【プロの技】おしゃれな寄せ植え5選!食べるだけじゃない! 観賞用トウガラシで楽しむ残暑から秋の寄せ植え
夏の花が終わり、庭や玄関先が少し寂しくなる残暑から秋にかけて、新鮮な彩りを与えてくれるのが「観賞用トウガラシ」です。鮮やかな実やカラフルな葉はとてもフォトジェニックで、暑さや病害虫にも強く丈夫。寄せ植えに取り入れるだけで、一気におしゃれで洗練された印象になります。ここでは寄せ植え名人ナンバッチこと難波良憲さんの5作品を例に、観賞用トウガラシの魅力と寄せ植えアイデア、育て方をご紹介します。
目次
観賞用トウガラシとは?
観賞用トウガラシは、食用ではなく「葉や実を楽しむ」ために改良された植物です。艶やかな実は赤・紫・黒・黄色などカラフルで、葉も斑入りや濃紫など多彩。残暑から秋の寄せ植えに使うと、ほかの花やリーフにはないアクセントになり、季節感やおしゃれ感をぐっと引き立ててくれます。

中南米原産で暑さに強く、残暑の厳しい時期でも元気に育ちます。葉が硬めで光沢があるため、ほかの草花よりも虫害が少ないのが特徴です。食用に比べて辛味が非常に強いものが多く、観賞専用に育てられた植物なので、食べないよう注意しましょう。
観賞用トウガラシの寄せ植えアイデア
巧みなリーフ使いで、華やかながら見頃の長い寄せ植えに定評がある難波さんのトウガラシを使った作品をご紹介。残暑から秋にかけて、移り変わる季節を長く楽しめる寄せ植えです。
紫×黄色で魅せるコンパクトな寄せ植え

黄色と紫の補色対比で組み合わせたスクエア鉢の寄せ植え。艶やかな紫色の実は、トウガラシ‘ホットポップス パープル’。紫とグリーンが入り混じる斑入り葉は、トウガラシ‘パープルフラッシュ’。リーフにリシマキア‘リッシー’など明るい黄色の葉をセレクトし、明暗をくっきり描き出しました。つる植物のコウシュンカズラとハゴロモジャスミン‘フィオナサンライズ’が寄せ植えに動きをプラスして、コンパクトな鉢ながら立体的で見応えたっぷり。

「観賞用トウガラシのような“実もの”は、花や葉にはない彩りや立体感を加えてくれる素材です。花は“開き”、葉は“面や線”を作るのに対し、実は丸い粒状のフォルムで空間に奥行きを与えてくれます。また、実は収穫や豊かさ、秋の実りを象徴するものなので、寄せ植えに加えると季節感や成熟感が演出でき、グッと洗練された印象になります」(難波さん)
ナチュラル&かわいらしいバスケット寄せ植え

斑入りの葉を組み合わせた爽やかなグリーンの中に、ピンクのサルビア‘ミラージュ’やトウガラシ‘パープルレイン’でほんのり色を加え、ナチュラルな仕上がりに。斑入り葉のジュズサンゴ‘絣(かすり)’やアルテルナンテラ‘バリホワイト’、白花のユーフォルビア‘グリッツ’は、ふんわり優しいイメージを出すのに活躍してくれます。

「寄せ植えでは植物を組み合わせていくうちに、ややギュッと詰まった感じが出てしまうことがあります。そんなとき、斑入りの葉は軽やかさや抜け感を出すのに重宝します。バスケットの軽やかな雰囲気とも相性バッチリ。斑入り葉は、多くは緑と白ですが、トウガラシ ‘パープルレイン’は紫と白が目を引くカラーリーフです。トウガラシは元来、暑さには強い植物ですが、観賞用品種の多くは寒さにも強く、12月くらいまで観賞できます」(難波さん)
紫色と斑入り葉のエレガントな大鉢寄せ植え

サルビア‘ミラージュ パープル’とクフェア‘ピンクシマー’を中心に、観賞用トウガラシの‘パープルレイン’をサイドに添えて、落ち着いた紫の世界をつくった寄せ植えです。そこに斑入り葉のジュズサンゴ‘絣’や斑入りムラサキシキブを加えることで、重くなりがちな濃い紫色を軽やかに見せています。

「斑入り葉の白いニュアンスで全体のバランスを整え、上品でエレガントな雰囲気に仕上げました。細かいところですが、2種の斑入り葉の茎はどちらも赤紫色で、ほかの植物の色とリンクさせているのもポイントです。季節が進むとこれらの植物にも小さな実がつき、紅葉も楽しめます」(難波さん)
黒と白のコントラストがおしゃれな大鉢寄せ植え

黒と白のコントラストでシックな雰囲気に仕上げた大鉢の寄せ植えです。漆黒の葉はトウガラシ‘ブラックパール’。実も最初は艶やかな黒色で、次第に鮮やかな赤色へと変化します。手前には花心が黒色になる白花のポットマム‘インヤン’を合わせて。斑入り葉のジュズサンゴ‘絣’を鉢縁に枝垂れさせて華やかさを出しました。

「トウガラシ‘ブラックパール’は耐暑性・耐乾性に優れ、生育旺盛なので寄せ植えはもちろん、酷暑の庭づくりでも大活躍してくれる素材です。生育初期は葉が緑色ですが、高温と強い日照により葉が漆黒に染まり、白花や淡い花色をよく引き立ててくれます」(難波さん)
カラフルな葉や実を引き立てる黒鉢の寄せ植え

‘パープルレイン’と‘ホットポップス’の2種のトウガラシに、ライムイエローの西洋ヒイラギや斑入り葉の西洋イワナンテン‘フロマージュ’を合わせました。黒い鉢に赤や黄色が鮮やかに映え、ハロウィンを思わせる遊び心ある仕上がりに。秋のイベントシーズンにぴったり。
観賞用トウガラシの魅力

残暑から秋にかけて寄せ植えに選ばれるのは、観賞用トウガラシが持つ以下のような強みがあるからです。
- 暑さに強い:残暑の強い日差しにも耐え、晩秋まで美しさをキープ。地域によっては12月まで観賞可能。
- 病害虫に強い:他の草花が弱る時期にも元気に育ちやすい。
- 色のバリエーションが豊富:赤・紫・黒・黄の実、斑入り葉や濃紫葉など多彩。
- フォトジェニック:小さな実がアクセサリーのように寄せ植えのアクセントになり、SNS映えも抜群。
実ものが寄せ植えを洗練させて見せる理由
観賞用トウガラシのような「実もの」は、花や葉にはない彩りと立体感を加えます。

- 立体感をプラス:丸く粒状のフォルムが、寄せ植えに奥行きを与える。
- 色が濃く長もち:花よりも色素が安定し、アクセントとして視線を集める。
- 季節感を伝える:実は「収穫」「実り」の象徴で、秋らしさを演出。
- 上級者感が出る:実をバランスよく使うと洗練された印象になり、アレンジが格上げされる。
フラワーアレンジメントではしばしば「花3×リーフ3×実1」のように配分するのも、実が入ると全体が一気に洗練されるためです。
観賞用トウガラシの育て方

長く美しく楽しむために、次のポイントを押さえましょう。
- 日当たり:屋外の日なたで管理。発色がよくなる。
- 水やり:土の表面が乾いたら、たっぷり。乾燥させすぎには注意。
- 水切れに注意!:トウガラシは一度極端な水切れをさせてしまうと、その後急いで水やりしても復活しません。寄せ植えの場合は、トウガラシを中心にたっぷりめに水をあげましょう。他の植物の分もトウガラシが水揚げしてくれるので、鉢内の水分バランスがよくなります。
- 肥料:緩効性肥料を2〜3週間に1回を目安に与えると、実色が鮮やかに。
- 管理のコツ:枝が乱れたら切り戻しで形を整える。
- 注意点:観賞用は基本的に食用不可。
- 病害虫:観賞用トウガラシは病害虫に強いが、真夏はハダニ、秋口にはアブラムシがつくこともあるので、風通しよく管理し、葉裏を時々チェックする。
【コラム】ナメクジはトウガラシの辛さを感じない!?
観賞用トウガラシは種類によって、人間が口にすると驚くほど辛い実をつけます。この辛さの正体は「カプサイシン」という成分で、哺乳類の神経にある受容体を刺激して“痛み”として感じさせています。
しかし、この受容体は哺乳類特有のしくみ。ナメクジや昆虫、鳥などはカプサイシンを辛さとして認識できません。そのため、人間には「激辛」に思える実や葉も、ナメクジにとってはただの植物。湿気の多い時期には、観賞用トウガラシの葉が食害されることもあるのです。
「辛いから虫が来ない」というイメージは、じつは人間の感覚に基づく誤解。自然界ではむしろ、哺乳類(ネズミなど)を遠ざけ、鳥に種を運んでもらうための戦略と考えられています。観賞用トウガラシが病害虫に比較的強いのは確かですが、完全に無敵というわけではないのです。
残暑から秋へ、観賞用トウガラシで彩りを楽しもう

観賞用トウガラシは「強い・美しい・手間が少ない」と三拍子そろった優秀な植物です。残暑から秋にかけて寄せ植えに加えるだけで、季節感とおしゃれ感がぐっと増し、庭や玄関先を華やかに彩ります。難波良憲さんの寄せ植え実例を参考に、ぜひ秋のガーデニングに取り入れてみてください。
Credit
寄せ植え制作&アドバイス / 難波良憲(なんば よしのり)

八ヶ岳にある種苗メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」に勤務。膨大な植物の知識を生かし、花の個性を生かしたブーケのように華やかな寄せ植えが好評。ブーケ作りも得意。同社のショップ(現在はクローズ)での店長を担当しつつ、寄せ植え教室を開催。現在は、同社インスタグラムを通じて、季節毎の華やかな寄せ植えの紹介や、水やりなどガーデニングの基本知識や様々なお役立ち情報の発信を行っている。
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まとめ・写真 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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