バラの花形には、一重や八重、整形、クラシックなどがありますが、これら以外にも近年はさまざな花形が続々と登場しています。自分好みのバラと出会うために、花形のバリエーションを知ることもひとつの方法です。ここでは、バラの専門家、河合伸志さんに多彩なバラの花形から個性的な8種を教えていただきます。
目次
個性的なバラの花形8種
バラには大きく分けて、①一重咲きと半八重咲きタイプ ②整形タイプ ③クラシック・タイプの3タイプがありますが、これら以外にもさまざまな花形があります。多彩なバラの花形のなかから「ポンポン咲き」や「波状弁咲き」、「シャクヤク咲き」など、個性的な8種の花形を品種の写真とともにご紹介します。
ポンポン咲き
花弁が強く反り返り、花一輪を横から見た時にボール状の丸い形になるものを、通常ポンポン咲きと呼びます。ほとんどの品種は小輪ですが、中には‘玉藻’のように中輪のものもあります。
波状弁咲き
花弁が強く波打つ花形です。波状弁を丸弁や剣弁と同列に捉えれば本来は整形咲きの一部とすべきですが、開いていく過程のみならず開いてからも十分に観賞価値が高いこと、整形咲きとは異なる人気動向があることから、ここではあえて別扱いとしました。この花形は‘エンジェル・フェイス’や‘ロココ’など以前から存在し、それなりに定評もありましたが、‘ニュー・ウェーブ’の登場以降日本では急速に人気が高まり、さまざまな波状弁の品種が作出されています。
シャクヤク咲き(ピオニー咲き)
基本はクラシック・タイプの花形ですが、これとはやや趣を異にし、シャクヤクを思わせる花形です。外側は概ねカップ状ですが、内側には大小さまざまな形状の花びらが不規則に配し、時に切れ込みも入ります。品種数はさほど多くなく、代表品種としては‘イヴ・ピアジェ’があります。
ラッフル咲き
オランダのインタープランツ社によって作出されたラッフル・ローズという一連の品種などに見られる花形で、花弁に深い切れ込みが入るのが大きな特徴です。ここでは類似した花形も含め、このようなタイプをラッフル咲きとしました。ラッフル・ローズの一枚ずつの花弁は、漢字の「山」の字のような形をしています。国内でも‘ファンシー・ラッフル’など数品種が発売されており、中でも‘ファイヤーワークス・ラッフル’は特異な花形をしています。
これとは別に ‘クチュール・ローズ・チリア’や‘ポルカ’のように同様に切れ込みが入る品種が国内外にありますが、いずれも花弁の切れ込みはラッフル・ローズとはやや異なっています。なお、すべてのラッフル咲きの品種は低温下での開花の時にこの特徴が現れ、日本国内では春の一番花のみになります。
ダリア咲き
半八重咲きの1つとしても捉えられますが、かなり細いさじ状の花弁で、弁先はハート型に切れ込みます。花弁数はさほど多くなく、花弁は反り返り、全体としてはダリアやマリーゴールドの花形を思わせます。現時点で‘アール・ヌーヴォー’と‘アール・デコ’の2品種しか存在しません。この特異な花形をここではダリア咲きとしました。
逆剣弁咲き
通常の剣弁は花弁の端が外側に折れ曲がりますが、内側に折れ曲がるものも少数ですが存在します。‘ルビー・セレブレーション’や‘オレンジ・メイアンディナ’などがその代表です。全体的には平咲きのようになる傾向があります。
ダイヤモンド型
花が完全に開ききらずに、あるステージで止まる咲き方。‘グリーン・ダイヤモンド’や‘レッド・カスケード’など数品種が存在します。
特殊咲き
整形タイプの1つとしても捉えられますが、半剣弁平咲きでありながら、花心はクォーター・ロゼット咲きのように複雑に割れ、整形タイプとクラシック・タイプの特徴を併せ持ちます。‘ラテ・アート’や‘パルファン・ダムール’など類似したタイプの品種がいくつかあります。主に日本人の育種家が個性を追求した結果、誕生した花といえます。表現の難しい花のため、ここでは特殊咲きとしました。
花形には、「その他」のほかに、「一重」や「八重」、「整形」、「クラシック」があります。それぞれの魅力的な花形から、好きなバラを見つけて、ぜひ身近で育ててください。
Credit
写真&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真/3and garden
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