏には器として重宝します。型にはまらないこんな器選びも楽しいですね。

食事中の目線を遮ることもなく、何より食卓が清々しくどんな粗末な食事でも不思議と見栄えします。瑞々しい緑があるだけでこんなに食卓が豊かになるとは…。主婦には有難い限りです。
それにしても、一才ヤマブドウの端正な葉と実の何と美しいこと。直近で見れば見るほどまるで宝石のようです。

花の季節にはつい見過ごしがちな庭の葉物や実物も、ガラスの器にあしらえば夏の暮らしに欠かせないわが家のインテリア。花はなくても、快適さと心豊かなひとときを与えてくれます。
Credit
写真&文 / 前田満見

まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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