ナメクジを見つけたら「とりあえず塩をかける」。そんな昔ながらの対処法、実は植物や土に深刻なダメージを与えるってご存じですか? さらには、ペットに有害な薬剤もあり、知らずに触れたり舐めたりしてしまう危険も…。ナメクジ駆除でついやりがちなNG行動7つと、安全で効果的な対策を、今こそ見直しましょう。
目次
ナメクジ駆除で注意すべき7つのポイント
1 ペットや子どもに危険⁉ 駆除剤の意外な落とし穴
一部のナメクジ駆除剤にはメタアルデヒドという成分が含まれています。ナメクジ駆除剤は、ナメクジがこれを摂取することで中毒を起こし、死に至る仕組みになっています。ナメクジには致死性の毒性がありますが、犬・猫などペットや小さな子どもにとっても中毒リスクが高く、万が一食べてしまうと命に関わります。ペット・お子さんがいるご家庭では使用を避けるか、使用する場合はメタアルデヒドが含まれてないものを用いましょう。寄せ付けないことを目的としたナメクジ忌避剤には基本的にメタアルデヒドが含まれていません。
2 野菜まわりにNG⁉ 知らないと危ない使用場所

ナメクジはレタスやイチゴなどを好むため、これらの周りで駆除剤を使いたくなりますが、メタアルデヒドが含まれるナメクジ駆除剤の多くには、「食用植物の近くでは使用を避ける」または「直接散布しない」などの注意喚起が明記されています。これは雨や水やりで溶け出した薬剤が根から吸収され、作物に残留する可能性があるからです。これらは用法を守って使うほか、食用植物の近くでは自然由来の無機成分「リン酸鉄」を有効成分にしたナメクジ駆除剤を用いるのが安全です。
項目 | メタアルデヒド駆除剤 | リン酸鉄系駆除剤 |
食用植物の近くでの使用 | 原則NG(or用法を守り使用) | 使用OK(農薬登録済) |
ペット・子どもへの安全性 | 中毒リスクあり | 比較的安全 |
表示例 | 「野菜にかからないように」「収穫○日前まで」など | 「家庭菜園OK」「天然成分」など |
また、こうした薬剤を用いる場合には、“湿った時間帯”を狙いましょう。ナメクジは夜間・雨上がり・早朝など湿度が高い時間に活動します。乾いている時間帯に薬剤をまいても、ナメクジが出てこず無駄になることもあるので、 雨の翌朝 or 夕方〜夜に仕掛けると効率的です。
3 「塩で退治」はNG! 植物が枯れるリスク大

ナメクジの駆除に塩(食塩)を使う方法は古くから知られていますが、庭やプランターで使う際には注意点が多く、安易な使用はおすすめできません。ナメクジの体は約90%が水分。体表から塩分が入ると浸透圧の作用で水分が急激に抜け出し、脱水死します。この際、ナメクジはもだえながら大量の粘液を出し、周囲を汚します。ナメクジにとっても非常に苦痛を伴う方法であり、粘液には病原菌が含まれることもあるため衛生面でも要注意。
また、土に塩がしみ込むと、植物が水分や養分を吸収できなくなり、根が枯れる恐れがあります。さらに、土壌の有益な菌やミミズなどの生物層が壊れる可能性も。塩分は雨で簡単に流れず、しばらく土壌に残留します。プランターなどの狭い空間では特に危険なので、塩は使わないほうが無難です。
4 ビールは本当に効く? トラップの意外な盲点

ビールはナメクジを強く誘引することで知られており、ビールトラップはしばしば用いられるナメクジ駆除方法です。ただし、その効果範囲は半径1m程度とごく狭く、捕まるのも「活動的な個体」だけです。さらに、ビールの発酵臭が弱まると誘引力が落ちるため、毎晩取り換える必要があり、あまり効率的ではありません。別の忌避方法との併用が必要です。
5 駆除してもまた出る⁉ 卵を見逃すと危険

ナメクジの成体を駆除しても、卵が残っていれば2〜3週間後には再発生します。ナメクジの卵は白くて小さいゼリー状の粒で、落ち葉や鉢の裏などに産みつけられます。見つけたら駆除しましょう。
6 ナメクジが“住みつく庭”になっていませんか?

発生しやすい環境が整っていると、一度駆除しても再発生率が高まります。雑草・落ち葉・湿った資材(板、レンガ、プラ鉢)などがナメクジの住処になるので、庭をスッキリ片付けておくのも大事。駆除と同時に「発生しづらい環境づくり」が最重要です。
7 素手は絶対NG! ナメクジに潜む感染リスク

ナメクジの体表や粘液には、広東住血線虫(こうとうじゅうけつせんちゅう)やサルモネラ菌・雑菌などの人に有害な微生物や寄生虫が付着していることがあります。触れた手で口元をこするなどすると感染リスクがあるので、駆除の際はビニール手袋をはめて、ピンセットや割り箸などでつまみましょう。触れた器具は洗って除菌するか、使い捨てに。
捕まえたナメクジは直接ゴミ箱に入れずに、新聞紙などでしっかり包んでからビニール袋に入れて密封し、可燃ゴミで出します。
もう殺さない! “出会わない庭”を作る匂いのバリア対策

ナメクジを駆除するよりも、出会わないようにするのがお互いにとって一番いい方法です。じつはナメクジは「匂い」に敏感。ナメクジがあまり好まない、または忌避する植物を花壇のフチなどに植えるのも効果的です。
<ナメクジが嫌いな香りの植物>
匂い成分(VOCs) | 含有植物例 |
リナロール(Linalool) | ラベンダー、バジル、ゼラニウムなど |
メントール(Menthol) | ミント類 |
カンファー(Camphor) | シソ科植物(ローズマリー、セージ) |
チモール(Thymol) | タイム、オレガノ |
シネオール(1,8-Cineole) | ローズマリー、ユーカリ |
シトロネラール(Citronellal) | レモングラス、ゼラニウム |
α-ピネン(α-Pinene) | ヒノキ、松、ローズマリー |
まとめ 殺すだけじゃない、ナメクジとの上手な付き合い方を
ナメクジを見つけたとき、つい塩をかけたり強い薬剤で駆除したくなるかもしれません。でも、それが植物やペット、そしてあなた自身にも悪影響を及ぼすことがあるとしたら?
大切なのは、“正しく知って、安全に対処すること”。駆除剤の選び方や使い方、ナメクジの生態や卵の処理、そして寄せ付けない環境づくりまで――少しの工夫で、ナメクジに悩まない庭づくりは可能です。
これからは「塩をかける」から「出会わない庭」へ。ナメクジの行動や嗅覚を味方につけて、植物との健やかな共存をはじめてみませんか?
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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