夏のガーデンでは、高い気温だけでなく、台風や害虫などもガーデナーにとっての大敵に。植物だけでなく虫たちも活発に活動する季節なので、ちょっと目を離すだけで収穫を全部虫たちに取られてしまう、なんてことも起こりがちです。今回は、そんな夏の家庭菜園で発生するトラブルについて、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが体験談を交えてご紹介します。

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夏のガーデンはトラブルがつきもの

暑い夏が続く期間、ガーデニングは毎日が新たなチャレンジ。例えば私の住む地域では、高温や多湿にいかに対処するかなど、考えることはいろいろあります。また、これから台風シーズンに入るので、いつ台風がやってきてもおかしくありません。

こんな気候の中では、住んでいる地域の天気をしっかりと確認しておくことが、ますます重要になってきます。テレビや天気予報のアプリだけに頼るのではなく、それらと自分なりの知恵を組み合わせることが大切です。

台風対策は忘れずに!

シンノウヤシ
エキゾチックなシンノウヤシ。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

これからの台風シーズンに向けて、ガーデニングの台風対策を確認しておきましょう。大きな構造物は飛ばされないか確認し、鉢植えの植物は家の中に取り込んでしまうと安心です。

台風に関しては、私も失敗談があります。我が家のダイニングルーム前のウッドデッキには、大きく強く育ったシンノウヤシがあります。このシンノウヤシは、ガーデン風景にエキゾチックな雰囲気をプラスしてくれる植物。我が家のものは1.5mほどの高さに育ち、横幅もあるので、大きくて深いポットに植えていて、一人では動かせないほど重量があります。そのため以前台風がきた際も、この鉢は大丈夫だろうと油断していました。しかしながら強風の力はすさまじく、この鉢をひっくり返してしまったのです。

仕方がないので夫に協力してもらい、大雨と強風の中、ずぶ濡れになりながらなんとか鉢をダイニングルームに運び込みました。鉢を取り込む際に注意したいのが、鉢の中に虫が隠れていないかということ。運が悪ければ、次の日リビングやダイニングを歩き回るアリやコガネムシ、クモなどの姿があるかも…!

我が家の場合、幸運にも虫は出現しなかったのですが、別の問題が発生。できるだけ水気を拭いて運び込んだのですが、それでも翌朝起きてみるとダークブラウンの木の床に小さな水たまりがいくつかできていました。乾いた後も灰色っぽいシミになってしまい、どうしようかと悩み中です。鉢は台風が去った翌日に外へと運び出しました。

夏の家庭菜園の大敵

サラダ菜
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

台風だけでなく、家庭菜園では日々さまざまな病気や害虫といったトラブルに遭遇します。例えば菜園では、葉物野菜をいくつか種まきしたのですが、ほとんど収穫できませんでした。初めの4週間ほどは順調に大きくなっていたのですが、収穫が近づくと、急に葉に穴が開き始め、収穫できる部分がどんどん小さくなってしまったのです。葉物野菜を植えていたのは市民農園の一角で、手入れしに行くのは週に1回だけ。この頻度では、野菜を守るには全く間に合わなかったようです。

この失敗により、どの種類の虫が家庭菜園の大敵なのかについて興味が湧いてきました。私はもともと虫や動物がガーデンにいることを気にしないタイプ。おそらく広くて緑豊かな農地に囲まれて育ったことも影響しているのでしょう。こういう場所では、虫や動物を完全に排除することは単純に不可能です。

そういえば、当時近所に暮らしていたある農家の女性について、こんな思い出があります。とても親切な方で、よく収穫したサラダ菜を分けてくれました。100%オーガニック栽培で、大きなレタスを2、3個など、ビニール袋に入れて持ってきてくれたのです。そんなときに母に、「まず外に持って行って虫とか病気が無いか見てきなさい」と言われたのをよく覚えています。

よく確認し、きれいな葉だけを選別した後でも、キッチンのシンクで葉を洗っているとナメクジが出てきたりアブラムシがたくさん水に漂っていたりしました。洗う時に少し塩を入れると隠れていたカタツムリまで出てきました。

当時は「この葉っぱ、ランチには食べたくないな」と思いましたが、一方でこれほどナチュラルに育てられた野菜はありがたいものです。

後になって、彼女は目が悪いのに眼鏡を使いたがらなかったのだということを知りました。これでは人にあげる前に点検したとしても、虫や傷んだ葉を見逃してしまうでしょう。母がよくよく点検するように言っていたのは、そのためだったのでしょうね。

サラダ菜
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

サラダ菜などの野菜を育て始めてから、植物をよく確認し、害虫を早期発見することの大切さを学びました。また、植物が成長しやすい環境を整えることも重要です。よい土、適切な水やり、強風から守ること、十分な日照など、注意すべきことはいろいろあります。相性のよいコンパニオンプランツを植えたり、収穫を少し早めるのもいいですね。それらはすべて、天候やガーデンのある地域に左右されます。

同じ野菜であっても、異なる環境に植えれば、まったく違う結果になるかもしれません。サラダ菜などは放任できず、ずっと手入れをしていく必要があります。病害虫は、その過程で登場する手入れの一端に過ぎないのです。

カタツムリ&ナメクジ:「いいもの」と「悪者」?

カタツムリ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Wothe, Konrad

以前私が研修しながら働いていたドイツのトライアルガーデンのヘッドガーデナーは、ドイツ語で“WEINBERGSCHNECKE”、一般に「ローマンスネイル」や「バーガンディースネイル」、「エスカルゴ」と呼ばれる大型のカタツムリのファンでした。南西ヨーロッパや中央ヨーロッパでよく見られます。ドイツでは保護生物に指定されている種でもあります。他の国ではまだまだたくさんいるので、収集することもできます。

エスカルゴという名前でピンと来るかもしれませんが、食用としても高価なもので、特にフレンチのキュイジーヌによく供されています。大抵、ハーブやガーリックバターと共にサーブされます。

さて、昔の上司に話を戻すと、彼はガーデンにいるそれらのカタツムリが大好きで、食べようとは夢にも思っていませんでした。プライベートガーデンにそれらを集めていて、カタツムリを見つけるととっておきの笑顔を見せるのです。

ちなみに、この種のカタツムリはフレッシュな葉や野菜ではなく、主に落ち葉や藻類を食べるとされています。そのため私にとって、この手のカタツムリは「いいもの」。ドイツでは、私もガーデンで育てていました。カタツムリの殻も美しいものです。

ナメクジ
Art_Pictures/Shutterstock.com

代わって、ガーデンで「悪者」とされるのがナメクジ。

花の鉢や大事な野菜にくっついているナメクジは、見つかりにくい隅に隠れていて、すぐ見えなくなってしまうので、なかなか気づくことができません。私にとっては天敵で、一度捕まえたら専用の瓶に入れて捨ててしまいます。

効率的に捕まえるには、定期的に庭で湿った暗い場所をチェックすること。石の下や陰になった部分です。ナメクジは主に夜間に活動するので、食害された植物の近くを夜見回るのもおすすめです。手で触るとぬめぬめするので、使用済みの割りばしなどで捕まえるようにしています。

ナメクジよけ
FotoHelin/Shutterstock.com

ドイツでは、ナメクジから植物を守るため、カルシウムパウダーやウッドチップ、コーヒーかす、羊の毛、バークチップなどを利用している人もいます。ナメクジはこれらの上を通ることを嫌うらしく、野菜や幼苗の周囲にぐるりとサークル上に置くことで、ナメクジ除けに効果があるとされていますが、経験上、これらは効果がないこともよくあります。特に雨に濡れるとこうした素材も湿って柔らかくなるので、効果が薄れますし、ウッドチップやバークチップなどマルチング材の下は、絶好の隠れ場所になってしまいます。

ビールで有名な地域では、ビールを使ってナメクジをおびき寄せて捕まえることもあります。深めの鉢皿や使わなくなったボウルなどにビールを入れて庭に置いておくと、ナメクジを捕まえることができます。ビールに引き寄せられてやってきたナメクジたちがボウルでおぼれるという仕掛けです。ただし、この罠を仕掛ける際は毎日確認することが重要。暖かい日であれば、すぐに匂いがしてきてしまいます。また、ビールは入れ替えが必要。雨が当たらない軒下に置くか、毎晩設置するとよいでしょう。ちなみに、罠にかかった結果は結構悲惨だったりもするので、覚悟して設置してくださいね。

カタツムリやナメクジに食べられないようにするためのバイオ殺虫剤もあります。ドイツでは、他にナメクジに効果のあるメタアルデヒド系の薬剤よりも、他の生物に対し安全性が高いとされるリン酸鉄(Ⅲ)を原料とするものが主流です。日本でも同様のものが販売されているようですよ。

アヒル
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Wothe, Konrad

私はドイツで、ガーデン用に、首の長い2羽のアヒルを購入したこともあります。とても熱心にカタツムリなどを食べ、また可愛らしい姿で暮らしをもっと楽しくしてくれました。なので、もし十分なスペースがあり、動物が好きなら、アヒルを飼うという選択肢もありますよ。ただし、キツネなどの野生動物に食べられてしまわないよう気を付けましょう。動物や害虫にとっての、天敵となる捕食者はそれぞれいるものですね。

ナスタチウム
エディブルフラワーで、家庭菜園の彩りにも人気のナスタチウム(キンレンカ)。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

また、ナメクジが好まない野菜や宿根草、一年草を植えるという手もあります。

ナメクジに人気がない植物には、次のようなものとされています。

  • ルッコラ
  • サニーレタス
  • 球根植物
  • チャイブ
  • ニンニク
  • ローズマリー
  • 多肉植物
  • センペルビウム
  • セダム
  • ユーフォルビア
  • ヒマラヤユキノシタ
  • ベゴニア
  • ナスタチウム
  • ゼラニウム
  • オダマキ
  • クリスマスローズ

など。

ナメクジ対策には、このようにいろいろな方法があるので、それぞれのメリットデメリットを検討してみましょう。私は、バルコニーやベランダ、小さな庭なら、シンプルに箸などで集めるのが一番効率がいいかなと思います。

新葉や葉物野菜にいる、さまざまな色や形のアオムシたち

アオムシ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Lauermann, Andreas

先日、ベビーリーフミックスに、黒い小さなアオムシを見つけました。残念ながら、アオムシたちは働き者だったようで、見つけた時には時すでに遅く、仕方なく一株丸ごと処分することに。植物は基本的には堆肥にするのですが、病気や害虫にやられたものはコンポストには入れません。簡単に逃げ出して、また別の植物を食害するためです。キャベツでも、緑色のアオムシを発見しましたよ。

一部のアオムシも夜に活動するので、日が落ちて涼しくなってから、懐中電灯と手袋を準備して探しに行くのがおすすめです。もちろん、この手法が通用するのは、虫がついた植物が家のすぐ近くに植えられていて、簡単に手が届く場合のみ。あまり数がないことも条件です。そうでないなら、天然成分から作られた殺虫剤もあります。ドイツでは、アオムシ対策に特定のバクテリアが含まれたものをよく利用しています。

他の方法としては、防虫ネットを利用する方法もあります。見た目はちょっとイマイチですが、大きな菜園ではとても便利です。もっとも、玄関前までなどのちょっとしたスペースや小さな庭の場合は、私は使いません。

このようにアオムシ退治に精を出す一方で、時にその美しさに魅了されることもあります。もし子どもがいるご家庭なら、アオムシを見つけるときっと喜ぶことでしょう。子どもにアオムシを探してもらうのも、ありがたい助っ人になりますよ。

物事は、常にどう見るかによって変わってきます。仕事柄、3歳からティーンエイジャーぐらいまで、たくさんの子どもたちに会ってきましたが、彼らが動物や虫に遭遇した時の反応は、いつも興味深いものです。年代によって反応は変わりますが、特に興味を示すのは幼稚園児くらいの子です。

自然や生き物に対する育て方や教育は人それぞれ。野菜や花をむしゃむしゃ食べようとする虫に対しても、感謝の気持ちを忘れないことが大切だと思います。鳥のような自然の捕食者も、菜園の虫を見つけて食べられるようにするなど、バランスをとることが大切なのです。

私たちの庭でも、ちょうどいいバランスを探してみましょう。

Credit

ストーリー・写真(記載外)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

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