初めてバラを選ぶとき、知っておくと役に立つのが「ADR」というマークのこと。ADR(共通ドイツバラ新品種試験)は世界で最も厳しいバラの品種認証システムです。バラの育種家で横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザーを務める河合伸志さんが、初心者にオススメする「ADR認証品種」について解説します。

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初めてのバラ選び、迷ったら?

5〜6月は、バラの花が咲いている開花株の鉢苗が流通する時期です。赤やピンク、白、紫、黄色、茶色などのカラーバリエーションはもちろん、コロンとした可愛い花形やフリル状の艶やかな花姿など、バラの個性は多彩さを極める一方、初めてバラを選ぶ初心者さんは、何をどう選べばよいのか迷ってしまうものですが、バラ選びで困った時に役に立つのが「ADR(Allgemeine Deutsche Rosenneuheitenprüfung)」。

世界で最も厳しいバラの品種認証システム

ADR認証
取材協力/京成バラ園芸

ADRとは、ドイツで作られたバラの品種認証システムで、その審査は世界で最も厳しいことで知られています。ドイツ全土11カ所で3年間、薬剤散布をせずに露地(屋外の地植え)で試験栽培をし、花の美しさ・連続開花性・耐寒性・耐病性などが一定の基準を満たした品種だけを「ADR」ローズとして認証されます。毎年、約50品種のバラが試験栽培に加わり、今まで多数の品種が試験され、2018年現在200品種強がADRローズとしての認証を得ています。ただし、過去にはさらに+179品種が認証されていましたが、それらは現在では取り消されています。ADRの一つの特徴は過去に認証された品種であっても、現在の基準に満たなくなったものは認証が取り下げられることです。

アンジェラ
‘アンジェラ’/Sergio Yoneda/Shutterstock.com

実際、取り消された品種の中にはこれまで初心者向けの代名詞的存在であった‘アンジェラ’や、殿堂入りに銘花である‘アイスバーグ’や‘エリナ’といった品種、‘スイート・メイディランド’など2000年以降に作出された比較的新しい品種も含まれています。しかし、認証を取り下げられたからといって、これらの品種の価値が失われたのかといえば、そんなことは全くなく、今でも魅力ある花であることには変わりありません。

つまり、それほどADRの審査基準は日々進化し、厳しくなっているということです。私が日本でのADRローズの生育を見る限り、2010年以降にADRの認証を得ている品種は、耐病性の点では相当に優れていて、初心者でも手軽に栽培できます。

アイスバーグ
‘アイスバーグ’/PAUL ATKINSON/Shutterstock.com

ADRに認証されたバラにはカタログやラベルにそのマークが付けられています。花選びに迷ったら、ADRのマークのあるものを選ぶようにすると、栽培にあまり苦労することなくバラを育てることができます。

・京成バラ園芸ネット通販 ADRオススメ24品種はこちら

病虫害に強く丈夫で育てやすいバラを目指して

バラの病虫害

さて、ADRの審査基準が年々厳しくなっている理由は、ヨーロッパでの環境意識の高まりなどが背景にあります。環境に負荷をかけないよう、薬剤散布の必要がないバラを目指すことと、欧米の公園などでは日本のサツキのような感覚でバラを多数植栽するため、手間のかからないバラが求められていることがその理由です。というのも、バラには黒星病(くろほしびょう/黒点病と呼ぶ場合もある)やうどんこ病などの病気がつきものだからです。中でも黒星病は、葉に黒いシミのような斑点ができ、やがて黄変・落葉してしまうバラの代表的な病気で、落葉することでバラは光合成ができず、生育が著しく衰える原因になる深刻な病害です。

黒星病は雨が多い環境下で発生しやすく、日本では梅雨や秋雨などがバラの生育期と重なるため、この時期に黒星病にかかり落葉してしまうと、冬の寒さなどに耐えられずに枝が枯れ込み、株が衰退しやがて枯死してしまいます。黒星病などのバラの病害は基本的に薬剤で防除しますが、そうした作業を少しでも軽減するには、病気(特に黒星病)に強いバラを選ぶことが大事。その一つの指標になるのがADRなのです。ただし、ヨーロッパと比較してバラの生育期の雨量が約3倍の日本では特に黒星病の発生率がより高くなり、さらには日本の平地では耐暑性も求められるため、日本独自の審査システムができれば、育てやすいバラの評価は、さらに日本の気候に即した正確なものになるはずです。

・具体的な予防や対策については、こちら『バラの大敵・黒星病の予防&対策の方法を解説

ADR認証の魅力あふれるバラ

メルヘンツァウバー
ADR認証の ‘メルヘンツァウバー’(取り扱い:京成バラ園芸)。Photo/W. Kordes’ Söhne

さて、そんなADR受賞品種のなかで、特にオススメなのが‘メルヘンツァウバー’という品種です。これまで「病気に強いバラ」というと、いまいち花姿や香りの魅力に欠ける傾向にあったように思いますが、この花は病害虫に強くとても丈夫で、繰り返しよく咲くうえに、アプリコットピンクのグラデーションが繊細で、花姿もエレガント。ティー系の香りが程よく香り、日本人の好みに合いそうな、初心者の方にはぜひオススメしたいバラです。

ノヴァーリス
ADR認証の ‘ノヴァーリス’ (取り扱い:京成バラ園芸)。写真/河合伸志

強いバラを選んだうえで、基本的な育て方を知っていればバラは、ガーデニングの初心者にも十分育てられます。

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2019年4月に発売された新書『バラ講座 剪定と手入れの12か月』(発行:NHK出版)では、バラを育てるのは初めての人はもちろん、もっとバラを上手に育ててみたい人にも役立つ知識が河合伸志さん監修のもと、たっぷりと掲載されています。上記でご紹介したADR受賞品種も登場していますよ。

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近年ますますバリエーションが豊かになったバラの花の魅力や、バラ栽培の際に知っておきたい用語集と道具、バラの12か月管理・作業カレンダーも網羅。バラ栽培で「今」すべきことを知り、読み進めながらお手入れしているうちに、自然と身につくように考えられたテキストです。

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バラ栽培でまず大切なのは品種選び、と提唱する河合さんによる「丈夫なバラ」とは何か。その理由とともに、「初めて育てる初心者におすすめの丈夫なバラ」の項では、鉢植え、庭植え、誘引して楽しむなどの栽培シーン別に37品種が紹介されています。各品種は、黒星病とうどんこ病の耐性を5段階で評価しているうえ、ADR認証を受けている品種も登場。失敗しない品種選びが叶います。

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Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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