バラを栽培する多くの人を悩ませる、バラの大敵・黒星病(黒点病)。葉に黒斑が表れ、やがて黄変・落葉し、病害が進行すると株全体の葉が落ちて丸坊主になってしまうこともある厄介な病気です。黒星病の発生が始まる晩春から始めたい、対策方法をバラの専門家の河合伸志さんが解説します。

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バラの大敵・黒星病

黒星病を発生した葉。にじんだような黒色の斑点が生じ、斑点の周囲が黄変している。

バラを栽培する人の多くが直面する、厄介なバラの病気が黒星病。発生した葉には黒色の斑点が生じ、やがて黄変して落葉します。被害が進行すると次々に葉が落ち、やがて丸坊主になってしまいます。このような状態になると、光合成ができないため生育が著しく悪化してしまいます。また、生育期に養分をため込むことができなかった株は寒い冬を乗り越えられずに、最悪の場合は枯死してしまうことも。寒さの厳しい地域ほど枯死しやすいので、注意を要します。また、黒星病は感染力がとても強く、一つの株に発生することで、瞬く間に周囲の株にも拡大し、庭全体に大きな被害が出ることもあります。そのため、発生してしまった場合には、被害が広がらないうちに早めに対処することが重要です。バラは栽培が難しいと思われていますが、それはこの黒星病という致命的な病害が存在するからです。すなわち、この病害の発生を上手に抑えることは、バラ栽培の成功の秘訣と言えます。

黒星病の発生しやすい時期は雨が多い季節

黒星病の原因は、カビの一種。黒星病の原因菌は濡れた状態など多湿な環境で繁殖しやすく、被害が拡大していきます。そのため、雨の多い季節に被害が発生しやすいです。日本では梅雨の他に秋雨や台風などとバラの生育期に雨が多く、4~11月の東京の降水量はパリやロンドンの約3倍。この数値を見るだけでも分かるように、ヨーロッパよりも日本での栽培には苦労するのです。ちなみに、適切な管理をしていた株では、発生はつぼみが大きくなり始める4月中旬以降から発生し、一時ピークは開花期から梅雨頃になります。梅雨明け後の高温期は、暑さによって病害の進行はやや抑えられるものの、発生し続けます。気温が低下し始める秋からは再度発生しやすくなり、バラが休眠する12月まで続きます。

早期発見は株内部のチェックを

上記のように、黒星病は一度発生するとあっという間に被害が拡大し、収束させるのに苦労します。早期発・早期対処を心がけましょう。一般に黒星病は株の内部の込み合った場所などから発生しやすく、また黒星病への耐性は品種間で大きく異なります。早期発見のコツは、耐病性が劣る品種の株内部をこまめに確認することです。バラを見る時に、人の目線は生育している新芽やつぼみに向かいがちです。意識的に株内部を観察することが大切です。なお、発生が確認された場合はすみやかに対策に移ります。

黒星病の対策

黒星病が発生したらただちに対策をします。まずは罹病した葉(1枚の小葉に発生している場合でも5枚など複数枚をセットで)を葉柄から丁寧にむしり取ります。続いて罹病した葉に隣接した葉も同様にむしり取ります。一見して病斑が見られない葉でも多くの場合は既に感染していて、数日の間に発症することが多いです。病害を早期に抑え込むためにも、思い切って摘み取りましょう。また既に落葉してしまった葉も、丁寧に拾い集めます。発生の度合いが著しくほとんどの葉に病斑が見られる場合は、9月上旬までであれば思い切って丸坊主にしてリセットしてしまう方が、早期に病害を抑えられる場合もあります。この一連の作業はとても大切で、摘み取りをせずに下記の薬剤散布をしても、なかなか病害を完治することができません。

病葉の摘み取りなどが終わったら、次に殺菌剤を散布します。現在のところ病害を抑えるためには治療効果のある殺菌剤を散布する以外には、残念ながら有効な手段はありません。株数が少ない場合は、「マイローズスプレー」など治療効果がある市販のスプレー剤が便利です。株数が多い場合は、サプロール乳剤など市販の適応のある薬剤を薄めて散布します。黒星病は雨と密接に関係しているので、鉢植えの場合は雨の当たりにくい場所に移動することも対策になります。なお、一度の殺菌剤の散布で病害が抑えられないこともあり、そのような場合は病葉摘みを継続しながら1週間間隔を目安に、複数回散布を継続します。

このように、黒星病は一度発生してしまうと、完治させるには苦労します。そのため、発生しにくくするために予防散布を行う場合もあります。予防には「ベニカXファインスプレー」などのような予防効果のあるスプレー剤やオーソサイド水和剤(希釈して使用)などがあります。

品種選びも大切な黒星病対策

黒星病への耐性は品種間で大きく異なります。全く出ないモッコウバラのような品種から、‘チャールストン’や‘ブルー・ムーン’のような弱い品種までの差はとても大きく、黒星病で悩んでいる人はなるべく耐病性の強い品種を選ぶこともその対策の一つと言えます。なお、耐病性の品種の目安としてはADRの認証品種などが参考になります。

●ADR品種についてはこちらの記事でご紹介しています
『【初めてのバラ選び】河合伸志さんに教わる世界で最も厳しいADR認証』

ただし、どんなに耐病性の強い品種を選んでも(モッコウバラ、キモッコウバラを除く)、日本の気候条件(関東地方以西の平地)では何もせずに被害を免れることは不可能で、完全な無農薬栽培の場合は最終的には発病・落葉することが多いです。

黒星病の具体的な対策手順

以下ではスプレー剤の散布による黒星病対策の事例を紹介します。

準備するもの

・薬剤(スプレー剤)

*市販の薬剤を希釈して使用する場合には、薬剤、計量器(秤やスポイトなど)、カップ(希釈時に使用)、噴霧器などが必要になります。

・マスク
・ゴム手袋
・ゴミ袋など

手順1

最初に黒星病の症状が出ている葉を、小葉ごと付け根から摘み取り捨てます。その際に摘み取った葉を放置すると、他の葉や株に感染が拡大する可能性があるため、必ずゴミ袋などに入れて集め処分します。すでに落ちてしまった葉も、丁寧に拾い集めます。4~9月上旬までであれば、罹病が著しい場合は、思いきって丸坊主になるように1枚残らず摘み取ってしまうのも一案です。

写真はすべて黒星病の症状が出ている葉。葉に斑点が入り、黄変しているのが特徴(罹病初期は黒斑のみの場合もある)。葉を取り除く際は、5枚葉、7枚葉などの小葉を全部セットで付け根から摘み取って捨てる。

手順2

黒星病治療の薬剤散布

マスクとゴム手袋を着用し、薬剤を株全体にまんべんなく散布します。葉表、葉裏の両方に散布をし、薬剤が軽くしたたり落ちる程度まで行います。散布の際には、薬剤に書かれている注意事項を確認してから使いましょう。

 

葉裏も忘れずにしっかり散布を。

薬剤散布を行う際は、気温がなるべく低い朝夕の時間帯を選び、子どもやペット、近隣家庭などに影響がないよう配慮しましょう。なお上記の通り、一度の殺菌剤の散布で病害が抑えられないこともあり、そのような場合は病葉摘みを継続しながら1週間間隔を目安に、複数回散布を継続します。その際には、薬剤の総使用回数を遵守し、病原菌の薬剤耐性獲得を防ぐために、なるべく異なる作用で治療や予防の効果を示す薬剤をローテーション散布するようにします。

*薬剤の取り扱いの際には、目的に合った薬剤を選び、記載されている注意事項をよく読み、十分注意してください。

Credit

アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。

写真/3and garden

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